第316話 初めての経験
サブタイトルは、とても煽情的です。しかし、ミキさんは、処女ではありません。14歳の時に一度だけ経験しています。
(まだ8月8日です。)
フジさんは、ツーガ市でも有名な和風レストランを紹介してくれた。ゴロタは、ミキさんと二人で行くつもりだったが、フジさんが案内してくれるそうだ。さすがに銀貨1枚のチップは効果抜群だ。
案内された店は『蕎麦屋』だった。ゴロタは、以前、食べたことがあるような気がしたが、この店は初めてだった。
蕎麦は、黒くて小さな『蕎麦の実』を曳いて作った白い粉を水で練り、細く刻んだパスタのような物を、だし汁に付けて食べるもので、のど越しと香りの良いものだった。付け合わせは、天ぷらの盛り合わせで、特に小エビとホタテの貝柱のミックス天ぷらは、抜群に美味かった。
本当は、日本のお酒を飲みながら食べる料理らしいが、ゴロタはお酒は飲まなかったし、ミキさんは17歳なので、まだお酒を飲める年齢ではなかった。二人は、緑茶を飲みながら、蕎麦を食べた。この料理は『天ざる』というそうだ。2人前で、大銅貨4枚以上もした。
店を出ると、表でフジさんが待っていてくれた。次は、洋品店に案内して貰う。ミキさんの着替えや下着、靴下などを買うのだ。さすがにゴロタは店に入らず、フジさんと一緒に入って貰う。ミキさんに大銀貨3枚を渡しているので、支払いは大丈夫だろう。
山のような品物を持って、店から出てきたので、次は鞄店に行ってもらう。そこでは、茶色い革製の旅行鞄とハンドバッグを買った。金貨3枚半もした。ブランド品だったらしい。そういえば、LとVの重なったマークが付いていた。
午後3時になったので、近くの甘味処に行く。3時のおやつだ。ゴロタとミキさんは、『抹茶小豆氷』を食べた。フジさんは、『白玉ぜんざい』と『バニラアイス』を注文していた。当然、支払いはゴロタだった。
ホテルに戻ると、夕食までの間に、ベランダの露天風呂にはいることにした。先にゴロタが入っていると、恥ずかしそうにミキさんが入って来た。ゴロタの隣に座ると、頭をゴロタの方に傾けて、じっと目を瞑っている。何を考えているのだろう。
「どうしたの。」
「こんな幸せ、私には絶対に来ないと思っていたの。」
ミキさんは、急にゴロタに抱きついてきた。ゴロタの肩に手を回し、濃厚なキスをする。当然、舌を入れてのキスだった。キスをしながら、ゴロタの股間に手を伸ばしてくる。しかし、ミキさんは、それ以上の事はせずに、ただ握るだけだった。
お風呂から上がると、部屋着に着替える。ゴロタは、190センチ以上あるので、少し丈が短かった。ミキさんは、160センチ位なので、ちょうどよいサイズの部屋着だった。向こうを向いて、部屋着をはおり、見えないようにパンツを履いている。ブラジャーは付けないようだ。
しばらく、部屋から海を見ていると、フジさんが部屋の外から声を掛けて来た。夕食の準備を始めるそうだ。食事の部屋は、今いる部屋とは別の続きの部屋で取るそうだ。無駄に広いだけある。
料理の準備が終わったので、フジさんがゴロタ達に部屋を移動するように言われた。この前と違い、男の料理人が2人いた。一人は、鱧という細長い魚を、ザクザク切っている。鍋や酢の物にして食べるそうだ。さっきのザクザクという音は、細かな骨を切る時の音だそうだ。
もう一人の男の人は、天ぷらを目の前で上げている。食材が並んでいる大きな皿から、食べたいものを選んであげて貰うのだそうだが、どれも美味しそうだったので、お任せにして貰った。昼の蕎麦屋の天ぷらも美味しかったが、目の前で上げた天ぷらを直ぐに食べるのは、その10倍位美味かった。
今は時期ではないが、冬に来てくれるとカニ鍋がおいしいとフジさんが説明してくれた。ゴロタはシェルと一緒に来た時に食べていたので、知っていたが、ミキさんは、是非、冬にも来てみたいと言っていた。
他にも、お刺身や焼き魚などがあったが、とても食べきれなかった。食事の間に3つ目の部屋に布団が敷かれていた。とんでもなくサービスが行き届いている。ゴロタは、料理をしてくれた男の職人さんに大銅貨5枚のチップをそれぞれに与え、フジさんには、もう1枚、銀貨をチップとして渡した。
食事の途中、ホテルの女将さんという人が挨拶に来ていた。何回か利用しているので、もう馴染みの扱いだそうだ。さすがに女将さんには、チップは渡さなかった。
食事が終わってから、大浴場に行ってみる。さっき、フジさんに頼んで、1時間、貸切にして貰った。二人で、大浴場に入ってノンビリする。
夜、ミキさんは3年ぶりに大人の関係を持った。終わってから、ゴロタはミキさんに分からないように避妊措置をしておいた。
次の日、ホテルの女将さんやフジさん達に見送られて、ホテルを出る。宿泊代金は、金貨1枚だった。二人でノンビリ歩きながら、港の方に向かった。ミキさんは、自然とゴロタと腕を組んで、自分の胸に押し当てている。
この街では特に欲しい物は無かったので、周りに誰もいなくなった所で、和の国の反対側の海に面したシマ市に転移した。ここでは、ミキさんに真珠のネックレスをプレゼントする。
16ミリの白蝶真珠を中心に10ミリの花珠真珠を繋げたネックレスで、金貨5枚もした。店の人も、10年以上勤めているが、これほど見事な真珠は、今まで見たことが無いそうだ。ミキさんの細い首には、少し大きすぎたかも知れないが、本人が涙を浮かべて喜んでいるので、これで良いだろうと思った。
シマ市の郊外で、『ゼロ』を取り出し、搭乗した。今日のミキさんは、ピンクと白の縞々模様のパンツだった。
『ゼロ』は、和の国を北上し始めた。目的地は、北の海道州だ。途中、フミ山を眼下に見ながら、約1時間半で到着した。ここでは、ラーメンを食べるのが目的だ。大きなカニの脚の入ったラーメンだ。サツボロという街のラーメンが有名らしいので、その街でラーメン屋を探したが、直ぐに見つかった。大きな通りに面したラーメン屋さんで、長い行列ができていた。ゴロタ達も並ぶことにした。ここは緯度が高いのか、8月でもそれほど暑くなかった。まあ、暑ければシールドを張るだけなので、あまり関係はなかったが。
1時間半並んで、やっとゴロタ達の番だ。店は、それほど広くは無かったが、清潔な店だった。出て来たラーメンは、今まで食べたことが無いほど美味しかった。カニも肉厚で、それだけでお腹がいっぱいになりそうだった。ゴロタは完食したが、ミキさんは食べきれずに残してしまった。
これで1杯、銅貨68枚は安すぎる。
この日の夜は、湖が見える山の上のホテルに泊まることにした。バーヤ湖という湖で、火山の噴火口にできた湖らしい。
夕食後、ミキさんと一緒に、ホテルの外に出て、湖とは反対方向を向く。ゴロタは左手でミキさんの右手を握り、魔力を流しつつ、ミキさんに小さな声で『メテオ』と呪文を詠唱するように言った。
ミキさんは、本当に小さな声で、
『メテオ』
とだけ、詠唱した。
とんでもないことが起きてしまった。ゴロタからミキさんに魔力が流れ続け、空から大流星雨が地上に流れ落ちて来たのだ。
幸い、流星が落ちて来たのは、広大な原野だったが、それでも半径10キロ位の森が焼失した。
ゴロタは、慌ててミキさんの手を離したが、ミキさんは、その場で気を失ってしまった。
ゴロタは、ミキさんを抱え上げ、ホテルの部屋まで転移した。危なかった。極大にしたら星の形が変わってしまったろう。
また、これ以上続けていたら、ミキさんの命が危ないような気がした。この魔法は、当分の間、封印しておこうと思ったゴロタだった。
この日の夜、ゴロタは、何もせずにゆっくり眠った。
翌朝、ミキさんと一緒に、稽古をしてみる。木刀を正眼に構えさせる。前のめりだし、両手に力が入りすぎて、木刀が震えている。
剣を持たせず、まず、普通に立って貰う。それだけで、身体の芯が曲がっている。念動で肩から上を引き上げる。首が真っ直ぐになる。その感覚を覚えて貰う。
今度は、自分で立って貰う。首が上から引っ張られる感じだ。うん、できている。次に、足を左右に僅かに開く。右足を半歩、前に出す。
お臍が前を向いている事を意識する。うん、その調子。次に両手をお臍の前に持ってくる。コブシ一つ分、前に出す。
その姿勢で、前後左右に移動させる。普通に歩み足で移動しようとしたので、摺り足を教える。ゴロタの号令で動く。
「前、前、後ろ。右、前、左。」
「右、右、後ろ。左、左、前。」
ミキさんは、必死だ。今まで、剣を持つなど考えた事も無かった。しかし、こんな変な歩き方ばかりで、役に立つのか疑問だったが、ゴロタが剣の達人だと言うことは、皆に聞いて知っていた。あのシズさんの師匠なのだ。きっと物凄く強いのだろう。
ミキさんは、何も考えずに、無心で足捌きの練習をした。足先が僅かに青く光っていることには、全く気がつかなかった。
魔法と言い、剣術と言い、ミキさんには全てが初めての経験だった。しかし、それだけではなかった。
2泊3日の旅行も終わり、王都に戻ったが、直ぐに領主館には戻らず、ティファさんに立ち寄った。ダイヤの指輪を買ってあげたのだ。
ミキさんは、涙が止まらなかった。男の人から指輪をプレゼントされる事など、本当に初めての経験だったのだ。
すみません。いつもこんな展開ばっかりで。サブタイトルで期待した人、許してください。
今日は、大晦日です。いろいろ忙しいので、短めですが、お許しください。