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第319話 領内に鉄道を敷きます。

産業が発展するためには、高速かつ大量の輸送手段が必要です。

(9月10日です。)

  今日、タイタン市とエクレア市の間に鉄道が完成する。シルフに、大量輸送手段について相談したところ、鉄道について教えてくれたのだ。


  今年の4月から、建設工事を始めた。運営主体は、王都のドエス・パナ商事、建設はバンブー・セントラル建設だ。名前から分かるように、ドエス・パナ商事は、あのドエスさんが事業拡張で設立した総合商事会社だ。


  また、レールは、領内の鍛治屋さんを集めて作らせている。手作業なので、大勢の職人が、かかりっきりだ。出来上がったレールを運ぶのが大変なので、現場で簡易溶鉱炉を作って敷設している。今、北東の鉱山の近くに大規模溶鉱炉を作っている。それができれば、長いレールも、型に流し込んで簡単にできるはずだ。勿論、設計はシルフだ。


  土魔法使いを200人ほど集めて、鉄道施設及び線路予定地を整地している。線路は、分厚い砂利を盛り上げたところに敷設するので、普通の土を変換して固めて砂利を作っている。レールの幅は、1435ミリだ。この幅も、シルフが決めたものだ。


  1日に約3000m延伸出来た。エクレア市まで約400キロの距離があるので、5か月で開通となったのだ。駅舎はまだ無いが、ホームだけは出来ている。駅舎の代わりに、行政庁に出札所を設けている。改札は、列車に乗るときに車掌が対応して貰う。


  線路の敷設と同時に、列車、特に機関車の製造を王都の馬車職人に頼んだ。王都の馬車職人も、作業場を拡張しなければならないので、タイタン市郊外に、大規模製造工場を作ってしまった。職人も、300人以上を集めている。本社事務所も、タイタン市の一等地に開設した。


  会社の名前は、ホンデン・オート技研となった。社長がホンデンさんだからだそうだ。王都の作業場は、馬車専用の支店にしたそうだ。工場には、線路を引き込んでいるので、出来上がった列車は、そのまま、正規の路線に乗り入れられる。


  機関車は、魔法によらなくても動かせる仕組みだ。水を密閉した円柱の中で沸かし、発生した蒸気がパイプの中を通って、シリンダーピストンを作動させる。パイプは、円柱タンクの中を通って再加熱されている。


  水を沸かすのに、ボイラーの中で魔火石を使うが、魔力が切れたら石炭を使っても良いようにしている。


  難しいのは、シリンダーピストンによって前後に往復運動しているアームを回転運動に変換する仕組みだ。ゴロタは理解できなかったが、ホンデン技研の技術者たちは、ちょっとしたヒントで設計してしまう。


  素材も、鋼鉄のみならず、ミスリル銀とチタン鋼の合金を随所に使っている。後、鉄同士を繋げるのに、雷魔法で作った電撃を使っている。電撃をワンドの先に集めると、青白い光が生じ、鉄と触れると火花が散って、鉄が溶けるのだ。その時、2枚の鉄があれば一瞬でくっついてしまうのだ。『デンキヨウセツ』と、言うらしい。


  大きな車輪は、鋼鉄製で、レールと触れる面は、少し斜めになっている。内側には『フリンジ』と言われる耳がついている。これで、車輪はレールから外れないそうだ。


  運転席は後だ。その後ろには、水タンクと石炭格納庫がついている。


  機関車の名前は、『C27』 だ。Cは、動輪の数を、27は、設計年を表すらしい。これもシルフの要望だ。初号機は『C2701』という黒地に金文字のプレートが、ボイラータンクの前と、運転席の両脇に張られた。


  ホンデン技研の工場は、今のところ、柱と屋根だけだが、急ピッチで、完成を目指している。今後、鉄道網が拡充されれば、生産が追い付かなくなるのは目に見えている。


  それに馬なし馬車も製造計画がある。これは、道路さえあれば走ることができる。


  それに飛行船だ。『ゼロ』の製作が、随分、参考になっているみたいだ。しかし、シルフは消極的だ。一つは、ゴロタみたいに『飛翔』能力がなければ、非常に危険な乗り物になる。それに、軍事利用が可能なことだ。他国への攻撃が簡単になりすぎる。平和に関しての意識が低いこの世界では、危険なおもちゃ過ぎるそうだ。


  今日は、試運転だ。機関車の後ろには、客車が1両のみ連結されている。シルフの計算では10両は牽引できるそうだ。駅馬車会社を買い取り、御者を運転手に訓練した。会社の名称を、『タイタン鉄道会社』と名付けた。社長は、マルタン男爵にお願いした。


  領地経営は、レミイさんと市長がやっていて、男爵は暇そうだったのだ。鉄道会社の業務は大変だ。


  駅務係は、駅で切符を売ったり、荷物を受け取ったり、それに列車がつくと、魔石や水を補給しなければならない。


  次に、車両係は、運転手や助手だ。運転もそうだが、機関車や客車の整備をしなければならない。


  客車の中で、お客様の切符を確認したり、到着駅の案内それに車内販売をする係、車掌係も必要だ。これは、女性社員を採用する。制服は、ジル達高校生チームが考えてくれるそうだ。車掌と、車内サービスのキャビン・アテンダントの二つの制服を制作中だ。月末の開業に向けて、現在、研修中だ。全員、今年の春にタイタン学院高等部を卒業した女の子達だ。


  最後に、線路の保守点検をする係、保全係も必要になってくる。とにかく、鉄道事業は、大量の人員を必要としているので、ゲートの設置で仕事がなくなって、リストラされた駅馬車の社員を大量に再雇用した。ハッシュ駅からエクレア駅までの駅馬車は、既に廃止されていたのだ。


  鉄道会社の本社は、タイタン市の新駅の上に作る予定だ。給料計算や人事管理、収益管理をする部門や運行計画を策定する企画部門は絶対に必要だった。


  線路は、タイタン市から、一旦南下してハッシュ駅、それから東に向かって、アント駅、アンガス駅最後に西エクレア駅と通って、エクレア駅に至るコースだ。


  駅馬車ではハッシュ町から3泊4日だったが、約6時間で到着する予定だ。


  料金は、1キロ当たり銅貨2枚半だ。タイタン駅からハッシュ駅までは無料にしている。それでもエクレア駅までは、銀貨1枚と大銅貨2枚銅貨30枚が最低料金だ。


  特等のコンパートメントは、食事付きで4人分で、運賃とは別に1室銀貨6枚を貰う。また、豪華な椅子の1等車や椅子はそれなりだが、席が全て進行方向を向いている2等車も差額料金を設定している。3等車は、向かい合って座るボックスシートだ。今日の試運転は、3等車を連結しているが、満員だった。


  今月末には、10両編成の列車を2編成作る予定だ。線路は単線なので、延伸具合で、複線化していく。


  機関士が、火魔石10個をボイラーの下の釜に投げ入れた。盖を閉めてから、ミスリル銀の管を使って、魔力を流し込む。魔法適性は関係ない。兎に角、魔力を流すだけだ。魔石が熱を出す。ゴロタが、僅かな魔力でも、高温を出せるように錬成した魔火石だ。直ぐに、ボイラーの中の水温は100度を超えた。圧力がかかっているので、沸点が高くなっている。今のところ、石炭は使っていないので、黒い煙は出ていない。


  エクレアまでの間は、全く問題なく、快適な旅であった。後は、ニュー・タイタン市まで延伸する予定だが、完成は、来年10月の予定だ。土魔法使いは、どんどんスキルアップするだろう。


  それから、貨物列車専用の機関車も作らなければならない。動輪が4軸の機関車で、シルフが、番号は『51』から始めたいそうだ。意味がわからない。


  本格的に運行を始めたら、列車の愛称を『つばめ』とするそうだ。どうしてつばめなのか分からないが、後、『こだま』と『ひかり』も候補らしい。


  本格運用を始める日には、国王陛下も招待するつもりだ。きっと、グレーテル市まで延伸して貰いたいと言って来るだろうが、それは、向こう側、つまりグレーテル王国側で何とかして貰いたい。技術者は派遣しますから。


  後、シーサイド港から、ニュータイタン市までも鉄道を引くつもりだ。すでに、用地は確保済みだ。


  タイタン市とハッシュ町の間に、大きな用地を確保している。製鉄所が出来たら、大きなボイラーで風車を回す施設、火力発電所を作るらしい。シルフが言うには、ゴロタのミニ太陽を、単に暖房用に使うのは勿体ないらしいのだ。ミニミニ太陽でお湯を沸かして、『電気』を作れば効率が良いとのことだった。


  後、製鉄所で鋼鉄製の鉄骨を生産するそうだ。それさえあれば、10階建ての建物だって、しっかりと建築できるらしい。


  領主館に戻ってから、シルフに頼まれた150センチ位のミスリル製のゴーレムを作った。稼働部分には、魔石を仕込み、胸の中には大きな魔石をセットした。


  目、耳、鼻、口それぞれに小さな魔石をを組み込む。錬成で、魔石の魔力に応じて、全ての稼働部分が動くようにしていた。顔と身体つきはシェルをモデルにしたつもりだ。胸も、勿論シェルと一緒だ。


  シルフに、出来た旨を伝える。ゴロタは、ゴーレムの胸に左手を当てる。


  『エネルギー供給オン、リモートプログラム、インストール中。コンプリート。可動部分、テスト。目玉、チェック。唇、チェック。首、チェック。肩、チェック。肘、チェック。手首、チェック。親指、チェック。』


  全ての部位がチェックされて行く。


  『全ての可動部分、チェック完了。異常はありません。感覚器官をリンクします。視覚、チェック。聴覚、チェック。嗅覚、チェック。味覚、チェック。触覚、チェック。痛覚、チェック。全ての感覚器官のチェックを完了します。次に、スタンドアローン・データベースを構築します。メモリーが足りません。空間リンクによるクラウドシステムを構築します。バックアップ容量が足りません。バックアップは、量子演算メモリー実装後に行われます。全ての機能が、使えます。マスターキーは、生体キーにします。キーを選んでください。』


  ゴロタの頭の中に、幾つかのキーが浮かんできた。


  『キス』


  『愛撫』


  『セックス』


  こいつ、絶対、わざとだ。ゴロタは、網膜認証を選択した。


  『チッ!』


  『シルフ1号の目を見つめて下さい。』


  『生体認証キー、登録しました。再起動するまで、お待ちください。』


  今、絶対、舌打ちしたな。ああ、シルフも残念少女ですか?

  

シルフは、やはり残念な女の子だったようです。

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