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紅き剣と蒼き盾の物語(コミュ障魔王と残念エルフの救世サーガ)  作者: 困ったちゃん
第26章 結婚ラッシュが始まります。
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第267話 南オーチ村の魔物、クロナガス

地球最大の生物は、シロナガスクジラです。ゴロタの世界では、黒龍は、最大500mにもなります。通常、地上では重力に耐えられずに潰れてしまいます。でも、魔法は、非科学なので何でもありなのです。

(1月26日です。)

  南オーチ村で困っていたことは、冬の間中、沖合を徘徊しているクジラの魔物だった。全長は、60m以上あるみたいで、冬の間中、寒い北極の海から回遊してくる。沖合が暖流と寒流の潮目になっており、豊富な魚の宝庫だ。その魚を狙って、クジラやイルカの海獣があつまり、その海獣を狙ってあの魔物が現れるらしい。夏になると、潮目もずっと北に上がって行くので、大丈夫なのだが、冬の間は、寒流の勢いが強く、南タイチ村の沖合に潮目が渦巻いているそうだ。


  魔物は、クジラに似ているが、クジラよりも大きく、長さがとてつもなく長い。身体の太さは、普通のクジラ位なので、まるで蛇のように長い身体だ。色は、真っ黒で、顔つきは歯クジラのように口が大きく裂け、目は口元の横についている。村人たちは、『クロナガス』と呼んでいる。クロナガスが現れてからは、クジラ漁はもちろんの事、普通の漁も全くできないため、何度か近隣の猟師達で討伐隊を編成して出漁していったが、すべて返り討ちに会ってしまった。幸い、人的被害は無いが、舟を何艘も沈められているそうだ。


  村長は、身体が大きいが、まだまだ若そうな僕では、きっと失敗するだろうと、心配していた。それは、村の皆もそうだった。和人の特徴の一つに身長がそれほど大きくならないという所があり、村の屈強な漁師でも、身長は175センチ程度しかなかった。僕の身長は、今、193センチあるので、頭一つ高いのだが、顔つきは15歳位の少年顔だし、髪の毛も少し短めのボブカットなので、とても弱そうに見えるのだ。僕は、皆に安心させるために、アダマンタイトのフル装備に『ベルの剣』と『オロチの刀』を装備した姿になって皆の前に再び現れた。以前、水竜を退治した時には、空も飛べずに苦労したが、今の僕だったら、きっと瞬殺できるだろう。しかし、身体をバラバラにしないで、綺麗なままで討伐をするとなると、それなりに気を使わなければならない。体内で、『絶対零度』か『電撃』、『火炎』の爆発をさせると、きっと仕留めることが出来るだろう。まあ、やってみれば何とかなるはずだ。


  僕は、村の皆とともに、入り江の先の堤防の所に行った。堤防から先は、外海になっている。外海のはるか先、水平線に近いところで、潮が吹きあがっている。あそこにクロナガスがいるのだろう。僕は、村長が舟を貸してくれるのを丁重にお断りして、そのまま『飛翔』で飛び上がった。高さ100m位まで飛び上がったが、下で、村長達が驚きの声を上げているのが聞こえる。恐らく『飛翔』魔法を見るのは初めてなのだろう。まあ、僕の場合は、魔法ではなくスキルなのだが。


  そのまま、水平飛行に移り、クロナガスの真上に行く。潮が30m位吹きあがっている。ふと気が付いて、クロナガスの潮吹きの穴を『錬成』で塞いでしまう。いかに魔物でも息が出来なければ生きてはいられないだろう。しばらくすると、息継ぎに海面に浮上してきたクロナガスが、息が出来ないことに気が付き、暴れ始めた。まあ、暴れたところで、息ができる訳が無いのだが。このまま窒息死させても良かったが、海の中、深海で窒息死されても面倒臭いので、口の裂けめの元、小さな目がある場所の真ん中あたりを狙って、『サンダーボルト』を爆発させる。本当に小さな爆発だ。あまり大きくすると頭が中から爆発して吹き飛んでしまうので、脳が電撃で活動停止するレベルだ。次の瞬間、クロナガスは、その巨体を海面上に浮かべたまま動かなくなった。うん、一瞬だった。知能の低い魔物では、今の僕の敵ではない。僕は、クロナガスの死体を浮かばせたまま、念動で浜辺まで4キロほど移動させた。


  タイチ村は、クジラ漁の村だ。クロナガスだって魔物と言えどもクジラだ。美味しくいただくことだろう。ただし、皮が少し硬いようなので、僕は、『ヒゼンの刀』で首の後ろからシッポまで3枚におろしてやった。大量の血は、入り江に流れ込み、入り江が真っ赤になってしまった。いつか、どこかで見た光景のようだ。それを見て、村人たちは歓声を上げて、クロナガスに群がって行った。一番おいしいのは、尻尾の付け根の所らしい。そこの部位は、僕に権利があるそうだ。村長が、切り分けて持って来てくれた。赤身の中に脂身が刺しで入って、見るからにおいしそうだ。僕は、ありがたく頂戴してイフクロークにしまった。


  今日は、お祝いをするので、僕達も主賓として参加して貰いたいとの事だった。勿論、参加することに異議は無かった。料理は、当然、クジラ料理だ。魚は、これから漁に行かなければないので、今日は我慢して貰いたいと言ってきた。僕は、浜辺に干してある大きな網と1艘の船を借りた。網を舟に乗せて、出発する。フミさんも一緒に乗ってきた。櫓も漕がないで、舟はスルスルと進み始めた。スルスルどころではない。船首を持ち上げ、波しぶきを立てながら猛スピードで進んでいく。沖合にでてから網を海に投げ入れる。船の艫に網の端を縛り付け、再度、舟を進ませる。半径4キロ位の大きな円を描いて進んでいくと、面白いように魚が網の中に入って行く。もうこれ以上入らないことを確認した僕は、網ごと、採れた魚をイフクロークにしまい、入り江に帰って行った。入り江に戻ってから、網を砂浜の上に広げる。網は、パンパンだった。村の女性達が、バケツや箱を持って網に群がる。値段の高い魚とそうでないものをより分けている。値段の高い魚は、氷で貯蔵して、船で町まで売りに行くのだ。安い魚は、干物にしたり、ミンチして加工品の材料だ。


  今日の宴会では、鯛のお頭付きを大量に出すことが出来たようだ。お祝いは、夕方から夜中まで行われていた。酔った漁師さん達がフミさんのそばに群がる。まあ、いつもの事だ。村の女性陣を見ても、フミさんが一番きれいだ。というか、図抜けている。やはり和人離れしている顔付きが目を引くのだろう。僕も、女性陣に囲まれているが、先ほどから股間をまさぐられたり、首筋にキスをされたりと、このままでは危ない状況だ。どうして、このような場面では、女性の方が恥じらいが無いのだろうか。男漁師たちは、恥ずかしがって、決してフミさんに手を出したりしないのに。


  ブルマンさんは、村の長老達と飲み比べをしている。和の国のお酒は、結構強いので大丈夫かと心配してしまう。ミナミさんは、幼馴染たちと笑いながらお酒を飲んでいる。ミナミさんを連れてきて本当に良かったと思える僕だった。





  次の日、ミナミさんのお母さんと一緒に、ポーチ村に帰った。お母さんは、簡単な荷物と夫の形見だけを持って、ポーチ村に来た。これから、親子3人、安心して暮らして貰いたい。フミさんが、ミナミさんに当面の生活費として、大金貨1枚を渡していた。本当は、金貨5枚を準備していたのだが、僕が大金貨にした方が良いと言って、残りを出してあげたのだ。


  これから、フミさんと本当の新婚旅行だ。まず、いつもの通り、大陸の最南の渓谷に行く。決して誰も立ち入ることの無い渓谷、ダイヤと黄金の宝庫の渓谷、ここで二人だけのひと時を過ごすのだ。満天の星空の下、女性だったら必ずあこがれるシチュエーションだ。今は、真冬なので星が良く見えるだろう。その渓谷では、3夜を過ごした。もう、いい加減、疲れ切ってしまった。それから、グレーテル王国の王都に行き、フミさんを冒険者登録した。別に冒険をさせるつもりもないが、これも結婚のセレモニーの一つだ。ギルドで、能力測定を行う。


******************************************

【ユニーク情報】

名前:フミ・タイタン

種族:人間

生年月日:王国歴1996年8月7日(30歳)

性別:女

父の種族:人間族

母の種族:人間族

職業:元神官 孤児院院長 冒険者C

******************************************

【能力】

レベル    12

体力     50

魔力    140

スキル    90

攻撃力    20

防御力    60

俊敏性    90

魔法適性   聖 光

固有スキル

【神の御技】【治癒】

習得魔術  ヒール 

習得武技  

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  え、『神の御技』って、それ、もしかしてフランちゃんと同じではありませんか?能力的には、フランちゃんのスモールバージョンという所です。ああ、どうしてこんなにレアなスキルが集まってしまうのか、僕には謎だった。道理で、治癒院でもフランちゃんと同等の治癒能力を発揮するはずだ。ただ、魔力量が少ないようなので、乱発は控えるようにしなければならない。


  冒険者登録をしてから、王都の超一流と言われている『インペリアル・ホテル オブ グレーテル』のスイートルームを予約した。一泊、金貨1枚半だ。夕食は、『マキシム・ド・グレーテル』で鹿肉料理を食べた。そういえば、フミさんには、婚約指輪を渡していなかった。と言うか、婚約をしないままに結婚してしまったのだ。当然、結婚指輪は、結婚式のときに交換しているが、婚約指輪は未だだった。明日、買いに行く事にしよう。




  次の日、二人はティファサンにいた。フミさんは、ダイヤの指輪が良いと言っていたので、大きなダイヤの周りにエメラルドが飾られている指輪を買うことにした。値段は、金貨8枚だった。買った指輪を嵌めてあげたとき、フミさんは、目に涙を浮かべていた。いままで、ずっと我慢をしていたのだろう。僕は、申し訳ない気持ちで一杯だった。


  『フミさん、これから一杯幸せにしてあげるからね。』


  その後、フミさんの飛行服セットをオーダーした。色は、薄ピンクが良いと言っていた。白に近いピンクだ。色白のフミさんによく似あう色だ。出来上がったら、タイタン市の領主館に届けてくれるそうだ。代金は前払いしておいた。


  これで、新婚旅行は終わりだ。二人で、一般のゲートを通過する。当然、利用料は取られない。ゲートは王都の騎士団が管理しているが、僕を見たら、最敬礼してくれる。周りの人達も、礼をしてくれる。僕は、王都でも有名人らしい。直ぐにゲートを使わせてくれた。出たところは、タイタン市の行政庁の隣だ。最近、ゲート館という建物の中にゲートを設けることにしている。ゲート館から、領主館まで、二人でゆっくり歩いて行く。真冬だったが、今日は小春日和だ。寒くはない。のんびり歩いていると、道の両脇にクロッカスが咲いていた。2月には梅が咲き、沈丁花の香りがし始めたら、もう春だ。季節の移ろいは早いものだ。

クロナガスクジラの尾の味、美味しいのでしょうね。

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