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紅き剣と蒼き盾の物語(コミュ障魔王と残念エルフの救世サーガ)  作者: 困ったちゃん
第33章 ゴーダー共和国が消滅する日
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第332話 ネチス党が支配する街

どこの国でも少数民族は、迫害されてしまいます。

(12月15日です。)

  市の中心部から少し外れたところに、ネチス党本部があった。政党本部という物を見たことがないゴロタだったが、この建物の異様さは直ぐに分かった。


  建物は、継ぎ目のない石作りで、真っ黒に塗られている。外観もそうだが、もっと異様なのは高さだ。なんと10階建てだ。何処の王国や帝国でも最高で5階建てだ。それ以上だと、石積みや煉瓦作りでも、地震や台風で崩れてしまうのだ。


  『コレは、鉄筋コンクリート作りですね。製鉄技術が使われています。それに重力魔法使いも関与しています。』


  ゴロタは、この国の建築技術や製鉄技術に違和感を覚えた。皆、タイタン領内で実証されている技術だ。しかし、これほど早く盗まれた技術が実現するのだろうか?


  『鉄筋は、小規模な溶鉱炉でも製造可能です。また、セメントも簡単な装置で製造出来ます。』


  タイタン領内には、未だ5階建ての建物しかない。幾ら技術を盗んでも、それを応用できる者がいなければならない。


  ゴロタは、市内を見て回ったが、特に注意を引く様なものは他になかった。そこで、郊外に集結している軍隊を見に行くことにした。


  軍隊の野営地には、大型のテントが数え切れないほど設営され、将兵が慌ただしく動き回っている。異国の服を着たゴロタを、誰も不審に思わない。『変身』した上に気配を消しているのだ。


  兵士達の装備も変わっていた。通常は、兵種によって装備が違うのだが、彼らは、皆、同じ様な装備なのだ。鉄製の頭だけにかぶる半球形状の兜を被っているだけで、顔は覆っていない。


  身体には、鎧はなく、上着とズボンだけだ。靴は革製の編み上げ靴だ。剣もショートソードだけで、盾も小さなミスリル銀の盾を左腕に付けている。一番変わっているのは、長い鉄の棒を持っている。持ち手には、木製の取っ手が付いている。


  『先込め式の火縄銃です。威力は大したことはありませんが、殺傷能力は十分です。鎧が無いのは、接近戦をするつもりが無いからでしょう。』


  この共和国には、素晴らしい天才がいるか、あの異世界の地球から来た者がいるのかも知れない。


  兵士達に近付くと、魔力を感じる。この感じはシールドだ。腰にぶら下げている革の袋から青い魔法が漏れている。きっと、あの魔石がシールド魔石だ。


  王国や帝国にはにはない技術だ。ゴロタは、必要のない技術だったので、考えもしなかったが、なるほど、うまい手だ。おそらく、魔法技術に習熟した者が考案した者だろう。


  もしかすると、鉄筋や鉄製の箱も錬金魔術で作ったのかも知れない。あの火縄銃もそうだ。ゴロタには、練成魔法があるので、製作は造作も無いが、必要が無いから作らなかった。鉄の筒と火薬など、技術も何もいらないと思っていたのだ。


  後、連行されていった獣人達が心配だ。市民も、良く知らない様だ。この前来た時は、かなりの数の獣人がいたと思ったが、何処へ連れて行かれたのだろう?


  その答えは、直ぐに分かった。緑色の制服を着た衛士達が、犬人を7人程連行しているのに遭遇した。大人の男女と子供が5人だ。親子だろう。赤ん坊を除く全員が手錠をして繋がれている。3歳位の幼児も、子供用の手錠をされていた。


  ゴロタは、胸の奥で、強く燃え上がる物を感じたが、今はその時では無いと、大きく息を吐いて、熱を冷却した。かなり離れて、彼らの後を追跡した。


  本当は、シルフに言えば、衛星で追跡してくれるのだろうが、連行途中の衛士達の仕打ちも気になったので、追跡することにしたのだ。


  衛士達は、市街に出る街道沿いの停車場に止まっている鉄製の馬車に彼らを乗せた。手錠はしたままだ。同じような馬車が、何両も止まっている。全て鎖で繋がれている。先頭は、気動車の様だ。この車列は、馬ではなく、この気動車で進むらしい。


  轟音と共に、煙突から水滴が吹き出してきた。ゴトリと車輪が回転を始める。どうやら風魔法で、水を吹き出し、羽車の様なタービンを回すらしい。


  『原始的なジェット推進ですが、効率は良いみたいです。』


  シルフが、説明してくれた。連結護送車は、道をガタゴト進んでいたが、曲がり角に来た時、一旦停止して、テコで気動車の向きを変えていた。舵輪の技術が無いのだろう。やはり、ジェット推進の技術は、タイタニック2世号から盗んだのに間違いない。


  2時間位、距離にして100キロ位北の、村の向こう側が谷になっている。その谷に降りる手前に、大きな倉庫の様な建物があり、連行されてきた獣人達は、その建物に入れられている。


  そこで男女に分けられ、着ている物を全て脱がされるのだ。粗末な下着だけを着せられ、谷に降りて行く。着ているものや持ち物は全て没収されるみたいだ。


  谷の底までは見ることが出来なかったが、僅かに死臭が漂っていた。谷の上には、数キロに渡って鉄条網が張られていた。


  さっきの倉庫の様な建物には、『獣人の皆様、アウシュベルト収容所へようこそ!』と、笑えない看板が掛けられていた。


  ゴロタは、一旦、聖ゼロス教大司教国に戻ることにした。大司教国では、土塁の嵩上げ工事中だったが、一旦中止させ、魔道士全員を集合させた。風魔法と聖魔法の使い手には、シールドの魔力を無属性魔石に込めさせた。最初は、要領が悪く、無駄に魔力を消費していたが、ゴロタが手を取って教えてあげると、かなり上手くできるようになった。それを見た、女性魔道士達が、行列を作ってしまった。後ろの方には、ジェリー大司教まで並んでいる。


  あなた達は、聖職者でしょ。ゴロタは、既に教えた魔道士に対しては無視することにした。


  突然、物凄い音がした。耳をつん裂くような轟音だ。次の瞬間、大聖堂から300m位離れた市街に黒煙が上がった。ロケット攻撃だ。だが、命中精度がこれでは、全く脅威にはならない。しかし、街の施設を壊されてしまうのには我慢ができなかった。


  シルフの探査では、東に60キロの位置から打ち込んできているらしい。ゴロタの位置からは、地平線の向こうなので、『斬撃』は当たらない。


  ゴロタは、近くの兵士からロングソードを借りた。ロングソードを地面に突き立てる。そのロングソードに、力を蓄える。刀身が赤く光ってきた。そのまま、念動で宙に浮かせる。刃体を先にして、敵のいる方角に上昇移動させる。


  どんどん加速させる。加速させる。加速させる。加速させる。


  かなり上空に昇ったので、もう見えないが、音速の7倍は出ているだろう。空気の薄いところなら良いが、落下を始めたら、きっと、刃体は空気との摩擦で真っ赤になってしまうに違いない。


  細かな誘導は、シルフにまかせてしまった。ゴロタは、念動力をシルフが考えたように操作するだけだ。しかし、遠くなると細かな操作はできなくなるようだ。


  ロングソードは、自由落下を始めたようだ。シルフが、測定したところ、目標と600m離れたところに着弾するそうだ。これだけ離れていて、その程度なら上出来だ。


-----/----------/----------/-----


  ゴーダー共和国ネチス防衛軍特殊弾砲兵隊の先遣隊長ニコジョー中尉は、先程発射した特殊弾の消えていった方向をじっと見ていた。


  こんな筒が飛ぶわけないとバカにしていたのだ。指定された地点までは、馬なし馬車で進軍した。物凄く煩いのが難点だが、馬車の3倍の速度で進軍でき、しかも馬と違って休む必要が無い。ただ、魔石に貯めた風魔法が2時間もたないので、現在の風魔法使い達の能力では、1日に8時間程度しか走ることができない。


  部隊は、先遣隊だったので、兵員輸送に1台、輜重輸送に1台それに特殊弾輸送に1台だった。


  現場に到着してからは、まず正しい方角を測定する。六分儀という道具と方位磁石を使う。


  次に、角度だ。水準器で発射台を水平にし、迎角45度が指定されている。特殊弾は、薄い金属で覆われているが、大きさはかなり大きい。


  3人がかりでセットしてから、先端に炸薬を込め、真ん中に水を入れるのだ。炸薬は、分かるが、水が分からない。最後に特大の魔石に、風魔法士達全員で魔力を込めて行く。


  発車地点に到着してから1昼夜が経ってしまった。指定された発射時間は1500だ。よし、発射だ。


  特殊弾の魔力制御弁を塞いだ。後部の推進器から風が流れてくる。水タンクの弁を開ける。後部から、水が霧になって吹き出してくる。勢い良く特殊弾が飛び出していった。


  さあ、撤収だ。魔道士達は、魔力切で、3時間は役に立たない。発射したら、出来る限り現場から離れろと指示されているが、現状では何も出来ない。


  取り敢えず、発射台を分解していたら、上空にキラッと光ったものが見えた。何かなと思って、見ているとこちらの方に向かって落ちてくる。嫌な気がした。早く逃げなければ。そう思っていたところ、その光は、部隊の西500m位の所に落ちた。


  もう、間に合わない。中佐は、大声で『みんな、伏せろ。』


  大きな光の球が膨らんでいく。と同時に、衝撃波と熱風が部隊を襲った。


  車両の陰にいた者は何とか被害を免れた。伏せていた者は、背中や肩に軽い火傷をした程度だった。立ったまま、爆風を受けた者の内、吹き飛ばされた衝撃で、首の骨を折ったり肺を損傷した者3名は、ピクリとも動かなかった。それ以外は、火傷や骨折で動けなくなっているが、致命傷ではなかった。


  空には、500m以上の高さのキノコ雲が立ち昇っていた。


  「今のは、何だ?神の怒りか?」


  無事だった者が集まり、中佐から以後の任務の指示を受けていた。もう車両は使えない。徒歩で戻るしかなかった。中佐の部隊が、首都に戻ったのは、それから1週間後だった。


  部隊は、聖ゼロス教大司教国に攻撃をしたことに怖れを抱き、いつまた神の怒りが、自分たちを襲ってくるのかに恐怖した。


  その恐怖は、すべての部隊に伝播した。実質的な損害よりも精神的な損害を被ったことにより、先遣隊の成果は、ゼロいやマイナスでしかなかった。

この段階で、ゴロタが暴れると、戦争になりません。国が壊滅します。

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