第26話 婚約を解消させられました
突然の婚約、国王様は何を考えているのでしょうか。
ぜったいにシェルさんとの婚約をしないと、前書きに偽りありになってしまいます。
最近、シェルさんの残念ぶりが少ない気がしますが、お許しください。
(11月4日です。)
僕の能力も測定してみました。
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【ユニーク情報】
名前:ゴロタ (ゴーレシア・ロード・オブ・タイタン)
種族:古????????種族
生年月日:王国歴2005年9月3日(15歳)
性別:男
父の種族:魔族
母の種族:妖精シルフ族
職業:????、冒険者:ランクA
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【能力情報】
レベル 10(2UP )
体力 4800(200UP )
魔力 12300
スキル 7100(200UP)
攻撃力 7200(200UP)
防御力 9800
俊敏性 7400
魔法適性 すべて
固有スキル
【威嚇】【念話×】【持久】【跳躍】【瞬動】
【探知】【遠見×】【暗視】【嗅覚】
【聴覚】【熱感知×】
【雷撃×】【火炎×】【氷結×】【錬成】
【召喚×】【治癒×】【復元×】【飛翔×】
【??】【??】【??】【??】
【??】【??】【??】【??】
習得魔術 なし
習得武技 【斬撃】
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レベルが2上がった。基本ステータスが微妙に上がった。【暗視】スキルが解放された。僕達は冒険者登録窓口に行った。冒険者レベルの変更をお願いするためだ。受付カウンターには、やはりモノクルを掛けた中年の女の人がいた。
「いらっしゃいませ。王立冒険者ギルド総本部へようこそ。本日は、あら!」
彼女は、僕達を見て、何者であるか気付いたようだ。
「これは、これは、シェル様、ゴロタ様、エーデル様、ようこそいらっしゃいました。本日は、ギルドマスターは不在ですが、秘書のモンデ様にお通しするように言われております。少し、お待ち下さい。」
僕達は、有名人になったようです。受付嬢?の人が、カウンターの後ろの伝声管のような物に向かって、モンドさんに来てもらうように伝えた後、暫くしたらモンドさんが、上から降りて来た。
「ゴロタさん、シェルさん、それにエーデルさん、こちらにどうぞ。」
いつものように、凄みのある低音で僕達の案内を始めた。
3階の会議室に案内された。会議室のソファに僕達3人とモンドさんが座ると、冒険者カードを2枚、出してきた。
「こちらをお納め下さい。」
見ると、新しい冒険者カードだ。受け取って、内容を確認して見て驚いた。
僕が『A』ランク、シェルさんが『B』ランクになっているのだ。
「私達、全然レベルが足りていないのに、こんなランクを頂いて宜しいんですか?」
「はい、救国の英雄に対し、ランクが低すぎるかもしれませんが、これが現在のところ、お二人にお渡しできる最高ランクで御座います。ゴロタさんは、レベルこそ10と低いのですが、ステータス、魔物討伐ポイントそしてギルド貢献度などが『SSS』ランクに達しております。しかしながら、『SSS』ランクは『A』ランク以上の者が、国王またはギルド総本部長からの指名依頼を受けて、達成した 場合のみ認定されるもので、今回は基準外ということで、お許し下さい。」
「でも、基準レベルが足りていないのに、いいんですか?」
「問題ありません。基準レベルは、冒険者を無駄に殺さないために設けたもので、ゴロタさんの場合は、全く問題ありません。」
「私の場合は、どうなんでしょうか。魔物を1匹も殺していないんですが。」
「はい、仰る通りです。シェルさんが、魔物を殺さずに、全て目を射抜いていたことも、死んだ魔物を調べて分かっております。因みに、シェルさん、矢は何本使いましたか?」
「えーっと、50本持って行って、1本しか残っていなかったから49本だと思います。」
「はい、そうだと思ってました。確認したところ、49体の魔物の片目から49本の矢を回収しました。」
「ということは?」
「はい、これは凄いことです。シェルさんは、ご自分の攻撃力が弱く、矢が魔物の皮膚を貫通出来ないかも知れないと思い、敢えて致命傷にならない目を狙ったものと思います。しかも、最遠距離は200m以上だったと聞いております。現在の『A』ランク以上の冒険者で、このような事が出来るアーチャーは、一人もおりません。」
「しかしながら、火力不足は間違い無いので、検討の結果、今後もゴロタ様と一緒に行動されるという事で、『B』ランク認定となったわけです。おめでとうございます。」
ついでにいうと、エーデル姫は、何も変わらないのでスルーされていた。目出度くランクアップを果たした2人は、エーデル姫とともに、王宮に向かった。昨日の事を、どうしても確認しなければいけないし、シェルさんも、言いたい事があるからだ。国王陛下に、会うまでは、何時間でも待つつもりだった。
王宮の北第一門から入り、またゴーシュさんに迎えに来て貰って、宮殿の中に入って行った。今日は、客間ではなく、エーデル姫の居室にお邪魔した。部屋に入って吃驚した。ピンク色の氾濫であった。天蓋付きのお姫様専売特許のベッドは、白い支柱以外はピンク。ソファやクローゼットなどの家具もピンク、カーペットもピンク、壁紙はピンクを基調にクマさんの絵がプリントされていた。ソファテーブルだけが白色だったのは、きっとテーブルにぶつからないようにするためだと思う。
どこが、『武人の娘』じゃ。吃驚した顔で、何か言おうかと思ったが、何も言えないゴロタだった。エーデル姫に対しては、まだ耐性が出来ていないようだった。エーデル姫が、真っ赤な顔をして、
「この部屋の趣味は、母上の趣味なのです。私は、黙って言うことを聞いてるだけなのです。」
と、言い訳をしている。しかし、部屋の隅に置いてある、エーデル姫より大きいクマのぬいぐるみとか、部屋の壁に掛けているフリル一杯のピンクのワンピースとか、絶対に本人の趣味に間違いない。二人が、深い溜息をついたところで、急にドアが開いて皇后陛下が入って来られた。
「あら、あら。こんな目が痛くなる様な部屋にお通しして。エーデルったら、小さい時から可愛いもの大好きっ子だったから。すみませんねえ。」
エーデル姫は、横を向いて口笛を吹き始めた。
「急に入って来て、ごめんなさいね。どうしても、ゴロタさんとシェルさんに話しておかなければいけないと思って。」
皇后陛下の話によると、エーデル姫の婚約は、昨日、急に決まったそうだ。前々から、エーデル姫の態度がおかしく、ジェーンに聞いてみるとゴロタさんの事が好きになったみたいだとの事。しかし、ゴロタさんには婚約者がいるからと、諦めようとしていた事。だから、王都にいる間だけでもゴロタさんと一緒にいようと思い、押しかけてしまった事。あの魔物討伐で、ゴロタさんが国の英雄になったのに、自分はまだシェルさんみたいに、ゴロタさんを守れなかった事。間も無くゴロタさん達が、東のエルフ国に行ってしまうけど、『付いて行く。』とは絶対に言えないので諦めなくてはいけない事。
あの祝賀パーティーの時、エーデル姫は、ベランダで一人でベソをかいていたら、国王陛下に見つかってしまい、仕方なく自分の気持ちを全部話したら、突然、ああなってしまったようだ。
国王陛下の発表をキキ、僕と結婚できると思ったら、舞い上がってしまって、シェルさんのことを忘れてしまったそうだ。今日だって、負けてなるものかと頑張っていたそうだ。何を頑張っていたか良く分からないけど。
それまで、黙って聞いていたシェルさんが、涙目になって
「私だって、ゴロタ君の事が好きなのよ。それを、あんな形で横取りするなんて。ひどすぎるわ。私の事は誰も考えてくれないの。ひどい、ひどすぎる。もう分かったわ。『郷』の父にいって、この国と戦争だわ。」
ちょっとシェルさん。今、大変なことを言いませんでしたか。それをニコニコ聞いているふりをして、目が笑っていない皇后陛下が、
「ところで、シェルさん、貴女のお国は東のエルフ国と聞いていましたが、お国の名前はなんと言うのですか。」
「はい、グリーン・フォレスト連合公国と言う国で、父はペニシュラ・シルフィード・アスコット3世と言います。」
「と言うと、あのアスコット大公閣下が、御父上なのですか。」
「はい、そうです。父をご存知ですか。」
「ええ、まあ。あ、ちょっと用事を思い出したので、これで失礼します。」
皇后様、顔が引きつっていますよ。皇后陛下が出て行ってから、間も無く、国王陛下がお会いになるとの案内があった。会うのは、屋上の展望室だそうだ。シェルさんとエーデル姫と3人で展望室に向かった。僕は、展望室と言う所に行った事がなかったので物凄く興味があった。シェルさんは、何かブツブツ呟いており、あまり興味がなさそうだった。
展望室は、八角形の形をした結構広い部屋で、柱は8本、八角形の角にそれぞれ立っており、真ん中にはぶっとい円柱が立っていた。柱の間からは、グレーテル市が一望でき、僕は一瞬で、外の世界から目が離せなくなった。どっちみち、国王陛下と話すのは、シェルさんだからと気楽に構えて、遠い大雪山脈などを見ていたら、
「ゴロタ君も、ここに座って!」
と、シェルさんにきつい口調で言われた。僕が初めて聞くシェルさんの怒った声だ。僕は、久し振りに顔が真っ赤になって、何も言えなくなってしまった。泣いてしまうかも知れない。
「すまん。悪かった。」
国王陛下が、急にシェルさんに謝って来た。
「へ?」
「シェル殿が、あの大公閣下の姫君とは、ちっとも知らなかったのじゃよ。一人で冒険に出ているものじゃから、小国の姫位に思っていたのじゃ。」
聞くところによると、シェルさんの父親は、連合国唯一の大公で、その勇猛さから『獅子王』と呼ばれているらしい。シェルさん、嫌です。『獅子王』怖いです。シェルさんの『郷』には行きたくありません。
「ゴロタとシェル殿が婚約している事は知っていたのじゃ。しかし、子供同士の約束、親の承諾のない婚約など、国の法律でも無効になる位、価値がないものじゃから、先に正式な発表をすれば勝ちだと思っていたのじゃ。シェル姫、本当にすまん。」
深く詫びる国王陛下。シェルさんは、ポカンとし、エーデル姫が、ワナワナと震え始めた。婚約した喜びから、一転、またゼロからの出発となってしまったのだ。
「父君、嫌なのです。ゴロタ殿と結婚できなくなるのは我慢できないのです。」
国王陛下は、困ってしまって、改めてシェルさんにお願いしている。
「シェル殿、エーデルに、ゴロタ殿を譲っていただくわけにはいきませんか?」
「絶対に、無理。ゴロタ君は、私一人のものなの。誰が、何といっても、私一人のものなの。」
完全にお子ちゃまモードに入ってしまったシェルさん。それに付き合って、指をくわえシクシク泣き始めるエーデル姫。それを見て、オロオロしている国王陛下と皇后陛下。
完全に残念ムードがあたりを埋め尽くしている。
そこに、お茶を持ってきたジェーンさん。皆の様子を見て、吃驚した様子だったが、直ぐに状況を把握したようだった。(さすが、ジェーンさん、女子力が高いです。)
「国王陛下、私から一つ、提案があるのですが。」
「なんじゃ、申してみよ。」
「この状況で、最も大切なことは、ゴロタ様がどのように思われているか、ということです。その点は、確認されたのでしょうか?」
ああ、やっと、まともな人が現れた。
婚約解消されました。政略的に解約されました。
エーデル姫が少し可哀そうになりました。




