第337話 敗戦の痛手
今回は、ゴロタ軍のネチス殲滅作戦遂行です。チート過ぎます。
(1月20日です。)
ゴーダー共和国の首都ゴルゴンゾーラ市にあるネチス本部の総統大会議議室では、ロンマル将軍が、今回の戦闘状況について説明していた。
最上席にはネオ血の盟約推進党アドルフ・ムソリラー総統が座っている。
右翼には、ゾリンゲン親衛隊長以下、近衛師団長、第1~第9方面統括軍司令官や軍関係閣僚が座っている。
左翼には、ワイマー行政部最高統括官を始め行政各部の担当長官が座っている。
「では、その空飛ぶ乗り物と、新型爆弾1発で、部隊は壊滅したのか。」
「はい、部隊の指揮が取れなくなってしまいました。」
「で、戦死者は何名だ?」
「戦死者はおりません。」
ゾリンゲン親衛隊長が、声をあげる。
「何と、ロンマル将軍は戦わずして逃げ帰ってきたのですか?」
ロンマル将軍は、キッとゾリンゲン親衛隊長をにらんだ後、
「私は、総統閣下に説明しているのです。無許可発言は、ご遠慮願おう。」
「ゾリンゲンは、黙っていよ。で、ロンマル将軍、敵は何者だったのだ?」
「はい、あの『殲滅の死神』と呼ばれるゴロタ公爵です。」
会議室に、恐怖と言う冷たい空気が流れ込み、皆、黙り込んでしまった。
あらゆる武器の攻撃が効かず、1撃で数万の将兵が殲滅されると言う地獄の使徒。街を消滅させる大火球を操ることができる魔王。噂は、いくらでも入ってくる。
「そ、そのゴロタ公爵が、空飛ぶ乗り物に乗って、新型爆弾を落としたのか。」
「はい、爆弾の後には直径50m、深さ20mの大穴が空いておりました。我が国の飛翔弾とは比べようの無い威力です。」
「この前、我が国の上空を飛び回った銀色の物体、あれもゴロタ公爵のものか?」
「恐らくは、そうだと思われます。」
「我が国の特殊飛翔弾で撃墜できんのか?」
「あまりにも早いし、元々、そのような目的で作られておりません。」
「ところで、シュタイン博士はどうした。いないようじゃが。」
「はい、ゴロタ公爵とともに行ってしまわれました。」
「なんじゃと、彼は我が国の宝。頭脳じゃぞ。みすみす拉致されたのか?」
「いえ、彼自らが、希望して行ってしまわれたのです。」
「本当か?何故、阻止しなかった?」
「ゴロタ公爵がそばにいたので、手出しはできませんでした。」
もう、この戦争、敗けが決定したようなものだ。部隊の士気が低下し、挽回をするための切り札も相手に取られた。勝てる気がしない。ムソリラー総統は、気を取り直して聞いた。
「ゲッペル民族浄化長官、獣人達の処理状況はどうじゃ。」
総統に呼び掛けられた片眼鏡をかけた小太りの男が、
「はい、順調です。現在、あの『嘆きの谷』では、新ガス室の運用が始められており、1日に1000匹の獣どもを浄化しております。」
ワイマー宰相は不安だった。このこと、浄化という名の虐殺が、少年のように正義感の強いゴロタ公爵殿にバレれば、この部屋にいる全員が生きていられない。いや、それに加担し、黙認していた国民も只ではすまないだろう。
「よし、早く処理をして、谷を埋めてしまうのじゃ。証拠を残すな。証人もじゃ。」
皆、その指示の意味を悟った。証人、つまり浄化作業に従事した人間も証人だ。何百人と言う人間が、その作業に従事している。
ワイマー宰相は、共和国が崩壊する日が近い気がしてならなかった。
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タイタン市の領主館では、シルフが衛星画像を壁に投影していた。ゴーダー共和国の『嘆きの谷』の状況を説明している。
「この建物が、収容者の居住棟なのですが、男女、子供に分けられています。最大収容人員は3000人程度と思われます。また、早朝、1000人程度が、この建物の中に入っていくのですが、出てきた者はいません。」
「どこに、行っているんだ。」
「この画像では、建物の裏口から大型バケットが搬出されています。この中の物が、遺体の可能性があります。」
「その遺体は?」
「谷の底にある坑道の中に運び込まれているようです。」
「この谷には、何人くらい収容されているの?」
「多いときで、1日に200人位、少ないときでも50人以上運び込まれています。」
もう、猶予はない。ゴロタは、シェル達を動員して、戦術会議だ。敵の殲滅要員はエーデルにシズちゃん、ビラ、ジェーンだ。救護要員は、ノエル、フランちゃん、フミさんだ。
皆、夏用の飛行服を着ている。ヘルメットも、飛行服に会わせて色を塗っている。
皆で『タイタニック号』に乗り込む。爆弾も満載だ。時速1200キロで南東に向かう。目的地は、『嘆きの谷』だ。2時間30分後、『嘆きの谷』上空に到達する。建物から、ネチス党の制服を来た兵士たちが火縄銃を持って飛び出してくる。しきりに撃って来るのが見えるが、300m上空まで到達するのがやっとのようだ。
シルフが、処刑棟の中を探知する。イフちゃんにもお願いする。収容された獣人はいないようだ。心おきなく500キロ爆弾2発をお見舞いする。煉瓦作りの建物は、瞬間に、瓦礫の山になってしまう。
何人かの兵隊が巻き添えになっているが、全く気にしない。
谷底の広場に垂直着陸した。兵士達は、全員、武器を捨てて投降している。塀際に、後ろ向きに整列させた。
シェル達、救護要員が収容棟の方に走り込んでいく。扉を開けたら、痩せこけた獣人達が出てきた。可哀想なのは子供達だった。目だけがギョロギョロしていて、身体はあばら骨が浮き出ていて、妙にお腹が膨れている。手足は、枯れ枝のようだった。女達は、皆、下半身に何も履いていなかった。
イフクロークから、既に仕込んでいたミルク粥を取り出して並べる。フランちゃんが、症状を診ている。トリアージと言うらしい。危ない子には、簡易ベッドに寝かせ、ブドウ糖の点滴だ。全て、シルフが職人達に作らせた物だ。
シズちゃん達が、倉庫から女性の下着とスカートを持ってきた。女性達が群がって、履き始める。ゴロタは、シェルに後ろを向いているように指示されたので、塀の出口の方を見ていた。
後ろの方で、男の叫び声が聞こえた。何かと思ったら、一人の女性が、捨てられた武器の中から剣を拾って、一人の兵士に切りつけていた。エーデルが、レイピアを抜いて、兵士が反撃しないように見張っている。その女性は。一人の兵士の股間に何度も剣を突き刺していた。きっと、あの兵士に女性特有の辱しめを受けたのだろう。
それを見ていた他の獣人達も思い思いに武器を拾い上げ、兵士達を殺し始めた。ゴロタ達は、止める気は更々無かった。全ての兵士が惨殺された。逃げようとした兵士は、エーデルに両足首を刺され、その場で転倒したところを、男性器を切り取られ、口を割かれ、舌を抜かれて死んだ。ある兵士は、後ろの穴に棒をねじ込まれたまま吊るされた。
その様子を見ているだけで、この獣人達がどのような目に遭ってきたか分かった。衛星画像で確認していた坑道に行ってみる。木の粗末な扉で閉められている。中から、強い死臭が漏れ出てくる。扉を吹き飛ばす。
中を覗くと、おびただしい数の獣人の遺体が積み重ねられていた。数は分からない。これ以上は、どうしようもない。
ゴロタは、獣人の男達の中で、中心的な人物を聞いたら、元県知事と言う人がいた。その人に、後のことを任せることにした。兵士達の残した食料も豊富にあるようなので、大丈夫だろう。
フランちゃん、フミさんと、応急措置が必要な子達をタイタン市の治癒院に転移させてから、首都ゴルゴンゾーラ市に向かう。目標は、ネチス党本部だ。
30分もせずに、目的地上空だ。上空で、拡声器により、党本部から避難するように呼び掛ける。チラシも100枚ほど撒いた。市民達が拾って読んで、慌てて避難し始める様子が見える。党本部からも、バラバラと人が出てくる。
15時丁度、『タイタニック号』の主翼下に搭載した250キロ爆弾4発を投下した。
ズドドドドーン!!
10階建ての党本部は、コンクリの瓦礫になってしまった。『タイタニック号』が、脇の広場に着陸した。周りを、ネチス党親衛隊の兵士が取り囲んでいる。ゴロタが、空間転移で機外に出る。シェル達は、機内で待機だ。火縄銃程度では、ミスリルで装甲された機体は傷一つ付かない。ゴロタに対して集中攻撃が浴びせられる。『蒼き盾』が、全ての銃弾を無効化する。
ゴロタは、指鉄砲を連射モードで打ち続ける。連射モードといえ、威力は全く落ちない。頭に当たれば、首から上はなくなってしまう。肩に当たれば、上半身の大部分が消失する。シルフが、「マグナム44」並みだと言うレベルだ。良く分からないが。ゴロタの左手の人差し指から、次々と飛び出す青白い光を見た兵士は、次の瞬間には、命を落としていた。辺りは、死体の山となってしまった。部隊の後ろで、偉そうな男が腰を抜かしている。
ゴロタは、男の額に人差し指を押し当てながら、
「総統はどこだ?」
男は、瓦礫の山を指した。きっと、逃げ出さなかったのだろう。シルフが、生命反応がないと教えてくれた。まあ、この瓦礫の状態で、中から人が出てきたらゾンビだ。
「あなたの名前は?」
「儂は、ゾリンゲン親衛隊長だ。」
「僕は、ゴロタ。」
ゴロタは、指鉄砲で頭を吹き飛ばした。ゴロタは、ネチス党の幹部を助けるつもりは更々無かった。一般党員だって、ゴロタに攻撃してくれば、必ず殲滅するつもりだ。
本当は、この街を市民ごと消滅させたかったが、それは我慢することにした。辺りには、死体しかなかった。
火縄銃とB2爆撃機の戦いでは勝負になりません。
最近、PV数が上がってきています。ありがとうございます。こんな、まとまりの無いお話を読んでいただき、感謝しております。
お話が、国の運営とか、産業開発に片寄ってきました。反省しています。貧しい女の子が、切なくなるような恋をするのが好きなんですが、これ以上は女の子を増やせないし。