表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
300/753

第298話 シズちゃんと結婚してしまいました。

いよいよ、第300話になってしまいました。書き始めたころは、100話もいけば良いかなと思っていたのですが、こんなに長くなるとは思いませんでした。

(4月15日です。)

  今日は、ヘンデル帝国タイタン侯爵領内の市町村会議だ。ハルバラ市の旧郡庁、今は帝国タイタン侯爵領行政庁の大会議室に、全ての市町村長が集まっている。中には、急遽村長に選ばれた者や、亡くなった村長の奥さんや息子さんが後を継いでいる人もいた。行政機構は簡単だ。国の防衛や司法権などは、タイタン侯爵が担当し、市町村長は、住民自治の代表者となるのだ。


  徴税権はない。その代わり、行政費用はタイタン侯爵が負担するので、帝国とタイタン公爵への納税義務がある。ただし、今年の税及び年貢は免除とする。帝国への納税が10%、侯爵への納税が15%を基準にすると言ったら、皆、吃驚していた。今まで市町村に15%、郡と帝国に30%を納税していたらしい。租税負担率が、半分だ。


  しかも、隠れた減税がある。それは、必要経費の控除だ。収入から、必要経費を引くことができるのだ。実質、租税負担率は大幅に低くなるだろう。今まで、市町村と郡それと帝国へ納めていたことを考えれば、簡単な納税システムだ。


  各村には小学校を、各町には中学校を建設する。また、各市には高校を設立するとともに、希望すれば能力に応じて、それ以上の学校にも行けるようにする。さらに、無人となった村もあるので、入植者を募って村を再建するつもりだ。


  こうして、全市町村長会議は終わった。後のことは、コリンダーツ行政庁長官と、クロイツホルブ行政副長官そして、コリンダーツさんの腹心だった3等上級認証官のケンネル行政副長官の3人に任せることにした。カトラス市とサロマ市の行政副長官室にはゲートを設置し、ハルバラ市の行政長官室と繋げた。勿論、行政長官室と、タイタン市行政庁もゲートで繋いでおく。


 これから、2週間、その間にシェルの誕生パーティをしてから、シズちゃんとの結婚準備だ。





------------------------------------------------------

(4月30日です。)

  今日、僕とシズちゃんが結婚する。シズちゃんの父親のダッシュさんは、ずっと『まだ早い。』と言っていたが、シズちゃんも、もう19歳だ。この世界では、『行き遅れ』と言われてもしょうがない年齢になってしまった。僕には、よく分からないが、女の子の間には10代でお嫁さんに行くのに憧れがあるみたいだ。だからか、19歳で結婚というパターンも多いらしい。


  シズちゃんの母親シロンさんは、シズちゃんを産むときに亡くなったらしい。元々、ドワーフとエルフは、あまり相性が良くなく、子供が出来にくく、出来ても難産が多いらしいのだ。シズちゃんは、母親を知らずに育ったわけだが、ダッシュさんは『もらい乳』をしたり、おんぶしながら槌を叩いたりと、苦労して育てたらしい。同じドワーフの女性との再婚話もあったが、ハーフエルフの子持ちというだけで、相手が断って来るのが普通だった。ハーフエルフは、凶事の子と言われていたからだ。


  シズちゃんは、鍛冶屋が嫌いだった。熱いし、危ないし。いつも火傷だらけの父親を見ていると、早く辞めてもらいたいと思っていた。しかし、亜人が生きにくいのは、グレーテル王国でも同じだった。ダッシュさんも武器職人以外には働く当てはなかったのだ。シズちゃんは、自分がハーフエルフであることが嫌で嫌で仕方がなかったのだ。そのせいで、小学校の頃から、いじめられ続けて来た。小さい頃は男の子に虐められていたが、小学校高学年からは同性の陰湿ないじめに遭った。成績がトップで、際立った美少女ぶりが、同性の反発を買ったらしい。


  6年生の時の修学旅行は、どのグループにも入れて貰えなかった。そのため、『お腹が痛い。』と仮病を使って修学旅行には行かなかった。いつの頃からか、無口で、いつも下を向いて行動するようになった。笑うことなんて滅多にない。暗い少女でも、目立たない方が良かったのだ。しかし、僕に会ってから考えが変わったようだ。僕が、シェルというハイ・エルフを婚約者にしていたからだ。シェルは、僕に自分と似た境遇を感じていたようだ。母親を早く亡くしているという点だった。


  僕とシェルが店の2階に住み始めた時、叶わないと思いながらも、自分も僕と結婚できたらいいなあと思い始めていたそうだ。しかし、店の2階に下宿している時には何もなかったのだ。そんな僕が、シェルと結婚するため、遠くへ旅立ってしまったら、もう絶対に手の届かない人なんだと諦めてしまっていたと言っていた。


  でも1年半後、僕が帰って来た時、妻や婚約者がいっぱい増えていた事から、シズちゃんも、自分がその中に混ぜてもらえるような気がしてきたそうだ。シズちゃんが中学3年生の時だった。お父さんに、半分嘘泣きだが、泣きながら僕との婚約を頼んだら、『結婚は早いが、冒険を一緒に行く位なら』と許してくれた。だが、シズちゃんは、剣道が嫌いだった。幾ら練習しても強くならないからだ。でも、冒険者になる可能性が見えて来た。稽古にも熱が入って来たそうだ。


  でも、僕が王都の貴族屋敷を購入して引っ越すことになってしまった。もう、これからは、自由に会うこともできない。お屋敷だと出入りだって門番がいて大変そうだ。聖夜の日、シズちゃんは、初めてお屋敷を訪ねて、あまりの立派さに吃驚してしまった。もう自分なんかの手の届かない人になったんだと思ってしまったそうだ。


  でも、2階の部屋を見て自分の部屋の分まであるみたいだと思った途端、我慢できなくなった。ダッシュさんに本泣きで頼んだのだった。今日からここに住みたいと。そのことは、シェルも了解していたようだった。シェルにとっては、想定内だったのだ。


  あれから4年半、あっという間だった。でも、漸く結婚できる。今まで我慢していたあんな事やこんな事だって今日からできる。その前に、あのセレモニーをしなければ。1人、ニヤニヤしてしまうシズちゃんだった。








  シズちゃんとの結婚式は、ゼロス教の教会で行った。フランちゃんが、絶対に祭祀を行いたいと言って来たのだ。ダッシュさんは無神論者だったし、シズちゃんも母親と同じエルフ公国の正教である『大地と森の聖霊の恵み』と言う教えを信じている。あれ、シェルの時もそうだったかと言うと、実はそうだったとの事だった。シェルの結婚式の時は、お婆さんがなんか宣言して終わりだったが、あれが、その精霊への誓いだったのだろう。


  結婚披露パーティには、北の鉱山村からダッシュさんの兄弟姉妹が大挙して来てくれた。大勢いたが、ダッシュさんと両親が同じなのはお兄さんと妹の2人だけだそうだ。長命種のドワーフにとって、一生1人の相手と添い遂げるのは難しいらしく、離婚と再婚は普通にあるらしい。僕には、良く分からない風習だった。ダッシュさんの妹さんは、既に子供もいるのに、見た感じ非常に若くて綺麗な人だった。


  僕に対する目線に危険を感じたのか、シズちゃんが殊更に僕に寄り添って来る。うん、今日はそれで良いです。ドワーフの人達は、飲む量が底無しだった。執事さんが、お酒の追加注文に走って行った。もう結婚披露パーティーなのか一族の懇親会なのか分からなくなっていた。


  相変わらず、今日もシェルさんは酔い潰れてしまい、僕が部屋まで連れて行った。それを見ていたエーデルが、酔い潰れた振りをしていた。エーデルさん、部屋に連れて行って貰って、何をするつもりですか?


  その日の夜、僕とシズちゃんは、ニース・タウンの別荘に泊まった。お風呂に入ってから、リビングのソファに並んで座った。シズちゃんの大切な所は、シェルと同じだった。


  シャンペンを飲みながら、例のセレモニーが始まった。


  「シズ。」


  「なあに、あなた。」


  シズが、僕の肩に腕を回して来る。濃厚なキスが1分以上続く。その後、また


  「シズ。」


  「なあに、あなた。」


  夜遅くまで、このセレモニーは続いた。






  次の日、シズは恒例のエプロン姿で朝食を準備した。目玉焼きはスクランブル・エッグになり、トーストは真っ黒だった。スープには塩が入っていなかったが、僕は全てを綺麗に食べた。もうシズには料理させないようにしよう。でも自分で作ろうとするだけ、エーデルよりマシだった。


  新婚旅行は、シズの母親シロンさんの故郷に行くことにした。どんなところか見てみたいそうだ。その前に、僕達は王都の馬車職人の所を訪れた。タイタニック号が完成した時に、2人乗りの飛行船を頼んでいたのだ。タイタニック号作成の経験があったので、製作期間も短く済んだようだ。全て、シルフが設計してくれたので、仕組みは良く分からないが、全ての可動部は、油圧で動くらしい。その辺のギミックは、初めての経験だ。職人さんが10人、1か月間寝ないで作り込んだらしい。


  機体は、細長く、先端は、円錐形を上下に潰したようになっている。座席は、左右に並んだ2座で、クリスタルガラス製の球形のキャノピーになっている。このキャノピーを開けて、乗り込むようになっているのだ。そのための出し入れ可能な梯子も脇にセットしている。


  機体中央には、主翼がセットされている。後退翼で、形状はシルフが設計した。揚力だとか翼荷重とか言っていたが、僕には必要がない無駄知識だった。上面は、機体とほぼ平面になっていた。主翼にはエルロンとフラップも付いている。後部は流線型に絞られていて、垂直尾翼が2枚、左右に開いた状態で取り付けられ、水平尾翼は、やや下がった角度で付けられている。最後端には、円形の穴が2つ開いており、ジェット推進機が取り付けられている。将来的には、燃料を燃やして推力を出すそうだ。その燃料が何かは知らなかった。既に、試験飛行は終えており、今日は塗装の出来上がりだ。上面は深緑色、下面は空色だ。


  名前も書かれていた。『ファルコン・ゼロ型』だ。略して『ゼロ』だ。この最後のゼロ型は、シルフがどうしても付けてくれと言って来たのだ。最近、人間臭くなってきたような気がする。


  2人は、飛行服に着替えた。シズは、白い飛行服だ。今日のために新調したらしい。僕は、いつもの茶色の飛行服だ。2人は、機体から出てきた梯子を使って乗り込む。『飛翔』を使えば、梯子は必要ないが、折角装備したのだ。使わないと勿体ない。

  キャノピーも油圧で閉まるが、念のためロックできるようになっている。


  ゆっくりと上昇する。


  長い直線道路があれば、ジェット噴射だけで浮上出来るらしいのだが、この世界には、まだ燃料が無いので、飛行石で浮上する。高度1000mで、水平飛行に移る。シルフの計算では、音速の2.5倍の速度で飛行でき、消費魔力はタイタニック号の5分の1らしい。進路を東南東に取る。機体を右に傾けて、ラダーとエレベータを操作する。機体は、落下する事なく、綺麗に右旋回してくれた。この操作には、僕の魔力は一切使っていない。空気の流れだけで制御しているようだ。中央のスロットルレバーで推力を最大にする。ジェット推進機がタンクの水を後ろに噴き出す。加速途中で物凄い音がしたが、シルフが音速を越えると発生する衝撃波、ソニックブームだと教えてくれた。


  機体は、非常に安定している。方位計と高度計が一定の数字を示している。自動操縦に切り替える。この仕組みも、シルフが教えてくれた。あの4か月、変なものばかり集めてさせているなと思ったら、これを作らせていたようだ。この自動操縦装置の心臓部もあの世界のものだそうだ。


  ポットに入れたお茶をシズと飲むが、シズはどうも緊張しているみたいで手が震えている。優しく手を握ってあげた。あっという間に、グリーン・フォレスト連合公国の辺境の村シクリッド村に到着した。

シズちゃんと結婚して、もう当分、結婚式は無い予定です。ジルちゃん達は、結婚するのかどうかわかりません。

  ちなみに、『ファルコン・ゼロ型』の名前は、『零戦』と『隼』からのパクリです。機体そのものは、日本が米国から購入できなかった『F22』をイメージしています。文章がチープなので、きっと分からなかったと思います。

  この先、ゴロタは油田を手に入れます。ジェット燃料が手に入るのは、その後になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ