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第327話 石油採掘と精油所を作ります。

中世に石油精製技術なんてあり得ないのですが、地球の50世紀の世界の知識があるので、あとは耕作技術だけです。

(11月1日です。)

  今日は、エーデルの23歳の誕生日だ。レオナちゃんも3歳の誕生日だが、それは無視しよう。誕生パーティーの後、いつものように誕生日旅行だ。


  エーデルが、ずいぶん前からとても楽しみにしていた。その日の夜は、二人でニースタウンの別荘に泊まり、翌日グレタ村に行く。石油プラントを作るための測量をしているので、その様子を視察するのだ。当然、測量はバンブー・セントラル建設が請け負っている。


  シルフの予想では、原油はかなりの埋蔵量だそうだ。今は、単に噴き出ている石油を、貯蔵するだけだが、その内、噴出さなくなるので、ポンプでくみ出すようにしなければならない。また、貯蔵タンクも作らなくてはいけないが、一番大変なのは、この真っ黒な原油を色々使えるように精製しなければならないそうだ。


  大型石油プラントと言うものを作らなければならないが、北の大陸の製鉄所で圧延加工した鋼材や鉄鋼板をここで組み立てることになる。そのためには、大型の荷揚げ機械が必要となるらしい。また、動力として電気を使うそうだが、そのためのガス発電所を作るらしい。燃料のガスは、今回の井戸から吹き出しているガスや、生成時に作られる液体石油ガスを使う。


  大型石油プラントの完成までは、2年以上とかなりの期間がかかるようなので、イチローさんに建設責任者を任せることにした。勿論、設計や施工管理はシルフの知識が無ければできないので、イチローさんは、あくまでバンブー・セントラル建設との交渉役だ。大型荷揚げ機械が間に合わなければ、ゴロタが『念動』でやってあげればよいだろう。


  あと、グレタ村の若い人たちの労働力だけでは足りないので、フェニック帝国の帝都で人材募集をしなければならない。シルフが、数千人単位の人員が必要だと言うので、グレタ村の食糧供給量だけでは圧倒的に足りない。近隣からも調達して貰わなければならない。


  こうなったら、フェニック帝国南部タイタン領の総力を挙げて取り組む必要があるだろう。ところで、シルフさん、石油で何を作るのですか?


  エーデルと二人で、南極大陸まで行ってみる。冬から夏への変わり目だが、気温は10度位だ。明け方は氷点下だろう。しかし、ゴロタ達には関係ない。大きなシールドの中は、春の陽気だ。エーデルさん、どうして直ぐに服を脱ぎ始めるのですか。人っ子一人いない氷の世界。エーデルは、此処でお風呂に入るそうだ。直ぐにお風呂を作る。氷のお風呂だ。表面をシールドで覆い、お湯を張っても氷が溶けないようにする。


  エーデルは、氷のお風呂の中で、ゴロタに抱きついてくる。場所が変わると感じ方も違うようで、エーデルの声が、氷の山々に響き渡った。


  夕食は、南氷洋の海底から、念動で捕獲した大きな蟹を鍋にして食べた。夕食後、オーロラが出現するのを待った。深夜、満天の星空に浮かぶ真っ青なオーロラが、緑色に変わっていく様相は、幻想的で美しいものだった。


  次の日は、飛行艇『ゼロ』に乗って、東のゴーダー共和国の国境まで行ってみる。何もない、単なる森と山が国境になっている。はっきりした国境は定められていないらしい。あの山の向こうが、ゴーダー共和国らしい。この辺には、聖ゼロス教会大司教国の領土は無いらしい。あまりにも森と山しかないので、大司教国も統治しないらしいのだ。


  ゴーダー共和国の中に入ってみる。共和国の一番南西の村はハイネ村という。ゴロタ達は、ハイネ村の郊外に『ゼロ』を着陸させ、歩いて村に入って行く。この村に旅行者が来ることなど無いのだろう。珍しい者でも見るかのように村人達の注目を浴びている。


  村の中心では、1人の男が台の上に乗って大きな声で叫んでいる。年齢は30歳位だろうか?赤い襟が立ち上がっている変な制服を着ている。ズボンも、太腿の所は太く膨らんでいるが、膝から下は、細くぴったりしていて,

それに黒色の長い編み上げブーツを履いている。金色のボタンが2列に並び、胸には鷲のようなバッジを付けている。


  彼の周りには、同じような服を着た若者が20人位並んでいる。何をしているのかと思って、彼のいう事を聞いていると、今度の共和国大統領の選挙には、彼の支持する人物を選んで貰いたいと言っているらしい。


  え?『大統領』って何?初めて聞く言葉だ。


  『大統領とは、国民が直接選ぶ国の統治者です。共和国制の国の元首の一形態で、強大な権力を持っているのが一般的です。』


  シルフさん、ありがとうございます。


  彼の演説が終わった後、別の男が台の上に立った。その男は、普通の格好だ。どうやら、さっきの制服の男が推薦する者以外の人を推薦しているらしい。


  確か、この国は、君主がおらず、国内は45の県に別れ、県知事がその地域の施政権を握っている。国全体の事は、県知事の中から選ばれる総代表が行政、司法、立法そして防衛の全権を掌握しているが、4年ごとに選び直される筈だ。いつの間に『大統領』になったんだろう。


  近くの村人に聞いたら、4年前、総代表になった男が、人間族至上主義で、『中央フェニック帝国のような獣人が納める国などあってはならない。獣人は、人間族に奉仕するように神が定められた。』を唱えて、国民の圧倒的支持を得た。議会を掌握した彼は、憲法を改正して、大統領制をこの国に導入したのだ。いま、その大統領を選出する初めての選挙の真っ最中らしい。


  大統領と君主の違いが良く分からないが、きっと同じようなものなのだろう。このゴーダー共和国のような、皆の意見が政治に反映しやすい国では、自分達が楽になる言葉、労せず欲しいものが手に入るような事を言う人間に人気が集まりやすい。


  自分達が楽になるためには、それなりの代価を誰かが払わなければならないという事を忘れている。農民の暮らしを良くしようとしたら、領主は、今までの裕福な生活をあきらめなければいけない。それは、当然の事である。共和国の様に、領主に該当する者がいないのに、国民の生活をどうやって裕福にしようと言うのだろうか?


  ゴロタは、そんな事を思いながら、次の男の演説を聞いていたところ、嫌な気が後方からした。人を殺そうと言う意識、『殺意』だ。


  ゴロタが、振り返ってみるのと、後ろから矢が飛んでくるのが同時だった。ゴロタには、飛んでくる矢は蠅が飛ぶ位に遅く感じる。少しだけ飛び跳ねて、矢を手づかみで受け止めた。鏃には、ご丁寧にトリカブトの毒が塗られていた。完全に殺す気なのだろう。


  ゴロタは、村人に気づかれないように『瞬動』で、矢を射た男の所へ移動した。その男は、教会の鐘楼の天辺から矢を射たのだ。


  突然現れたゴロタに、その男は吃驚していたが、直ぐに弓を捨て、腰のショートソードを抜いてきた。ゴロタは、指鉄砲で、男の右肩を撃ち抜いた。


  男は、ショートソードを落としてしまったが、『ブラボ・・・・・』と叫びながら、そのまま鐘楼の上から飛び降りた。ゴロタは、『念動』で助ける事も出来たが、どうでも良かったので、放っておいた。


  村人達は、怯えた目をゴロタ達に向けたが、ゴロタは近くの村人に、村長はいるかと聞いた。60歳位の男が前に出てきた。


  「何の用でしょうか。」


  「隣国の中央フェリック帝国から避難してきた女性や子供はいませんでしたか?」


  この村では、見たことはないそうだ。途中の森に野盜が巣食っているので、この村に来る前に襲われる危険性があるらしい。


  次に、今、落ちて来た男の素性を聞いたら、先ほど演説をしていた男が所属する『ネオ血の盟約推進党』、略して『ネチス』の党員らしい。さっきの演説していた男と仲間は、何処かへ逃げていったそうだ。


  この国では、大統領選挙が行われているが、ネチス党の他に14の政党が乱立しているそうだ。その中で、ネチス党は、他の政党候補者及びその支持者を粛清つまり殺害して、対立政党を潰していっているらしい。


  それは、ゴーダー共和国の内政問題なので、余り深入りするつもりもない。共和国制度は、民意を反映すると言う制度らしいが、民意が誤っている時に誰が正すのだろうか。ゴロタには、分からなかった。


  ゴロタとエーデルは、飛行艇『ゼロ』に乗り込んで、グレーテル王国の王都に行く。間もなく、タイタン市の発電所が出来上がるが、市内に電線を引かなければならない。その打ち合わせをバンブー・セントラル建設の担当者と行うのだ。取り合えず、幹線道路沿いに敷く予定だ。引いた電線は、街路灯と路面電車用だ。


  打ち合わせ途中、バンブー社長が相談があるという。今度の南部タイタン領の石油プラント建設には、新しい会社を設立して、その会社が工事を行うこととしたい。会社の名前は『タイタン揮発油開発会社』とし、略称は『タッキ』と言うそうだ。会社の運営資金として大金貨100枚を投資して貰いたいそうだ。『タッキ』の総資本の60%を保有することになるが、配当が良ければ経営に口を出す必要はないので、出資することにした。


  打ち合わせが長引いたので、エーデルは王都の公爵邸に戻ってしまった。打ち合わせが終わり、公爵邸に戻ったら、エーデルは既に眠っていた。起こさないように、そっとベッドの隣に潜り込んだ。エーデルは、いつものように何も着ていなかった。公爵邸の夜は更けていった。


  翌朝、エーデルとヘンデル帝国北部タイタン領に行き、現在、サートン湾に建設中の交易港の様子を視察した。港湾関連施設の建物は、現在、内装工事中だ。また、中央との連絡道路は、随分整備されてきている。しかし、やはり鉄道がなければ、大量の物資輸送はできないだろう。


  タイタン領のエクレア市とニュータイタン市までの間の鉄道が完成したら、この区間を次の鉄道整備計画に入れておこう。

最近、PV数が順調に伸びております。これでブックマーク件数も伸びてくれるとありがたいのですが。

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