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第24話 お貴族様になっちゃった

ゴロタの無双により魔物は殲滅されました。呪いの剣もなんとか抑えたし。良かった、良かった。今日は、ご褒美を貰います。

(11月1日です。)


    ギギイー

 

  北門が重々しい音を出しながら開かれた。中から、松明を持った騎士団がクサビ形隊形を保ちながら、進軍してきた。後方には馬に乗った団長さんが、大槍を掲げて、声を張り上げている。


  「我ら王国騎士団、仲間の弔い合戦だ。1匹も逃すな。ただし、森の中までの追撃は厳禁だ。突撃!」


  うん、見ているだけで心強い。団長さんの馬の前で、王国旗を持っている人も誇らしげだ。良かったね。死ななくて。僕、疲れちゃった。帰りたいな。帰っていいかな。シェルさんの手、冷たいな。緊張しているんだろうな。もう帰ろう。


  「ゴロタ君、帰ろうか。」


  涙目のシェルさんが、尋ねてきた。うん、帰ろう。団長さんが、僕たちを見て、『うん。うん。』と頷いている。


  僕は、「ベルの剣」にカバーをしてから、城の中に戻り始めた。イフリート何とかという剣の名前は嫌いだ。『ベルの剣』は『ベルの剣』だ。そう思った僕は、シェルさんの手を握りしめた。




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(11月2日です。)

  翌日、目が覚めたら僕は王立魔法診療所の特別室に入院していた。


  昨日、家に帰った僕は、そのまま眠ってしまったらしい。シェルさんが、僕の服を一人で脱がしてくれた。変なところ、見られなかったかな。まあ、脱がされるの初めてじゃないし。でも、その間も、全然起きなかったらしい。


  今まで、こんな事が無かったので、吃驚したシェルさんが、まだ冒険者でごった返していたギルド本部へ行って、フレデリック殿下に相談したらしい。それで、直ぐに診療所の馬車が家まで来て、僕を運んだらしいのだ。シェルさんは、『ベルの剣』をしっかり抱いて、付いて来てくれた。


  目が覚めたら、全く知らない部屋で吃驚した。ベッドの横にはシェルさんが、目を真っ赤にして僕を見ていた。左手をギュッと握りながら。右の方にも誰かいるようだったので、そちらを見るとエーデル姫だった。こちらは僕の右手をギュッと握りながら、やはり涙目だった。


  「あのー。」


  「まだ、起きちゃ駄目よ。今日一日、寝てなきゃダメなんだって。」


  「そうですのよ。救国の英雄は、今日一日くらい休養を取るのですわ。」


  え、『救国の英雄?』、一体誰ですか、それ。


  王立魔法協会の治癒専門魔術師の話では、スキルポイントの大量使用による貧血と過労だそうだ。僕のスキルポイントは、尋常じゃない位あるんだが、こんなに大量に使用したことがないので、体がついて行かずに、こんな症状になったらしい。


  昨日使用した術は魔法ではなくスキル発揮だったらしい。そのスキルも僕固有ではなく、剣に固有のもので、普通の人が使ってもスキルポイントが低いと、あまり強力ではなく、一遍にスキルを使ってしまって死んでしまう人もいるそうだ。だから、『呪われた剣』などと言われているのかな。スキル発動の後、目が充血していたのは、スキルポイントを剣に込めるために息み過ぎて、充血してしまったらしい。まあ、誰でもなる症状だそうだ。ご心配かけて申し訳ありません。


  魔力じゃなくて、スキルポイントだったんだなと思った。『魔力切れ』と言う言葉は聞いたことがあるけど、『スキル切れ』なんて聞いたこともなかった。今は、お昼前だそうで、診療所で食事を摂ることになった。僕の食事は、お粥と果物一切れだけで、ものすごく足りない。シェルさん達はお城から配達させたお弁当で、三段重ねの特別のものだった。


  二人は、全く気にしないでモグモグ食べていたが、本当に空気を読まないですよね。


  午後、執事のゴーシュさんが病室を訪ねてきて、『明日、祝勝凱旋パレードと、今回の功労の褒章授与式があるので、正装で出席するように。』と言われた。正装といっても、平民服とこの前買った、従者みたいな服しかないし、どうしようかと思ったら、


  『お城の方で準備するので、帯剣だけして登城してもらいたい。もちろんシェルさんもご一緒です。』


  夕方、再度、診断を受けたところ、スキルポイントも元に戻っているし、すべての機能に異常はないので退院して良いとのことだった。でも、寝間着で帰るわけにもいかないし、と思っていたら、シズさんが家から服を持って来ていた。着替え終わって、シェルさん、エーデル姫、シズさんの3人と一緒に食事に行った。ちょっと高級そうなレストランに入ったら、海鮮料理専門店で、とてもおいしかった。


  シズさんが食べたことがない料理がいっぱい出てきたので、とても喜んでもらえた。あのムスッとしているシズさんが、とても可愛く笑っているので、僕もニコニコ、シズさんを見ていたら、ジト目で僕をみているシェルさんとエーデル姫に気が付いた。すぐに、ワインのお代わりを勧めて誤魔化すことにした。


  シズさんの話では、町では昨日の話題で持ちきりだそうで、特に、『小さな女の子が凄い魔法を使った。』とか、『可愛い女戦士が、弓を乱射して魔物を殲滅した。』とか、合っているようで微妙に違っているようで。僕達4人を見て、きっと他のお客さんたちは、女の子4人でこんな高級レストランに来て、大丈夫なんだろうかと思っているのかも知れないと思うと、なんだか愉快な気分になってきた。


  家への帰り道は、一番小さいシズさんと手をつないで帰ったのだが、後ろの二人が無言だったのが、すごく気になります。




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(11月3日です。)

  翌日、お城から迎えの馬車が来て、二人でお城に向かった。お城に近付くとパレードの準備で、沿道を飾り付けたり、見物席を作ったりしている人たちが沢山いた。お城に入ると、2階の客間に案内された。シェルさんと別々の部屋にされたのは、凄く不安だったが、着替えをするのだから、仕方がないかと諦めてしまった。


  部屋の中にはメイドさんが5人位いて、最初にお風呂に入るように言われた。『昨日の夜、入りました。』と言ったけど、聞き入れてくれず、無理矢理、服を脱がされかかった。


  必死に逃げて浴室に入り、自分で服を脱いでからお風呂に入った。凄く良い匂いのする石鹸で体を洗い、シャンプーをしたら、本当にさっぱりした。新しい下着が準備されていたので、それを着て、次に上着とズボンを着ようとしたら、今日の式典用の服があるので、そのまま出てくるように言われた。


  下着のまま浴室から出たら、メイドさん5人が待っていて、服を着せられた。僕は立っているだけで良かった。


  服は騎士さん達が、鎧を着ない時の服みたいで、真っ白な絹のワイシャツにに金のモール付き黒色ズボン、膝の下まである水色のオーバーコートで、金色の肩章と、王国騎士団のブレストワッペン付き、靴は黒色革製半長靴で、サイズもピッタリだった。そもそも、この制服だって昨日の今日じゃ出きるわけ無いのにと思っていたら、メイド長のような人が、初めて国王陛下に謁見したときに仕立て屋さんが、僕の体付きを観察して作り始めていたそうで、昨日、病院で寝ていた時にも、最終のサイズ確認に来ていたそうだ。


  何か、全て国王陛下の掌の上で遊ばれているようで、吃驚するのと焦ってしまうのが入り交じった変な感じだった。最後に、髪をとかして終わりだ。鏡の前に立つと別人のようだった。メイドさん達は『可愛い!』を連発していたが、15歳成人男子としてはちょっと悲しい気持ちとなってしまった。


  ちょっと嬉しいことがあった。身長が1センチ、体重が2キロ増えていた。といっても、144センチになっただけなんだけど。


  謁見の間の脇の部屋に案内されると、シェルさんも僕と同じ様な格好をしていた。ただ、下がズボンではなく、膝上の、丈の短いキュロットスカートだった。


  僕が、ボーッとシェルさんに見とれていたら、


  「何、見てんのよ。このエッチ。」


  といって、頭にチョップを食らってしまった。僕は、真っ赤になってしまって、恥ずかしさで、涙目になったら


  「まあ、ちょっとは見て良いけど。」


  褒賞授与式は、昨日の闘いで命を落とした人、怪我をした人達が先でした。死んだ兵士の遺族の人達が出席したのですが、お葬式はどうしたんだろうと思っていたら、遺体は魔物に全て喰われて何も残らないので、今日貰う勲章を祭壇に飾って、喪に服すのがしきたりなのだそうです。小さな子供を連れた奥さんが、黒の喪服を着て泣きながら陛下から勲章を授与されるのを見ていると、涙がボロボロ零れて止まらなくなってしまった。


  怪我をした人たちは、出席できる人達には授与されるが、入院している人達には、後で陛下が直接、病院を訪れるか、退院後、王宮で個別に授与するそうだ。国王陛下って大変だなと、つくづく思った。


  次はいよいよ、戦功叙勲だ。これは上位の勲章から授与されるそうで、僕とシェルさんが一緒に授与される。


  僕らが貰えるのは、『四精第1位白金大褒章』だ。


  これは、国の危難を救った救国の英雄に対し授与されるものだそうで、僕達の前には、今から40年位前に隣国との戦争で亡くなった王子様に与えられたそうだ。





  「次に『四精第1位白金大褒章』を授与される者。」


  「エクレア領ゴーレシア・ロード・オブ・タイタン殿」


  「同じくエルフ領シェルナブール・アスコット殿」


  読み上げたのは、ジェンキン宰相です。僕達は、国王陛下の前に進み、膝まずいて頭を下げた。国王陛下は、王酌を僕達の方に向けて


  「国難に際し、身命を賭してこれに立ち向かい、鬼神のごとき活躍で敵を打ち負かし、見事国難を排除せし救国の戦士よ、その活躍を称え、後世まで栄誉を与えるべく四精第1位白金大褒章を授与する。謹んで拝領せよ。」


  「謹んでお受けいたします。」


  良かった、返答が短くて。これくらいなら、練習したから言えることが出来た。シェルさんも同じく、無事受賞できた。良かった。良かった。


  褒章授与式が終わってから、今度は爵位の授与があった。これは、簡単だ。宰相が、


  「エクレア領ゴーレシア・ロード・オブ・タイタン殿」


  と呼ぶので、国王陛下の前に、勲章の時と同じように膝まずくと


  「名誉子爵を与える。」


  と、国王陛下が爵位をくれるというので、


  「ありがたき幸せ。」


  と言って低頭するだけだ。シェルさんも叙爵したが、「名誉男爵」だった。これは殲滅した敵の数の差だったかも知れない。


  でも、シェルさんは王族だから、他国の爵位なんか貰っても嬉しくないだろうなと考えていたら、そうでもなさそうで、ニコニコしながら爵位章を見ていた。ところで、シェルさんは女性なのに『男爵』となったのは、どういう訳なんだろう?

次回は、祝賀パーティーですが、とてもとても残念な国王陛下だと判明します。

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