第289話 旅立ち(帰還)の日
異世界転生ももうそろそろおしまいです。中途半端なのは、将来的に、また戻る可能性もあるため、完結しないほうが都合が良いからです。
年が明けた。正月は、八郎潟博士とクレスタ先生それに若林3尉と共に過ごした。シェル達は、両親と一緒に旅行だそうだ。
クレスタ先生には、若林3尉とのことを正直に話していたので、夜は、2人を相手にすることになった。順番が、交代交代だった。
正月が明け、シェル達が帰ってきた。中学の3学期は、授業もあまりなく、受験対策がメインだ。ゴロタ達は、受験セミナーを受けているので、午前中は学校で自習、午後は夕方までセミナーだ。セミナーでは、基本から丁寧に教えてくれたので、今まで爆然と理解していた事が、きちんと理論付けが出来てきた。
進学のための能力認定試験は2月だったので、かなり勉強する事ができた。きっと、このレベルは、タイタン学院高等部を凌駕しているはずだ。微分積分や、対数、3次関数などはタイタン学院高等部でもやっていない。
試験が近くなったある日、ゴロタがセミナーで授業中の事だった。それは、宇宙の起源についての講義だった。
宇宙は137億年前のビッグバンから始まったそうだ。最初の1秒に満たないわずかな間,宇宙は最も基本的な粒子であるクォークとレプトンが混ざり合った形の無い混沌としたものだった。
その宇宙が拡大して冷えるにつれ,小さなものから徐々に大きな物へと物質が形成されていった。
まず中性子と陽子ができ,次に原子核ができ,電子を帯びて原子ができ,原子が集まって、カケラができ、カケラが集まって星ができ,大きな星は恒星になり、恒星が集まって銀河ができ,銀河団ができ,そしてついには超銀河団ができた。
宇宙のうち私たちから観測可能な部分には,現在1000億の銀河があり,それぞれが1000億個の星と,おそらく同程度の数の惑星を含んでいる。
そして、これは今、この世界の時空の話で、異なる時空は無数にあるそうだ。
ゴロタのいるこの時空と、タイタン領のある世界の時空は、異なっているのだろうか。異なっているとしたら、時空を渡るって、どう言う事だろうか。ああ、タイタン領に戻りたいな。シェルは、元気かな。シェル、シェル。何処にいるの?ゴロタの中で、何かのスイッチが入った。
『チャージ、カンリョウシマシタ。ジクウゲートカイホウチ 160パーセント。ジクウザヒョウジク オウコクレキ 2027ネン2ガツ23ニチゴゴ1ジ37フン タイヨウケイダイ3ワクセイトウケイ35ド ホクイ55ド グレーテルオウコク カトラスシ センティアキョウカイナイ。』
『エネルギーカイホウ カソクカイシ。』
ゴロタの周囲がブラックアウトした。無数の光の筋が後ろに流れている。見た事がある様な景色だが、思い出せない。
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「神は、時の番人を作られました。作られた瞬間、世界は収縮を始め、そして大いなる力を示されました。」
そこは、教会の中だった。何ヶ月も前の、カトラス市のセフィロス教会だ。今は、ミサ中だ。
『ジクウテンイ カンリョウ。エネルギーザンリョウ 27パーセント。』
『シルフ?』
『ハイ ゴロタサマ。ナニカ ゴヨウデスカ?』
『いや、読んでみただけだ。』
『リョウカイシマシタ。イツデモ オヨビクダサイ。』
声が、嬉しそうだった。ミサは、間も無く終わった。ゴロタは、大銀貨1枚を寄付して教会を出た。
今日は、もう帰ろう。ゴロタは、タイタン市の領主館に帰った。シェルは、ゴロタが帰ってきたことを知ると、抱きついてキスをしてきた。何故か、もう帰ってこない様な不安を覚えていたらしい。
ゴロタも、シェルを強く抱きしめた。夜だったら、そのままベッドに行きたい位だった。
落ち着いてから、地球という星の、日本の国と言うところへ行ったことを話した。そこで4ヶ月ほど過ごしてから、帰ってきたことを話すと、何となく納得していた。シェルが、不安を覚えたのは、つい30分位前だったのだ。
それから、いつものジト目で、その4か月の間に、何人の女の子と知り合ったかを聞かれた。
ゴロタは、黙ってしまった。嘘を言っても直ぐバレてしまう。何も言わない事が、1番の防御だと言うことを最近分かってきた。
シェルは、直ぐに諦めた。そんな遠くの女の子に嫉妬したってしょうがない。
外に出て、イフちゃんを呼び出す。相変わらず12歳の赤いスカートのイフちゃんだ。異世界のイフクロークにしまったものを取り出す方法を確認したかったのだ。
イフちゃんは、自分のイフクロークは次元の間にあるが、ゴロタが、異世界で使っていたのは、ゴロタが作った次元の狭間の切れ目だったそうだ。これからは、『ゴロタクローク』と呼ぼう。イフクロークとゴロタクロークをリンクさせれば、あたかも一つの様に使えるそうだ。イフちゃんは、パワー不足で出来ないが、ゴロタの無尽蔵のエネルギーを使えば造作ないそうだ。
やり方は、念じるだけだそうだ。試しに、念じてみたらシルフが応答してくれた。
『ダイ28ジゲン1347ジクウゲートト ダイ379次元432ジクウゲートヲリンクシマス。エネルギーヒツヨウチ 100パーセント シヨウカノウ』
『ゲンザイ リンクチュウ。68パーセント コンプリート。98パーセント コンプリート。ゲンザイ バッファショウキョチュウ。ファイナライズ シュウリョウシマシタ。』
ゴロタクロークから、例のワンドを出してみた。ちゃんとあった。今度、王都の冒険者ギルドで鑑定してもらおう。それに、マンモスやピンクの魔石など、見たこともない物もオークションにかけるつもりだ。
異世界で作ったチタンの矢も、先をミスリル銀に変えてシズちゃんにあげることにした。全部で90本ほどあった。チタンってどうやって作るんだろう。
『チタンハ サンカチタンヲシュセイブントスル コウセキヲ エンソト ハンノウサセテ シエンカチタンヲ セイセイシマス。デンシビームヨウコウロデ セイレンスレバ ジュンドノタカイ チタンインゴットガデキマス。』
シルフが、何を言っているか分からなかったが、チタン鉱石があれば良いのだと言うことは分かった。今度ダンジョンに探しに行こう。
暫くシェルと2人でまったりする。シェルが、日本国のことを色々聞いてきた。
ゴロタもうまく説明できないが、物凄く豊かで、誰でもが大学まで行くが、少し味気ない世界だと言った。和の国とよく似ているが、和の国ほど美しくない国だと思う。今度、行く方法を考えようと言った。
シェルは、ゴロタの左隣に座った。ゴロタの左手を取って恋人握りをする。首をゴロタの方に傾けてくる。そのまま、無言の時が過ぎて行く。
ゴロタは、少し眠かった。昼から眠りたいなんて珍しい。シェルの隣にいると安心する。もう、帝国のタイタン領にも行きたくなかった。大分、2つ目の太陽が傾いてきたが、部屋のライトもつけずに、まどろんでいた。
ドミノちゃんが学校から帰ってきた。ランドセルを置いて、キッチンに走って行く。オヤツを食べたい様だ。直ぐにジルちゃんととジェリーちゃん、ブリちゃんそれにデビちゃんが帰って来た。やはりキッチンに一目散だ。
夜になったら、エーデルとクレスタ、ジェーンそれにフランちゃんが帰って来た。ノエルとビラは、大学の研究が遅くなる時があるが、今日は早く帰ってきた。シズちゃんは、衛士隊や騎士団の訓練が無ければ、昼過ぎに帰ってきたり、ギルドでエーデルの手伝いをしている。
最後に、フミさんが、孤児院を今日の当直に任せてから帰って来た。
皆で、揃って食事だ。最近は、長方形のテーブルの短辺に、ゴロタが座り、右側の列にシェルが座り、左側の列にエーデルが座る。
シェルの列には、クレスタ、フミさんが座っている。それからノエル、ジェリーちゃん、ブリちゃん、デビちゃんと座っている。
エーデルの列には、ビラ、ジェーンさんが座っている。その向こうは、シズちゃん、フランちゃん、ジルちゃん、ドミノちゃんと座っているのだ。
ゴロタは、間も無くノエルと結婚の予定だ。4月にはシズちゃんと結婚だ。これで、妻もシェル、エーデル、クレスタ、ビラ、フミ、ジェーンそれに、ノエルとシズちゃんが間もなく妻となるので、計8人になってしまう。
ジルちゃんとジェリーちゃん、ブリちゃん、デビちゃんそれとドミノちゃん、この5人が将来の妻候補者となっているが、あくまでも候補だ。夜、一緒に寝ていてもセレモニーは無い。ドミノちゃんは、まだ小さいので、どうなるか分からないが、他の4人は、このままでは間違いなく結婚しなければならないだろう。そういえば、ドミノちゃんは、ブリちゃんと一緒の部屋で寝ることが多いようだ。
食事の時、皆に、今日あったというか、異世界転移したことを話した。そこでの不思議な体験とゴロタの力の源の話もした。皆、不思議そうな顔をして聞いていた。一番興味を持ったのは、ノエルだった。今、研究しているのは時間旅行らしい。現在、過去、未来と時間を自由に往来することが魔法で可能なのかを研究中らしい。
『カギリナイ エネルギーガアレバ カノウデス。タダシ カコヲカエルト オナジミライニカエルコトハ ムズカシクナリマス。』
直ぐに、シルフが答えてくれた。本当に、賢い女性だ。心の中でありがとうと言うと、とても喜んでくれた。
もうすぐ3月だ。皆で、飛行船『タイタニック号』に乗って、ノエルの村に行こう。
元の世界に帰ったら、やはりシェルの所が落ち着くようです。




