第352話 ジェーンさんは子供が欲しいようです。
この世界では、15歳で結婚、出産が当たり前です。死が常に隣り合わせの世界では、出産出来る時に出産する事が種の保存上ぜっtじんzなのでしょう。
(5月8日です。)
今日は、ジェーンの26歳の誕生日だ。誕生パーティは、グレーテル王国南部のスノウ村にあるジェーンの実家でやることにした。シェル達は、お留守番だ。
大きなケーキと、ゴロタ特性のローストビーフを準備した。父親のフレディ・ミカエル・グレーテル元公爵と母親のメイさん、それにジェーンのお兄さん夫婦と甥・姪達それにジェーンの幼馴染の女性3人が来て、にぎやかな誕生パーティだった。
お酒に酔ったのか、フレディさんが、しきりに孫の顔が見たい、娘の産んだ孫の顔が見たいとこぼしている。幼馴染の女性陣からも子供の作り方を耳打ちされ、ジェーンは、顔が真っ赤になっている。
皆、2~4人の子供がいるようだ。ゴロタも、ジェーンが子供を作ることには反対していない。年齢的にも作った方が良いようだ。
明日から、ジェーンと誕生旅行に行く予定だ。フランちゃんとの新婚旅行以来、誰とも旅行には行っていない。
シェルの誕生日は、4月23日だったが、ゴロタ帝国の新憲法の策定作業や、戴冠式の準備で忙しかったため、誕生パーティをタイタン離宮でしただけで、誕生旅行には行っていない。というか、6月に二人で冒険旅行に出るつもりなので、繰り延べしているのだ。
ジェーンの実家は、酪農農家として、村一番の大きさだが、ジェーンの部屋は、両親の部屋の真隣なので、今日は夜のセレモニーは無しにした。
二人で、一緒のベッドに入って寝たのだが、ジェーンがチョコチョコとゴロタに悪戯してくる。ゴロタは、今日は何もする気がないので、抑制を掛けて、放っておいたら、片手で掴みながら眠ってしまった。うちの女性達は、何故皆こうなんだろうか?
翌朝、ゴロタとジェーンは、飛行服に身を包み、『ゼロ』に搭乗した。いつの間にか、先端部分にトンガリ帽子がかぶせられている。帽子の中は、遠くの物体を感知する機器が組み込まれているらしい。それと、機体の底に6連の20ミリ回転式銃が装備されている。外から見ると、ふっくらと膨らんだ部分の先端に穴が開いているだけだ。シルフが言うには、『バルカン砲』と言うらしい。弾倉は無く、数珠繋ぎになった弾丸が翼の下に隠されている。しかし、その先は、時空の狭間つまりイフクロークに繋がっているので、準備した弾丸数だけ装備できるのだ。初期設定は3000発らしい。
フレディさん達の見送りを受けて、垂直に離陸する。とりあえず、ゴロタ帝国の周回パトロールに出ることにする。『ゼロ』は、音速の2.5倍つまり時速約2800キロも出せるので、あっという間に帝国上空だった。セント・ゴロタ市の上空を旋回する。ゴロタの『遠見』スキルで見たところ、特に異常はないようだ。そのまま、進路を南に取る。
大樹海を超え、南極に向けて伸びている半島の先端まで行ってみる。5月だと言うのに、もう雪が積もっている。ゆっくり着陸することにした。
防寒ジャケットを着たが、まだ寒かったので、シールドで冷気を遮断する。ジェーンは、南の荒れた海を初めて見るらしく、感動していた。
南の最先端は、断崖絶壁になっていたので、下には歩いては降りられない。まあ、波が凄くて降りる気はしないが。はるか南には氷の大陸がうすぼんやり見える。きっとモンド王国から陸続きになっている南極大陸だろう。
今日は、此処で野営することにした。周囲2キロほどを探知したところ、熊が2頭歩いている。熊は食べても美味しくないので、放っておくことにしたが、何故か、こちらの方に向かってきた。きっと、南風だったので、ゴロタ達の存在を匂いで感じたのだろう。
ゴロタは、ジェーンの愛剣『灼熱の短剣トリトーン』を取り出して渡しておく。ジェーンは、2年前に既に『B』ランクだった。魔法適性は『雷』だけだが、きっと1人で大丈夫だろう。
熊が500m位に近づいたとき、『遠見』で様子を見てみる。熊は、灰色ヒグマいわゆるグリズリーの特殊個体のようだった。獣ではない。魔物だ。その証拠に目が3つあった。また、爪が異様に長かった。
200m位に近づいて来た地点で、熊たちは駆け足で向かってきた。早い。時速80キロ以上は出ているだろう。しかし、ジェーンは『瞬動』を使って、横に移動する。その時には、『トリトーン』の鞘の鯉口を左手で持ち、右手で柄を握っていつでも抜ける姿勢になっていた。ゴロタは、気配を消して浮遊している。いつでも、狙撃できるように指鉄砲で熊を狙っている。
熊は、90度向きを変えて、ジェーンに向かっていた。ジェーンの『トリトーン』が、一瞬抜かれたかと見えたが、次の瞬間には、また鞘の中におさめられている。1頭の熊の眉間が割られていた。丁度、真ん中の目が二つになるように、見事な切れ味だ。血が全く出ていない。『トリトーン』の特殊能力『灼熱』により、傷口が切られると同時に焼かれているのだ。血管の切り口も焼かれて塞がれてしまうので、血が出ないのだ。
熊は、自分が切られて絶命していることも分からないのか、30m位走り過ぎたところで、『ドサッ』と倒れた。もう一頭は、少し離れた所で止まっていた。先に殺された熊の様子を見ていて、踵を返して帰ろうとしている。ジェーンが、剣から手を離し、右手の平を熊に向けている。ある程度離れた所で、『サンダーテンペスト』を放った。あ、熊1頭にオーバーキルと思ったが、既に遅かった。逃げようとしていた熊は、残骸も残らなかった。
先に死んだ熊に近づいたところ、6m近い巨体だった。魔石を回収してから、『復元』で傷口を綺麗に塞ぎ、イフクロークに収納した。オークションに出せば、かなりの値段で売れるだろう。大陸には、いない魔物だ。この辺から南は、前人未到だ。どんな魔物がいるか分からない。しかし、これから冬だ。探索は、今年の10月以降にしよう。
野営セットを取り出して、セッティングしてから、いつものように露天風呂作りだ。温泉が出るまで、土魔法で穴を掘り下げて行く。200m位掘ったら、温泉に当たったので、『念動』で温泉をくみ上げて浴槽を満たす。硫黄の匂いのする温泉だ。少しぬるかったので、熱を開放して適温にする。湯気がもうもうと立ち込めていた。
ジェーンと二人で、ノンビリと入る。筈だったが、ノンビリできなかった。ジェーンが、被さって来たのだ。もう、抑制を外していたので、先ほどから臨戦態勢だ。結局、朝までに4回だった。
避妊処理もしないので、妊娠するかもしれないが、それはジェーンの望むところでもあり、ゴロタもそれで良いと思っていた。結果的には、今日は空振りに終わってしまうのだが。
翌日、燃料が足りないようだったので、シルフに連絡して、ゲートを繋ぎ、給油管をタンクのキャップに差し込む。後は、シルフが圧送してくれる。
燃料満タンになったので、これから、和の国ニッポニア帝国に行く。ナゴヤマ市の港に帝国の北の港から交易船を往復するために、ヒミコ女帝の許可を貰うのだ。
ミヤコ市の上空まで行って、皇居前広場に垂直着陸する。街の人達は、何が飛んできたかと吃驚している。そのまま駐機していると、何をされるか分からないので、イフクロークに収納した。
皇居は、堀に囲まれていたが、門の衛士さんは、ゴロタの事を知っているらしく、直ぐに中に案内してくれた。貴賓室で、暫く待っていると、ヒミコ女帝と大勢の女官達がやって来た。
宰相から閣僚、事務官まで全員が女性で、なおかつ巫女さんの恰好をしている。きっと、これが制服なのだろう。和の国は、今は初夏なので、薄着でも大丈夫なようだ。
ヒミコ女帝に、この前の戴冠式のお礼を述べるとともに、交易船の許可の話を出したところ、二つ返事でOKだった。話が早い。大蔵卿の女官が、関税の事について聞いてきた。
ゴロタは、関税が何か分からなかったので黙っていたところ、突然、シルフが現れた。シルフもゴロタと同じように、ゲートと時空の狭間への収納は自由自在なのだ。というか、ゴロタよりも効率が良いようだ。
直ちに関税交渉に入った。基本的に、自由貿易とするが、金と銀の交換比率は、グレーテル王国の貨幣基準に合わせることで意見が一致した。また、薬物等の禁制品については双方同じ基準で輸出入禁止措置を講ずる。また、食料品等は疫病検査を行ってからでなければ輸入できないが、あらかじめ取り決めた食料品については、検疫なしで輸入できることにした。
とにかく、国の大きさに関係なく、交易は相互主義で、お互いの利益が損なわれない限り、自由貿易を原則とすることで意見が一致した。早速交換文書を取り交わすことにした。シルフがものすごいスピードで書類を書き上げて行く。あっという間に条約の成立だ。
その日の夜、ヒミコ女帝が歓迎晩さん会を催してくれた。女性50人位に囲まれての晩餐会だったが、ゴロタに迫って来たのは、ヒミコ女帝だけだった。ヒミコさん、隣に妻のジェーンがいるのですが。
このまま皇居の中に泊まるのは危ないようだったので、引き留めるヒミコ女帝を無視して、ナゴヤマ市のホテルまで『転移』した。まだ予約はしていなかったが、スイートルームは、大体空いているはずだ。
予想通り空いていたので、朝食のみで泊まることにした。夕食はないのに、大銀貨3枚だった。以前泊まったところだったが、少しボッタかなと思い、次からは他のホテルにしようと思う、貧乏性の抜けないゴロタだった。
ゴロタは、自分の子供を作ることに興味がありません。長い人生では、急ぐ必要もないのですが、クレスタ達にとってはそうは行かないようです。