表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
256/753

第254話 海神ポルキュースって困った神だった

今回は、久しぶりに戦闘になります。

  僕の考えは単純だ。


  面倒臭い海水を蒸発させようと言うのだ。自分の身体の中で、常に燃え続けている太陽、その原理はわからない。自分が、その太陽により焼き尽くされないのは、きっと違う空間で燃え続け、その空間とリンクできているだけだからだろう。そのエネルギーを取り出し、収縮させると、また反応が起き始める。連続反応するためには、一定の条件を超えなければならないが、僕にはそれが可能だ。


  海水の竜巻の上空に、ミニ太陽を出現させる。竜巻の方に徐々に近づける。海水は、たちまち水蒸気に変化して膨張した。上空には、みるみる雲が広がって行く。ミニ太陽は、更に海面に近づく。海水が沸騰を始めた。ミニ太陽が、水蒸気を取り込み始めた。海水に含まれる多重水素を燃料とするためだ。


  突然、はるか沖合に巨人の上半身が現れた。大きな三叉に分かれた槍を持っている。あの巨人が、きっと海神ポルキュースだろう。上半身だけで、100mはありそうだ。


  『アッチッチッチチー!』


  ポルキュースさんは、『念話』で、叫んでいる。とても器用だ。


  『おい、熱すぎるぞ。少し冷ましてくれ。』


  風呂屋じゃないのだから、聞く必要はないが、ミニ太陽を、上空に3000m迄上昇させる。冷え始めた雲から、大粒の雨が降り始めた。もう、海面は沸騰していないみたいだった。降り続く雨で希釈され、お風呂ならちょうど良い湯加減だった。


  『お主は、人間なのに、神以上の力を持っているようだ。』


  突然、三叉の槍が光ったかと思うと、白い光が3本、僕を襲った。僕の前に『蒼き盾』が生まれ、3本の光を跳ね返した。奇襲攻撃は、ズルい。僕は、お返しをすることにした。紅き剣を上段に振り被り、ポルキュースさんに向かって『光の斬撃』を飛ばした。100万度の熱戦だ。光の周りは、すべての存在が消滅してしまう。瞬間、ポルキュースさんは姿を消して、光の直撃を躱した。光が消滅した後で、また姿を現した。


  『ふう、危ない。お主、儂を殺す気か?危うく、消滅してしまうところじゃった。』


  勝手な言い分だと思ったが、そう言いながら、姿が薄くなった。僕の後ろに殺気を感じた。


    カッキーン!


  蒼き盾が、何かを弾いた。僕が『瞬動』で跳び下がって見ると、ポルキュースさんが三叉の槍で、僕を刺そうとしていた。ちょっと頭にきた僕が、300m位、飛び下がり、ポルキュースさんに向けてミニ太陽を爆発させた。大きな火球が衝撃波と共に広がり、弾けた。高さ3000m位まで、キノコ雲が上がり、雷鳴が轟き渡った。直径1キロ位の大きな穴が海面に開き、周囲から海水が流れ込んでいる。僕は、『蒼き盾』で守られていたので無事だったが、ポルキュースさんはどうだろうか?


  ポルキュースさんは、僕の後方3キロ位の沖合に浮かび上がっていた。普通の人間サイズだ。三叉の槍も小さくなっている。僕は、『空間転移』で、ポルキュースさんの前に移動した。


  ニヤリと笑ったポルキュースさんが、三叉の槍を振り回して僕に襲いかかって来た。僕は、『オロチの刀』で、これを受け、切り払い、隙を見てはポルキュースさんに切り掛かっていた。ポルキュースさんが、大きく口を開くと、ウオーターカッターが飛んでくる。これは、すべての物質を切り裂く水だ。避けても良いが、放置して斬りかかる。ウオーターカッターは、『蒼き盾』が防ぎ、ウオーターカッターを吹き終わった一瞬の隙を狙って『オロチの刀』が、右腕を切り落とした。


  三叉の槍を、腕ごと海の中に落としたポルキュースさんは、直ぐに海中に潜って行った。僕も後を追う事にした。ポルキュースさんは、最初、肩口から夥しい出血をしていたが、あっという間に傷口が塞がってしまった。僕もなかなかだが、神様も、とんでもないチートだった。海中でも、僕には『水棲』スキルがあるので、普通に呼吸ができた。肺に吸い込むのは海水だが、海水の中の酸素を摂取し、炭酸ガスの混じった海水を吐き出す。肺の中が、海水だらけになるが、全く平気だった。


  移動は『念動』を使うので、手で掻いたりする必要は無かった。ただ水の抵抗が凄いので、そんなに早くは動けなかった。僕は、シールドを円錐形にして、横に寝かし、少しでも水の抵抗を少なくする。


  ポルキュースさんは、僕が海の中でも追いかけてくるので、形を大きな鯨に変えた。ただ、その形態では、あの三叉の槍は持てないようだった。ポルキュースさんは、素晴らしいスピードで逃げ始めた。僕は、『瞬動』で、ポルキュースさんの背中に移り、背鰭にロープを結びつけた。後は、ポルキュースさんが疲れるのを待つだけだった。


  今のところ、僕の圧勝だ。ポルキュースさんは、海の底を目指した。普通なら、1000mも潜ると水圧で潰れてしまう。しかし、僕の肺の中は、周りの水圧と一緒だ。しかもシールドである程度水圧を弱めている。僕は、通常の生物が耐えられる深度の水圧には、全く平気だった。


  先に参ったのは、ポルキュースさんの方だった。そのまま浮上し、何処かに真っ直ぐ進んで行った。30分位泳いでいたら、海底が光り輝いている場所が有った。きっと、あれが海底宮殿なのだろう。ポルキュースさんは、鯨の姿から本来の姿に戻った。上半身は、裸体の男性で、下半身は青色の蛇だった。何処から出したのか、また三叉の槍を持っている。


  神殿の周りは青い光に包まれていて、光の中には海水は入って来なかった。ポルキュースさんは、器用に蛇の下半身をくねらせて前に進んでいく。神殿の階段の下まで来ると、そこで進むのをやめた。神殿の階段の上から、ケトさんが大きな布を持って降りてきた。ポルキュースさんはニンゲンの身体に変身したので、当然に素っ裸だった。直ぐにケトさんが、ポルキュースさんに布を掛けてあげた。器用に身体に巻いて、肩のところで留めているようだ。


  ポルキュースさんとケトさんが、階段を上がって行ったので、後を付いていく。この神殿も無駄に広い。海中で見たときは、そんなに広く感じなかったが、中に入ると、向こう端が見えない位に広い。地平線が見えそうだった。ポルキュースさんは、玄関の広間で、今まで無かったドアを開けた。何もない所にドアだけが立っているのだ。


  ドアの中は、客間のようだった。大きな池があり、半裸の少年が、瓶を持って立っている。少年は石像のようだが、生きているようにも見えた。瓶からはコンコンと水が溢れ出ていた。ケトさんが、この少年はアクエリアスといい、永遠に水が湧き出る瓶を持っているのが仕事だと言った。なんだか見ていてかわいそうな気がした。


  ポルキュースさんが、初めて僕の方を向いて、顔をジッと見つめた。なんだか恥ずかしくなって、顔が真っ赤になった。ポルキュースさんは、手に持っていた三叉の槍に気を込めて、僕に光を当てた。『蒼き盾』が出現しなかったので、害は無いのだろう。


  青白い光は、僕の能力を見るためのものだったらしい。便利な槍だ。ケトさんが、この槍は海神だけが持つことを許されている『トライデント』と言う槍だそうだ。『トライデント』って、確かポセイドンが持っているはずなのに。聞くと、あれは複製品だそうだ。欲しかったらポルキュースさんが作ってくれるそうだが、使い勝手が悪そうなので、丁重にお断りした。と言うことは、僕には全く関係ない槍だと言うことで、一気に興味が失せてしまった。


  『お前は、やはり『世界を統べる者』だったか。どおりで、儂の『トライデント』が通用しなかったわけだ。ケトが世話になったと聞いておる。今日は、そのお礼で招待しようと思ったのじゃ。』


  え、招待?それで、あんな真剣勝負ですか。もう少し続けていたら、海が陸地になってしまいますよ。


  『いや、ケトが何回招待しても来なかったから、少し暴れたら来てくれるかと思ってな。アハハハ。』


  この神様も、絶対に残念神だ。何が『アハハハ』だ。招待するやり方がおかしいでしょ。


  『いや、しかし強い。儂など3回は死んだぞ。』


  いや、ピンピンしてますから。腕が取れたって直ぐ生えてくるなんて、大チートです。僕は、何故、ゴルゴン3姉妹を嫌うのか聞いたら、特に理由はないらしい。3姉妹は、ケトに似て美女だから、つい手篭めにしたくなるらしいのだ。しかし、いかに神といえども、親子での姦淫は禁じられている行為らしい。え、妹は良いのですか?


  まあ、すべての母なる神ガイアは自らの力だけで天の神ウーラノスを産み、息子であるウーラノスと親子婚して夫としたそうだ。神々の王となったウーラノスとガイアの間にクロノスをはじめとする男女6柱ずつの子供が生まれた。これが僕の先祖ティーターン(巨神)であるそうだ。うん、近親相関で生まれた神が先祖って複雑だ。しかし、原始の神ならいざ知らず、現在では、親子でするのは禁忌とされている。理由は分からないが、遺伝的に良くないらしい。と言うことは、子供を作らなければOKなのかも知れない。まあ、すでに両親ともに他界し、妹もいない僕には関係のない話だった。


  ポルキュースさんと話していると、ドアが開いてメイドさんがお茶を持ってきてくれた。メイドさんは半魚人だったが、顔が魚で体は女性だった。着ているメイド服が、異様だ。極端に短いスカート。完全にパンツが見えている。脚はスラリと均整が取れている。ハイヒールを履いていて、歩き方も颯爽としていた。問題は上半身だ。お臍が出るほど丈の短い上着。前のボタンは開けている。下着のシャツは着ていない。胸はポッチを貝殻で隠しているだけのほぼ半裸だ。


  どうやらポルキュースさんの趣味らしい。見ているこちらが恥ずかしい。この半魚人さん達は、恥じらいの感覚が違うらしい。お腹をツンツンされると、発情して卵を産み落とす。後は、男の半魚人の仕事で、一生懸命1人で頑張って、産み落とされた卵に精子を掛けるそうだ。何か虚しい気がする。


  お茶は、当然『昆布茶』だった。

ポルキュースさんの持っている三又の槍は、あの有名なトライデントですが、トライデントってポセイドンが持っている武器だった筈です。この辺は、とてもファジーというかいい加減です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ