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第351話 戴冠式は波乱の幕開けです。

戴冠式は、皇帝が皇帝たる姿を国民に知らしめると共に、内外に正当な元首であることを布告することです




(5月3日です。)

  今日は、いよいよ戴冠式だ。式は、午後2時からだ。


  セント・ゴロタ市の中心にあるゼロス教聖堂に、参列者が続々と入って行く。と言っても、ゲートから出てくるだけだったが。


  最前列は、妻と婚約者達。あと、ブラックさんとヴァイオレットさん、ワイちゃんだ。


  その後ろに国賓、公賓達。その後ろにタイタン帝国の閣僚と貴族達。その後ろに、親族、恩人それに旅で知り合った仲間たちだ。ビビさんやサリーちゃんもいる。


  ゴロタが、戴冠式用の服装で入場する。頭には何も被らず、手にも何も持っていない。マントも着ていない。今日のために作った光り輝く貴族服を着ている。肩からは、赤いリボンのような布を斜めに下げている。


  ジェリー大司教が入ってくる。高さ1m位の帽子をかぶっている。その後ろから、王冠、王笏それにマントを捧げ持った神官が続く。


  ジェリー大司教が、ゴロタの前に立つ。ゴロタは、ゆっくりと跪いた。頭を下げる。ジェリー大司教は、例の帽子のような機械をゴロタの頭にかぶせた。ゴロタは、じっと跪いたままだ。


  ジェリー大司教は、持っていた杖の宝珠の部分を帽子にあてて、


  「大いなるゼロスの神よ。その力を示し、我を導きたまえ。」


  と、呪文をとなえた。


  ゴロタの周りに白い煙のようなものが立ち込め、ジェリー大司教が退くと、そこに独りの老人が現れた。顔は良く分からないが、確かに老人だった。その老人は、独りで喋り始めた。


    『古の伝承により全てを統べるゴーレシア・ロード・オブ・タイタンよ。』


    『全能の王にして世界を救う者ゴロタよ。』


    『今、世界は汝ゴロタのものなり。』


  『ゴロタにより世界の未来は約束された。繁栄と幸福は汝らのもの。』


  『ゴロタを王の王として敬い尊べ。天国は、約束されている。』


  なんか凄いことをいっている。『王の王』って何ですか?そんな者になるつもりは、さらさらありません。


  老人は消えてしまった。ゴロタは、白い光に包まれた。ゴロタは、そのことを知らない。光が消えた。ジェリー大司教が青くなっている。


  暫くして、気を取り直したジェリー大司教に問いただす。


  「ゴーレシア・ロード・オブ・タイタンよ。この国の皇帝となることを認めるか?」


  「はい。」


  「ゴーレシア・ロード・オブ・タイタンよ。この国の民と生きとし生けるもの全てを慈しみ、身命に変えて守ることを誓うか?」


  「はい。」


  「ここに、大いなる神ゼロスに代わり宣言する。初代ゴロタ帝国の皇帝が神託された。」


  パイプオルガンが鳴り、聖歌隊の賛美歌が歌われる中、王冠が被せられた。立ち上がったゴロタに、神官がマントを着せ、王笏を持たせた。賛美歌が終わった。


  ジェリー大司教と、神官達が退いていく。ゴロタは、皆の方を向く。皇帝即位宣言だ。


  「僕は、ゴーレシア・ロード・オブ・タイタン。今、この国と所領の皇帝になった。僕の願いはたった一つ。皆が、幸福になってくれること。誰も飢え死にさせない。誰も魔物に殺されない。そんな国になればいいなと思っています。憲法によって、この国は変わっていきます。法と秩序、慈愛と敬意。それがこの国の目指す形です。皆で、力を合わせ頑張りましょう。」


  あっという間に、宣言は終わった。万場の拍手の中、神官が、宣言書を持ってくる。その宣言書にサインをして、皆にサイン済みの宣言書を高々と掲げた。


  これで、神とゴロタと国民の間の契約は成立した。


  次は、パレードだ。国防軍1000名が、正装で整列している。携行している銃は、火縄銃を改造したフリントロック式銃だ。流石に、元込め銃は間に合わなかった。白のツバ付きの制帽には、龍に剣が交差しているゴロタ帝国の紋章だ。ツバには金色のオリーブが刺繍されている。上衣は、金ボタンダブルだ。礼肩章も金糸で編み上げられている。


  帯革には銀色の鞘に入った短剣が吊るされている。白のズボンは、太もものところが膨らんでいる。黒の編み上げ靴が、白のズボンとのコントラストで目立っている。


  1着当たり大銀貨1枚もしたが、2ヶ月前から注文していた。今日の行進は、身長・体重の制限をかけて選抜したので、僅かなサイズ違いで揃える事が出来た。


  選抜に落ちた者達も、採寸して支給するつもりだ。タイタン州、ハルバラ州それにセバス州全ての騎士団も同様だ。装備の近代化と士気の高揚は喫緊の課題だ。


  国賓達はタイタニック号と同型機3機に分散して搭乗する。同型機はタイタニック号の改修が終わった時に直ぐ発注していた。エンジン部分と制御系以外だけの注文だったので、簡単に作る事が出来たみたいだ。


  当然、エンジンと制御系の油圧回路はシルフとシュタイン博士が作成したが、シルフの強みは寝なくても良いと言う事だった。シュタイン博士は、何度かお花畑に行ったみたいだった。


  機体の愛称だが、『翼1号』から『翼3号』まで、ナンバーで命名だ。安直だ。


  操縦は、シルフの遠隔操縦だ。操縦席には、ゴーレムを座らせている。身長150センチだが、顔がゴロタそっくりに作っている。


  金色の刺繍の入ったツバ付き帽子を被り、紺色のダブルの上着には、モールが一杯付いている。シルフの趣味らしいが、かなり格好がいい。


  ゴロタ達は、屋根無し馬車に乗車する。シェルが隣に座る。一応車輪が付いているが、振動が嫌なので、少し浮かせている。全て、ゴロタの『念動』による。


  その後は、妻達と婚約者達だ。長い馬車だ。シートが真ん中に2列、それぞれ左右を向いて並んでいる。この馬車には車輪がない。


  馬も無く車輪もないとなるとただの板だ。しかし、高さ110センチの柵があり、この時期には珍しい花で飾られている。非常に豪華に見える。北の大陸から持ってきたものだった。それに、花で、エーデル達のスカートの中を隠している。


  この馬車もゴロタの『念動』で浮遊しているのだ。また、暴漢に備えて見えないようにシールドがされている。


  エーデルがゴロタと一緒の車両ではないことに、凄く不満そうだったが、夜の当番を多くすると言ったら、ニコニコしていた。


  馬車には、エーデルの他に、ノエル、ビラ、フミさん、ジェーン、シズ、フランと妻が6人、それにジルちゃん、ジェリーちゃん、ブリちゃん、デミちゃん、キキちゃん、ドミノちゃん、最後にミキさんに抱かれているレノアちゃんが乗っている。


  後は、普通の馬車にワイマー宰相以下が続いている。その後ろに霊獣、神獣が続く。イフちゃんもイフリートになって続く。


  急に空が暗くなった。全長500mを超えるブラックさんだ。その後にヴァイオレットさんとワイちゃんが続く。沿道の観衆はパニック状態だ。逃げ出す者もいた。


  最後は、グレーテル王国騎士団500名だ。赤を基調とした煌びやかな装いだ。先頭の国防軍が、実力を誇示する事が目的なら、騎士団は派手さが目的だった。


 騎馬隊200騎、重装備100名、軽装備200名だった。この隊形のまま、グレーテル王国の王都から行進してきた。ゴロタは、騎乗したまま3列で潜れるゲートを作っておいたのだ。


  沿道の観衆は、ゴロタが世界を統べる者だと言うことを知らない。しかし、行進する戦力を見ただけで、世界を征服できるのではないかと考えてしまうのも無理はない。


  パレードは2キロ先の宮殿建設現場の先の広場まで続いた。この広場は、宮殿前広場として庭園にする予定だ。


  国賓達は、そのまま飛行船で送って行くことにした。最高速度は、音速の1.5倍で巡航できるので、この国の反対側まででも10時間だ。一番遠いザイランド王国まで約8時間だが、タイタン市に泊まることにしている。のんびり美味しいものを食べたり、ショッピングをしたいそうだ。


  ゴロタとシェルは、聖堂に戻って王冠や王笏を教会に預けた。教会の宝物庫に保管してもらうのだ。イフクロークに保管すれば、劣化もせずに保管できるのだが、もともと教会で保管していた物だ。戻すのが筋だろうと考えたのだ。ただ、盗難に遭うことの無いように、保管庫には、『封印』の魔法をかけておいた。レベル8の魔法だった。他人が解除するためには、それ以上のレベルでなければならない。現実的にはあり得ないので、盗難被害を心配することは無い。あとは、火災被害だ。ゴロタは、半永久的なシールド魔法をかけた。物理的な被害を防げるだろう。


  戴冠式が終わって、騎士団や来賓をゲートで送ってあげてから、シェル達とタイタン離宮に帰った。今日は、疲れたので早く休もうとしたら、シルフが変な事を言っている。モンド王国まで、国王陛下達を送って行ったのだが、帰りの飛行船『翼3号』に誰かが乗っていると言うのだ。それも3人だ。


  忘れ物でもしたのかなと思ったら、送って行った人達と違う人が2人乗っているという。嫌な予感がした。モンド国王の、さりげなく言ったあの言葉が気になる。


  夜になって、モンド王国に行っていた『翼3号』が帰って来た。タラップから降りて来たのは、案の定、デリカ王女だった。残りの二人が、新たに乗り込んできた、お付きのメイドと婆やだろう。大きなカバンを4つ持って来ていた。絶対に、事前に準備している。


  デリカ王女が、迎えに出たゴロタに、飛びついてきた。あの、あなたとはそんな関係ではないのですが。これから、一波乱起きそうな予感がしてならないゴロタだった。

これで、ゴロタはこの国の皇帝になってしまいました。

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