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第344話 各国の思惑

ゴロタが皇帝になったのに、一番ショックを受けているのは、グレーテル国王陛下かも知れません。

(4月6日です。)

  今日から、新学期だ。ミキさんもグレーテル王国の王都にある音楽学院2年に編入だ。ジルちゃんはタイタン学院高等部3年になった。以前は、魔法か家庭科の先生になってもいいかなと思っていたが、数学と理科が得意なので、大学は、今年、新設された理工学部に進みたいらしい。そこで勉強して、数学か理科の先生になるつもりだ。


  キキちゃんは、中等部3年だ。そのまま、高等部へ行けるだろう。ドミノちゃんは、今月から母親と住むことになった。母親は、モンド王室の末の弟君のお手付きだったが、元々は侍女だったし、もう王室には未練はないそうだ。


  本館の東南側にある迎賓館の2階の部屋が空いているので、そこに住むそうだ。と言うか、ミキさん親子が出て行ったので、誰も住んでいない。


  仕事は、孤児院で、フミさんの手伝いだ。副院長と言う肩書きで、月に金貨1枚の報酬にした。ドミノちゃんの毎月の手当ては、今まで通りシェルさんが管理することにした。


  母親の名前はデミアさんと言うらしい。小人種でも特に小さく、身長120センチ位で、ドミノちゃんよりもかなり小さい。


  ドミノちゃんも隣の部屋に一緒に住むことになった。当然だろう。


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  ザイランド王国のメアリー・コンダニア・ザイランド女王陛下は、マロー宰相と戴冠式の招待状について話し合っていた。


   「マロー宰相、ゴロタ殿は、どのようにしてゴロタ帝国を手にしたの?」


  「情報によりますと、旧ゴーダー共和国との戦で、20万人の軍隊を敗走させ、実権を振るっていたネチス党を壊滅させたそうです。」


  「20万人?して、ゴロタ殿の軍勢は?」


  「ゴロタ殿1人と空飛ぶ新型兵器だそうです。」


  「何ですって。たった1人?新型兵器とはどんなものなのじゃ?」


  「我国は、戦闘視察団に入っていなかったので、詳しいことは分かりません。何でも飛龍よりも早く飛べ、大量の兵士と爆裂弾を搭載出来るそうです。」


  「それで、ゴロタ殿の領土と国力はどうなのじゃ。」


  「はい、領土の広さは、我が国の2倍以上かと。国力は、ハッキリとは分かりませんが、領内全てで記録的大豊作だったそうです。また旧ゴーダー共和国内では、新たに金鉱山が見つかったそうです。」


  戦力的には、どこの国も全く叶わないことは知っていた。絶対に戴冠式には参加しようと考えている女王陛下だった。


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  ヘンデル帝国では、真剣に悩んでいた。新ゴロタ帝国周辺国で、ゴロタ新皇帝と姻戚関係を結んでいないのは、我がヘンデル帝国のみだったからだ。


  長い国境線で接している、聖ゼロス大司教国とは、前大司教が妻だそうだ。また、今の大司教を見つけてきたのもゴロタだし、今度の戴冠式も、ゼロス教の大司教が祝詞をあげるらしい。


  交易路がないとは言え、中央フェニック帝国とは、現皇帝の腹違いの妹君と婚約している。それに、南部を領土として割譲している。


  メディテレン海を挟んでいるグリーンフォレスト公国連合とは、大公閣下の一人娘が正妻であり、ゴロタ殿は、将来の大公閣下になる予定だ。


  グレーテル王国とは、元々、国王陛下の臣下で、第3王女を妻にしている。そして旧グレーテル王国の西半分を割譲して現ゴロタ帝国領となっている。


  隣接はしていないが、カーマン王国とは、辺境伯の御息女が妻だそうだし、さらに王都の南の村からも妻を一人娶っている。


  結局、ヘンデル帝国としては、魔物により滅亡した村の娘一人が嫁に行っているだけで、結びつきは極めて希薄だ。北部の領地を割譲したと言っても、飢餓地帯で、持ちきれなくなってお願いして統治して貰っているのだ。威張れるものではない。カエザー・ザウツブルコ・ヘンデル18世皇帝陛下は、プーチキン宰相等と真剣に相談をしていた。


  「それでプーチキン、これからどうすれば良いのじゃ?」


  「は、陛下のご親族で、若くそしてお美しい姫君はいらっしゃらないでしょうか?」


  「馬鹿者、そんな者がいたら、とっくに嫁に出している。だいたい、余の娘ジョセフィーネでさえ、嫁に貰ってくれなかったのだ。ああ、あの時、無理してでも嫁にやればよかった。」


  いえ、それは無理ですから。プーチキン宰相はそう思ったが、黙って頷いていた。


  「とにかく、今からでも良い、何とかゴロタ殿と姻戚関係を構築するのじゃ。それから、戴冠式には、全閣僚、全将軍が参列するように。そのように返事を出せ。」


  すべてに出遅れているヘンデル帝国でした。


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 カーマン王国のブリ・ド・モー・カーマン8世国王陛下は、フォンデュ宰相と打ち合わせ中だ。勿論、ゴロタ帝国の新皇帝の扱いについてだ。ゴロタ帝国とは、中央フェニック帝国南部のゴロタ領セバス州と国境を接しているし、タイタン州とは交易船で交流がある。


  それに外務大臣兼ガーリック辺境伯の娘は、ゴロタ新皇帝の妻だし、現在、妊娠して里帰りしているとの事だった。ガーリック辺境伯は、現在伯爵だが、侯爵に叙爵する予定だ。とにかく、世界最大の軍事国家を、たった一人で殲滅したのだ。カーマン王国など一瞬でなくなってしまう。誰かが、『世界を統べる者』と噂していたが、現実味を帯びて来た。とにかく、今は、ガーリック辺境伯を大切に扱うことにしよう。


  これが、ゴロタ帝国に対する対応方針であった。


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  グリーン・フォレスト連合公国の公都メープル市の大公屋敷では、ペニシュラ・シルフィード・アスコット3世と妻であるアンナシュラ・サラ・アスコット大公夫人が会話をしていた。


  「アンナ、シェルがついにやってしまった。南のゴーダー共和国、今はゴロタ帝国の皇帝の第一夫人つまり皇后になってしまったぞ。」


  「それでは、この国の跡継ぎはどうするのですか?」


  「うむ、それなんだが、この公国連合がゴロタ帝国と合併すると言うのはどうじゃ。」


  「それで、他の公国が納得するかしら。」


  「うむ、自治権は、そのままにして貰うのじゃ。というか、ゴロタ殿は、ゴロタ帝国の皇帝陛下であり、かつこの公国連合の元首、大公となるのじゃ。それで、各公国から賢人を集めて、信託統治と言う形が良いじゃろう。」


  「そうですわね。あと何百年後か分かりませんが、そういう風になる時が必ず来ると思います。」


  そんな将来の事は分かりませんが、シェルとゴロタは、きっと生きていると思います。


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  モンド王国王都デル・モンデ市の王城では、デリシャス・デル・モンド4世と宰相のデビアス閣下が打ち合わせをしていた。


  「あの、ゴロタ殿から、新ゴロタ帝国の戴冠式に招待されておるのじゃが、どうする。」


  「陛下、必ず行かれた方がよろしいかと思われます。」


  「しかし、儂は、他国に行ったことが無いのじゃ。北の人間族や亜人族とは、大昔争ったことがあり、魔人族を憎んでいる者もいると聞くが。」


  「ゴロタ皇帝陛下に娘を預けているデザイア伯爵やデビタリア辺境伯の話では、まったく問題はないそうです。それに、国王陛下と血のつながっているドミノカレン嬢が婚約者候補となっているので、このままうまく行けば、ゴロタ皇帝陛下とは姻戚関係になります。我が国は、安泰ですぞ。」


  「ああ、あのバカ弟が下女に産ませた娘か。そういえば、その母親はどうした。」


  「はい、現在、娘と一緒にタイタン州というところで、ゴロタ皇帝陛下と一緒に同居しております。」


  「そうか、という事は、ゴロタ殿とは、現在、良好な関係にあるのじゃな。」


  「御意。」


  「よし、分かった。戴冠式には、貴公も出席するのじゃ。良いな。」


  「御意。」


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  グレーテル王国王都の王城の中では、アルベルト・フォン・グレーテルが弟のフレデリック殿下やジェンキン宰相、スターバ騎士団長達と打ち合わせをしていた。


  「いやあ、ゴロタ殿が皇帝陛下とは、本当に驚いた。なあ、フレデリック。」


  「俺は、前からそうなると思っていたぜ。あいつは、狭い領地のお貴族様なんかじゃ絶対終わらないとな。」


  「陛下、あのタイタン領、いや今はタイタン州なのですが、あの扱いはどうしますか?いつまでも上納金を徴取することも出来ませんが。」


  「そうじゃな、しかしそれが無いと、わが国も困るのではないか?」


  「はい、非常に困ります。昨年のわが国の年貢は、平年並み以下でした。タイタン州内では、何故か過去に例のないほどの大豊作だったそうです。それで、上納金も、わが国の年貢総量に匹敵する位でした。」


  「ウーム、ゴロタ殿には、豊穣の神でも付いているのか?」


  「そう、思われても不思議ではない位大豊作だったそうです。」


  「まあ、向こうから、上納をやめると言うまで、現行通りという事にしよう。エーデルもおるし、早く子供でも出来たら、心配もなくなるのじゃが。」


  とっても能天気な皆さんでした。

ゴロタは、何も考えていません。ただ、流れに従って、自分の信ずる道を行くだけでした。

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