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第340話 クレスタは、母子ともに順調です。

クレスタは、実家で出産の予定です。北大陸は真夏なので、出産しても汗だくです。南半球は、季節が逆なので、真冬の出産になります。

(2月1日です。)

  今日は、カーマン王国ガーリック辺境伯邸にいるクレスタに会いに行く。義父のガーリック辺境伯が玄関の外で待っていた。屋敷の中で待っていてくれればいいのに、皇帝になったからには、そうはいかないと言うのだ。うーん、困ってしまう。クレスタは、ニコニコ笑っている。


  クレスタのお腹は、だいぶ大きくなってきた。もうすぐ5か月だ。生まれるときはこの大陸では真冬だが、夏、真っ盛りよりは良いだろう。


  クレスタ親子の屋敷もだいぶ出来ていた。大金貨20枚程度だったので、生まれた子供が3歳になりクレスタが戻ってくるときには、屋敷を義父に贈呈するつもりだ。


  クレスタが、新タイタン帝国のことを心配していた。国の運営は、領地以上に難しいと思っているようだ。その通りだが、心配をかけさせたくない。


  帝国とは名ばかり、実態は借金まみれの貧乏領地で、政治体制も根本から直さなければならないが、やりがいはあるし、何より地下資源に恵まれた広大な領土がある。温暖な海にも面し、素晴らしい国になる可能性があるのだ。あくまで可能性だが。


  クレスタも、手伝いたそうだったが、お腹の子供のことが第一だ。無事に出産して貰いたい。夜、クレスタと寝ていると、強く抱きついて来た。お腹に子供がいて、絶対にしてはいけないと母親に言われているのだが、我慢できないらしい。ゴロタは優しく抱き寄せ、軽くキスしてあげた。


  「触って。」


  クレスタが、要求してくる。ゴロタは、そっと触れてあげた。暫くジッとしていたが、諦めたのか、パンツを履き始めた。もうちょっとの辛抱だよと、優しく言ってあげた。


  翌日、モンド王国との交易トンネルの工事進捗状況を視察した。工事は、遅々として進んでいない。土魔導師を動員しているが、直ぐに魔力切れを起こしてしまうし、魔法レベルも低いので、一度には出来ないようだ。


  土や岩を砕く役、それを固めて壁や床にする役、余った土を大地に戻す役、これでは進まないはずだ。


  ゴロタは、1時間ほどで20キロばかり掘り進んであげた。ついでに、掘り進む方向も修正してあげた。シルフが、測位して、座標の誤差を修正していた。


  工事担当の人が、吃驚していたが、もっと驚いていたのは、土魔導師達だった。極大級とか魔王の生まれ変わりとか囁いていたが、ロリータとか聞こえたので、直ぐにトンネルから出ることにした。


  次の日、エーデルと共に、ヘンデル帝国の北部にある北タイタン帝国領を視察する。エーデルが、何か誤解して目一杯おしゃれをしている。ツバ広の真っ赤な帽子を黒のリボンで結え、薄ピンクと銀色のミニスカスーツを着ている。どう見ても、新婚旅行か何かだ。


  港湾施設の工事は、厳しい寒さのため、一時中止だ。国民の生活は、豊作と年貢免除のため、安定している。


  各行政長官達は、その内、叙爵するつもりだ。後、領地も分け与える予定だ。貴族としての体面を保つためには大金貨20枚位を年貢として徴収できる程度の広さが有れば十分だろう。後は、任務に応じての扶持を加増するだけだ。きっと彼らの孫が代変わりする位まではゴロタも生きているだろうから、見守ってやろうと思っている。


  ハトバラ市のカノッサダレス行政長官が、今日は、皇帝陛下ご就任の祝宴をしたいと言う。断りたかったが、平素苦労をかけているのだから、ご招待に預かることにした。


  宴席は、行政長官の公邸で行われることになった。北東郡と北西郡の副長官や各部長も呼ぶと言うので、それぞれの行政庁支所をゲートで結ぶ。


  全部で300名位になってしまった。ゴロタは、お酒を飲まないし、エーデルも夜に備えて、お酒を控え目にしていた。皆、ゴロタの周りに集まって、色々と話しかけてくる。


  ゴロタが、閃いた。ヘンデル帝国の認証官制度をタイタン帝国に導入したらどうだろう。情実なしの実力主義、行政成果により昇格もあれば降格もある。


  ゴロタは、カノッサダレスさんに相談した。力を貸して欲しいと。カノッサダレスさんは、未だこの新タイタン帝国北部領が安定していないので、直ぐには難しいが、今年の秋の収穫が終わったら、考えても良いと言ってくれた。その際、上級認証官同期で優秀な者を数名連れて行くと言うのだ。


  それまでは、国の形を大幅に変えないようにとお願いされた。理由を尋ねると、国の制度を変えるのは、結局、人の心を変えることであり、事を急いては、恨みを買い国が纏まらなくなると言った。


  ゴロタは、本当に目から鱗が落ちた。この人は、こんな辺境ではなく、国の中心で力を奮って貰いたい。


  エーデルが、皆に飲まされたせいか、かなり酔ってきた。フラフラしている。あの格好で転んだら、絶対にパンツが丸見えだ。ゴロタは、エーデルが酔った事を口実に、ホテルに戻った。


  エーデルをお風呂に入れて、寝巻きを着せ、ベッドに運ぶ。その感、ベタベタとキスをしてくるが、構わずベッドに潜らせた。昔を思い出す。その夜は、エーデルの思っているような事もなく眠ったが、翌朝、2回も求められてしまった。


  1週間に1度、タイタン帝国の憲法制定審議会が開催される。その際、カノッサダレスさんとコリンダーツさんも同席させた。


  ゴロタのシンクタンク、つまりシルフが草案を書き上げていたが、それは内緒にしていた。


  「最初に皆さんに伝えておきます。この国の有り様は、開かれた立憲君主制です。国権の最高機関は皇帝ですが、その統治は、国民が選んだ代表達の助言と承認により為されます。勿論、最終決定は、皇帝ですが、そこに至るまでは広く皆さんの意見を聞くことにします。行政、司法はそれぞれの長があ責任を持って執行してください。後、地方自治を尊重します。すべてを皇帝が決めることはしません。」


  「それと、今までの僕の行動基準は単純でした。弱い者、特に女性と子供を虐待したり犠牲にすることは絶対に許しません。専制と隷従を許しません。不公平を許しません。飢餓と病気を憎みます。僕が、この国を治めている間は、飢饉は無縁です。約束します。」


  「全ては、法と正義の名の下に、最大人数に与えられるだけの幸福を与えます。貧しくても生きる喜びのある毎日を約束します。国民のための政府であって、皇帝のための政府であってはなりません。」


  「皆さんには、苦難を強いると思います。でも、その苦難は、国民のために耐えて下さい。国民ファスト、国民のための国民による国民の政治、それを補助するのが皇帝の役目と考えています。」


  全て、シルフが考え、シルフが吹き込んだ音声だ。小さなゲートを喉に開け、遠隔操作で音声再生している。ゴロタは、下を向いてぶつぶつしているだけだった。ワイマーさん、ごめんなさい。


  皆、涙ぐんでいた。カノッサダレスさんやコリンダーツさんまでだ。ゴロタが、このように喋ったのは初めて聞いたのだ。本当は、違うのだけれど、そこは黙っている。


  ワイマーさんが、泣きながら、


  「陛下、お考えはよく分かりました。今のお言葉を詔勅にしていただけませんでしょうか。」


  次回の審議会までに作成して持ってくることを約束した。後は、黙って、皆の意見を聞く。シルフが、法案の矛盾点について質問をする。誰も答えられない。シルフが、対応策を教示する。このようにして、タイタン帝国憲法の草案が出来上がって来た。


(2月15日です。)

  今日、タイタン市の文化劇場で、ヘンデル王国王都で有名な歌手『マリア・クルス』と天才と名高いピアニストが来た。1枚銀貨一枚もするのに、即日完備したらしい。ゴロタは興味がなかったが、前座でジェリーちゃんの伴奏でミキさんが歌うらしい。そのために、毎日遅くまで練習していた。


  曲は、『早春賦』という曲らしい。ゴロタは、よく知らないが、太古からある有名な曲らしい。


  夕方6時開園なのに、4時には長蛇の列ができていた。ゴロタは、公爵用馬なし馬車で、正面の階段下に直付けした。今日、公演する歌手『マリア・クルス』とピアニストの挨拶を受けるためだ。


  二人とも緊張していたが、一緒に来たシェルが、緊張する必要がないとニッコリ微笑んだ。超絶美少女の笑顔だ。二人は、漸くリラックスできたようだ。


  お茶を飲みながら雑談をする。今日の演目についてだ。ゴロタは知らなかったが、太古の昔からあるオペラらしい。オペラも良く知らないが、この中年の太った女性の声は、天使も逃げ出すほどの声らしい。楽しみだ。


  また、演奏するピアニストも、ピアノの魔術師と呼ばれるほどの腕前で超絶技巧の難しい曲を披露する予定だそうだ。これも、楽しみだ。


  前座が始まる時間だ。ゴロタとシェルが貴賓席に行こうとすると、二人も同行すると言う。反対する理由もないので、一緒に行って貴賓席に座る。


  ジェリーちゃんの演奏が始まった。ジェリーちゃんは、ピンクのロングドレス。ミキさんはスカイブルーのロングドレスだ。


  ♪春は名のみの 風の寒さや

  ♪谷のうぐいす 歌は思えど

  ♪時にあらずと 声もたてず

  ♪時にあらずと 声もたてず


  綺麗な声だ。心に染みてくる。決して叫んでなどいないのに、離れた場所にある貴賓席まで歌が飛び込んでくる。胸が切なく締め付けられる。


  マリア・クルスが、口を開けたままになってしまった。涙が溢れても、拭おうともしない。


  「あの子は誰?何故、こんなところに?」


  こんな所で悪かったねと思ったが黙っていた。シェルが説明していたが、上の空だ。


  驚いたことに、マリアが今日の公演は嫌だと言い始めた。あの子の後では、歌えないそうだ。それでは困るので、急遽、ジルちゃん達が招集されて歌うことになった。


  たった5人なのに、『TIT48』と言うユニット名だそうだ。これも、シルフの発案らしい。


  ジルちゃんがセンターだ。ブリちゃんとデビちゃんが、その両隣。キキちゃんとドミノちゃんが両端だ。ジェリーちゃんが、テンポ良くピアノを弾き始める。


  ♪みどりのそよ風 いい日だね

  ♪ちょうちょもひらひら 豆のはな

  ♪七色畑なないろばたけに 妹の

  ♪つまみ菜摘む手が かわいいな


  皆、タイタン学院の制服を着ているが、踊りでクルクル回っていると、スカートが膨れ上がり、パンツが見えそうだ。ドミノちゃんは、完全に見えている。


  若い男の子達が、ステージ前に立って腕を振っている。手には、赤や青に光る棒を持っている。シルフが、1本、大銅貨2枚で売っているのだ。


  大盛り上がりの後、マリアと天才ピアニストのステージだった。可哀想なくらい、盛り上がらなかった。拍手もまばらだ。


   会場を出たところで、ジルちゃん達が自分達の写真を売っている。シルフがデータ処理した画像をカラー印刷機でプリントしたらしい。


  プリンターは、原理は簡単だが、データ処理が難しいので、この世界では、後100 年はかかるはずなのに、なんてチートだ。


  握手権付きの写真は、1枚大銅貨3枚と高額だが、行列が出来ている。1番長い列は、キキちゃんだった。


  ああ、シルフったら。


  

クレスタさんは、やはりエッチでした。

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