第259話 久しぶりのタイタン市です。
激しい戦闘は終わりました。基本的に、神様達はエッチです。
(12月5日です。)
僕達は、天上界から帰って来た。日付を確認したら、昨日、天上界へ出発したので、まだ1日しか経っていない。さすが時空を自由に操れる神様達だ。
僕達が帰ったのは、王都の公爵屋敷だ。タイタン市の公爵館に戻っても、部屋も無いので、王都の屋敷が最適だ。屋敷の2階の1室を、アテーナー様専用部屋にした。部屋の一角に、オリンポス天上界のニケ・アテーナー神殿に繋がるゲートを作った。アテーナー様の希望で、泉のあるあのベッドルームと繋げることにした。すごく嫌な予感がする。もう夕方近かったが、4人を連れて、買い物に出かけた。アテーナー様も何千年も生きているので、人間界の常識は分かっているようで、どこでも裸になるような事はしなかった。
買い物は、まず、アテーナー様の下着を買うことにした。ステノーさん達も、色々買い揃えていた。なんか、刺激的な下着を注文していたが、僕は知らんぷりをしていた。それから、人気ブティックという所に行き、普段着とよそ行きを購入していた。ほぼプレタポルテで間に合った。特別上等なシルクの貴族服は、オーダーメードにしたようだ。ステノーさん達も、それぞれ買っていたが、すべて、ミニスカにしていた。ステノーさん、何か変わりましたね。
それから、ティファサンで、好きな宝石を選ばせた。アテーナー様は、ティアラと首飾りを購入した。ステノーさんは、ダイヤの指輪を欲しがった。ステノーさん、それってどういう意味か知っていて欲しがっているのですか?ステノーさんの含み笑いを見て、全てを諦めた僕だった。
メデューサさんとエウリュアレさんは、髪飾りとブローチを欲しがった。結局、この日、大金貨2枚も使ってしまった。アテーナー様達を屋敷に連れ戻してから、僕は1人で、冒険者ギルド本部に行った。天上界で入手した黄金のケルベロスとオリハルコン製のゴーレム1体を売るためだ。
買い付けの職員は、年配の女性だったが、僕を見て、最敬礼をしていた。どうやら、『SSS』ランクと公爵閣下の両ブランドのお陰だ。まず、オリハルコン製のゴーレムを出品した。当然、上下に分断されたところは修復してある。しかし、アテーナー様の神力が働いていないので、単なる彫刻だ。受付の女性が、カウンターの上に置かれたゴーレムを鑑定していて、顔が青ざめてきた。オリハルコン製のゴーレム人形など見たこともない。しかも身長1mといえば、オリハルコンの値段だけで、国家予算級だ。大金貨10000枚は下るまい。それも、加工の難しいオリハルコンを精巧なゴーレム人形にしている。もう、値段のつけようがない。というか、これを買える貴族がいるのかどうか分からない。僕の希望価格は、大金貨7000枚で、それ以下では売らないことにした。
次に、裏の解体場で、黄金のケルベロスを出した。もう、ギルド中が大騒ぎだ。いつの間にか、フレデリック殿下も来ていた。まばやくばかりに光輝く純金製のケルベロス。重さも1.5トンもあった。金の地金だけで、大金貨90000枚の価値はあるはずだ。それが双頭のケルベロスとは、どんな値段が付くか見当もつかない。僕は、『大金貨9万枚以下では売らない。』と言って、参考出品とした。現物を展示していては、盗難や破片を削られる恐れがあるので、僕が保管することにした。オークション情報として、次のとおり情報提供することにした。
『純金製ケルベロス標本、全長2.8m。総重量1587キログラム、骨格の素材不明。骨格の予想重量24キロ。タイタン公爵の保証付き。』
この情報で、何人の王族、貴族が買おうとするのだろうか。きっと誰も買わないかもしれない。というか、買えないかも知れない。その時は、解体して金地金として売り払うつもりだ。
ギルドを出てから、僕は、タイタン市の領主館に戻った。シェルは、2日ぶりの僕に、何故か涙を流して抱きついてきた。エーデル達も、皆、交代でキスをした。未成年者以外は濃厚なキスだった。シェル達は、僕がいつ帰って来るのか不明だし、もしかしたら、シェル達が生きている間には帰って来ないかも知れないと覚悟していたらしい。
僕は、夕食は、王都の公爵屋敷で食べることにしたのでと言って、シェルだけを連れて、再度、王都の公爵屋敷に転移した。下の大広間で、ステノーさん達がお茶を飲みながらくつろいでいた。それだけなら、シェルも知っていたので驚かなかったが、アテーナー様を見て、シェルの目が点になってしまった。見るからに女神様のアテーナー様だ。神々しい雰囲気、絶対美女で絶対ナイスバディ、シェルの持っていないものをたくさん持っている、女の敵だ。
しかも、僕を見る目付き、あれは飢えた女の目、股間が何かを欲しがっている目だ。あ、ステノーさん達も同じ目をしている。たった一晩、天上界に行っただけで一体何があったのか、瞬時に理解したシェルだった。
シェルは、とりあえず、涙を流すことにした。女の武器は、涙だ。涙ぐんだ目で、僕を見る。僕は、顔を真っ赤にしてオロオロしている。
『ざまあみろ、今夜は、説教2時間だ。その後、一杯、可愛がって貰おう。』
そんな顔をしている。もう、いつもの冷静なシェルはどこかに行ってしまい、久しぶりにとても残念なシェルになっていた。僕は、天上界での不倫について、絶対バレると思ったが、こんなに早くバレてしまうとは思わなかった。取り敢えず黙ることにしよう。きっと正座2時間を覚悟している僕だった。夜、ベッドの上でシェルが優しく聞いて来た。
「ねえ、あなた。天上界で何があったの?」
「何もありませんでした。」
「嘘、起こらないから、正直に言って。誰とエッチしたの?」
「本当に怒らない?」
「うん。」
「メデューサさんとエッチしました。」
「後は?ステノーさんも目がエッチしたって言っていたわよ。」
「すみません。ステノーさんとも、してしまいました。」
「何回?」
「5回位。」
「後、エウリュアレさんは?聞けば直ぐ分かるのよ!」
こうして、全てバレてしまったが、アテーナー・ニケ神殿の19人のエイドさん達の事は黙っていた。それから2時間、しっかりと説教をされ、もう他の女性に声を掛けたり、誘ったりしないと誓わされてしまった。僕は、この誓いは絶対に守れると確信している。ステノーさん達だってアテーナー様だって、向こうから誘って来たのだし、あの19人のメイドさん達に至っては、眠っている間に襲われたのだ。
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次の日、タイタン市の行政庁に行く。現在のタイタン領内の治安状況について、司法長官と衛士隊長の3者会議だ。あのニュー・タイタン市の私娼窟界隈は、健全な娼館街になっており、来年度からかなりの税収が見込まれるそうだ。また、衛士隊の中途採用者達は、かなり優秀で、実戦訓練を兼ねて週3回の市内巡回をしている。タイタン市の治安は万全のようだ。コリン・ダーツ行政長官から、各市の治癒院及び小学校の増設が要請された。市町村の人口当たりの設置基準を検討すると、圧倒的に足りないらしい。教員は何とかなるが、ヒーラー及び薬学の熟練者がいないそうだ。
直ぐには、解決できないが、人口が増えている各市町村では急務の問題だ。僕の施政になってから、生活に余裕が出来たのか、ベビーラッシュらしい。何処の治癒院も、妊婦さんで一杯らしい。早急に産院を増設し、助産婦を配置するように指示をした。間に合わなければ、ホテルを買収してもいい。助産婦は、地方の退職した年配者に復職をお願いすることにした。安全に子供を産む事は、領内発展の礎だ。
次に、刑務所の増設についてだ。現在、元領都のエクレア市にあった刑務所は、老朽化しており、夏場及び冬場に体調を崩す受刑者が増加している。最低減の生活レベルが維持できる範囲での刑務所の補修及び増設が必要だそうだ。これは、バンブー建設に頼めば、新築は無理だが、増設や補修なら何とかしてくれるはずだ。まだまだ治安維持に必要な人員とインフラが、圧倒的に不足していることが判明した会議だった。
それから、王都の馬車職人のところへ行った。頼んでいた飛行馬車が出来ているはずだ。行ってみると、大勢の人たちが集まっていた。裏庭においてある、飛行馬車を見に来ている人達だ。こんなに話題になっているなんて思わなかった。馬車職人は、外装や内装を一通り説明してくれた。外装は、ミスリル銀を貼ったので、顔が映るくらいにピカピカだ。内装は、渋い赤色の革製ソファに青く分厚いカーペットを敷き詰めている。ソファは向かい合わせに回転させることもできるし、取り外しも可能だ。グラスやカップなどの什器類も収納できるようになっている。御者台は、馬車の中の前方に少し高い床があり、そこに2人が座って、ガラス越しに前を見るようになっている。ドアの取っ手も、少しへこんだところに作られている。先端は、アヒルのくちばしのように伸びており、屋根は左右に丸いカーブを描いている。一番変わっているのは後部だ。垂直に1枚、水平に左右2枚のヒレがついている。職人は、なんに使うかわからないままに作っていたようだ。
製作費は、内装に手間がかかってしまったため、大金貨2枚といわれた。ミスリル銀を提供した割には高いと思ったが、まあ、今はかなり裕福なので、言われるままに支払った。職人は、完成したらこれに乗って国王陛下のところに来るようにと言いつかっている旨を伝えてくれた。僕は、一人で乗り込み、操縦席に座った。操縦桿が1本あり、動かすと、後部のヒレがそれに応じて動くようになっている。
僕は、重力魔法で重力をゼロにし、『飛翔』スキルで浮き上がった。周りの観客から大きな歓声が上がるのが聞こえた。それから、念動で前に異動させた。スルスルと前に動き始めた。どんどん加速させ、一定の速度になったところで、操縦桿を手前に引く。飛行馬車は、上を向いて急上昇を始めた。高度2000m位で水平飛行に移り、王都の上を大きく回り始めた。空気抵抗が少ないせいか、それほどの念動力を必要とせずに、素晴らしい速度が出ている。よし、王城に直接乗り込もう。
安全で美しい都市を目指します。




