第314話 夏の1日。
ずっと戦い続けたり、統治関連の作業をしているゴロタです。今日は、皆で、海水浴です。でも、ゴロタは料理番です。遊覧船の操縦です。
(8月1日です。)
今日は、皆で海水浴だ。モンド王国に里帰りしていた女の子達も帰って来ていた。キキちゃんの誕生日なのだが、この海水浴が誕生日プレゼントだ。
タイタン領で海に面しているのは、シーサイド町だけだ。メディテレン海は、温暖な海だが、夏は海水がお湯のようだ。
シーサイド町から、東に30キロくらい行ったグレート・グレーテル川が海に注ぐ河口のそばまで行く事にした。北の海の冷たい水が、南まで流れている。シルフが言うには、通常の世界では有り得ないそうだ。川と言うものは、必ず陸地の分水嶺から下方に向かって流れなければならないそうだ。
難しいことは無視するとして、そこまでは、タイタニック号で行く事にした。
全員、乗り込んで出発だ。レオナちゃんも、離陸時と着陸時は一人で座ってシートベルトをして貰う。
いつものように、シェルは助手席だ。キャビンの席次は、
第1列は、エーデル、ノエル、クレスタ、ビラ
第2列は、フミさん、シズ、ジェーン、フランちゃん
第3列は、ジルちゃん、ジェリーちゃん、ブリちゃん
第4列は、デビちゃん、ドミノちゃん、シロッコさん
第5列は、レオナちゃん、ミキさん、キキちゃん
と言う順だ。後、3人しか搭乗できない。夏が終わったら、もう少し搭乗できるように改装しようと思っている。
タイタン市の領主館からシーサイド町まで、タイタニック号で約3時間半、3000キロの空の旅だ。
水平飛行に移り、シートベルト着用のサインが消えてからは、もうキャビン内は大変な騒ぎだった。高校生以下は学校で習った歌を大合唱だ。
フミさん達大人の女性は、最近のスイーツやファッション、宝飾に関しての話が盛り上がっている。ノエルやミキさんらの若手グループは、王都で流行っている演劇やオペラの話だ。これには、シェルまで加わっている。シェルは、副操縦士の職務を放棄しているようだ。
ゴロタも職務放棄だ。レオナちゃんとジャンケンをして遊んでいる。勝つと尻尾を振って喜ぶし、負けると耳を伏せて悲しむ。とても可愛らしい。
あっという間に、目的地に着いた。真白な浜辺だ。河口の向こう側は、王国の貴族の領地だが、この辺には誰も住んでいない。水竜が出るからだ。ゴロタは、川から下ってくる水竜の姿を見つけたら教えてもらう様に、ビラの使い獣であるバルトに頼んだ。
また、海の沖合から接近してくる水竜は、イフちゃんに頼むことにした。これで安心して遊べる。
ゴロタは、大型テントを2つ張り、中に6個のシャワー水栓を作った。簡易更衣室兼シャワー室だ。外の椰子の木の木陰にキャンプセットのテーブルと椅子を準備する。18人分だ。最近、4セット追加しておいたので、数は十分だった。
防熱シールドを頭上に張る。一気に気温が下がってくれた。日差しが強いので、改良型飛行メガネをかける。レーバーン社が出した新タイプらしい。
『それは、UVカット対応型のレイバンタイプサングラスです。』
無駄知識有難うございます。
まず、トロピカルジュースをガラス製の大型ボトルに大量に作った。この大きさでは、持てないので、コップに入れるためのクレードルを準備する。氷は、バケツの中に大量に準備した。後は、バーベキューに焼きそばと焼きトウモロコシだ。あ、クラーケンの焼きダコも欠かせない。
皆が、着替えて来た。ほとんどの女性はビキニだったが、クレスタとシェルはワンピースだった。クレスタのワンピースは、白色で、ナイスバディが強調されているが、シェルのワンピースは黒色の面積が大きいものだった。胸の大きな白い布にシェルと大きく描かれているのは何ですか?
『あれは、スクール水着と言って、一部の男性に超人気の水着です。』
聞いてもいない無駄知識有難う。それにしても、シェルは、あんなに胸が膨らんでいたっけ?この前は、まだペッタンコだった筈なのに。
ミキさんは、極端に布地面積が少ない水着だった。股間を直視するのが恥ずかしいい位だったが、しっかり見てあげた。
シロッコさんは、水着ではなかった。紐だ。紐パンだ。胸は、貝殻と紐のセットだ。いくら、モシャモシャが生えないエルフだと言っても、それじゃあ、身が見えますよ。それに、シズのお婆さんなんだから、歳を考えてください。
ドミノちゃんは、パンツ一つで走り回って、ジルちゃんに追いかけられていた。
レオンちゃんは、スッポンポンだ。まあ、この国では、3歳用の水着は売ってないので、仕方がない。でも、砂遊びをしたらよく洗いましょうね。
ゴロタは、海にも入らず、バーベキューの準備だ。昨日のうちに下拵えをしておいた肉や魚介類を串に刺す。バーベキューコンロに串を並べる。一度に20本が並べられる大きなコンロだ。
和の国で購入したかき氷機に氷をセットする。氷は、氷魔法で凍らせて作ったものだ。
氷の下は、3枚のカンナの歯だ。シロップは、赤や緑、黄色のものをクレスタが作ってくれていた。
練乳と小豆も準備する。最後は、テントに青と白の模様に青い文字が書かれた旗をぶら下げる。この旗が無いと、かき氷を作ってはいけないそうだ。
ドミノちゃんが、波打ち際で、大きなお城を作っている。ようやく完成かと思ったら、レオナちゃんが壊してしまった。ドミノちゃんが、涙目になっている。ゴロタは、そっと復元してあげた。
昼食後、レオナちゃんはお昼寝だ。ドミノちゃんも眠そうだ。ビーチチェアを人数分セットする。竹パイプの骨組みに葦の枝を編んだ物を張っている。青と白のビーチパラソルもセットだ。このパラソルは、ダッシュさんに作って貰ったものだ。ダッシュさんは、見習い達に大量に作らせて王都で売り出している。3ヶ月先まで注文が一杯だそうだ。
ダッシュさんは、この夏ずっと休み無しだそうだ。さっき、ジルちゃん達が歌っていた歌を思い出す。
♪稼ぐにおひつく貧乏なくて
♪名物鍛冶屋は日日に繁昌
♪あたりに類なき仕事のほまれ
♪槌うつ響にまして高し
突然、イフちゃんの声が聞こえた。
『ゴロタよ。気を付けるのじゃ。水竜じゃ。大きいぞ。』
どうやら、沖合いから大型水竜が接近しているようだ。ときどき大きなセビレが海面の上に出てくる。シルフが変な曲を唄い出した。
ジャージャン!ジャージャン!ジャージャン!
うるさい。変に恐怖心を誘うメロディだ。ゴロタは、念動で水竜を空中に浮かばせる。水竜はジタバタしているが、そのうちぐったりして来た。ゴロタは、そのままイフクロークに入れてしまった。
夕方、西の海に太陽が沈み始めると、全員でタイタニック号に乗り込む。そのまま、海の中に入っていく。防水シールドを張っているので、浸水することはない。皆で、屋根の上に飛び乗る。潮風が気持ちよい。シェルが、先頭付近で、両手を拡げる。ゴロタが、後ろから腰を持って支える。
以前、どこかでやってあげた気がする。それを見た女性陣は、全員、やりたがったので、順番でしてあげた。全員が終わったときは、とっぷりと日が暮れてしまった。今日は、シーサイド町のホテルに泊まるため、スイートルームを2室予約している。
夕食前に、全員の背中や腕の治療をする。ヒールをかけてやるのだ。ノエルやジェーンだって出来るのに、皆、ゴロタにやって貰いたがった。その後、貸し切りの露天風呂に皆で入る。
シェルが、シロッコさんとミキさんに警戒心を露にしていた。ゴロタの右隣をシェルが、左隣をエーデルが防御している。しかし、エーデルは、ゴロタの左腕を自分の大切な所に持っていっているので、防御には全く役に立っていなかった。
夕食は、海鮮尽くしだった。20歳以上の女性は、ワインや和の国のお酒を飲んでいたが、ゴロタだけは、マンゴージュースだった。海鮮料理の内、エビのスープは絶品だった。
エビの殻と身を分け、エビの殻とレモングラス、オレンジ系の葉、青唐辛子、ショウガの仲間を鳥のスープで煮て出汁を取っている。それに魚醤と辛子オイル、ライムの汁などを入れて煮込み、プックリとしたエビの身を大きいまま入れて、海ホオズキやキクラゲなどを入れて出来上がりだ。それに、お好みで青臭い草を混ぜるが、ゴロタは、この香草はあまり好きではなかった。シェルは、このちょっと青臭い香草をサラダにして食べていた。ゴロタは、香草の代わりにココナッツミルクを混ぜて食べている。
夕食の最後の方に、和の国の寿司が出て来た。ミキさんは、初めて食べる生の魚料理に恐る恐るだったが、食べてみて美味しかったらしく、どんどん食べ続けている。しかし、すし飯と刺身を分けて別々に食べるのは、どうかと思うが、好みの問題なので、黙っていた。キキちゃんは、公爵邸のシェフが何度か作ってくれたみたいで、普通に食べていた。
デザートはデコレーションケーキだ。14本の蝋燭が立っている。キキちゃんの誕生祝も兼ねている。皆で、お誕生日の唄を歌った。キキちゃんが、口をとがらせて、蝋燭の火を消す。それから、キキちゃんにプレゼントだ。ダイヤの髪飾りだ。金貨3枚程度だが、キキちゃんは、じっと髪飾りを見ていた。そのうち、シクシク泣き出してしまった。ゴロタには、泣いた理由が分からなかった。シェルがキキちゃんの肩を優しく抱いていた。
夜、ゴロタは大きなベッドに独りで寝ていたが、その内、ジルちゃんやジェリーちゃん達高校生軍団と、キキちゃん以下のお子ちゃま達も一緒に寝ていた。とても狭かった。
あれ、ミキさん、何であなたが子供達と一緒なんですか?シェルが怒りますよ。直ぐに、シェルが飛んできて、ミキさんを引きはがしていた。
次の日、またビーチに行って、今度は、皆で、タイタニック号に乗って、海底遊覧をすることになった。防水シールドを掛けているので、海水が入ってくることは無かったが、浮力が凄くて、念動で鎮めるのに苦労した。今度は、専用の潜水艇を作ろうかと思っている。
『潜水艇の設計図をお送りしましょうか?』
いや、シルフの設計図は、失われた技術が盛りだくさんなので、余り参考になりません。
お昼過ぎに、領主館に帰って来た。皆、満足しているようだったが、クレスタが何かを真剣に考えているようだった。聞いてみると、夏の間、あそこに店を開き、営業したらかなり儲かる筈だと言うのだ。街の相場の倍の値段でも、必ず売れると言うのだが、それは、もっと後にしようという事になった。
シロッコさんの水着、皆さんに見せたい位です。想像するだけで、鼻血が出ます。