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第253話 ケトさんは、人魚ですか?

いよいよケトさんと遭遇です。ケトさんは、ケートーさんと呼ばれることもあるそうですが、兄と結婚するなんて、いけない女の人です。

  ケトさんの神殿は、かなり大きなものだった。奥行きが100mはありそうだ。まあ、空間の広がりが、人間界とは違うし、物質が意味を持たない天上界では、きっとこの神殿でも小さい方なのだろう。白い大理石の円柱は10m間隔で並び、奥の方にある石の階段を登って行くと、祭壇のようなものが置かれている。その祭壇の前に、ステノーさんが立つと、祭壇の両脇の灯火台に火が灯り、祭壇の上にゲートが現れた。


  そのゲートに、ステノーさんと共に入ると、そこはビーチエリアだった。真白な砂浜、真っ青な海、どこからか甘い果実の匂いが漂って来る。太陽が、眩しいほどに輝いている。しかし、そんなに暑くない。ステノーさんが、波打ち際まで走り寄り、『ママ!』と、大きな声で叫んだが、波が打ち寄せるばかりで、何も起こらない。しばらく待ったが、誰も出てこないので、砂浜の奥の森まで行くことにした。太陽が輝いているのに、砂はちっとも暑くなかった。森の中は、陽射しが遮られ、過ごしやすかった。森の中の泉の辺りに、小さなバンガローが建っていた。今日は、ここで休むことにしよう。


  バンガローの中には、扉がいくつかあった。一番近くの扉を開けると、大きな居間に続いていた。バンガローの大きさからは、あり得ないほどの広さの部屋だったが、もう驚かないことにした僕だった。部屋の温度は、暑くもなく寒くもない適温が保たれている。エキドナさんが、ソファで寛いでいた。僕のあげた服を着ていた。奥のカウンターには、銀のバケツが置かれており、氷が満たされていた。シャンパンとトロピカルジュースが冷やされており、そばには、甘い香りのフルーツが山盛りになった籠が置かれていた。これって、絶対におかしいから。シャンパンなんて、この世界では誰が作っているんですか?


  エウリュアレさんは、ダッシュでフルーツに駆け寄り、貪り食っていたが、不思議なことに、どんなに食べても、フルーツは減らなかった。僕は、トロピカルジュースを、ステノーさん達にはシャンパンを入れてあげた。僕は、隣の部屋に行ってみることにした。隣の部屋は露天風呂だった。大きな露天風呂で、風呂と言うより池だ。浴槽の脇の岩の上から、白く濁ったお湯が滝のように流れ落ちていた。


  僕は、服を脱いで、お風呂に入った。深い。とても深い浴槽だった。足が届かない。しかし、足が届かなくても、不便ではなかった。身体が浮いてくれるのだ。僕は、仰向けになってプカリと浮かんだ。僕は、風呂から上がって、次の部屋に行ってみると、そこは、ダイニングキッチンだった。ダイニングテーブルが2つ並べられていた。1つのテーブルで、50人は、座れそうだったので、計100人分の食堂ということになる。この辺の常識外れの感覚は問題にしないようにしよう。奥がキッチンだが、このキッチンもシェフ50人は入れそうな厨房だ。僕は、食材庫を確認した所、フルコースディナーが作れる位の食材が貯蔵されていた。


  皆に、今日の夕食の希望を聞いたところ、肉と魚と言われたので、肉は簡単に出来る鉄板焼きを、魚は油で素揚げしてソースにつけて食べる串揚げにした。肉は牛肉の最高級ロースを使い、魚介類は、海老、蟹、イカそれに白身魚の串揚げにした。エビは、衣を付けて天ぷらにもしてみた。


  出来上がった料理をお皿に盛り付けた。どう見ても10人分はありそうだ。まあ、食材はたっぷりあったし、食べきれなかったら、イフクロークに預けておけば良いから、問題はない。皆で食べ始めたら、突然、ドアが開いた。皆、一斉に扉の方を向く。


  『ママ!』


  ステノーさんが、立ち上がって走り寄って行く。扉の前には、ステノーさんがもう1人立っていた。いや、ステノーさんではない。母親のケトさんだ。銀色の髪と緑色の瞳以外は、全く同じだった。ケトさんは、ステノーさんを抱きしめている。ステノーさんは、泣きながら抱きついているのに、ケトさんは、それほど感動していないみたいだった。流石のエウリュアレさんも、食べるのを一旦やめて、ケトさんの所へ走り寄った。メデューサさんも同様だった。3人が、ひとしきり再会のハグをし終わったところで、ケトさんは僕に質問して来た。


  『そなたは何者じゃ?』


  「僕はゴロタ。人間です。皆と一緒に来ました。」


  僕は立って、挨拶をした。大人の女性それも女神様に挨拶するのは、とても気恥ずかしく、顔が真っ赤になって行くのが分かった。しかし、不思議と喋るのは大丈夫だった。


  「この良い匂いのものは何じゃ。食べ物か?」


  「子牛の背中の部位の鉄板焼きです。それに魚介類の串揚げを作りました。エビは、天ぷらにしました。どうかお食べ下さい。」


  僕は、お肉や串揚げを取り分けて、ケトさんに差し出した。ケトさんは、銀色のアイスペールを空間から取り出した。ペールの中には氷とシャンパンが入っていた。それって、絶対におかしいから。とてもおしゃれなシャンパングラスも取り出すと、僕の方に差し出した。『注げ。』と言う意味らしい。僕は、シャンパンをペールから取り出した。クリスタルで悪趣味に飾られたボトルに入っている。どうせなら、ダイヤモンドで飾って貰いたかった。


  コルクの栓がきつく締められていたが、僕にとって、栓を開けることなど造作もないことだった。『念動』を使う必要もなかった。このシャンパンは、僕の住む世界とは違う世界から取り寄せたものらしく、ステノーさんが、後で『グー・ド・ディアモン/テイスト・オブ・ダイアモンズ』と言うシャンパンだと教えてくれた。絶対、覚えきれない名前だ。一口飲んでみたが、ガーリック伯爵領内で作られる発泡酒との違いが分からなかった。


  ケトさんは、『大食い』の『大酒飲み』の『淫乱』ということで、女神様としては普通仕様らしい。『大食い』と『大酒飲み』は、ブラックさんやヴァイオレットさんで慣れているが、『淫乱』というは、女神様としてどうだろうか。メデューサさんもエッチなのだが、エーデルと比較してどうかと言われると、同じくらいに思う。


  メデューサさんが『淫乱』なら、当然エーデルもそうなる。しかしエーデルは、小さい時から我儘一杯に育てられており、自分のしたいことを我慢しない性格だ。その点、ゴルゴン3姉妹も同様であろう。また『淫乱』と言う言葉は、男性には言わない。結局『淫乱』と言う言葉は、女性への蔑称であり、自分の気持ちに素直なだけに過ぎないと言うことなのだ。


  ケトさんは、僕の料理が美味しいと褒めてくれた。今度、本宅の方にも来てくれと言われた。本宅って、この超大型空間のバンガローは何ですか?本宅は、海の中にあるらしい。ステノーさん達も、小さい時は本宅で育ったが、父に疎まれるようになってからは、このバンガローで過ごすようになったようだ。


  食事が終わり、ケトさんは海に帰ることになった。ステノーさん達が見送る。僕も、バンガローの外まで見送った。ケトさんは、波打ち際まで行くと、服を脱いで空間にしまった。同時に身体が赤く光って、あっという間に下半身が魚のようになった。大きさも10m位になり、その姿で海に消えていった。ステノーさんが『ママは、あれが本来の姿で、人間にも魚にもなれるのです。』と、教えてくれた。


  まったりした数日が過ぎていった。夕方になるとケトさんがやって来た。食事をすると帰って行くが、その度に本宅に来てくれと言われた。ステノーさんが、『行ってはいけない。』と言っていた。海の中には、父のポルキュースがおり、自分達は、海の中には入っていけないとの事だった。僕も、特に用事が無いので行く気は無かったし、それにもうそろそろタイタン市に帰らなくてはならないと思っていたのだ。


  しかし、その思いは裏切られた。父親のポルキュースさんが、海の中で暴れているらしい。バンガローを出てみると、空は青空なのに、海は20m位の高さの波が荒れ狂っていた。このままでは、綺麗な海岸がダメになるばかりか、森まで飲み込まれてしまう。僕は、空中に飛び上がって、海の沖の方に進んで行った。きっとケトさんの本宅の近くに海神ポルキュースがいるのだろう。どんどん波が高くなって行く。はるか前方に、竜巻のように海水が巻き上がっている場所が見えた。


  僕は、空中に静止して、海水の竜巻を見ていた。高さは300m位あるだろうか?太さは20m位だ。ただ風が全くないので、空中の僕にとっては、良い見物対象だ。大きな魚が巻き上げられて行く。あの後、魚達は、空中から放り出されるのだろう。僕は、超速度で竜巻の周りを飛び回り、落ちてくる魚を拾い集めている。全て、イフクロークの中に収納だ。


  1年分位の魚が収穫できたので、もうそろそろ、海神ポルキュースに会いに行くことにしよう。僕は、スキル『水棲』を使ってみた。海中でも普通に呼吸ができる。しかし、海中は竜巻の水流が酷くて、ゆっくり潜っていられない。一旦、空中に出た僕は、身体の中の熱エネルギーを体外に取り出した。あまり大きくすると、天上界の形が変わってしまうかも知れないので、普通サイズにしておいた。

あれあれ、天上界でもチートを発揮するのでしょうか?

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