第339話 タイタン帝国の野望
帝国の皇帝となったゴロタには、どんな野望があるのでしょうか?
(1月24日です。)
タイタン帝国も、漸く落ち着きを取り戻して来た。官僚制度は変わらないが、ネチス党の制服や腕章をする者は居なくなった。
元ネチス党員を公職から追放したため、公務員数が、ほぼ半分になった。行政庁や司法庁は、ある程度の人数がいないと業務が出来ないので、公営のお土産物屋やレストランなどを閉鎖して、人員を集約した。それに耐えられない者は、やめて貰う。慣例の退職金割増は、当然廃止した。
閉鎖した店は、民間に売却した。当然、入札だ。最低入札価格を決め、応札できなければ、その時点で更地にする。これで、ワザと入札不調にしての買い叩きを防いだ。
4月からの新規採用は、取りやめるか、半年間の延期にした。退職予定者を、嘱託として再雇用するのだ。当然、給料は半分以下だ。
公務員の組合代表という人が面会に来た。労働者が何とかと言っていたが、『威嚇』で黙らせ帰って貰った。
ワイマーさんに、人員は減らすが行政サービスと治安の質は落とさないようにお願いした。ワイマーさんには、行政庁長官代行をお願いした。憲法改正と即位が終了すれば、各県の知事選挙だ。その結果、行政庁長官と司法庁長官が選ばれる予定だ。それまでは、其々の長は代行にお願いしている。そう言えば、司法部総合統括官はネチス党員だったので、やめて貰い、法務部次官が長官代行を務めている。
共和国は、累積赤字が大金貨60万枚、国家予算の5年分を超えているそうだ。国債償還の際の金利負担も馬鹿にできない。
シルフが、南の山脈に面白い地形があると言う。早速、『ゼロ』で行ってみる。そこは、地肌が見える荒れ山だが、所々黒っぽい岩石が見える。調べて見たところ銀鉱石だった。ということは、金の採掘も可能性がある。
鉱山の採掘権を競売にかけることにした。採掘された金と銀は公定価格の8割で全量買取だ。そこは、公務員の仕事だった。
金貨・銀貨に鋳造して莫大な利益が見込める。埋蔵量は、推定だが金で24万トン、国家予算の50年分だ。それに銀とミスリル銀があるので、かなりの応札額になるだろう。
入札は、早急に行う事にした。これは、国外の者も入札できるようにする。グレーテル王国、ヘンデル帝国、エルフ大公国、中央フェニック帝国それにカーマン王国にも臨時入札所を設ける予定だ。
あと、メディテレン海沿岸部の地下に原油が埋蔵されている可能性があるそうだ。これは、現在、中央フェニック帝国南部領、今はタイタン帝国フェニック南部領と言うが、その西部で採掘施設と精製プラント建設が順調に行って、それ以上の需要があったら開発すれば良い。
そのあと、バンブー・セントラル建設に行って、新宮殿の構想いわゆる基本設計の元となるコンセプトの打ち合わせを本社で行った。
バンブーさんは、タイタン帝国に本社を移したいそうで、今、本社ビル建設候補地を探しているそうだ。それは、ゴロタがとやかく言うことでは無いので放っておく事にした。
新宮殿は、『タイタン・パレス』と言い、大理石を積み上げて作るが、鉄骨及び鉄筋コンクリートで補強したものにする。城壁は、高さ5mで、周囲は深さ10m以上、幅20m以上の濠で囲まれている。正門の出入口には、跳ね上げ式の橋と、鋼鉄製の門扉を設置し、馬車4台分、幅20m以上とすること。
宮殿本丸は、地下1階地上5階建てで、南北に100m以上、東西に100m以上の大きさにして、中庭を広く取って貰う。『タイタニック号』が10機は駐機できる位の広さが有ればいいだろう。
正門を入って直ぐに大広間があるのは、他の王国、帝国と同じだが、屋上にも屋根付きのレセプション会場を作ってもらう。シルフが、ビヤガーデンと言うものを作るらしい。そこで花火を見たり、幻灯芝居を見るそうだ。あと、地対空ミサイルを設置するので、屋上と言うか屋根の強度は、通常の5倍ほど必要だそうだ。
城の4隅には物見塔屋を作るが、地上高80m以上とするらしい。あのネチス党本部の10階建でさえ、40m程度だったのだから、世界1の高さだろう。地震でも倒れない構造をシルフが考えているらしい。四角く組んだ鉄骨を組み上げて接合するらしいのだ。ラーメンという和の国発祥の食べ物と関係があるらしい。そのため、塔屋部分は石積みではなく鉄骨とコンクリートの八角形にして、外壁材を大理石にするらしい。
大理石は、ゴルゴンゾーラ市から200キロ程離れた山から採石するので、簡易で良いから鉄道を敷いて貰いたいそうだ。
宮殿の中に置く家具や調度品も発注しなければならない。バンブーさんに、濠は自分で作るから、城壁をしっかり作って貰うようお願いした。城壁は、東西800m、南北に2キロの長細いものになるそうだ。正門を入ってから、宮殿の玄関まで1キロだそうだ。
タイタン市のように何も無いところに新たに作るわけでも無いので、かなりの難工事が予想される。工事期間は、鉄道建設を除いても2年は欲しいそうだ。
費用は、まるで見当が付かないらしい。パーツパーツで要応談となった。もう、現地測量と仮設鉄道の敷設準備に入っているらしい。また、本社作業場と現地のゲートを開設しなければならない。
今日は、これからシズちゃんと和の国に行く。オーサカというところのコナモンという食べ物が美味しいらしいのだ。シズちゃん、そういう情報はどこで入手するのですか。
行ってみて吃驚した。凄い人の数だ。街の中に運河が張り巡らされ、橋が多い。最も人通りの多い橋の上で、両手を上げて片足で立っている人達が大勢いる。何をしているのか聞くと、大きな看板の真似をしているらしい。何が面白いのか、分からない。
コナモンというのを食べてみた。『サクラ』と言う変わった名前の店だ。食べてみたが、具材はありふれたものだった。鉄板で焼くのだが、上からかけるソースが絶品だった。これは真似できない味だ。作り方を教えてもらおうとしたが、秘伝だと言われた。
シズちゃんは、最近、料理をノエルに習っているらしい。それに、胸も膨らんできた。ハーフエルフは、エルフよりも生育が早いようだ。
いつ、母親になってもちゃんと育てられるように練習しているのだ。そう言えば、クレスタが妊娠して以来、避妊処理はしていないが、誰も妊娠しない。シェルなら、妊娠しないことも納得出来るが、他はどうなのだろうか。これだけ領地が広がったのだ。ある程度、子供を作らないと、ゴロタがいなくなってからが心配だ。まあ、ゴロタよりも長生きしそうな子は、シェルとの間に出来るはずの子以外にいないかも知れないが。
タイタン帝国は、名前ばかりで、実質は共和国時代と何も変わらない。皇帝つまりゴロタ達の住む所もなければ、年貢や税収も借金返済に消えてしまう。ネチス党は、金銭的には身綺麗だったため、党本部以外財産らしい財産もない。その唯一の財産も跡形もなく消してしまったのだ。
共和国の国家維持にかかる経費は膨大だ。グレーテル王国のタイタン領の予算は、王室への上納を入れても、年間大金貨2500枚程度なのに、共和国では、丸の数が違う。無駄な経費が多すぎるのだ。
それでは、国民が豊かで満足のいく生活をしているかと言うと、決してそういう訳ではない。
学校だって、人口当たりで計算すれば、タイタン領の方が多いくらいだ。しかし教師の数ときたら、タイタン領の平均的な学校に比べて3倍近くいる。
治癒院もそうだ。薬局も、全て公設で、病院の診断を受けてから、また長い時間を待たされる。一番驚いたのは、病院と薬代が無料なのだ。また、公務員は、病院に行くと、その日は勤務しなくても良い事になっている。聞いているだけで、頭が痛くなってくる。
ワイマー宰相が変なことを言っていた。宮殿建設の労働者達を採用しなければならないので、試験日をいつにするか聞いてきたのだ。
目が点になってしまった。慣例により、公共工事に従事するものは、臨時の公務員として採用するそうだ。そうすると、公務員住宅にも住めるし、公務員としての給与や処遇も適用できるそうなのだ。
ゴロタは、今回の宮殿建設には、国家予算は鉄貨1枚も使わないので、公共工事ではないし、もし公共工事だとしても、作業員は公務員としては採用しない。それで嫌ならば結構、グレーテル王国やヘンデル帝国、フェニック帝国には労働力は幾らでも有るので、工事に参加しなくても良いと言った。
宰相は、困ってしまって、実は、既に申し込みが殺到しているそうなのだ。そんな好条件なら殺到するだろう。兎に角、工事が始まるのは、今秋以降になるので、それまでは募集などしないと言った。次の発言にゴロタは、大火球を爆発させたくなった。
「それまでは、その者達はどうやって生活していけば良いのでしょうか?」
知るか。ワイマーさんは、優秀な官吏で、皆の信頼も厚い。しかし、長年、官吏を続けてきたせいか、世界の常識がここでは通用しない。
まずワイマーさんを鍛え直さなければならない。明日から、暫く西タイタン領タイタン市の行政庁に、実務研修に行って貰う事にした。
ワイマーさん、お願いだから常識というものを身に付けて下さい。それがゴロタのささやかな野望だった。
ああ、いつもこんなのですみません。タイトルだけで内容を期待しないでください。なんせラブコメですから。