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第341話 TIT48

すみません。戦闘シーンはありません。

(2月20日です。)

  シェルが、来客の対応をしている。若い男と、中年の女性だ。男の方は、王都の芸能プロダクションの者だそうだ。


  男の用件は、『TIT48』を王都デビューさせたいそうだ。そのマネージメント契約で来たらしい。


  シェルがシルフと小声で相談してから、


  「当方の『TIT48』は、自分がプロデュースするので、お引き取り下さい。」


  と言った。彼女達は、未成年だ。学校もある。働かせるわけには行かない。芸能活動は、除外されているが、他のプロダクションに専属させる訳にはいかない。


  男は、それなら王都でコンサートをやるときだけ、うちでプロデュースさせてくれと言ってきた。それなら大丈夫と言うことで、王都でのコンサート興行権のみの契約を結んだ。


  次に、女性の方だが、あの世紀の大歌手『マリア・カルス』のマネージャー兼代理人だそうだ。


  マリアがミキさんを育てたいそうだ。彼女は、必ず世界的な大歌手になれる。そのためにも、キチンとした指導者について、訓練する必要があるそうだ。


  しかし、彼女は1児の母だし、未だ高校生だし。そのことを話すと、何も問題ないそうだ。マリアも7人の子の母親だし、王都には、音楽専門の高校もあるので、そこに転校すれば良いと言ってきた。


  シェルが、本人の意向を確認しなければいけないと言ったら、シルフが口を挟んで来た。


  「彼女を売り出す際には、必ずシェルさんを通じて下さい。また、いかなる契約も本人及びシェルさんの同意がなければ無効です。その点を明記した契約書をお願いします。」


  シェルは、吃驚したが、あちらの世界ではこれが普通なのだろう。直ぐにミキさんが呼ばれた。ミキさんは、レオナちゃんと一緒に来た。レオナちゃんは、コマちゃんやトラちゃんと遊んでいる。


  ミキさんは、自分だけそんなに恵まれて良いのだろうかと言った。歌は好きだし、自分の歌を誰かに聞かせることって、素晴らしいことだと思っている。この前、コンサートで歌った時は、興奮して眠れなかったくらいだ。


  歌を本格的に習うって、今まで考えた事も無かった。不安はある。自分の歌が通用するのだろうか。でも、やってみたい。


  でも、余りにも幸せすぎて怖いくらいだ。こんな幸せが続くとも思えないので不安だそうだ。


  シェルは、涙を浮かべながら、


  「あなたは、ずっと不幸だったの。これからその不幸だった時間を取り戻すのよ。」


  と言った。シルフが、涙も出ていないのに、手で顔を覆って泣いている真似をしている。


  結局、ミキさんは、タイタン学院の高等部2年の進級試験を受けてから、王都の王立音楽学院高等部2年に編入することになった。編入試験は、3月1日らしい。もう日が無かった。


  王都の公爵邸、今はタイタン皇帝のグレーテル市別邸だが、そこに引っ越すことになった。以前、公爵邸だった頃に一時的に住んでいた所だ。しかし、今度は1階の貴賓室にピアノを置き、部屋を防音室に改造した。


  タイタン学院から来て貰っている音楽の先生に特訓をしてもらう。転入試験ではピアノの課題が問題だ。後、音楽理論だ。毎日、遅くまで特訓が続いた。


  2月28日、ゴロタとシェルが、ミキさんと一緒に王都の別邸に行く。防音室の工事が完了したので、完成具合を見るのだ。壁、床、天井全て改修されている。分厚い吸音材とパンチングボードだ。床は、コルクが貼られている。完璧だ。流石にバンブー・セントラル建設だ。


  次に、楽器屋さんに行ってピアノを注文する。今度は本格的なものにする。スタインさんが作ったコンサート用のグランドピアノだ。防音室のドアは、ピアノ搬入ために両開きにして貰っている。大金貨2枚以上だったが、必要な投資だ。惜しくない。


  それから、皆で音楽学院に行ってみる。別邸から歩いて30分位の場所だった。いつも、中から音楽や歌声が聞こえていたので、何かなと思っていたが、学校だったのだ。深い木立の奥に見える校舎は、それほど大きく無かった。


  今日は、ゴロタ達も別邸に泊まる。明日、試験が終わったら一緒に帰る予定だ。夕食前にレオナちゃんを迎えに行った。


  グレーテル別邸で食事を取るのは久しぶりだ。シェフ達が、張り切っていた。ノエルとビラとシズも一緒だ。


  メイド長のダビルさんも、今日はお化粧に気合が入っている。もう45過ぎのはずなのに、魔人族の年齢は、見ただけでは分かりません。


-----/----------/----------/------


  次の日、ミキさんはグレーテル王立音楽学院の編入試験を受けている。2年次への編入受験生は6人、皆、女子だった。声楽が3人、ピアノが2人最後はヴァイオリンだった。


  午前中は学科だ。基本4教科に音楽理論だ。基本4教科は簡単だった。音楽理論は、習っていない所も出題されたが、曲の変調問題だったので、なんとか5線譜に書き込むことができたが、自信はなかった。


  午後は、実技だ。ピアノの課題曲は、あらかじめ貰っている。太古の音楽のうち『ノクターン9番』という曲だ。ミキさんのレベルでは、かなり難しいが、先生に一度引いて貰ったので、指使いは頭に入っている。というか、曲が頭に入っているので、なんとか弾ける。しかし、曲想とか表現というレベルではまだまだだった。


  次は、専門課程別試験だ。ミキさんは声楽希望なので、課題曲と好きな曲1曲ずつを歌う。課題曲は、『木星』と言う歌だった。木星って、何かよく知らないが、綺麗な曲だった。


  選択曲は、『ふるさと』と言う曲にした。


  ♪兎追いしかの山 

  ♪小鮒釣りしかの川

  ♪夢は今もめぐりて

  ♪忘れがたき故郷


  ♪如何にいます父母

  ♪恙なしや友がき

  ♪雨に風につけても

  ♪思いいずる故郷


  ミキさんにとって、故郷と言う思い出はない。村子として、教会で育った時は、ひもじい思い出しかない。10歳で働き始めても、辛い仕事と差別の思い出ばかりだ。


  でも、両親が向かおうとしたカーマン王国には、きっと故郷があった筈だ。行ったことのない故郷、どんなところだろう?きっと、1度行ったら忘れられない程美しい場所なのだろう。ミキさんは、歌いながら涙が溢れてくるのに気がつかなかった。審査員の先生達も泣いていた。


  試験は、終わった。その日のうちに合格発表があった。ミキさんは、勿論合格した。


-----/----------/----------/-----


  シルフが、楽譜を書いている。物凄いスピードだ。書いた楽譜に詩をつけている。曲名は『恋するフォーチュンケーキ』と名付けている。意味は、不明だ。


  伴奏は、ジェリーちゃんだ。高校生以下のチームが着ているのは、ピンクのチェック柄ミニスカだ。スカートの中にフリルのいっぱい付いて膨らんでいる下着をつけている。


  小さな帽子を斜めにかぶっている。それで、変な機械を持って歌っている。黒いキノコのような形だ。マイクというらしい。マイクから、大きな箱に電線が繋がれていた。こうすると、小さな音が大きな音になるのだ。


  ジェリーちゃんも、歌っている。ピアノを弾きながら歌っているのだ。とても上手だ。


  シルフが、変な機械でパチパチしている。カメラという機械だ。真ん中に大きなレンズが付いている。


  タイタン市の『クレスタの想い出』の隣に特設ステージを作った。簡単な骨組みにテント張りの屋根だ。


  ジェリーちゃん達が、ステージの上に転移する。その後、執事さん達がピアノを運んでくる。勿論、ゲートを通じてだ。


  ステージの前は黒山の人だかりだ。皆、若いと思ったら中年のおじさんもいた。手にはそれぞれ『押し』の子のイメージカラーに光る棒を持っている。


  曲が始まった。大音量が街中に響き渡る。通りがかりの人も、足を止めて見ている。


  1曲目が終わったら、ジルちゃんが挨拶する。


  「みんなー、今日は私たちTIT48の歌を聞きに来てくれてありがとー。ジル、嬉しくって泣きそうだよー。」


  「「「泣くな、ジルちゃん。」」」


  「うん、ジル頑張るー♡。」


  見ていて頭が痛くなる。その後、3曲ほど歌って、サイン会が始まる。1回書いてもらうのに、大銅貨3枚だ。全員で6人なのでコンプリートするのに銀貨2枚近くかかってしまう。


  今日は、握手は禁止だ。4月にコンサートを計画しているので、その時に握手会をするようだ。あざとい。全てシルフの考えだ。


  『クレスタの想い出』では、今日はお菓子やお土産を売らずにグッズ販売だ。一番高価なグッズは、勿論フィギュアだ。


  1体、大銀貨1枚半だが、もう見本しか残っていない。見本の股間が手垢で黒ずんでいる。こいつら恥じらいが無いようだ。フィギュアのスカートは必ずめくっている。


  シルフが、レコードプレーヤーをデモンストレーションしている。1台大銀貨2枚だ。現在、完全予約制で作っているが、注文殺到で、注文受付も止まっているようだ。


  シルフの計画では、量産工場を作って、大量生産が始まってからが本番らしい。何が、本番なのかわからない。店内では『フォーチュン・ケーキ』は、明日から発売ですとアナウンスしている。


  ゴロタは、恥ずかしくなって、タイタン市の旧公爵館、現在のタイタン離宮に逃げ帰った。これでいくらの売り上げになるのだろうか?でも、ジルちゃん達が喜んでやっているようなので反対する気はない。


  離宮に戻ったら、シェル達がダンスの練習をしていた。シェルに、エーデル、ノエルにビラだ。あ、シズちゃんにジェーンさんまでいた。あと、フランちゃんも後ろの方で踊っている。


  ユニット名は、『イブニング娘』と言うらしい。レコードプレーヤーから流れる音楽『恋マシーン』に合わせて踊っている。平均年齢22歳以上と思うと、かなり痛いが、我慢して見ていた。デビューは1週間後らしい。


  全ては、シルフの考えだが、何を考えているのか分からない。


  最後は、シルフのソロだった。信じられないくらいに上手だった。これは、違反

だ。過去の誰かの声をコピーしているらしい。聞いているだけで、身体が震えてくる。


  シルフさん、あなた、絶対に間違えてますから。

殆ど、パクリのようですが、ギリギリセーフと思っています。小学唱歌は、著作権が消滅しているので、OKです。後は、きっと大丈夫でしょう。

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