表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
285/753

第283話 富士演習場

日本は未だ平和国家でした。軍隊ではなく、自衛隊が国を守っています。

  その日の夜、詩絵瑠さんとノエルに、明日、富士演習場に行くと言ったら、自分達も行きたいと言う。ゴロタの一存では、決められないので、八郎潟博士に聞いたら、特に構わないというので、一緒に行く事にした。あ、これでハーレムパーティ決定だった。


  夜、寝る前にエーデルが尋ねて来た。寝間着は、ネグリジェだったが、明らかにブラをしていない。昼間に楽しむことが出来なかったので、両親の隙を見て、こうして飛んできたらしい。


  仕方がないので、ディープキスと、オッパイへの愛撫だ。股間は触らない。これだけで、エーデル満足して帰って行った。


  次の日、研究所に皆で行った。ゴロタ達は、富士演習場が何処にあるのか知らないので、八郎潟博士に連れて行ってもらわなければならないのだ。座標も地点コードも公開されていないので、自分達で行く事は不可能だった。


  なんでも、小田原市の西にそびえている箱根山、その向こう側に御殿場市があり、その先の富士山の麓に広大な敷地が確保されているそうだ。


  昔は、樹海のような場所だったらしいが、一時、酸性雨がひどく、すべて枯れてしまったそうだ。それから、大気改良方法が見つかり、地球温暖化も防ぐことが出来たらしい。神の災厄以外でも色々あって大変そうだ。


  演習場の近くに、指揮所があり、そこにゲートがつながっていた。詩絵瑠さん達は、もう完全にピクニックモードだった。まあ、いいけど。お菓子やお弁当を持って来ていて、お互いに交換しあっている。


  それよりも、3人の恰好が凄い。今日は、スカートではないが、そんな問題ではない。ゴロタが初めて見る模様の服だった。緑を基調として、茶色や黄色の模様が斑に入っている。迷彩模様と言うらしい。この世界では、こんな模様が流行っているんだと思っていたら、この国の騎士団、自衛隊と言うそうだが、その自衛隊の制服のレプリカを着ているらしい。レプリカってよく分からないが、どうやら戦闘服と言うものだそうだ。


  なるほど、この模様で、森の中に入られると見つけにくいのかも知れない。まあ、ゴロタには、関係が無いけど。匂いと気配を消せない限り、半径1キロ以内なら、必ず見つけられる自信があった。


  ゴロタだけ、中学の制服だったが、八郎潟博士が、指揮所の警戒将校に、1着、持って来て貰うよう命じていた。ゴロタには、少し大きかったが、腕まくりと裾をまくれば大丈夫だった。この世界に来て、なぜ身長が縮んだのか分からないが、転生のお約束なのかもしれない。


  研究員が、各地点に計測器をセットし、また、指揮所内にもいろいろな計測機械をセッティングしていたので、実験は午後になった。


  最初は、昨日の魔法の再現だ。集音装置で、エーデルの詠唱が記録されている。


  ゴロタは、昨日、街で、小さな杖を買っておいた。というか、大きな杖を削って小さくしたものだ。黒檀という木でつくられた1本もので、かなりの値段がしたのだが、カードで支払った。カードの支払い者は国らしく、店の人は直ぐに処理してくれた。


  本当は、杖に魔石を嵌め込んだり、ミスリルなどで補強したかったが、この世界では無理なので、錬成で、魔力の通り道だけ作っておいた。長さは45センチ位だ。持ち手に、コルクの柔らかいカバーを付けてやった。


  その杖を、エーデルに渡し、魔力の流し方を教えてあげたら、直ぐに使えるようになっていた。これで、威力は1.5倍の筈だ。


  昨日と同じ詠唱をする。杖が赤く光り始める。エーデルの髪の毛が逆立っている。


  「ヘル・ファイヤー・テンペスト」


  あれ、こんなに大きくていいのかな。昨日は、直径10m位だったが、今日は直径30mはありそうだ。周囲の樹木が皆なぎ倒されて燃え始める。業火が地上1000m位にまで燃え上がり、その後、真っ白な煙が立ち上って行く。


  ゴロタは、直ぐに『レイン』で、雨を降らせ、森林火災を未然に防いだ。その様子を見ていた博士は、


  「五郎太君は、いつから雨を降らせる事ができるようになったのだ?」


  と、聞いてきた。あ、またやらかしてしまったみたいだった。


  その質問には答えず、エーデルを抱える。顔は真っ青だった。失神寸前だ。そのまま、ソファに座らせ、冷たいソーダ水を飲ませた。何とか、落ち着いたようだ。


  次は、詩絵瑠さんの番だ。簡単な訓練は、昨日のうちにやっておいた。杖を詩絵瑠さんに持たせる。


  詩絵瑠さんが、詠唱を始める。


  「4大精霊にして至高の気高き風の精霊に我は希う。そは人の深甚にして罪深きものなれど、その業を知り、その為さざるを知る。われ思うことにより存在を許されたる者達よ。嵐の前にすべてが無効なり。すべてを切り裂き、すべてを砕くその風の化身よ。我は命ずる。顕現せよ。」


      『ウインド・スパイラル・ストリームカッター』


  凄まじい竜巻が起きた。竜巻の中から何条もの風の円盤が生まれ、標的に向かって飛んでいく。標的は、大型トラックだ。指揮所から、約3キロ先の丘の中腹に置かれている。皆、双眼鏡で覗いて確認している。『ウオー』と歓声が上がった。トラックが幾重にも切断されていく。スパスパと上下左右に切断されていくのだ。


  詩絵瑠さんも魔力切れを起こした。最後にノエルの番だ。ノエルは複合魔法を使う。『風』と『火』の複合だ。まあ、炎の竜巻というところか。


  これは、無詠唱でやらせてみる。竜巻をイメージする。その竜巻は、炎を渦巻かせていく。空には、炎の雲が広がっている。至る所から、炎の塊が降り注いでいる。竜巻の中心は、溶けて何も無くなっている。


  こんなイメージだ。最後の決め台詞だけ、詠唱させた。


  『ヘル・ファイア・ビッグ・ストーム・テンペスト』


  演習場は、当分使えなくなった。というか、地獄もかくやと思えるほど、あちらこちらに大きな火の穴が開き、空一面からは、次々と炎の塊が降ってきて、既にスミになってしまった樹木の残骸を丁寧に焼き尽していく。もう、この威力なら、小田原市なら壊滅だ。


  八郎潟博士と陸上自衛隊の将校さん達は、口を大きく開けて、閉じるのを忘れてしまっているようだ。研究所の職員さん達が、『計測不能』、『計測データが来ません。』と連呼している。


  ノエルは、全く平気のようだった。昨日、ゴロタから、『風』と『炎』の扱い方を教えて貰ってから、朝まで練習していたそうだ。折角作った杖が、まっぶたつに裂けてしまった。まあ、しょうがない。もともとそれ用の木ではなかったのだから。火属性の杖なら、裂けることも無かったかも知れない。


  これで、実験は、終了だ。割れた杖を捨てようとしたら、八郎潟博士が研究したいので、譲ってくれと言ってきた。まあ、いいけど。何を知りたいのか分からないが、杖の作り方は、魔力の通り道を作るコツを覚えれば誰でも作れるはずなのだが。


  最後に、ゴロタにも魔法を使って貰いたいといったが、もう計測器も壊れてしまっているし、単に興味本位なのかも知れない。


  ゴロタは、指揮所の前の空き地に行って、その辺の棒きれで魔法陣を描いた。そして、ブツブツと詠唱を始める。詠唱は終わった。後は、呼ぶだけだ。


  「出でよ、ワイバーン。」


  ワイバーンが出て来た。普通のワイバーンだ。黒龍ではない。この世界には、黒龍は存在しないのだろう。このサイズのワイバーンでは、ゴロタ一人が騎乗するのがやっとだろう。


  ゴロタは、ヒョイとワイバーンの肩に立ち、ワイバーンに念話で話しかけた。召喚されるくらいの魔物だ。ワイバーンの中でも知能が高いのだろう。ゴロタは、ワイバーンの肩に立ったまま、空を飛びクルリと輪をかいて、地上に降りて来た。空には、スクランブル発進してきた航空自衛隊の戦闘機が、安全を確認して帰るところだった。変な形の戦闘機だった。翼が4枚、重ね合わさった形だ。『Xウイング』と言うらしい。ワイバーンの4倍以上の速さで飛べるらしい。


  地上で、ワイバーンを元いた場所に戻してあげた。当然、服従の印は消してある。これで、魔物として立派に生きていける。


  指揮所に戻ると、大騒ぎだった。人間が、魔物を召喚するなど、有り得ない事だそうだ。物理、化学、生物学のどれも説明できない。


  しかし、根本的な所を理解していない。魔法も魔力も、解明されていない。これだけ化学が進んでも、魔力とは何なのか、何故、魔法はイメージなのか?


  ゴロタの浅い知識では、全く説明出来なかった。召喚術は、きっと偶然の産物だと思う。鳥寄せという技がある。口笛や笛で鳥を呼び寄せるのだ。きっと遠くの獣も、何かのきっかけで呼べるようになったのだろう。


  それが魔力によるものか、どうかは分からない。その内、大型獣や低級魔物を呼び寄せたのだろう。魔法陣は、詠唱の省略道具に過ぎない。一旦、隷従させて仕舞えば、もう魔法陣は要らない。


  だが、呼び寄せる思念は、どうやって隷従した魔物に伝わるのだろうか。『空間転移』が出来ない人間と魔物が転移してくる仕組みは、絶対に説明出来ない気がする。


  まあ、博士達にはもっと研究して貰おう。ゴロタ達は、おやつに御殿場煎餅を食べながら、演習場を見ていた。


  自衛隊の人たちが、皆で魔法で凸凹になった演習場を整理していた。しかし、樹木まで直すことはできない。


  ゴロタは、演習場の真ん中まで飛行して行き、着地してから、土魔法により整地し、『復元』により、樹木を元に戻してやった。これは、魔法ではない。ゴロタ固有のスキルだ。地面の形だけなら土魔法で大丈夫だが、植物の再生はむりだ。ゴロタは、樹木を元の通り復元したので、またまた驚かれてしまった。

富士演習場は、御殿場市の北西にあります。ほぼ禿山だったのですが、ゴロタが樹海に戻してしまいました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ