表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
307/753

第305話 ドミノちゃんは、おしゃまな小学生です。

キキちゃんは、まだまだ子供でした。

(5月25日です。)

  ゴロタは、今日、キキちゃんの通っている中学校の先生から呼び出しがあった。どうもキキちゃんがいじめに遭っているみたいだそうだ。


  ゴロタとシロッコさんが、担任と教頭先生から話を聞く。


  女の子のイジメは陰湿らしい。靴に画鋲が入っていたり、体操服を隠されたりとか、とにかく面と向かっては仲の良いフリをして陰でイジメをするのだ。


  キキちゃんは、小さい時に両親を亡くし、7つ年上のココ君と2人で暮らしてきた。キキちゃんだけ孤児院に入っても良かったのだが、お兄ちゃんと別れたくないと、孤児院には入らなかったのだ。


  ココ君は、最初は、ポーターとして小遣い稼ぎ位しか収入が無かったため、キキちゃんも随分貧しく辛い思いをしたらしい。学校でも、親がいないことを馬鹿にされたり、教会から貰った古着を着ているからと、仲間外れにされていたそうだ。


  ココ君が冒険者として稼ぐようになってからは、流石に食べる物がないと言うことは無くなったが、貧しい事には変わりが無い。衣服や教材はお古をもらっていた。


  そんなキキちゃんが、2週間前からお貴族様のお屋敷に住み、お姫様のような服を着て、馬車で送り迎えをされたら、同じ年の女の子は、面白く無いのに決まっている。スクールカーストの最底辺階層が、突然、自分たちよりも上の立場になったのだ。元々、頭が良く可愛い美少女だったキキちゃんは、皆より下の位置にいたからバランスが取れていたのだ。


  それで、いままで以上にイジメが激しくなってしまったのだ。昨日は、教科書やノートが校庭にばら撒かれていたそうだ。


  教頭先生の提案では、このままではキキちゃんも辛いだろうし、学校の規律も守れなくなるので、転校するか、家庭教師から教わったらどうかと言われた。


  しかし、いじめる子達をそのままにして、いじめられる子を転校させるのは、問題の本質が違うような気がする。まず、イジメを無くすことが先だと思うのだ。先生は、黙ってしまった。


  ゴロタは、クラスの子達を集めて貰いたいと言った。今、ちょうど教室に集まっているらしい。当然、キキちゃんもいる。ゴロタは、担任と教頭を引き連れて教室に向かう。


  ゴロタ達が教室に入っていくと、女生徒達から歓声が上がった。王都でも、ゴロタは憧れのアイドルなのだ。教頭先生が大きな声で静かにさせる。ゴロタが、生徒達に質問した。


  「クラスのキキ君がイジメに遭ってるそうです。心当たりの子は、手を挙げて下さい。」


  当然、誰も手を上げない。ゴロタは、少しだけ『威嚇』を使った。何人かの女の子が手を挙げた。皆、吃驚した顔をしている。何故、自分は手を上げているのだろうと思っているようだ。


  ゴロタは、一番手前の子を指差し、


  「君は何をしたのかな?」


  「キキちゃんの教科書を、掃除用具入れに隠しました。」


  「君は?」


  次の子に聞いた。


  「キキちゃんの上履きに画鋲を入れました。」


  「キキちゃんの机の中に、『死ね!』と書いた紙を入れました。」


  「キキちゃんの宿題をゴミ箱に捨てました。」


  「キキちゃんの給食を、わざとひっくり返しました。」


  皆、泣きながら答えている。聞いているだけで、気分が悪くなる。


  それを聞いていた、先生が理由を聞いていた。今まで、貧しくヒエラルキーの最下層にいたのに、急にゴロタ様から保護されるなんて絶対に許されないと思われていたそうだ。


  ゴロタは、キキちゃんを連れて、その場からタイタン学院中等部の職員室に転移した。転校手続きをとるためだった。こんな子たちのいる学校には1秒だって通わせられない。


-----/---------/---------/----


  キキちゃんは、今、王都の公爵邸でシロッコさんと一緒に暮らしている。毎朝、ゲート部屋からタイタン市の領主館のゲート部屋に転移し、ドミノちゃんと一緒に登校しているのだ。制服ができるまでは、王都で買ったお姫様ドレスだ。


  年回りは、ジェリーちゃん達とドミノちゃんの真ん中位だ。ジェリーちゃん達は、キキちゃんと2つ違いだが、花の高1トリオの中に入って行くのは、敷居が高いようだ。それで、ドミノちゃんと一緒に登校するのだが、1時間、並木道を歩きながら、色々とお話をする。王都のスイーツの話や、最近はやっている洋服などの話の他に、やはり男子の話が多い。


  ドミノちゃんが、キキちゃんとゴロタさんとの出会いを聞いてきたので、6年前の冬、王都の冒険者ギルドでの出会いについて、話してあげた。


  ドミノちゃんは、信じられない顔をしながら、それで結婚の約束をしたのかと聞いて来た。


  え、結婚の約束。考えてみれば、そんな約束は無かったような気がする。ただ、翌年のチョコレートの日に、キキちゃんは、自分なりにとても小さなチョコレートを作って、ゴロタさんに上げたのだ。そのとき、ニッコリ笑って受け取ってくれたことだけは、はっきりと覚えている。


  あれは、自分の愛の告白を受け止めてくれたんだと思う。その事をドミノちゃんに言うと、それだけでは弱いと言うのだ。キスをしなければダメだそうだ。


  キキちゃんは、ゴロタとお休みのキスをしたことはあるが、それは頬っぺたにされるだけだった。


  ドミノちゃんは、自分は、ゴロタさんと一緒のベッドに寝ているが、キキちゃんはどうだと聞いてきた。最初の夜、一緒のベッドで寝たが、それから自分は、王都の公爵邸で寝ているので、それ以来、1度もない。


  ドミノちゃんも、ゴロタが、妻と寝るときは、寝室からニース・タウンの別荘に転移していることは知らないのだが、自分の方が勝ったと思い、少し得意気だった。


  ドミノちゃんは、学校では人気者らしい。王国では、数が少ない魔人族だし、顔が可愛らしいし、何より、小学5年生の割には、身体が極端に小さい。魔人族の中でも小人族の気質を継いでいるので、大きくなっても120センチ~140センチ位だ。もうボーイフレンドが3人もいて、皆、将来結婚してくれと言われているらしい。


  キキちゃんは、吃驚していた。ボーイフレンドというものが、子供達の間では特定の男の子と特別の関係になり、あんな事やこんな事をするらしいのだが、当然、キキちゃんにはそういう存在は今までいなかった。


  話を聞いていると、ドミノちゃんは、自分とはずいぶん違う生活をしているような気がした。でも、うらやましいとは思わなかった。ゴロタさん以外の男の人が自分を好きになってくれても、きっと困ると思うのだ。何故なら、自分は、きっとゴロタさんと結婚するはずだから。


  ドミノちゃんは、ゴロタの妻や婚約者の事も話してくれた。現在、8人の妻がいるが、正妻は、シェルナブール様、略してシェルさんだそうだ。


  シェルさんは、6年前の時もいたので、キキちゃんはよく覚えていた。とても可愛い超絶美少女だったので、一度見たら忘れる訳がない。


  そういえば、あの頃のゴロタさんも超絶美少年(少女)だったような気がする。顔付は変わらないが、身長があんなに大きくなるなんて、絶対に違反だと思う。自分は、発育不良なのか、中学2年生でも、まだ女の印は無いし、胸も小さいし、身長もクラスでは一番前の方だし。


  ドミノちゃんが、自分はもう女なので、いつでもゴロタさんを受け入れる用意があると言い始めた。そういえば、身体は小さいのに、胸も少し膨らんでいる。キキちゃんは、魔人族が早熟だという事を知らないので、自分が凄く成長が遅い気がしてきた。今度、シロッコさんに聞いてみよう。


  タイタン学院の正門を入ると、初等部は、右側、中等部は左側にある。高等部と大学は、別の敷地になっている。ドミノちゃんと別れてから、クラスまでボンヤリ歩いていると、クラス委員のミドリさんが声を掛けてくれた。ミドリさんは、兎人の女の子だ。凄く可愛いので、クラスでも人気者だ。胸も、それなりに大きい。


  ミドリさんは、色々ドミノちゃんの世話をしてくれる。教科書は、転校初日に学校から貰ったので勉強には不自由していないが、校内の地理や、学校行事と日常生活については、教えて貰うことが一杯だ。


  王都の、公立中学校と一番違うのは、給食だ。前の学校では、バンと牛乳は学校が準備するが、バターやジャムそれにおかずなどは、自分で用意しなくてはならなかった。当然、キキちゃんは、何も準備できないので、パンを牛乳に浸して食べるだけだった。たまに、昨日の残りのジャガイモなどを持って来ると、『主食のおかずが、主食か。』とからかわれたので、あまり持って行かない事にした。


  此処では、好きなおかずの皿を自分で選んでいいことになっている。但し、おかずの乗っている皿には色が付いていて、全部で3色の皿を取らなければならない。赤い皿がお肉やお魚、青い皿がお芋や穀類、そして緑の皿が野菜や果物だ。パンやお粥は食べ放題だ。それに牛乳とバター、チーズ、ジャムも取り放題だった。


  キキちゃんは、このまま食べ続けていると絶対に太ってしまうと思うのだが、みんな美味しいので、つい余分に取ってしまう。公爵邸のお風呂には、体重計と言うものがあるのだが、最近、あまり測っていない。というか、測るのが怖い。


  帰りは、ドミノちゃんと待ち合わせて帰ることが多いのだが、シェルさんから、寄り道をしないで真っすぐ帰るように言われている。その言いつけは、キチンと守っているドミノちゃんだった。


  ある日、ドミノちゃんが、スイーツを食べに行こうと言った。真っすぐ帰らないと叱られると言ったのだが、大丈夫だからと言って、タイタン市のケーキ屋さんに入って行った。


  この店は、クレスタさんというゴロタさんのお嫁さんが経営している店だそうで、2階で、好きなケーキを食べることが出来るそうだ。こんな店に入るのは、初めてのキキちゃんだったが、お金も持っていないし、シェルさんに怒られるのが怖いので、早く帰りたかった。


  しかし、ドミノちゃんが注文したケーキは、甘くてとても美味しかった。ティラミスというケーキだそうだ。驚いたのは、そのケーキ代をドミノちゃんが平気で支払っている事だった。大銅貨1枚以上だ。そんな大金を自分で使ったことはないので、黙って見ていると、ドミノちゃんが聞いてきた。


  「シェルさんから、お小遣い貰ってないの?言えば、好きなだけくれるわよ。」


  え、好きなだけって、お小遣いと言うものがどんな物なのか良く知らないが、好きなだけお金をくれるのかしら。それって、何故?


  疑問だらけのキキちゃんでした。

ドミノちゃんは、人間族とは違う成長をするみたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ