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第308話 カーマン王国衛士隊本部

カーマン王国の人身売買組織は、衛士隊の皆さんと殲滅します。

(6月4日です。)

  カーマン王国衛士隊本部は、王城の真北にあった。煉瓦作りの4階建てで、裏には、練兵場と訓練道場そして、馬場があった。衛士隊本部長は、さっき、謁見の間にいた閣僚の一人で、ゴロタの目的を聞くと全面的に協力することになった。


  実は、人身売買組織の末端構成員は、3名程確保しているのだが、なかなか口を割らず、アジトやボスの実態が分からないそうだ。この王国でも人身売買や、金銭での奴隷は禁止されており、犯罪奴隷がわずかに鉱山等で働いているだけだそうだ。


  しかし、人種の坩堝のこの王国では、亜人を売買する風習がまだあるらしい。辺鄙な農園等で働かされていると、なかなか目が届かないらしいのだ。


  ゴロタは、留置場に拘留されている組織の末端構成員を取り調べてみることにした。留置場の隣の部屋が、尋問室兼拷問室だ。


  ゴロタは、尋問室で待っていると、1人の若い男が連れてこられた。目付きが鋭いが、卑しさが口元に出ているいわゆるゴロツキ特有の顔をしている。


  ゴロタの尋問が始まった。拷問などしない。その男は、椅子に座らせられた事に吃驚していた。今まで、直ぐに拷問を受けていたのだろう。


  「まず名前から聞こうか?」


  「へ、名前なんかねえ。あっても喋るもんか。」


  減らず口を叩く。顔を見れば、今までどんな拷問を受けて来たのか分かる。それでも口を割らないのは、組織の報復の方が怖いのだろう。ゴロタは、次の質問をした。


  「ボスは、一体どこの誰だ。」


  「お前みたいな若造に応える訳ねえだろう。」


  「アジトは、どこだ。」


  「うるせえ、早く処刑しやがれ。」


  男は、後ろの衛士に頭を小突かれていた。ゴロタは、諦めて『威嚇』を使った。ゴロツキの顔つきが、急に情けない顔になった。涙を流し始めたのだ。ゴロタは、同じ質問をもう一度繰り返した。全ての質問に答えてくれた。


  ボスは、この街でも大商人で通っているザンスという男で、ザンス商会の倉庫が、人身売買のアジト兼奴隷小屋となっている。仲間は、50人位で、奴隷や売却予定の子供達が合わせて90人位いるそうだ。


  全て白状した男は、顔が真っ青になって震えている。この男は、どっち道死刑か奴隷落ちだ。組織に殺されるのとどっちが良いのか分からない。


  ゴロタ達は、衛士隊200名と共に、アジトのザンス商会倉庫に向かった。そこは、町はずれの倉庫街で、人通りも少ない場所だった。目的の倉庫の前には、6頭立ての馬車が止まっており、馬車は、大きなほろで覆われていて、何が積まれているか分からない状況だった。物陰から様子を見ていると、獣人たちが馬車から降ろされていた。


  あと、かなり立派な馬車が何台か停まっていた。あの馬車は、奴隷や子供を買いに来た奴らのものだろう。


  ゴロタ達は、アジトを急襲することにした。最初に、衛士隊の人達がアジトを取り囲んだ。ゴロタは、ゆっくりとアジトの扉に近づいた。クレスタが『キルケの杖』を振りかざして、扉を凍り付かせる。その後、土魔法で、土台を持ち上げたら、扉は粉々に砕けてしまった。


  ゴロタは、扉だった物の残骸を跨いで、中に入って行く。中には、ゴロツキどもと奴隷や子供を買いに来た奴らが部屋の隅に固まっていた。突然、大きなドアが凍って砕けたのだ。逃げ出したくなる気持ちにもなるだろう。


  衛士隊の本隊がなだれ込んで、大捕り物が始まった。抵抗する奴らは、衛士隊によって切り殺されていた。素直に投降する者は、足枷をしてその場に転がされていた。ゴロタは、奥の方に進んでいく。大きな檻がいくつも置かれていた。隣同士が見えないように目隠しの布がかぶせられているが、人間の男の檻、女の檻、男の子の檻、女の子の檻、それに獣人の檻が二つ、獣人たちは男女混合だった。ただ、兎人の女だけは、別の檻に入れられていた。


  ほとんどが、裸同然の恰好だった。


  女の子の中には、股間から出血している子もいた。おそらく売られる前に味見されたのだろう。酷い事をする。ゴロタは、その子の股間を元に戻してあげた。


  倉庫内が静かになった。ほとんどのゴロツキが殲滅されたのだろう。ゴロタは、投降したゴロツキに、ボスの所在を聞いた。まだ、ザンス商会の本店事務所にいるはずだと答えてくれた。衛士隊に聞いたら、王城の近くで、ゴロタ達が泊まっているホテルの隣だった。


  ゴロタは、ホテルの前にゲートを繋げた。倉庫には、最低限の衛士隊、投降者の見張りと奴隷たちの保護の要員以外全員がゲートを使って転移した。


  ザンス商会は、衛士隊に囲まれ、全員が検挙された。ザンス商会の資産は全て押収されてしまった。ボスのザンスの自宅や愛妾の家なども全て捜索対象だった。押収金品は莫大なもので、小さな貴族領の年収分以上あったそうだ。


  解放された奴隷たちは、それぞれ郷里に返されたが、中には両親に売られた子供もいたので、事情を聴取し、孤児院に入るか郷里に帰るかを選択させることにした。


  その後の措置は、カーマン王国に委ねることになったが、保護された子供達の中で、グレーテル王国出身者については、ゴロタが保護することにした。調べてみると、4人程いた。皆、10歳以上の子供達だった。きっと、10歳になってから売られてきたのだろう。ゴロタは、今日は子供達と一緒にホテルに泊まることにした。本当は、直ぐにタイタン領に帰り、子供達を親元に返したかったが、カーマン国王陛下がどうしても叙勲したいので、明日まで王都に滞在してくれと頼まれたのだ。


  ゴロタは、これ以上、勲章が増えても、もう付ける場所がないので辞退したかったが、それは外交上、失礼に当たるという事で、叙勲を受けることにしたのである。


  次の日の午後、国王陛下から勲章を貰うまでの間、衛士隊本部の演習場でクレスタの魔法実演を披露することになった。それとゴロタが剣の稽古をつけることになってしまった。


  いつものパターンだが、最近、忙しいせいか、ずっと朝の稽古をしていないので、身体がなまっていないか調べようと思い、要請を受けたのだ。


  最初に、クレスタが魔法の技を披露することにした。事前に伝えておいたので、カーマン王国の魔導士団の殆どの人が見学に来ていた。


  クレスタは、それなりの雰囲気を出すために、魔導服を着て、大きなつばの付いた三角帽子を被っている。手には、もちろん『キルケの杖』を持っている。


  クレスタは、杖を高く掲げた。杖が、真っ赤に光る。クレスタの立っていた場所が半径10mの円柱になって持ち上がる。持ち上がる速度も半端ない。あっという間に、高さ30m位になってしまった。次に、クレスタの杖が白く光り、アイスシャベリンを30本位宙に出現させる。それをウインドスパイラルで、回転させながら、周囲の地面にアイスシャベリンを突き立てて行く。最後に、氷の柱を作ってから、一瞬で、粉々に砕いてマジックショーが終了した。クレスタは、風魔法をうまくコントロールして高さ30mの土の土台の上から降りて来た。


  魔導士団の人達は、初めて見る極大魔法のラッシュに目が点なんてものではなかった。中には、泣き出す者もいた。誰かが、魔王の再来とつぶやいていた。ああ、クレスタは遂に魔王になってしまったようだ。


  すべてが終了したので、クレスタは、演習場をもとの状態に戻してやった。


  次に、道場で衛士隊とゴロタの稽古だった。ゴロタは、柳の細枝で木刀を作り、ゆっくりと前に進む。衛士隊は、一度に10人が掛かってくることになっている。衛士隊は、円陣を組んで、ゴロタを取り囲む。


  ゴロタは、ゆっくりと柳の枝を振りかぶる。次の瞬間、ゴロタが消えてしまった。いや、1人の衛士隊員の前に立っていたのだ。


    ビシッ!


  その衛士隊員の右手親指の付け根を、柳の木刀が当たった。木刀は、しなる位細いのだが、それでも衛士隊員は、持っていた木刀を取り落としてしまった。


  ゴロタは、円陣の反対側に移動して、そこでも同じく


    ピシッ!


  10回繰り返したところで、木刀を持っている衛士隊員は、1人もいなかった。勇敢な衛士隊員の一人が、徒手でゴロタにつかみかかって来た。ゴロタは、黙って、腕と胸を掴ませてやった。しかし、ゴロタを投げ飛ばそうとした隊員は、その場で固まってしまった。ゴロタがビクともしないのだ。ゴロタは、ゆっくりと衛士隊員の腕をつかんで、ポイッと投げ捨てた。傍に立っていた衛士隊員もろ共吹き飛んでしまった。


  ゴロタは、『飛翔』で浮かび上がり、急降下すると同時に殆どの衛士隊員を投げ飛ばしていた。残ったのは、一番大きな衛士隊員だった。当然、木刀は取り落としたままだ。ゴロタは、その隊員の胸倉と股間の間に手を回し、高々と持ち上げた。衛士隊員は、なす術もなくゴロタの頭上で参ったをした。


  これで、稽古は終わってしまった。ゴロタにとっては、稽古にならなかったが、此処にいる衛士隊員にとっては良い経験になっただろう。


  午後、カーマン国王陛下から叙勲された。勲章は


    『勲1等ドミオン功績章』


  と言うものらしい。ドミオンとは、この国の建国の祖の名前らしいが、この国の勲章としては最上位のものらしい。名称は短いが、勲章の大きさは、今まで貰った物の中で最も大きい物だった。もう、完全に付けるところがない。


  その後、保護した4人の子供達と共に、タイタン市に戻り、子供達の処遇はフミさんに任せることにした。4人のうち、男の子2人は、北の貧しいサンタ村から誘拐されてきたらしい。両親は、健在らしいので、衛士隊に引き渡して、連れて行ってもらう。女の子のうち1人は、あのニモ村の出身で、両親が死んでしまい、ブリンク市で浮浪者のような生活をしているところを拾われたらしい。


  もう1人の女の子は、ケンタ村の出身で、母親しかおらず、人買いに売られたらしい。もう、母親が何処に行ったかもわからないだろう。


  この女の子2人は、フミさんの孤児院で暮らすことになった。

クレスタさんは、平素は、ケーキやお菓子を作っているのですが、戦わせたら、とても戦闘力が高く、チートな実力です。怖いです。

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