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紅き剣と蒼き盾の物語(コミュ障魔王と残念エルフの救世サーガ)  作者: 困ったちゃん
第27章 ヘンデル帝国タイタン侯爵領
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第275話 帝立冒険者ギルドカトラス市支部

ダンジョンは、町を繁栄させます。魔石、ドロップ品、鉱石それと宝箱。冒険者達は一攫千金を狙って群がってきます。

(2月21日です。)

  今日は、カノッサダレスさんを、ヘンデル帝国タイタン侯爵領の行政庁長官に任命した。ハルバラ市にある郡庁の改修が終わったら、赴任して貰う予定だ。別に、カトラス市に行政庁を置いても良いのだが、やはり帝国と接していると、将来的に問題が生じた時に、防衛が難しいので最も距離のあるハルバラ市に置くつもりだ。ハルバラ市は、これから発展する街だ。僕からの潤沢な資金をもとに発展していくだろう。周辺には自然の恵みが豊富だ。なにより、ダンジョンも出来ている。どれだけの恵みをくれるのか未知数だが、かなりの収益が上がるだろう。


  ハルバラ市には、これから恵まれたインフラ、いい学校、いい治療院それに毎年の豊かな実りを約束されている広大な農地が出来上がるはずだ。僕は、魔物の肉体から良い肥料が作れることを知っている。また、用水についても簡単に用水路を作れるのだ。それに寒い時は、人口太陽、暑い時は恵みの雨、自然環境もある程度コントロールできる。豊作が約束されているようなものだった。


  僕は、郡庁舎前にある帝立冒険者ギルドに寄ることにした。ギルドは、2階建ての煉瓦作りの建物だった。通常は、未成年のポーター達が大勢入り口付近に屯しているのだが、このギルの前には、そんな状況はなかった。ギルドの中に入ると、ガランとしている。受け付けには、たった1人の女性職員がいるだけで、冒険者は皆無だった。依頼ボードにも何も貼られていない。依頼がないのだろうか。依頼が無ければ、冒険者が居る訳無かった。僕は、受付に近付く。受付の女性は、僕を見て、ニコリと笑って話しかけた。


  「いらっしゃいませ。ヘンデル帝立冒険者ギルドカトラス市支所にようこそ。今日は、どのようなご用件でしょうか?」


  「こんにちは。僕の名前はゴロタです。ギルドマスターに会いたいのですが。」


  「ギルドマスターにですか?どのようなご用件でしょうか?あ、その前に冒険者カードをお見せください。」


  僕は、久しぶりに冒険者カードを見せた。カードを確認していた受付の女性は、言葉を失ってしまった。ランク『SSS』など見たこともなかったからだ。この世界で、ランク『SSS』は、たった一人しかいない。あの『殲滅の死神』だ。と言うことは、この目の前の長身の超イケメンが、あの『殲滅の死神』なのだと言うことに気が付いたようだ。新領主様が目の前に立っていることを理解した受付嬢は、緊張した面持ちで、慌てて裏の部屋に走り込んだ。


  直ぐに、ギルマスが出てきた。中年の男性で、名前をルーベンスさんと言った。僕は、彼にある情報を提供した。ハンナ村の新ダンジョンだ。ダンジョン攻略を、フリー依頼にして、ダンジョンからの収穫品の買い取りをするようにして貰うのが、今回、ギルドを訪問した理由だ。最初、ルーベンスさんは、難色を示した。ここからハンナ村までは、余りにも遠いのだ。


  僕は、ギルドの一室にゲートを作り、ハンナ村と繋げてみせた。ハンナ村に行ってみると、ハッシュ町の冒険者達で賑わっていた。いくら僕の領内といえども、グレーテル王国からヘンデル帝国に、入国許可も無しに自由に出入りさせるのは問題だと思っていたので、なんとかルーベンスさんのダンジョンに頑張って貰おうと思っているのだ。ダンジョン運営が軌道に乗ったら、ハッシュ町のゲートは閉鎖だ。ダンジョンからの豊かな恵みがあれば、帝都からも冒険者が来てくれる。そうすればカトラス市ももっと賑わうのではないかと思うのだ。ルーベンスさんは、それまでの死んだ魚のような目が、キラキラと輝き始めた。


  今は、ルーベンスさんと受付の女の子の二人だけのギルドだが、それなら王国のギルド本部からも応援を呼ばなければならないし、カトラス市からも新規に冒険者になろうと言う若者も出て来るかも知れない。ルーベンスさんは、帝都のギルド本部にこれから行く事にしたようだ。急ぎの馬車を使えば、2週間で行って帰って来られると言っていたが、僕は、ルーベンスさんを、ゲートを使って帝都のギルド本部に連れて行くことにした。帝立冒険者ギルド総本部には、まあまあの冒険者がいたが、近くにダンジョンが無いため、ポーターたちは少なかった。依頼は、護衛と農園の周辺の魔物や野獣狩りが殆どだった。初心者用の薬草採集があるのは、王国と同じだった。総本部長は、2等上級認証官で、かつ冒険者ランクが『A』のミライさんという名の男性だった。身体はがっしりしていたが、かなりの年配のようで、もう冒険者としての活動は無理かなと思われた。


  総本部長は、ルーベンスさんの話を聞いて、非常に興味を持たれた。カトラス市の宿泊施設の状況や、カトラス市からの転移がどのようなものか、詳しく聞きたがった。僕は、まず依頼書を、この総本部を始め、各郡の冒険者ギルドに一斉に張って貰うことをお願いした。ダンジョン攻略の成功報酬は、金貨5枚とし、ルーベンスさんに預託しておくことにした。魔物からのドロップ品や宝箱、鉱石それに魔石類はカトラス市の冒険者ギルドが一括して買い取ることにすること。以上の点を了解して貰った。


  ミライさんが、爆弾発言をしてきた。これからそのダンジョンに潜ってみたいと言うのだ。そういえば、ダンジョンの名前も決めていなかったし、中に潜ったことも無かった。ダンジョンの名前は、簡単に『ハンナ・ダンジョン』とした。それでは、一緒に行きましょうとなり、ミライさんの準備が終わるのを待つことにした。


  しばらくすると、ミライさんが完全装備でギルマス室から出て来た。驚いたことに、ミライさんは大剣使いだった。自分の身長ほどもある大剣を背中に背負っていたが、見た目から大丈夫かと思えるほど大きな剣だった。しかし、先ほどの年寄り臭さは感じられず、背筋もシャキンとしていた。ルーベンスさんは、最初からギルマスとして完全装備だったが、どうやら恰好からして魔導士のようだ。僕とミライさん、ルーベンスさんの3人で、ハンナ村のダンジョン前に転移した。ミライさんは、『空間転移』が初めての経験らしく、非常に興奮をしている。総本部とここを繋ぐゲートを常設してくれないかと頼まれたが、それは丁寧にお断りした。それでは、カトラス市の繁栄に寄与しないからだ。僕の意図を察したミライさんは、それ以上の要求はしてこなかった。


  ダンジョンの前には、幾つかテントが張られていた。お定まりのお弁当屋や薬草、魔光石などを売っている。きっと、ハッシュ町のギルドから頼まれて屋台を出しているのだろう。まだ、午前中だというのに商品が完売している屋台もあった。

屋台の売り子達は、僕の事を知っているみたいで、皆、大きな声で挨拶をしてくれた。僕も、挨拶を返してあげたが、それだけで売り子の若い女の子はキャーキャー言っていた。その様子を見て、ミライさんとルーベンスさんは、不思議そうな顔をしていた。今度、聖夜の日に、タイタン市に来てみれば理由が分かる筈だ。


  早速、ダンジョンに潜って行く。地下第1階層は、すでにギルドによりマッピングも終わっており、魔光石が明るく洞窟内を照らしていた。冒険者パーティが6組位入っており、ゴブリンやオークなどの低級魔物を討伐したり、鉱石の採取のためにツルハシをふるっていた。


  僕達は、そのままスルーして、地下第2階層に潜った。ここは、まだマッピングが完全ではないようだ。鉱石の場所も宝箱のドロップもこれから発見していくようだ。そのため、冒険者パーティが10組以上入り込んでいる。至るところで、壁を叩く音がする。また、出現する魔物も、複数のオークや2体のオーガで、『C』ランクでは、討伐が難しいようだ。また、その出現率も高く、奥の方から次々と湧いてくるようだ。近くのパーティに聞くと、地下第3階層に潜ったパーティは、誰も帰ってきていないそうだ。それで、とりあえず第2階層で、魔物の湧くのが落ち着くまで討伐をしているみたいだ。


  僕は、オークやオーガを瞬殺しながら最奥まで進んだ。武器は使わない。指鉄砲で心臓を一撃するだけだ。オークが8匹出現した時は、連射モードで掃射した。魔石を全く回収しないので、ミライさんやルーベンスさんは未練そうだったが、低級魔物の魔石など、余程大きくなければ、回収する時間が勿体ない。他の複数パーティが、僕達の後を付いてきているので、良いお土産になるだろう。


  最奥には階層ボスが出現していた。アイアン・ゴーレムだ。冒険者ランク『B』以上でないと討伐は難しいだろう。しかし、僕は、そのまま近づき、ゴーレムの胸に手を当てて、体内の魔石を念動で取り出した。魔石を失ったゴーレムは動かなくなった。このゴーレムの素材は、安価な鉄のようなので放置することにした。


  第3階層は、廃墟エリアだ。という事は、アンデッドが出現するだろう。このダンジョン、なかなか魔物のレベルが高い。これなら楽しめそうだ。降りた途端に、ゾンビ・ソルジャーが襲い掛かって来た。敵は10体程の部隊だった。僕は、限定的ファイアボールを破裂させて、一瞬で全てを灰にしてしまった。残ったのは、魔石だけだった。敵の指揮官からミスリル・ハンマーがドロップした。魔石は、ミライさん達に任せて、ミスリル・ハンマーだけ僕が収納しておいた。


  しかし、ゾンビ・ソルジャー10体とは、この階層は、『B』ランクパーティでは難しいかも知れない。きっと、この奥には、レブナントやリッチがいるかも知れないのだ。まあ、今の僕では敵にはならないが。


  魔石の回収が終わったようなので、どんどん進むことにした。20体のスケルトン・ソルジャーは、重力魔法で粉々に砕いた。ドロップ品は、ミスリル・ハンマーだった。これで2連続だ。ミスリル・ハンマーは、ミスリルの武器の中でも大型で重く、連続して出てしまうと、通常は持ちきれないはずだ。かなり意地の悪いダンジョンのようだ。まあ、僕にはイフクロークがあるから関係ないが。奥まで行くと、リッチとレブナントが待ち構えていた。ここの階層ボスだろう。周辺には、盾や剣が転がっている。きっと、先行した冒険者パーティのなれの果てだ。



  僕は、ここで初めて『オロチの刀』を抜いた。レブナントが『死の視線』を浴びせて来るが、僕の『蒼き盾』が完全に跳ね返してしまった。僕は、軽く『オロチの刀』を横に振る。真っ青な「斬撃』がリッチとレブナントを襲う。ぶつかる瞬間、『斬撃』は白く変化した。最初は、風属性を纏い、シールドがない事を確認してから『聖』魔法に切り替えたのだ。『聖』魔法の『斬撃』は、リッチとレブナントを灰にしてしまった。それぞれの魔石がコロンと転がって来た。ドロップ品は、ミスリル・ハンマーが2つだった。

これでカトラス市は安心です。でもこれから北東郡を完全に平定しなければなりません。

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