表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅き剣と蒼き盾の物語(コミュ障魔王と残念エルフの救世サーガ)  作者: 困ったちゃん
第33章 ゴーダー共和国が消滅する日
335/753

第333話 絶対にやってはいけない事

ゴーダー共和国は、まだゴロタの存在に気がついていません。

(12月20日です。)

  ゴーダー共和国の首都ゴルゴンゾーラ市にあるネチス本部の大会議室では、閣僚級文官、武官全員が全員集まっていた。


  最上席には『ネオ血の盟約推進党』、略して『ネチス』の党首で、現在は総統と呼ばれているアドルフ・ムソリラーが座っている。


  ムソリラー総統の右側には軍関係閣僚が座り、左側には、行政長官ら文官が座っている。


  右側最上席のゾリンゲン親衛隊長が、情勢を説明している。先遣隊が打ち込んだ特殊飛翔弾が、素晴らしい成果を挙げたが、謎の光の反撃を受け、死者3名が出た事。それよりも神の怒りを恐れ、部隊の士気が落ちている事。今後の戦況等について説明していた。


  ムリソラー総統は、目を瞑って黙って聞いていた。今、この共和国は1神教であるミカエル教を広めようとしている。これは、国境を接している聖ゼロス教大司教国を攻める口実にするために、良い加減に作った宗教だ。しかし、国民のほとんどは、今までの4大聖教への信仰を捨てていないのも事実だ。当たり前だ。教義も聖典も大僧正も、皆、捏造したのだから。信仰しろという方が無理なのだ。


  先遣隊の目的は、相手の都市の殲滅では無い。大司教国を攻めても、天罰など無く、神の怒りなどと言う嘘っぱちを証明するためだった。しかし、謎の光で大ダメージを食ってしまった。随行の視察官からの報告では、300m以上の大きな円状に地面が無くなってしまったらしい。


  直撃ではなかったが、爆風や熱波で甚大な被害が生じてしまった。あの鋼鉄製の車両がひしゃげてしまったのだ。


  本当に、神の怒りだとしたら、まずい、非常にまずい。この国がなくなってしまう。魔法と魔物がある世界だ。神がいない訳がない。


  ムリソラー総統は、そのような心の中の思いを表に出さず、平静を装って、文官の末席に座っているボサボサ頭の男に問い掛けた。


  「シュタイン博士、博士はこの事態をどう見ますか?」


  「儂には分からん。現在、我が国の『ユンカー2号』が、世界最強の武器であることは間違い無い。それと兵士全員が持っている突撃銃、その威力は50m先の敵を倒せるのですぞ。絶対に負ける訳がない。ただ、その光の正体がわかるまでは、大司教国を攻めるのは控えた方が良いと思われますな。」


  この意見に、総統をはじめ、全員が安堵のため息を付いた。皆、神を畏れる者だったのだ。古代から神の怒りにより人類は何度も滅亡の危機を迎えて来た。あの『災厄の神』がいい例だ。四大聖教は、『災厄の神』よりも上位神とされている。その神がお怒りになったら、と思うと不安でいたたまれなくなってしまうのだ。


  しかしシュタインの、絶対に負けない武器の威力を見せつけられては、戦略的に正しい大司教国への攻撃を選択せざるを得なかったのだ。


  シュタインは天才だった。花火程度にしか役に立たなかった火薬に、武器としての価値を与えてくれた。グレーテル王国のジェット推進船を見て、ジェットタービンと特殊飛翔弾『ユンカー2号』を考案した。


  今、研究して貰っているのは大型の火縄銃だ。『ユンカー2号』は、多勢の魔導師を消耗してしまうので、速射が出来ない。それに、目前の敵に対しては無力だった。


  それで、射程200m位の炸裂弾発射銃を研究してもらっている。土魔法で鉄を生成することは、昔からできていたが、大きな鉄製の構造物や複雑なものに作り替えることも、シュタインが、土魔法師を使って完成させた技だ。我国独自の技術だろう。


  皆は、シュタインの機嫌を損ねないようにして、上手くその能力を発揮してもらおうと考えていた。


  「となると、海を渡ってカーマン王国を北から攻めるか、森を抜けて南から攻めるかですが、海上輸送手段がほとんど無い我が国としては、南から西進した方が良いものと考えます。」


  ゾリンゲン隊長が断言した。誰も、戦争を回避しようとは言わない。元々は、全てを合議制で決めていく体制の国だった。自分が意見を言わなくても、いつの間にか物事が決まっていく国だ。戦争に走り始めると、止める者はいなかった。


  こうして中央フェニック帝国南部タイタン領への侵攻が決定された。


  当然、中央フェニック帝国の南部が、既にゴロタの領地になっている事は、誰も知らなかったのである。


  進軍は、年が明けた1月10日にした。召集していた兵士達は、正月休みで、一旦実家に戻すことにしたのだ。


-----/----------/----------/-----


  ゴロタは、かなり忙しかった。聖ゼロス教大司教國への攻撃が、あの1発だけだったことは、イチローさん達から聞いていた。また、来年1月10日に、侵攻を開始することも把握済みである。


  基本的には、国同士の戦争に介入するつもりはない。ゼロス教大司教國は、独自の防衛隊である聖騎士団を保有しているし、今、世界中の聖騎士達を召集中である。


  先日の攻撃に対する報復は、ゴロタが実施してしまったようだ。


  ゴロタは、シルフに共和国の動静を偵察させることにして、一旦、タイタン市に戻ることにした。内偵は、すでにゴロタが把握した以上の情報もないだろうから、ダーツ大佐には打ち切りを指示した。


  もう直ぐ聖夜だ。今回の聖夜は、クレスタがいないので、特別のイベントがないと思ったら、去年から予約されている人がいるので、何もしないと言うことはできないそうだ。


  シルフが、変な物を作っていた。プラスチック樹脂で作った人形だ。モデルは、当然ゴロタだった。高校生チームが、色を塗っていた。1体、大銅貨2枚のお駄賃で喜んで請負ったらしい。彼女達には、月に金貨1枚を渡しているが、全てシェルが管理しているので、平素は小銭しか持ち歩いていない。纏ったお金を制限なく使えるのは魅力らしい。


  これを、ケーキに付けて銀貨2枚で売る。ゴロタとの握手券付きは銀貨3枚だ。


  握手だけで銀貨1枚は高いと思うが、握手券付きの方から、先に売れているらしい。


  今度の聖夜は、ハグが50名、握手が100名だ。勿論、ハグの人たちにもフィギュアは付けてあげる。


  原価は、塗り代の大銅貨2枚と包装代銅貨3枚だ。ケーキだって、銅貨40枚程度だ。


  ボッタとは思うが、クレスタとシルフの考えたことだ。混乱が起きないことを、祈るばかりだった。


  聖夜の朝、いつものように七面鳥を捕まえに行く。タイタン市の人口が増えたせいで、七面鳥の相場が上がっている。買取価格は、1羽銀貨1枚だ。冒険者達の目の色が変わっている。


  ゴロタは、皆が向かう北の森には行かず、中央フェニック帝国の南部タイタン領の東側の森に入る。ここは南半球なので蒸し暑いくらいだ。しかし聖夜に変わりない。


  探し回ったら、物凄い大音響がした。何かと思ったら、七面鳥が一斉に鳴き始めたのだ。いた。物凄い数だ。ゴロタは、『威嚇』を使って70羽位を木から落とした。まだ生きているが、そのままイフクロークに入れる。


  タイタン市の屋敷に戻って処理だ。大きな鍋にお湯を一杯に沸かす。鍋の両端には、電極が取り受けらていて、200Vの電流が流れている。七面鳥は、水面に浸かった途端、気を失ってしまう。そのまま即死するか、溺死するだろう。暫くお湯につけて、七面鳥を取り出し、首を落として血抜きだ。血が滴らなくなったら、メイドさん達が総出で羽根むしりだ。最後は、ローストしてしまうのだが、ピンセットで丁寧に剥いている。お腹を切って、ハラワタを出し、中に野菜を詰め込む。下拵えは、ノエルがやってくれた。


  大きなロースターを作り、次々と処理の終わった七面鳥を入れる。火の加減は、いつもの通りイフちゃんだ。上下左右満遍なく火を回している。昼には、全て焼き上がった。


  ゴロタは、クリスマスケーキ70個を出した。クレスタの店で、1か月以上も前に作って貰って、イフクロークに収納しておいたのだ。


  女性陣とメイドさん達が着替えてきた。真っ赤なコートにミニスカートそれに帽子だ。白いモフモフが縁取られている。シルフまで、同じ格好だ。ブーツまで同じ仕様で作られている。シルフが、地球のサンタクロースと言っていたが、何を言っているのか分からなかった。


  彼女達には、タイタン領内全ての孤児院、救護院それに小さな村の教会に慰問に行ってもらう。ゴロタは、ゲートを開くだけだ。


  全ての慰問先のゲートを開けたら、後はシルフに任せることにした。ゲートを閉じるだけなら、シルフでも出来るはずだ。



  ゴロタは、タイタン市の中心街にあるクレスタの店に行く。広場には、物凄く大きなモミの木が立てられており、不思議な光を点滅させていた。


  『これは、LEDチップです。ガラスケースが間に合わなかったので、剥き出しです。』


  なんだか分からなかったが、綺麗だから良いかと、深く考えるのはやめた。


  そのモミの木の周りから、クレスタの店の前まで、長い行列が出来ていた。あれ、確か150人だけと聞いていたが、随分、多いような気がする。聞くと、フィギュア付きの券はそうだが、その他に、フィギュアなしのハグ付きと握手付きが300人いるそうだ。


  衛士隊と騎士団が総出で整理しているが、寒空の中、パンツが見えそうなミニスカの女性達に何も出来るわけもなく、ただ立っているだけだ。


  驚いたことに、店の前にゴロタそっくりのゴーレムが立っている。


  『ようこそ。可愛いあなた。僕を可愛がってね。』


  どう聞いても、ゴロタの声だ。いつの間に作ったんだろう。はっきり言って気持ち悪い。余りにも似過ぎている。


  しかし、女性客達は、容赦がない。手を握る。抱きつく。キスをする。股間に手を入れる。もう、何でも有りだ。可哀想に、ゴロタ人形は、表に出して、30分で動かなくなってしまった。


  ああ、店の中に入ってからが怖い。もう、人形でスイッチが入ってしまった女性達は、目をギラギラさせてゴロタに迫ってくる。クレスタさん、あなた、絶対にやってはいけない事をやってしまいましたね。

すみません。いつも、皆さんの期待を裏切ってしまって。ゴロタに対して絶対にやってはいけないことは、シェルを傷つけることです。国が無くなります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ