表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
308/753

第306話 サートン湾に港を作ります。

公益のための港を作るのは大変です。

(6月1日です。)

  今日は、王都に行って、グレーテル国王陛下に謁見する。帝国タイタン領と王国との交易のためだ。現在、王国と帝国の間には、ダンベル辺境伯領のブロンズ村しか通行を認めていない。昔、帝国が侵攻してきたことがあり、以来、国境の防備を固めている。


  ダンベル辺境伯の最北端の村モコ村と帝国タイタン領の旧サートン村、今はサートン湾だが、そこを結んで、交易船を就航させたいのだ。


  グレーテル国王陛下は、あの辺が、深い森と険しい谷になっており、交易路には適さないはずだがと言ったが、王国には負担はかけないので、是非お願いしますと言って、了解を貰ってしまった。


  早速、バンブー建設に現場測量をお願いした。最近は、事業拡張と競争会社の吸収合併で、王都の本社機能も拡大したらしく、社名を『バンブーセントラル建設会社』と改称したらしい。しかし長いので、今まで通り、バンブー建設だ。


  港湾整備は、かなり経費もかかるし、期間もかかるそうだ。取り敢えず、設計図を書いてもらう。アクセス道路もだ。大型の馬車がすれ違えるだけの幅の道路を整備しなければならない。


  主に農産品や鉱山資源を王国に輸出し、工業製品を輸入したい。そのためにも、大規模な集荷地を作る予定だ。


  土木工事は、土魔法を駆使して、短期館で完成させようと思っている。


  ジルちゃんにジェリーちゃん、キキちゃんも、土魔法の適性があるようなので、頑張ってもらうつもりだ。魔力アップも図れるし、一石二鳥だ。


  ゴロタは、シーサイド村の造船職人のところへ行き、渓谷を渡れる最大級の船をお願いした。できれば馬車と荷物と人間が一度に運べる船を2隻造船して貰いたい。


  ドッグは、シーサイド村のドッグを使って貰う。一度に2隻が難しければ取り敢えず1隻にして早急に造船して貰うことにした。当然、動力はジェット噴射だ。


  さあ、後は町づくりだ。ホテル、レストランそれにお土産物屋。忘れてならない娼館に風俗店。後、大規模倉庫。全てをバンブーさんに建設して貰う。


  ゴロタは、クレスタと一緒にサートン湾に転移した。湾の波打ち際を垂直に削り落とす。水深50m以上の岸壁を作って行く。


  建造を頼んでいる交易船は、喫水が浅い平底船なので、十分なはずだ。ただ、渇水期でも、渡河できるように深くしている。


  後、グレーテル王国側の急峻な谷に、つづら折りで森の入り口まで上がる道を作る。それから、道が崩れないように、斜面を煉瓦で固めて行く。


  2人で森の中を入って見た。道はないが、歩けないことはない。しかし、下草がびっしり生えていて歩きにくい。何か、大型の獣の気配がする。注意すると、クマだと言うことが分かったので、放っておく。此方から危害を加えなければ、向こうから勝手に逃げて行く。


  サートン湾に戻ると、クレスタが疲れたと言ってきたので、少し休むことにした。汗ばんでいたので、お風呂に入りたい。静かな湾を臨む高台にお風呂を作る。2人で入ったら、すぐに求めてきた。


  あの、クレスタさん。疲れたのでは無いですか。クレスタは、グッタリ動けなくなるまで、疲れてしまった。


  開港予定は、来年の5月1日にした。


  その頃には、衛士隊も600人以上は増員できている筈だ。現在、出生数以上に王国や帝国からの転入者が多くなっている。


  それに応じて、学校、病院等のインフラ整備と市役所や行政庁などの行政機関、それに司法庁、刑務所等の統治機関も整備拡充しなければならない。


  しかし、圧倒的に足りないのは、衛士隊員の数だ。現在、タイタン領騎士団はタイタン市の本部にいる300人のみだ。当分、これ以上増員するつもりは無い。


  もし、他国や他の貴族が進行してきたら、ゴロタ1人で対処する予定だ。従って、当面は儀礼用に訓練している毎日だった。


-----/----------/----------/-----


  次の日、港湾の運営を視察するため、シェルと一緒にシーサイド町に行ってみる。カーマン王国のナチュラル市と交易が盛んになり、人口が随分と増えたようだ。


  人口増加に伴い、現在、インフラ整備が盛んだ。まず、学校や病院、教会も建設中だった。それに、住宅も大規模集合住宅が随分できていた。


  港湾事務所に寄ってみると、所長が丁寧に案内をしてくれた。市長のムライさんも直ぐに来るそうだ。不味い、以前、夕食を一緒にする約束をして、そのままだった。


  しょうがないので、今日は、シーサイド町のホテルに泊まることにして、ホテルの予約をお願いした。


  実際に視察すると、港湾の運営は、結構大変だった。船が到着すると、人の下船それに入国審査、税関となる。それと荷物だ。荷物も、荷下ろしと検査、保税倉庫への収納と税関の審査そして引き渡しだ。


  船が出る時はこの逆だった。今は、昔と違って職員が偉そうにして、賄賂を貰って通過などと言うことはない。収賄の罪は、重罪だ。軽くて奴隷落ち、収賄金額が金貨1枚以上の場合は、死罪だ。


  入出国管理事務所は、大勢の申請者で混んでいた。入国者は、ゴーダ共和国やカーマン王国の領事館からの入国許可を確認する。また、出国者は事務所に併設されている領事館の入国許可を確認して乗船を認めている。


  街には、新しいホテルやレストランが軒を連ねている。全て、バルーン・セントラル建設が受注して建てたらしい。大陸一の建設会社のようだ。


  暫く、人の流れを見ていたら、変な様子の男の子が数人いるのに気がついた。バラバラだが、何故か皆、隠れるようにして旅行者達を見ている。


  その内、1人の男の子が目配せをして手を上げた。旅行者らしき中年の女性が、大きなバッグを持って歩いている。5〜6歳位の男の子が、その女性の方に走って行った。ドンとぶつかり派手に転んだ。


  大きな声で泣き出した。女の人は、オロオロして、男の子を抱き抱える。荷物は、そこに置きっぱなしだ。


  荷物の事なんか眼中にない女の人が、通りがかりの町の人に、声をかけている。その隙に、2人の男の子が荷物を漁っている。袋から銀貨2枚を取り出して、後は元に戻して走り去っていった。


  泣いていた男の子が、手を振り解き、


  「オバちゃん、ゴメン。」


  と、謝って、走り去って行った。女の人は、何も気づかずに荷物を持って歩き出し始めた。


  シェルが、女の人に声をかける。


  「すみません。今、あなたのバッグの中から、銀貨2枚を盗んだ子達が、逃げていったようですよ。」


  女の人は、慌ててバッグの中を確認していた。確かに2枚、足りなくなっているようだ。女の人は深いため息をついて、『あんな小さな子が。』と言って、諦めたように港に向かって行った。


  ゴロタは、逃げていった子供達の跡を尾けて行った。子供の匂いは、特徴的なので、迷わず追跡できる。


  子供達は、一直線に郊外に向かっている。郊外の街道から外れたところに、その家はあった。見たところ、普通の農家の様だったが、違うのは子供達が異様に多い事だった。


  家の中から女の声が聞こえてきた。


  「あんた達、今日の食い扶持、ちゃんと稼いで来たみたいだね。ほら、銀貨2枚、出して見な。」


  何やらモゾモゾする音がしたと思ったら、銀貨2枚を叩く音がした。ゴロタは、シェルと一緒に、暫く森の影に隠れていた。また子供達が帰ってきた。今度は、女の子達だ。


  「あんた達、今日の食い扶持、ちゃんと稼いで来たんだろうね。いつだって穀潰しなんだから。ほら、銀貨2枚、出して見な。」


  お金を出す音が聞こえる。


  「なんだい、これは。大銅貨3枚、これじゃあ1人分だね。後は、スープの残りだけだよ。スープだって、タダじゃあないんだ。」


  シェルには聞こえていないが、念話で伝えているので、ワナワナと震えている。


  まだ様子を見ていると、今度は、街の方から大きな男が帰ってきた。髭だらけの大男だ。年は50位だろうか。


  男は、家に入ると、女から今日の売り上げを聞いていた。女の子達の売り上げが少ないと聞くと、殴りつける音が聞こえた。それも何人分もだ。


  シェルが、我慢できずに飛び出す。玄関のドアを、風で吹き飛ばす。もの凄い音を立てて、千切れたドアが何処かに飛んでいく。


  中に入ると、右手を上に挙げて何かを投げる様な素振りをした。ウインドアロウの鋭い矢が、男と女の右腕に突き刺さる。突き刺さっても、空気の渦が、傷口を広げていく。ついには、右腕が千切れ落ちてしまった。


  ゴロタが、2人の傷口を塞いでやり。家の中には、男の子が5人、女の子が7人いた。一番大きい子でも、8歳位だろうか。小さな子は、4〜5歳位だ。


  一番年上そうな男の子に事情を聴いたら、この子達は、皆、北の村からから連れて来られたそうだ。10歳になると南の大陸の非合法の奴隷取引市場で、売られてしまうらしい。南の大陸でも、10歳未満の子供を奴隷として売ると死罪だ。


  大きくなるまで、この家で育てられているが、毎日、荷物運びやゴミ拾いの仕事をして食費を稼がされた。今日のように、稼ぎが少ないと、夕食を抜かされたりしていたらしい。


  今日、街で盗みをしていた男の子に、いつもしているのか聞くと、最近始めたばかりだそうだ。銀貨2枚だけにしたのは、それ以上あっても、全部とられてしまうし、盗まれる人が可哀想だからだそうだ。


  後、女の子は、夜になると、男にサービスをさせられるそうだ。あそこを触られたり、男の大きなものを口に入れられたりされたそうだ。それ以上のことをされなかったのは、商品価値を下げないためだろう。男の子も何人かはさせられたらしい。


  ゴロタは、ゲートをタイタン市にあるフミさんの孤児院まで繋げ、シェルに連れていって貰った。この男どもの措置はゴロタがする。


  男達は、右腕の痛みで動けないでいる。ゴロタは、男に向かって聞いた。


  「僕が誰か知っているか?」


  二人は、首を横に振る。


  「僕は、ここの領主のゴロタだ。」


  「え、り、領主?ゴロタ?」


  「せ、せ、殲滅の」


 二人は、この世界から存在しなくなった。

子供を犠牲にすることを、ゴロタは一番憎みます。必ず殲滅します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ