第297話 モンスター
今回は、強敵が現れます。ゴロタ達も苦戦するようです。
(4月5日です。)
今日は、ジルやジェリー達学生を除いた総力を上げて、サロマ市及び周辺都市の浄化をする。サロマ市には、フミさんとクレスタ、南のサンスチー町にはビラとシズちゃん、その西のサルベツ村はノエルとフランちゃん、サロマ市の西サカダン村はエーデルとジェーンさんだ。ゴロタとシェルは遊撃部隊だ。各人に新しい通信方法を与えておく。
小さな薄いミスリルの箱だ。そこに細い管が通っている。ゴロタも同じものを持っている。その細い管は、箱の中の小さな空間の切れ目からイフクロークに繋がっているのだ。
通話をしたい時は、繋げてとイフちゃんに頼むだけだ。すると、イフちゃんが、管同士を繋げるので、通話ができるようになる。いわば伝声管の途中が、異空間を通っていると思えば良いのだ。
シェルとゴロタの間には必要無かった。シェルは、ゴロタとだけ念話が使えるようになっている。
最初、タイタニック号でサロマ市まで移動した。その後、ゲートを使って、各町村に担当する女性達を転移させた。
ゴロタ達は、最悪の村であると言われる、北西の最果ての村サートンに行ってみる。
そこは、いわゆる谷に面した田舎の村であった。しかし、村には誰もいないかのように静かだ。嫌な予感がした。微かに残っている異臭。腐肉の臭いだ。この村は、魔物に襲われたようだ。
警戒しながら、サートン村の中心に進む。突然地面が盛り上がり真っ黒な木の根のような触手が伸びて、ゴロタ達に襲いかかってきた。ゴロタはシェルの手を握り、『瞬動』で10m位飛び下がった。
から振った触手は、ゴロタ達を探してウネウネしている。なんか粘っこい体液が飛び散っている。気持ちが悪い。
ゴロタは、早く始末しようと、『オロチの刀』を抜こうとした。その時、頭の中に警鐘が鳴った。シェルの手を取って空中30m以上まで飛び上がる。ゴロタがいた所に2本目の触手が物凄い勢いで飛び出てきたのだ。
ゴロタに当たらなかった触手は、上空を見上げて、大きく口を開けた。切り裂かれたような口には、何列もの歯が並んでいた。
口の奥から何かが出て来た。今度は、赤黒い触手だ。その触手が口から伸びて来たのだ。超気持ち悪い。その小さな触手にも口があり、大きく裂けたその口には、やはり鋭い牙がびっしりと生えている。そいつは口から粘液を飛ばして来た。
真っ直ぐに、ゴロタに向かってくる。空中なので、『瞬動』で避けることもできず、蒼き盾に任せた。粘液は、バチンと音を立てて『蒼き盾』にぶつかってから、勢いを失って、下に垂れ落ちた。地面に落ちた粘液から白い煙が立ち昇っている。地面が溶けているのだ。強い腐食性の粘液だ。
ゴロタは、『紅き剣』を出して『斬撃』を喰らわせた。首かどうか分からないが、先っぽを切り落とした。
触手は、切り口から粘液を撒き散らしながら地面をのたうち回った。辺り中、もうもうと煙が立っている。こいつは、血液まで腐食性だ。『オロチの剣』で、切らなくて良かった。
シェルが、一旦引き上げようと言った。気分が悪くなったみたいだ。ゴロタも、少し離れていたかった。匂いがすごいのだ。魔物臭と腐敗臭が入り混じった臭いだ。
ゴロタ達は、一旦、村の外へ逃げ出した。見ていると、次々と触手が地面から突き出して来る。一体、何体いるのだろうか。
ゴロタは、村ごと焼き尽くすことにした。ターマクから熱エネルギーを取り出す。かなり大きな火球を上空30m位に出現させ、圧縮して行く。臨界を超えた火球は、太陽の如く明るく大きな火球になって大爆発を起こした。ゴロタとシェルは、『蒼き盾』のお陰で、全く平気だが、あの魔物はそうは行かない。
存在を許さない神の光だ。火球に覆われた部分は、完全に素粒子になって四散した。村も、そこに村があったと言う痕跡を探すのが難しい位に消えてしまった。
地面には、半径500m位のマグマが煮えたぎっていた。もうこれで完全消滅だと2人は思った。シェルが、絶対に言ってはいけない言葉を言ってしまった。
「これでもう、やっつけたよね。」
村の外、ちょうどゴロタ達と村の中間位の所の地面が盛り上がった。奴だ。地面を割って、あの触手が1匹、出てきた。一体、何匹いるのだ。最初の1本の次に、左右や前後にランダムに出て来た。また、辺りに匂いが充満してきた。
ゴロタ達は、一旦サロマ市に戻ることにした。クレスタから連絡が入った。サロマ市では、何もやることが無いそうだ。ゴロタは、クレスタ達と合流し、北東のサンテ村に連れていく。ゲートを使えるので、あっという間だ。
ついでに、ゴロタ達も手伝う。この村は、街道沿いだが、ゴロツキどもと腐れ衛士の村だった。最初にゴロツキの事務所をクレスタに襲撃させた。相変わらず容赦ない。彼らは、これから生まれてきたことを後悔しながら生きていくだろう。
フミさんが、切り落とした脚や腕の傷口を優しく塞いでいく。死んで楽をさせないエグさだ。
衛士隊が駆けつけて来る。既に抜刀している。クレスタが、極大ウインドカッターを地面すれすれに撃ち放つ。衛士隊の両足が膝辺りで切り離れて行く。
30人程いた衛士隊員は、全員、膝下の切り口を抑えながら転げ回っている。やはり、フミさんが優しく傷口を抑えている。もう、ゴロツキも衛士も村にはいなくなった。
村長らしい男の人が、オズオズと前に出て来た。急に現れた4人が、今まで横暴のかぎつhを尽くしていたゴロツキどもや衛士隊を殲滅したのだ。
シェルが特上の笑顔を見せて、ゴロタを紹介する。村人達は、ここにいる背の大きな若者が自分達の新領主と知って、その場で土下座する。
ゴロタは、村長の肩を撫でながら、
「苦労したでしょう。これからは大丈夫ですから。さあ、立ってください。皆さんも土下座はやめて下さい。」
こうして、サンテ村に平穏が戻った。なお、ゴロツキ全員と殆どの衛士は処刑されたことをゴロタは後で聞いたが、特に何も感じなかった。
各町村に派遣した女性陣から続々と連絡が入って来る。浄化作戦は終わったから迎えに来てくれと言うことだった。ゴロタは、全員を集めて回った。
今日は、皆で『サロマ・インペリアル・ホテル』に泊まることにした。この前は満室だったスイートルームを2つ取ったが、それ程豪華な感じがしないのは仕方がない。
夜、食事が終わった頃、郡長官代理が訪ねて来た。今後の郡の運営についてだ。ゴロタは、そう言う話は苦手だったので、全てシェルに任せている。
ゴロタの基本的な方針は、郡制度は無くし、北部辺境郡、北東郡、それにここ北西郡は、一つのタイタン領となる。領都は、北部辺境郡のハルバラ市に置く。行政庁長官には、現在、カトラス市の郡長官をしている2等上級認証官のカノッサダレスさんにやって貰う予定だ。また、北西郡と北東郡の旧郡都には、行政庁支所を置いて、副長官を配置する。
後、施政方針だが、それは3郡を完全に平定してから決めることにしたい。そこまで聞いた郡長官代理は、安心して帰って行った。
次の日、再度サートン村に行ってみる。今回は、タイタニック号での移動だ。上空1000mから見て、初めて奴らの全容が分かった。奴らは、全部で1匹だ。物凄くデカい。村の至る所、いや村の外まで触手が生えている。触手は村の外のある一点から伸びているようだ。
本体が動くと、地面が蠢くので、上から見ていると、本体の大きさがわかる。本体で、500m以上ありそうだ。これでは、幾ら触手の上に大火球を爆発させても効果がないはずだ。
上空から、クレスタが詠唱を始めた。あのモンスターの上の土をどかしてもらう。土が、水が引くように無くなっていく。
ノエルが、詠唱を始めた。極大雷撃魔法を喰らわせてやろう。モンスターの背中の上の空気から、色とりどりの光が舞い始める。空気がイオン化しているのだ。次の瞬間、極大雷撃柱が、モンスターの上に落ちた。
効いているようだ。モンスターは、のたうち回っている。触手が次々と地面の中に引っ込んでいく。全ての触手が引っ込んでしまった。モンスターは移動を始めようとする。もう一度ノエルが雷撃を放ち、退路の地面に電気バリヤを張る。
いつまでもやっていられない。星の形が変わらない程度の火球を直撃してやる。ゴロタは、シルフに聞いた。
『シルフ、アイツが消滅するだけの火球を作ってくれる?』
『アノセイブツノシツリョウ 50000キュービック 12500カケル1000ノ3ジョウリッポウセンチ
。シツリョウショウメツマデ735テラジュール。エネルギージュウテンシマスカ?』
『エネルギージュウテンチュウ。75パーセントカンリョウ。』
『ジュウテンカンリョウ』
ゴロタは、体の中の熱を解放した。かなり大きめの火球が、ゆらゆらとモンスターの上に落下していく。ゴロタは、タイタニック号を急旋回させて高度を上げながらフル加速で離脱を図った。
後方から大きな衝撃が来た。機体は大きく揺れていたが、翼の揚力によって飛んでいるわけではないので、墜落する事はない。
機体が安定したので、大きく右旋回を始めた。右舷側の窓からは、信じられない光景が見えた。高さ10000m以上のキノコ雲が上がっている。雲の中に雷光が見えた。凄まじい上昇気流により、雲の中の氷がぶつかり合い、帯電した電子を放出しているようだ。
『シルフ、少し大きすぎないか?』
『スミマセン マージンヲ 5バイニトリマシタ テヘッ』
やはり残念なシルフだった。お陰で、西の谷まで大きな湖ができてしまった。これで、グレーテル王国まで、深い森を通らなくても船で行けるようになった。
やはり、チートな戦いだったようです。これで、王国と帝国の交易が便利になりました。