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第330話 ああ、高校1年生。

ゴロタのところには、高校生は4人いました。ミキさんで5人目です。

(12月6日です。ミキさんの回想です。)

  今日は、私の18歳の誕生日。今まで、誕生祝いなんかして貰った事は無いの。いえ、小さいときはあったかも知れないけど、物心ついたときには、フリル村の村子として10歳まで教会で暮らしていたし、10歳からは村の食堂の住み込み手伝いをしていたけど、誕生日など誰も祝ってくれなかった。


  そもそも、自分の誕生日を知ったのは、領都のセントラル・ガーレ市で働くために村を出るときに、旅行証明書に記載されていた生年月日で初めて知ったの。当然、ガーレ市のレストランで働いているときだって、毎日、働くので精一杯だったし、誕生日の事なんか思い出しもしなかった。


  誕生日と言う存在に気が付いたのは、帝城の後宮に入ってからだったわ。20人以上いる愛妾の方々や、皇后陛下のお誕生日にお祝いをするの。美味しい物を食べたり、お酒を飲んだり。私は、最初はお腹の赤ちゃんに悪いからと言って、皆が食べているご馳走やお酒は頂けなかったの。毎日、ミルク粥とお魚かお肉を焼いたものばかり。


  レオナが生まれてからも、誕生日のお祝いなんかして貰えなかった。レオナの誕生日は、皇后陛下の方でしてくれていたみたいだけど、私は呼んで貰えなかった。人間族が皇室の表舞台に行っちゃいけないとか言われていた。


  愛妾の方々は、ご出身の実家の方から、たくさんのお祝いが来ているみたいだったし、皇室から頂けるお支度金でお友達なんかとパーティをしているみたいだったけど、私にはお支度金は渡されなかったし、レオナにくださる宮廷費は、レオナ担当の養育係の人達が管理していて、私が貰う権利は無いようだったの。そもそも、私の誕生日を知っている人など誰もいなかったので、誕生日は、単なるいつもの1日と変わりなかったわ。


  それが、今年の6月で大激変。先帝が崩御されてから、全てが変わった。まず、第一は、念願だった人間族の国へ来ることが出来たの。もの心がついたころから、いつかカーマン王国へ行くんだ。人間族がちゃんと生きていける国に行くんだと思っていたんだけど、ここ、グレーテル王国は、きっとカーマン王国よりもずっと素敵だと思うの。


  最初は、王都のゴロタさんのお屋敷にいたんだけど、奥様のシェルさんから毎月、金貨1枚が支給されたわ。金貨1枚よ。私が、領都のレストランで働いていた時のお給料が、月銀貨2枚、1年働いても銀貨24枚にしかならないのに、その4年分以上を毎月くれるなんて。


  お屋敷は、大きいんだけど、これでは子供を育てるのに手狭だからって、ゴロタさんの領地にお屋敷を作ってくれたの。私たち親子のためだけによ。でも、そのお屋敷が出来るまでの間、ずっと王都のお屋敷にいたんだけど、毎日が夢のようだったわ。街に出かけるときは、メイドさんか執事さんが付いて来てくれて、何かを食べたり飲んだりしても、全部払ってくれるの。さすがに、洋服や下着以外のものは、自分のお金で買うんだけど、金貨1枚なんか使い切れないと思った。市の中心街にある、あの『ティファサン』という物凄く高級そうなお店ならどうか知らないけど、私が買い物をする雑貨屋さんや化粧品屋さんでは、絶対に無理だったもの。


  ゴロタさんと冒険者ギルドに行った時、私の生年月日が間違えていたことが分かったの。1年若かったみたい。それで、急遽、高校に行く事になったんだけど、ちゃんとした学校になんか行った事が無いし、とても不安だったの。


  字を読み書きすることと、足し算、引き算位は教会で習っていたんだけど、三角形や円の面積を出すなんて無理。掛け算だって、初めて習うのだし。でも、掛け算の九九は、1日、呪文のように唱えていたら覚えられたわ。それから、家庭教師が毎日来て、夕食までの時間は、お勉強の時間になってしまったの。それに、宿題もあったので、もう、買い物もたまにしか行かれなくなってしまったの。


  9月1日からタイタン学院高等部1年に通うことになったんだけど、転入試験の成績は、あまりよくなかったらしいと聞いたわ。でも、シェルさんが、校長先生に頼み込んで、許可して貰ったみたい。いわゆる裏口ね。でも、家庭教師の先生が、私は覚えが早いんだって。数学の公式だって直ぐに覚えたし、王国史なんか、紀元前からの年号を丸覚え出来たの。


  学校は、タイタン市にあったから、領主館の隣の別邸が出来るまでは、グレーテル市からゲートを使って通学することになったの。学校の制服は白のブレザーでとても可愛らしい。あと、チェックのミニスカートも可愛らしいんだけど、クラスの皆は、腰のところで巻き込んで、もっと短くしているみたい。でも、私は絶対にしないんだ。だって、あれじゃあ絶対パンツが見えるから恥ずかしいし。


  9月20日に、領主館隣の別邸が完成して、引っ越しをしたの。信じられない位広いお屋敷。このお屋敷に、私たち親子と、執事のベンさんとメイド長のベティさんそれに、若いメイドさん2名、あとレオナの乳母のベロッサさんが住むんだけど、私たちの部屋は、1階の大きな寝室と私の勉強部屋、それとレオナの子供部屋だけ。2階は、ベンさん達の部屋とお客様用の部屋がいくつかあるみたい。とにかく、広いの。


  吃驚したのは、9月でまだ、少し暑い季節なんだけど、お屋敷の中は、ひんやりしていたの。ゴロタさんが、冷気を送り込んでいるみたいだけど、仕組みは良く分からないわ。


  通学は、ジェリーちゃん達4人と一緒。ジェリーちゃんとジルちゃんは人間だけど、ブリちゃんとデビちゃんは魔人族といって、頭に角が生えているんだけど、後は全く人間と変わりないみたい。特に、ブリちゃんは、まだ16歳位なんだけど、胸は大きいし、背だって、私より20センチ以上大きいの。ブリちゃんは、私と同じクラスのA組なんだけど、ブリちゃんは、一番後ろの席だし、私は、一番前の席なので、授業中にお話はできないの。でも大丈夫。


  お昼休みなんかは、皆で待ち合わせて、食堂でお食事会をするの。この学校は、自分で好きな食べ物を取って食べるんだけど、必ず3つの色のお皿を取らなければいけない決まりになっているの。私は、お肉以外に嫌いなものが無いので、平気なんだけど、殆どの子は、お野菜、特にピーマンとかニンジンが嫌いみたい。ジェリーちゃんのピーマンを食べて上げたら、とても喜ばれたわ。でも、絶対に内緒だって言われた。


  授業は、付いて行くのがやっと。数学の公式とか、物理の方式なんか、分からない事ばっかり。一度、ゴロタさんの所で働いているシルフさんというシェルさんの妹さんが来て、授業をしてくれたのだけれど、何を言っているのか全然分からなかった。先生も分からなかったようだったけど、黙っていたわ。


  授業で、一番好きなのは、音楽、特に唱歌が好き。今まで、歌なんて歌ったことが無いけど、先生の引くピアノに合わせて歌を歌うと、自分でもうっとりして涙が出て来てしまうの。特に、好きなのが『おぼろづきよ』っていう歌。


    ♪里わの火影も、森の色も、

    ♪田中の小路をたどる人も、

    ♪蛙のなくねも、かねの音も、

    ♪さながら霞める 朧月夜


  この歌は、はっきりは覚えていないんだけど、かあ様が唄ってくれていたような気がする。馬車の窓から大きな月が霞んで見えたとき、かあ様が歌っていたのかも知れない。


  夜、お屋敷のベランダに出て、この歌を歌っていたら、何故か涙が止まらなかった。ベティさんが、どこで唄を習ったのかと言ったので、学校で習っただけだと言ったら吃驚していた。


  ベティさんは、王都の出身なんだけど、王都の歌劇で歌っていた人と同じ位、良い声なのだそうなの。声を褒められたのは初めてだったけど、嬉しかったわ。


  そう言えば、本館の大広間には、大きなピアノが置いてあったわ。ジェリーちゃんのらしいけど、全然弾いていないみたい。今度、借りてみようかしら。メロディさえ知っていたら、弾くのはそんなに難しくは無いみたい。10本の指だけで弾けばいいんだもの。


  あと、学校の魔法の授業も楽しいんだけど、ゴロタさんから、学校では魔法は使ってはいけないと言われたので、事情を話して、いつも見学をしているの。ブリちゃんも見学なんだけど、二人でずっとお喋りをしていて先生に怒られてしまったわ。


  同級生に男の子もいるんだけど、ゴロタさんに比べたら、子供過ぎて全く興味がないわ。でも、背の高い子が、この前、お手紙をくれたの。『初めて会った時から決めていました。最初は、お友達からで良いので、お付き合いください。』って書いていたの。こんな手紙貰ったことがないので、すぐにシェルさんに相談したの。そしたら、シェルさんったら、ニヤニヤするだけで、どうしていいか教えてくれないの。


  こんな時は、ジェリーちゃんが詳しそうだから、ジェリーちゃんにも相談したんだけど、いつの間にか、私のお屋敷にジルちゃんやジェリーちゃん達高1トリオプラス1が全員集まっちゃって、お茶を飲みながらの検討会議になってしまったの。


  内緒の話だけど、皆、ゴロタさんの婚約者という事になっているらしいんだけど、誰も経験がないみたい。せいぜい、キスまで位みたいなの。当然、私は黙って聞くだけにしていたわ。


  結局、その男の子には、お断りのお手紙を書いて渡したわ。私には、子供もいるという事は内緒のままでね。


  お誕生日パーティは、本当に初めての経験だった。あんなに大きなケーキを見るのも初めてだし、蝋燭を18本も立てて。帝国では、蝋燭は高級品だったから、こんなに無駄に使うなんて絶対に無かったし。


  お誕生日プレゼントは、髪飾りだったの。でも、指輪もそうなんだけど、絶対に学校には持って行けない。当分は、机の中にしまっておこう。


  それよりも、フミさんが、『今夜はゴロタさんと二人きりにしてあげる。』と言われた事が気になる。8月以来、ゴロタ様とは清い関係が続いているので、今日、これから起こることを考えただけで、身体の芯が熱くなってしまう。本当なら勝負下着かなんかを着るんだろうけど、やはり、ちょっとエッチなネグリジェだけが良いかしら。ああ、早く夜が来ないがな。  

ミキさんは、高校1年に転入しましたが、違和感はありません。もう18歳です。青少年育成条令の対象外です。

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