表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅き剣と蒼き盾の物語(コミュ障魔王と残念エルフの救世サーガ)  作者: 困ったちゃん
第27章 ヘンデル帝国タイタン侯爵領
271/753

第269話 帝国辺境侯叙爵と北への進軍

ゴロタは、帝国のお貴族様になるみたいです。

(2月5日です。)

  今日、午前10時にヘンデル皇帝陛下から叙爵されることになっている。僕は、貴族服に、武人としての正装であるアダマンタイトの鎧で完全武装をし、ベルの剣だけを腰に下げて、謁見の間に入って行く。玉座には誰もいない。


  僕は所定の位置で、左膝を床に付け、右胸を心臓の真上にあて、頭を下げて、臣下の礼のまま皇帝陛下の入室を待っている。両脇には、皇帝陛下の家族、行政、司法、軍事及び魔法の最高責任者それに高位の認証官達が並んでいる。


  宮廷音楽隊の演奏の中、皇帝陛下が室内に入って来る。前に、王冠と王剣を持っている侍従が先導している。


  皇帝陛下が、玉座に座ると、侍従が『王冠』を皇帝陛下に被らせる。プーチキン宰相が、声を張り上げる。


  「侯爵に叙せられ、北方辺境侯並びに北方征夷大将軍に任ぜられる者。グレーテル王国タイタン公爵閣下にしてグレーテル王国全権大使であらせられるゴーレシア・ロード・オブ・タイタン殿」


  「はい。」


  僕は、頭をさらに垂れて待っている。国王陛下が、王剣を右手に持ち、刃の鎬を僕の右肩に当てて一言。


  「良く務めよ。」


  これで終わりだ。祝賀晩餐会は、昨日、やってしまった。今日は、これから進軍開始だ。皆で、中庭に出て行く。タイタニック号が駐機している。国王陛下とプーチキン宰相、マーキン魔導師長とパトロン将軍が乗り込んできた。絶対に飛行船から出ないという約束だ。女性陣も飛行服で乗り込んできた。僕も飛行服だ。シェルは、当然、助手席だ。皇帝陛下達は、前方の席も着席してもらう。女性陣は後方の席に着席する。通常の馬車と違い、全ての椅子は、前方を向いている。右側2名と左側1名で、真ん中に通路があった。全部で6列なので、乗客18名乗りだ。後方にまだ、余裕があったが、荷物スペースにしている。


  気密ドアをロックして、ゆっくりと浮上する。車輪を格納するレバーを操作する。ギギギという音と共に車輪が格納され、蓋がされる。それから水平飛行に移って行く。進路は北北西だ。ドンドン加速するが、時速500キロで、加速をやめた。何も最高性能を皇帝陛下や帝国の重臣に教える必要はない。それでも、皇帝陛下達には驚異以外の何物でも無かった。皇帝陛下が小声でマーキン魔導士長に聞いていた。


  「マーキン、この飛行馬車は、なぜ空を飛べるのか分かるか?」


  「飛翔系の魔法とは思いますが、これほどの魔法、我が帝国内では不可能と思われます。」


  「原理も分からんのか?」


  「御意。わが帝国の飛翔系魔法を使える者は、3名程おりますが、せいぜい自分自身が3m程浮かび上がれるにすぎません。空を自由に飛ぶなど見たこともありません。ましてやこれほどの巨体を軽々と浮かばせるなど。原理が分かっても、絶対にできないものと思います。」


  パトロン将軍が、口を挟んできた。


  「この飛行馬車を戦略に使えたら、絶対に有利な武器となるものと思われます。移動速度もさることながら、空中高くからの攻撃、百戦百勝と思われます。」


  パトロン将軍の言葉に、皆、黙ってしまった。クレスタが、皆にハーブティーを出した。ほとんど揺れない機内では、普通に飲食ができる。前の席から、小さなテーブルを引き出して、ティーカップを置いた。


  飛行を初めて、2時間、ハルバラ市の上空に到着した。直ぐに降りずに、眼下の状況を確認しながら、昼食にした。昼食は、ローストターキーサンドイッチに赤ワインだ。グレーテル王国の最上級ワインを準備した。また、サンドイッチのパンも、今朝、領主館でクレスタが焼いたものを持って来ていた。焼きたてパンのサンドイッチは、格別に美味かった。


  食事終了後、とりあえず食器類を片づけた。洗うのは、後でいいだろう。ゆっくり機体を下降させる。途中、車輪を出しながらだ。着陸して、一番最初に機外に出たのは、ノエルだった。失われた秘宝『天空の杖』を持っている。市内中心部の中央広場には、ゴロツキばかりがたむろしていた。一般市民は、タイタニック号を見て、建物の中に避難していた。ノエルは、ゴロツキどもにサンダーストリームをお見舞いする。『天空の杖』の秘力でレベル4アップ、つまり16倍の威力だ。


    ズゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーーン!!!!!!!!


  音と黒煙が消えたとき、広場に生きている者はいなかった。死体も、炭と言うよりも灰になった部分が多かったくらいだ。女性陣が、全て降機した。僕とシェルは、乗機したままだ。


  エーデルが『百刺しのレイピア』を構えて、先頭を歩く。指は、親指と人差し指を立てた指鉄砲にしている。


  路地の裏から、ゴロツキどもが出て来るが、3分以内に全て、エーデルが殲滅してしまう。50m以内に近づくことができない。心臓を刺されるか、頭を撃ち抜かれるかだ。エゲツない。


  皇帝陛下は、ワイバーン掃討戦の時、女性陣の戦いを見ていたが、その時に比べても何倍も威力が増しているのが分かったようだ。僕は、ゆっくりと、タイタニック号を進ませる。いわゆる馬車モードだ。女性陣の後を付いて行くのだ。


  次は、シズちゃんの番だ。『ヨイチの弓』を構えている。弦はない。矢を5本、つがえているだけだ。というか持っていると言った方が近い。建物の上から、弓で狙っている者がいる。シズちゃんは、前方に向かって、矢を放つ。真っ赤に光った矢は、グイングイン進路を変えて、建物の屋上のゴロツキ3名を一瞬で殲滅した。


  どんどん、市内を進んでいく。先ほどのノエルの雷神攻撃で恐怖を覚えたのか、あまり敵が出て来ない。突然、建物の陰から、ウインド・アローが放たれてきた。魔法攻撃だ。しかし、一瞬で、僕の『蒼き盾』が出現し、全ての攻撃を跳ね返す。ビラが、『クレイスの杖』を掲げる。サーベルタイガーが召喚され、魔法使いどもを食い殺してしまった。聞こえてきたのは断末魔の叫び声だけだった。空にはバルトが飛翔しており、魔法使いの位置は、最初から把握済みだった。


  クレスタは、用心のため、ウインド・シールドを張る。『キルケの杖』が青く光る。シールドが16枚張られた。


  機内では、皇帝陛下達が唸り声をあげていた。


  「マーキン、余は夢でも見ているのか?彼女達の使う魔法レベルは全て極大級以上のような気がするのだが。」


  「御意、まさに極大級以上、レベル8以上のものと思われます。私の魔法レベルは4であります。わが魔法部隊はレベル2程度の者が殆どですので、これでは国家殲滅級かと思われます。」


  市内のメインストリートを南北、東西と進軍し、ゴロツキどもの姿が無くなった。僕達は、皇帝陛下と共に降機した。直ぐにタイタニック号をイフクロークに収納する。それを見たマーキン魔導士長は、口が開いたままになってしまった。収納魔法は知っていたが、このような大きなものを収納するのなど見たことも無いようだ。空間移動に収納魔法、僕の能力は無限のように感じられたのであろう。


  皆で、郡総督上級認証官邸に入って行く。無人かと思ったら、数名のゴロツキが巣食っていた。当然、直ぐに消滅させた。文字通り『消滅』させたのだ。邸内に死体が転がっていては、気分が悪いから。


  もう、皇帝陛下一行は何も言わなくなった。邸内は、無人だった。いや、人の気配がある。2階の寝室だ。イフちゃんを飛ばす。女の子が閉じ込められているらしい。シェルと共に、2階の寝室に入って行く。痩せた女の子6人を発見した。全員裸だ。6歳から8歳位だろうか。きっと変態貴族か豪商にでも売り払うつもりだったのだろう。シェルとノエルに治癒と服を着せるのを任せて、邸内を探索した。もう誰もいなかった。邸内は、荒らされ放題で、タンスの引き出しは全て床に散乱していた。このままでは、この屋敷に泊まることも出来ない。


  皇帝陛下には、一旦、帝城に帰っていただくことにした。1階大広間と、帝城大広間をゲートでつなぐ。皇帝陛下は、不満と不安が入り混じった顔で帰って行った。シェル達が、女の子達を連れて来た。小綺麗な服を着ていたが、目は恐怖におびえたままだった。詳しい話も聞けないので、一旦、タイタン市に戻ることにした。勿論、皆も一緒だ。


  タイタン市の医務院に行き、女の子達をフランちゃんに見て貰う。可哀そうに、全員、男に犯された痕跡があった。僕は、そっと復元で、身体を犯される前に戻してあげた。しかし、嫌な記憶だけは治すことが出来ない。こればかりは、時間が解決するのを待つしかない。性病検査をしたところ、1名が罹患していたので、これも浄化魔法で除去してやった。さすがに妊娠はあり得ないので、妊娠検査はしなかった。


  女の子達は、フミさんの孤児院に搬送した。ゆっくり、身元を聞いて、ハルバラ市が落ち着いたら、親御さんや親せきなどの身元引受人を探すつもりだ。明日は、ハルバラ市周辺の魔物掃討をするつもりだ。全員で行く必要もないので、毎日、2名ずつで行くことにした。


  敵がいなくなったら、バンブーさんに頼んで、あの屋敷を改修しよう。辺境侯爵邸として使用する。きっと、早い段階で可能になるだろうと思う僕だった。


  次の日から、ハルバラ市救援対策が始まった。最初の同行者は、シェルとエーデルだ。食料品を大量に持ち込む。ハルバラ市に行く前に、王都に寄り、タイタニック号を馬車職人の工房に戻しておく。残った作業を完了してもらうためだ。それからバンブー建設に寄ってバンブーさんと設計士さんをハルバラ市に連れてゆく。


  ハルバラ市の屋敷の前に転移した。バンブーさん達には、無人で荒れ放題の屋敷を、侯爵邸として使用できるようにしてもらうための見積もりをお願いした。外周と屋敷内を見てもらったら、痛みが酷いので、3か月は貰いたいと言ってきた。了解して、バンブーさん達を王都に戻したら、もうお昼だった。


  昼食は、キャンプセットを屋敷の前の道路に出して、3人でサンドイッチを食べる事にしたが、ある考えがあり、コンロセットを出して、バーベキューを焼き始めた。最初に反応したのは、遠くから僕達を見ていた子供達だった。小さな子達が匂いに釣られて、集まってきた。子供たちは、ジッと僕達を見ている。ボロボロの服を着ているが、目がキラキラ光って可愛い。シェルが、小さな子に手招きをする。10歳くらいの男の子が、小さな女の子の手を引いて、オズオズと近づいてくる。


  シェルが、焼き上がった串を2本渡した。吃驚した顔を直ぐに輝かせ、2本を受け取って、女の子と分けて食べ始めた。周りを見ると、子供達で一杯だった。今日は、魔物退治どころでは無くなった。1時間後には、大人達まで並び始めてしまった。大人達には、焼き串の他に、1袋の小麦を与えた。今、一番欲しがるものだろう。長い列ができた。小麦を渡すのはエーデルの役目だった。シェルは、応急措置が必要な子供の治癒だった。もう夕方まで働き通しだった。


  夕方、また明日来るからと言って『臨時救援所』を閉鎖した。今日だけで、タイタン市の治癒院に緊急搬送した子供は3人だった。その子達を見て、シェルが、駄目かも知れないと言って涙ぐんでいた。

新型飛行船タイタニック号は、まだまだ改良しなければなりません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ