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第28話 ダンジョン攻略中です

ダンジョンは、全部で10階層あるみたいです。なかなか強い敵がいて、ゴロタ達も苦戦しているようです。

  ダンジョンの攻略パターンが決まった。


  シェルさんが先頭だ。その後ろに、エーデル姫、その後ろに僕が続く。遠距離攻撃のアーチャーが先頭というのも、どうかと思うが、それよりも他の冒険者達全員が、その後ろというのは、もっとおかしい。


  シェルさんが、魔物の殆どを倒した後、残っている数匹を他の冒険者全員でボコっていて、魔物が可愛そう。


  まあ、僕達に邪魔にならないようにしてくれているんだから、文句は無いけど。エーデル姫よりは役に立っているみたい。


  5層も、階層ボスだけになった。敵は、オークキング。通常のオークより、ふた回りも大きく、鎧も変に黒光りしていて、


  「ちょっと、やばいかも。」


という雰囲気だ。


  シェルさんが、5本の矢を放つ。


    ビシュッ!!!!!


  両目 、両足、心臓の5カ所を一度に狙う。


    カキン、カキン、カキン、カキン、カキン


  全てが、魔法障壁で弾かれる。物理攻撃と、ある程度の魔法は、弾いてしまうらしい。オークキングの防御魔法ではなく、あの鎧の附帯機能のようだ。


  当然、鏃に乗せた、ミニ・ウインド・カッターも小さな風になって、消えてしまった。


  エーデル姫のファイヤ・ボールは、届く前に消えていた。


  オークキングが、ニヤリと笑い、持っていた斧を振りかざして前に出てきた。


    ドスン、ドスン、ドスン


  動きは鈍い。しかし、破壊力は馬鹿にできない。シェルさん達だと、当たれば絶対に死ぬ。


  「シェルさん、下がって!」


  「えーっ、私は?」


  エーデル姫、最初から、少し下がっていたでしょ。僕は、『ベルの剣』を抜いて、シェルさん達の前に出る。オークが、斧を振り上げたまま接近して来て、僕に向け振り下ろした。凄い膂力だ。


    ズガン!


  斧は、僕のいた地面を、ボゴッと削った。瞬間、右に躱したのだ。相手に対する目付けと、円運動の体捌きにより、オークキングの攻撃は全く当たらない。


  しかし、僕は油断しなかった。


  自分の攻撃が、効くかどうかわからない限り、不用意に近づくのは自殺行為だ。オークキングの利き腕の反対方向へと、体を躱しながら隙を伺う。


  オークキングが、斧を左下に打ち下ろした瞬間、左足のアキレス腱を狙う。脛当てを付けていないので、防御壁もないはずだ。


    バシュ!


  跳ね返されはしなかったが、思ったよりも浅く、腱を切ることは出来なかった。僕は、剣に少しだけ力を注いだ。剣先が青く光る。その状態を維持したまま、もう一度、隙を見て同じ所を切った。


    ズバッ!


  オークキングは、悲鳴を上げて転がった。しかし、僕への警戒は失わないまま、すぐ立ち上がり、片足を引きずりながら、斧を振ってくる。


  僕は、今度は左周りで斧の刃筋を躱し続けて、オークの右足を狙う。その間に、『ベルの剣』が白く輝き始めた。


    シュパッ!


  低い姿勢から、斜め切上げ一閃、音もなくオークの右足が、脛から切り離された。オークキングは堪らず、地面に倒れ、起き上がる事が出来ない。しかし、今度は仰向けになって、斧を無茶苦茶に振り始めた。僕は、トドメを刺す前に、斧を掻い潜ってオークキングの腕を両腕とも切り落とした。もう防具の防御壁は消えていた。これで、僕の仕事は終わった。『ベルの剣』の汚れを洗濯石で綺麗にして、鞘に収めた。しばらく、この剣は使わないようにしよう。後ろにいた冒険者達が、我先にオークキングに群がり、各々、トドメを刺し始めた。その中に、エーデル姫の姿があった事は、見なかったことにしよう。


  6層は、オーガの巣だった。


  7層は、トロールの特殊個体、トロールロードやシン・トロールなどの巣だ。


  1体を倒すのに、『B』ランクパーティーが、時間をかけて体力を削っていかなければ、倒せなかった。僕も、『ベルの剣』は使わず、『黒の剣』で対応していたので、思うような成果をあげる事が出来なかった。さらに数匹が一度に掛かって来たりするので、どうしようもなく、手傷を負ってしまう。魔法ではなく、ゴロタの身体能力により、自然に治癒しているのだ。が、あまりにも敵の数が多く、致命傷は無いが、無傷とはいかないのだ。


  シェルさんも、身体強化をフルに発揮して、身体が真っ赤に輝いている。また、鏃に込めるウインド・カッターも、つむじ風位には強力にしている。しかも、矢は1本だけだ。数よりも、1本の威力を高めている。これで、何とかトロールロードの鎧を貫通する事が出来るようだ。


  あの広範囲の殲滅魔法は、封印している。疲労で意識を失ったら、その時点で全滅してしまうからだ。全部で、20匹位だったろうか。ようやく、全滅させる事が出来た。僕の身体の至る所から出血しており、服はボロのようになっている。シェルさんが、泣きながら駆け寄って来て、傷口に手を当てて来た。


    「え?」


  吃驚してしまう。シェルさんは、目をつぶって瞑想している。手の平の当たっているところが温かくなり、ピンク色に光り出した。みるみる傷口が塞がって来た。次に、シェルさんがゴロタの顔を両手で挟み、キスをして来た。唇と唇を重ねるだけのキス。強く押し付けてくるキス。ゴロタの身体全体が赤く輝き、傷は全快した。なんか『スキル』の消耗も少なくなったような気がする。魔法の『ヒール』と違い、スキルの『治癒』は呪文を使わない。自分の体内エネルギーを治癒エネルギーとして相手に流し込むのだ。シェルさんは、最初、手のひらを当てていたが、他にも数多くの傷があったので、思い付きで『キス』をしたのだった。効果は抜群だった。


  人生の初キスを、思い付きで奪われた僕であったが、まあ、婚約しているからいいかと思っていた。でも、エーデルさんが、涙目でワナワナ震えていた。泣く理由がよく分からない僕であった。


  シェルさんは、僕の怪我が治ったことを喜んだが、直ぐに僕にキスをしたという事実に気づき、

 

    アワワ、アワワ


  と意味不明の声を出しながら真っ赤になっていた。


  後ろの冒険者達が、ウオーと言う叫び声を上げて喜んでいた。中には、ワザと転んで、痛いを振りしてシェルさんに直して貰おうとしていたが、思いっ切りスルーされてしまっていた。


  うん、恥ずかしいから、これからは、怪我しないようにしよう。


  8層は、今までの魔物の混成部隊にサイクロプスが、混じっていた。サイクロプスは、身長が3m以上の巨体で、一つ目、緑色の肌の魔物だ。皮膚の硬さもさることながら、回復力の高さが特徴だ。切っても、切っても、あっという間に治ってしまう。


  切断したら、もう治らないだろうと思ったら、切断された部分を、傷口に当てているうちにくっついてしまう。これは、ズッコイ。しかし、その間は、攻撃してこないので、やり放題だ。


  ゴロタは、『黒の剣』を両手持ちにして、瞬動で左側に立ち、決して力を込めずに横に薙ぎ払った。


  聞こえたのは『ピッ!』という風切音だけだった。サイクロプスの左腕が肩付近で皮1枚を残して切断されていた。サイクロプスは、血まみれになりながら、右手で左腕を持って、繋げようとした。そのチャンスを待っていた。胸の前を横切っている右腕を、上段切りで切り落とす。


    チェスト-----!


  思わず、気合いが入ってしまった。


  右腕は、左腕を持ったまま、地面に転がった。胸も、かなりの深さで切られている。しかし、ゴロタの狙いは胸では無い。


    ハッ!


  今度は、サイクロプスの頭の上まで飛び上がる。落下速度とゴロタの振り下ろす剣の速度が加わり、


    ザンッ!


  サイクロプスの最後だった。首が斜め上からズドンと切り離されてしまったのだ。ゴロタは、もういい加減、嫌になっていた。こんなに死にそうになりながら、魔物を倒し続けていたら、いつか、本当に死んでしまうと思ったのだ。シェルさんの弓も、殆ど敵に効果が無くなっていた。魔物が、大物になればなるほど、皮膚も厚くなり、いくら身体強化をしていても、貫通するのは難しくなっていた。


  目を狙っても、分厚い瞼が邪魔をして、中々当たらない。ゴロタは、もう階層の魔物を殲滅するのはいいから、早く下まで降りて行こうと思った。


  8層のボスキャラは、赤いサイクロプスだった。最初は、標準タイプサイクロプス並の回復力を発揮しているだけだったが、その内、手の先から雷撃を放って来た。


    ズバン!  ギャギャガ!


  これは、もうだめだ。近づいたらビリビリ、遠くにいてもビリビリ。切っても直ぐ治る。


  僕は、『黒の剣』を納め、『ベルの剣』を抜いた。力を込める。いつもの力だ。まだ大丈夫、これくらいなら、行ける。もう少しなら大丈夫。


  『ベルの剣』は、青から白へと色を変えていった。眩しい位になり、このままだと、あの時のように赤く光り始めるのでは、と言う寸前で止めた。


  大きく振りかぶって、レッド・サイクロプスに向けて、上段切りの斬撃を放った。


    ズバッン!


  空気を切り裂くような音と共に、白く輝く刃が、敵に襲いかかる。レッド・サイクロプスは、一瞬で、縦に真っ二つになり、右半身は右側に、左半身は左側に倒れた。


  僕は、大きく深呼吸をして、剣を納めた。どこも悪くなっていないし、意識もしっかりしている。シェルさんが、心配そうな顔で、見ていたので、


    「大丈夫、何ともない。」


  と、安心させた。


  次は、9層、ここはオークからレッドサイクロプスまで、揃い踏みの層だった。


  僕は、先ほどのように、白くなるまで剣に力を注ぎ、今度は、横に薙ぎ払った。僕を中心に、光の円弧が広がった。魔物達は、腰の辺りで真っ二つになり、大型の魔物は、太股くらいを切り裂かれた。


  しかし、50m位先で光が消滅した。それを確認してから、ズンズン前に進んで行った。魔物が近付くと光の『斬撃』、それから、また進んで行く、の繰り返し。


  9層のボスは、ジャイアント・ゴーレムだ。土色の身体で、とにかくデカイ。5m以上は有りそうだ。歩くと土煙が上がった。僕は、『斬撃』を飛ばす。ゴーレムの左胸に命中するが、土煙が上がるのみで、大した傷は付いていない。


  動きは大したこと無いが、防御力が半端なく高いのだ。敵に遠距離攻撃の火力は無いので、こっちが遠距離攻撃すれば、ほぼ無傷で倒すことができる。しかし、有効な火力がない。シェルさんが射た矢は、ウィンド・カッターを纏った状態でも、ほとんど傷が付かない。


  僕は、一旦下がって、シェルさんに耳打ちする。


  頷いたシェルさんが、後ろの冒険者達に向かって叫んだ。


  「戦士さん達は、ゴーレムの右足を狙って集中攻撃をして。魔術師さんとアーチャーさんは頭を狙って集中攻撃を。皆さんの攻撃力を集めて、少しずつ体力を削っていきたいと思います。お願いね!」


  後ろの冒険者達は、自分たちも攻撃に加わることに、少し怯んだが、ゆっくり動作のゴーレムに闘いを挑むゴロタの姿を見て、冒険者達が一斉に攻撃を始めた。

最後は、総力戦ですか。どうなるのでしょうかね。次回をお楽しみに。

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