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紅き剣と蒼き盾の物語(コミュ障魔王と残念エルフの救世サーガ)  作者: 困ったちゃん
第26章 結婚ラッシュが始まります。
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第263話 和の国は美しい国でした。

ジェリーちゃんとの旅行は、何もない旅行ですが、色々と事件には遭遇します。

(12月26日です。)

  翌日、王都のデザイア伯爵の屋敷に行った。デビちゃんを引き取ってもらうためだ。あと、昨日の話に出た鉱山運営が気になる。ガーリック伯爵領に行くトンネルの鉱山なら、大いに応援したい。デザイア伯爵は、やつれた様子で出てきた。昨日、一晩中、デビちゃんを探して王都を走り回ったそうだ。見つかる訳無いのに、申し訳ない事をした。デビちゃんも反省しているのか、泣いて謝っていた。僕は、デザイア伯爵に、デビちゃんとは全くやましいことはなく、キスさえしたことがない事を説明した。それに、昨日だってジェリーちゃんと一緒だったので、何も無かった事を誓った。なんとなく安心したのか、ソファにグッタリのデザイア伯爵だった。


  僕は鉱山のことについて質問した。やはり、あのトンネルの中の事だった。ミスリル銀鉱脈を見つけたのだが、採掘する費用が捻出出来ないそうだ。経費は、大金貨10枚はかかりそうだが、領内の不作が続き、金庫がほぼ空の状態だそうだ。デビちゃんの結婚を条件に、あの侯爵から大金貨5枚を支度金として貰い、後の5枚を融資して貰うことになっていたのに、ご破算になってしまった。当面、あのトンネルの開発は凍結せざるを得ないそうだ。僕は、黙って大金貨10枚を出して積み上げた。重さ20キロオーバーだ。


  伯爵は目を点にした。この王国の為替レートでは、大金貨20枚以上だろう。もとよりグレーテル王国の大金貨など見るのも初めてだった。借用書はいらない。返さなくても良い。トンネル工事を進めて貰いたい。これが、僕の条件だった。用件が済んだので、デビちゃんにサヨナラをしようとしたが、伯爵に今日は是非泊まって行ってくれと言われた。


  ジェリーちゃんと、旅行中なので、そうは行かないと言うと、デビちゃんも連れて行ってくれと言う。はあ?この人は、何を言っているのだろう。嫁入り前の娘を赤の他人の男性に預けるなんてどうにかしている。聞けば、もうこの国ではデビちゃんは結婚できないそうだ。一回、傷物の噂が出ると、貴族の子息は嫁に貰ってくれなくなるそうだ。せいぜい、愛人にしかなれない。デザイア伯爵は、ブリちゃんの事も知っていた。ブリちゃんだって婚約者候補として連れて行ってくれたのだ。デビちゃんを拒否する理由はないはずだと言うのだ。


  デビちゃんの気持ちを確認したら、顔を真っ赤にして、僕にキスをしてきた。すかさず顔を横に向けて、ほっぺにチュッとだけにしたが、デザイア伯爵の目が笑っていない事に気がついた。しょうがない。取り敢えず連れて行く事にした。荷物は大量だった。勉強道具に四季の服と靴、大量の下着や靴下。学校の制服と勉強道具。それに部屋一杯のぬいぐるみ人形。普通だったら馬車1台分は有るが、イフクロークに次々と収納した。デザイア伯爵が、メイドを1人付けてくれると言ったが、悲惨な思い出があるので丁重にお断りした。ジェーンさん、レミイさんそれにドミノちゃん、もう結構です。


  お昼は、和の国で食べたかったので、直ぐに和の国のツーガ市に転移した。2人は海を見るのが初めてだそうで、大興奮だった。お昼は、海鮮丼と蟹の鬼殻焼きにした。スープは、伊勢海老の味噌汁だ。この伊勢海老、なぜグレーテル王国では大海老と言うのか分からなかった。似た生き物にロブスターがいるが、種が違うようだ。食事が終わってから、今日泊まるミヤコ市に転移した。季節は冬、年末の今頃は、観光客も少ない。


  川の上に張り出している旅館に泊まる事にした。この旅館は、夏になると川の上に床を作り、その上で料理を食べるのを売りにしていたが、今はやっていないそうだ。最上階の続きの間を予約した。和の着物を着たメイドさんが案内をしてくれた。上品な歩き方だった。歩幅は小さいのだが、決して遅くない。不思議だ。


  部屋に入ると、室内でお茶を入れてくれた。作法があるらしいが、よく分からないので、蓋を手に持って、グビリと飲んだ。美味しい。お茶の渋みと甘みがコラボしている。ジェリーちゃん達は、テーブルの上のお菓子をモリモリ食べていた。メイドさんが中々部屋を出て行かないのに気がついた僕は、銀貨1枚をチップに上げたら、吃驚していたが、直ぐニコリと微笑んで部屋を出ていった。本当に上品なメイドさんだ。


  へやは、タタミというマットみたいなものを敷き詰めていて、この部屋だけで20枚だった。続きの部屋が16枚で、何故か入り口の部屋は10枚もあった。青臭い匂いが清々しかった。今度、領主館でも、このような部屋を作ってみよう。そうだ、フミさんに相談してみようと思った僕だった。


  僕達は、寝間着の着物に着替えた。ユカタと言うらしい。前で合わせて紐で縛るだけだ。以前来た時にも着たが、どうも着にくい。直ぐ前がはだけてしまう。3人で露天風呂に行く。川に面したところにあり、裏庭が一望出来る。この露天風呂は、あの部屋に泊まるお客さん専用風呂らしく、貸し切りだった。外の冷たい空気と温泉の温かいお湯がとても気持ちが良い。旅館の下には、遊技場があった。平らな台の真ん中に低いネットが貼ってあり、白くて軽いボールを木の団扇で叩き返すのだ。結構面白かった。向こうは二人がかりだったが、僕の敵では無かった。手が届かなくても『瞬動』で、正面に移動する。うん、ずっこい。


  夕食前に、また風呂に入った。夕食は、部屋に持ってきてもらうのだが、今日は、部屋で天ぷらをあげるそうだ。揚げたてのエビや小魚の天ぷらを食べたが、とても美味しい。最後に、天ぷらをご飯の上に乗せて、出汁の聞いたおつゆをかけて食べたが、お腹いっぱいでも、ペロッと食べられた。


  食後、また温泉に入った。今日は、もう3回目だった。部屋に戻ると、3つの布団が敷かれていた。少し離れて敷かれていたが、直ぐに、ぴったりとくっ付けられてしまった。当然、僕が真ん中だった。3つの布団なのに、2人とも僕の布団の中に入ってきた。もういい加減眠りたいので、2人に『スリープ』を掛けてしまった。僕は、ゆっくりと眠ることが出来た。


  次の日、トウミヤコ市に行って、お寿司を食べた。デビちゃんは、生の魚を食べる習慣がなかったので、恐る恐る食べていたが、美味しいと分かるとモリモリ食べ始めた。ジェリーちゃんは、何度か食べていたので、最初からモリモリだった。当然、サビ抜きにして貰った。トウミヤコ市は、大きな湾に面している。海は、冬でも波が静かだ。3人で、海岸に出てみる。ズーッと浜辺が続き、西の方にはフミ山が遠くに見える。なだらかな稜線が描く綺麗な三角形の山の上に、真白な雪が被っている。


  浜辺では、イソシギが餌を啄み、カモの大群が海面に浮かんでいた。ジェリーちゃん達は、波打ち際で、靴を脱いで、寄せる波に足を洗わせクスクス笑っていた。冷たいはずだが、余り気にしていないみたいだった。


  僕は、浜辺で温かいお茶を準備し、2人が帰ってくるのを待っていた。これで旅行は終わりだ。お土産に、バナナをカステラで巻いたお菓子を大量に買って帰った。


  帰ってからが大変だった。シェルにお目玉を喰らったのだ。何故、相談もせずにデビちゃんを連れてきたのかと怒っている。デビちゃんが泣きそうになっている。ハッと気が付いたシェルが、僕に対しての態度とは正反対の優しい笑顔で、


  「デビちゃんは、気にしなくていいのよ。あ、お部屋は、2階のジェリーちゃんの隣でいいかしら。あなた、案内してあげて。」


  部屋に案内してあげて、荷物を全て出してあげた。当然ぬいぐるみもだ。全部出しても部屋には余裕があった。


  次の日は、デビちゃんの住民登録と、学校への転入届けだ。制服は、ジルちゃんのお古を着てもらう。あと2か月ちょいしか着ないので、注文するのも勿体無いからだ。教科書も、お古を使う事にした。来年の卒業式と入学式は、3人ずつだ。





  次の日、年末年始にかけて、皆を里帰りさせた。シェル、エーデル、ノエル、クレスタ、シズちゃん、ジェーンさん、ジェリーちゃん、ジルちゃん、ブリちゃん、フミさんだ。デビちゃんは、帰りたくないと言ったが、必ず迎えに行くからと約束して帰す事になった。これで、領主館に残ったのはいつもの通りビラとフランちゃんだけだ。フランちゃんは、治癒院の入院患者がいるので、自宅待機となるそうだ。あ、ステノーさん達がいた。彼女達は、目的があるので、天上界に帰らないのだが、僕だってたまにはゆっくりしたいので、帰ってもらいたい所だ。


  2026年、夜以外は平穏に過ぎていった。

和の国は、本当に美しい国でした。大陸では見ることのできない風景があります。

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