第317話 中央フェニック帝国の戴冠式
明けましておめでとうございます。2020年の元旦を迎えて、読者の皆様に感謝と本年のますますのごひいきをお願い申し上げます。
(8月28日です。)
セディナ皇太子殿下は、まだ6歳だが、中央フェニック帝国の皇帝にならなければならない。通常は、摂政を置いて、政を補佐するのだが、獅子人は、子供ができにくいために、血族がいない。
セディナ皇太子殿下とレオナちゃんしか、先帝の血縁はいないらしいのだ。しかし、血縁の無い者が摂政になった場合、国が乱れる元になるのは、歴史が証明している。
ガダリロ宰相は、以前からゴロタの噂を聞いていた。
1国の軍隊を凌駕する戦闘力、全く欲が無く、覇権主義と対極を為す存在、法と正義を厳守し、非道を憎む性格。莫大な財産を持っているが、贅沢や華美虚飾とは縁がない生活態度、ただ一つの欠点が幼女趣味だという事だった。
そこで、セレナ姫を与える事で新皇帝陛下の後見人になって貰い、ついでに国家財政を立て直して貰う。さらに、ミキの宮様への『後宮いじめ事件』も解決できれば一石三鳥だと考えてしまったのだ。
もう、先帝のゲテモノ好きには困ったものだったが、ついには人間族にまで手を出してしまった。兎人や犬人などの異種間では混血が生まれる可能性が無いので放っておいたのだ。
しかし、人間族だけは、半獣人が生まれる可能性があるので絶対にダメだと言っていたのに、地方巡視に出た折に、半ば強姦まがいにして関係を持つなど。
先帝は、勇猛果敢、統治能力も高く、その判断は、常に公明正大、国民ファーストだった。しかし、下半身だけは、野獣だった。
今までも、何人の女性が犠牲になってきただろうか
調べたところ、彼女は、未だ14歳だった。帝国法では、15歳未満の女子と性交をするのは重罪とされている。良くて奴隷落ち、力ずくの場合は、男性器を切り落としての出血死の刑だ。
しょうがないので、調査結果は国家機密に指定して封印した。しかし、他の愛妾達からの苦情が凄い。礼儀を知らないとか、人間臭いとか。中には、毎日、同じ服を着ていて汚いというのもあった。調べたところ、新調した服は、ことごとく捨てられたり破られている事が判明した。
先帝も、1度、犯したら、興味を失い、後は声もかけないし、笑わないミキの宮様を嫌って、暴力を振るわれる事もあったそうだ。ああ、後宮の問題は、全て先帝の節操の無い下半身が原因だ。
セディナ皇太子殿下の戴冠式は、明日、執り行う予定だ。既に、警備の衛士隊は700名の応援を頂いている。それに騎士団も、ゴロタ殿から300名、グレーテル国王陛下から300名、カーマン王国からは400名もの騎士団を派遣して貰っている。
パレードには、騎士団の他に、霊獣や神獣が6柱、黒龍様が1柱、それと銀色に輝く飛行船と飛行艇が空を警護してくれる。
黒龍様1柱だけで国家級の脅威なのに、この陣容では、『世界を統べる者』の噂は本当かも知れない。
そう言えば、パレードに馬は要らないと言われたが、どうするつもりなのだろう。まあ、黒龍様に怯えて、馬は役に立たないだろうが。
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(8月29日です。)
セディナ皇太子殿下いや新皇帝陛下の戴冠式は無事終わった。冠と宝珠の錫杖を授与する神官はフランちゃんだ。引退したとは言え、ゼロス教では、官位2位の身分だ。戴冠式としては最高位の神官だ。
ゴロタは、後見人として立ち会った。シェル以下女性陣全員を従えている。キキちゃんは、これが上流社会のデビューとなるので緊張している。
戴冠式は無事終わった。セディナ皇太子殿下は、
『セディナリック・レオ・パレス・ド・リオン5世』
となった。
レオナちゃんは、これで『皇嗣姫』となってしまった訳だ。本人は、何も知らずに走り回って、女官に追いかけられている。
後宮の元愛妾達は、本日をもって退任となる。一時金を貰って下野し、年金生活を送るか、後宮に残って女官として働くかを選択させた。全員が、下野を選んだそうだ。
戴冠式には、各地方の貴族が参列していたが、代理を送ってきた貴族が3名いた。ゴロタは、その3人の領内にイチローさん達忍びを放って、謀反、叛乱の兆しが無いか調査させることにした。
夕方、パレードが始まった。まず、衛士隊50名が、コース上の安全を確認する。この衛士隊は、タイタン領から派遣された者だ。
衛士隊の先遣部隊の次は、宮中音楽隊の行進だ。曲は、
『獅子よ、永遠なり。』
だ。沿道の国民も声を張り上げて歌っている。
次は、騎士団だ。最初は、タイタン領騎士団だ。先頭は儀仗兵50騎、次は蒼穹兵、弓隊、重騎兵それに軽騎兵だ。
3番手は、グレーテル王国騎士団300騎だ。攻城兵器をゴリラ種の獣人が押している。軽騎兵は真紅のマントを纏い、非常に荘厳だ。
次は、いよいよ新皇帝陛下の乗っている馬車だ。レオナ姫とミキの宮様が同乗している。
馬車には、馬が繋がれていないのに、ちゃんと動いている。皆が魔法だと思っている様だが、ゴロタの『念動』で動いている。
次は、平台の馬車だ。台の上には、シェル達女性陣が立っている。馬車の周りはピンクの花で囲まれており、前後のガラスのアーチは色とりどりの光で瞬いている。
しかし、シェル達は、完全武装だ。ドミノちゃんやキキちゃんも、この日のためにミスリル銀をふんだんに使った軽鎧を新調して装備している。彼女達の抜き放った剣や杖が光っている。ゴロタの特訓で、キキちゃん達も武器を光らせることができる様にした。
この平馬車も馬無しで動いている。上空50mには、タイタニック号とゼロが浮かんでいる。シルフが自動操縦をしているのだ。帝国の幟が何本も垂れ下がっている。
その上空、3000mにはミニ太陽が輝いている。南大陸は、北とは季節が逆だ。8月末は、北の2月過ぎと同じだ。皆、コートを着ていたが、ミニ太陽のおかげで、初夏の気候になっている。
シェル達の馬車の後ろが、各閣僚の乗っている馬車だが、それまで興奮していた沿道の観衆は、一気に興奮が覚めてしまった様だ。
しかし、その次に、イフちゃんが本来の姿、つまり炎のイフリートの姿で近づいて来た。人々は、一瞬、逃げかけていたが、怖いもの見たさでとどまっていた。
次が、コマちゃんだ。体長15mの本来の姿だ。口からは紅蓮の炎が漏れている。
その後ろには、ユニちゃんだ。30mを超える真白な体に10m位のツノが伸びている。皆、初めて見る霊獣に吃驚していた。
次は、神獣達だ。白虎、青龍、朱雀と続き、玄武の異様な姿と大きさに恐れ慄いている。
しかし、次のヴァイオレットさんを見た途端、多くの人達が逃げ出した。ヴァイオレットさんは、本来の姿、つまり全長100mの黒龍の姿で、空に浮かんでいるのだ。その禍々しい姿で地上300mと50mの間を上下している。
観衆の中には、その場で気を失う者や、失禁する者が続出した。伝説の黒龍、世界を滅ぼす最強の古龍、その姿を見た者で生きて帰った者はいないとの伝承の存在。
ヴァイオレットさんの後方500mの位置に、最後のカーマン帝国の騎士団400名が行進していたが、もう行進ではなかった。誰も先頭になりたがらないのだ。
各国の使節団や国賓が、沿道に設けられた貴賓席に座っていたが、皆、ゴロタ殿の従えている霊獣、神獣達の戦力の凄まじさを見て、今まで争いにならなくて良かったと安堵するとともに、そのゴロタ殿が後見している中央フェリク帝国と一戦交えようとは露程も思わなかった。
しかし、彼らは本当のことを知らなかった。本当に怖いのは、ゴロタ本人とその妻達である事を。
昨年の7月から連載を初めて、初めての正月を迎えました。最近、創作の時間がなかなか取れないので、夕方の更新はやめていますが、1話当たりの文字数も少なくなっております。ご容赦の程、お願いします。