第252話 天上界の旅行は、厳しいです。
天上界も地上界も同じように魔物はいますが、ゴブリンのような雑魚キャラはいません。
(天上界です。)
僕達は、泉のそばで昼食をとることにした。天上界でも、僕は普通に魔法が使えるようで、バーベキューコンロを土魔法で作り、羊肉1頭分を出して、串に刺して焼き始めた。羊の油が火に落ちて、香ばしい匂いがする。エウリュアレさんは、もう涎が止まらない。焦げ目がついた肉刺しに軽く塩、胡椒をしてエウリュアレさんに渡したら、一口で頬張っていた。
あれは、絶対に舌を火傷しているはずだが、自分でヒールを掛けながら食べ続けている。まあ、自分の事は自分でしているから、良いのですが。ステノーさんは、お肉を一欠片と、ニンジンとトウモロコシの焼いたのを食べている。とても上品な食べ方だ。メデューサさんは、食事もしないで、泉で水浴びをしている。あの、そんなに脚を広げて沐浴しなくても良いと思うのですが。
その時、泉の脇の木の陰から、サイクロプスが出て来た。身長は8m位、肌は緑色、一つ目で、髪の毛は無い。額に角が1本生えている。耳が尖っていて、上半身は、裸だ。筋肉マッチョと言う感じだ。腰には、羊の皮を繋いだ粗末な布を巻いているだけで、手には槌を持っている。ステノーさんの話では、サイクロプスは鍛冶職人で、鍛冶の神ヘパイストスの見習い職人だったらしい。一つ目なのは、飛び散る火の粉で片目がつぶれてしまい、それで一つ目になってしまったそうだ。でも、何故、残った目が真ん中についているのってどうしてと疑問を持ったが、この世界では、そういうことを思ったらいけないそうだ。
ということは、手に持っている槌も、武器ではなく鍛冶道具という事になる。しかし、下半身の一物がモッコリ盛り上がっている所を見ると、どうやら、今は鍛冶職人ではなく、沐浴中のメデューサさんに劣情を催した巨人という気がする。しかし、完全に身体の大きさが異なるので、二人でエッチはできないだろうと思っていたら、サイクロプスは、見る見る小さくなって、僕と同じ位の大きさになってしまった。さすがにその大きさでは、槌は持てないので、その場で放置している。
サイクロプスは、メデューサさんのそばに行くと、腰の布切れを外し、全裸になった。メデューサさんは、サイクロプスに近づいて行った。二人は木の陰に行ってしまった。僕は、この世界ってこれが普通なのかなと思ってしまった。しばらくして、メデューサさんが、戻って来た。また、沐浴を始めたが、一か所を丹念に洗っている。サイクロプスは、お礼に素晴らしい出来のショートソードを1振りくれた。どうも、オリハルコンを使っているようだ。さすが、天上界、遠慮なく僕が貰う事にして、イフクロークにしまっておく。メデューサさん、ありがとう。
昼食も終わり、また太陽の沈む方向に歩き始めた。右手に海が見えたが、ステノーさんが、海に近づいてはならないと言って、海が見えないところまで、内陸に入って行った。どうやら、あの海に、父親のポルキュースが暮らしているらしいのだ。ステノーさんにとっては、忌まわしい海だったろう。夕方、大きな滝の落ちている河の下流に野営することにした。キャンプセットを出してあげ、夕食も僕が準備した。周りは森だったが、広い範囲でシールドを張っておいた。
今日の夕食はカレーライスにした。辺りにカレーのいい匂いが立ち込めたが、シールドを張っておいたので、外に匂いが漏れ出ることはない筈だった。
しかし、シールドを破ってそばに近付いて来る者がいた。見ると、上半身は裸体の女性だった。髪の毛は金色だ。長く伸ばした髪の毛により胸を隠していたが、豊かな胸であることは直ぐに分かった。顔は、ステノーさんに似た美しい顔立ちをしている。しかし、さすが天上界。彼女は、下半身が蛇で、背中に黒く小さな翼が生えていた。ステノーさんは、彼女の名前が『エキドナ』で、メデューサさんの孫だと言った。え、孫?メデューサさん、結婚していたのですか?ステノーさんも、本来は、エキドナさんと同じ姿だそうだ。エキドナさんは、青く光ったかと思うと、人間の姿になった。
しばらく見とれていた僕は、我に返って、イフクロークからクレスタの服を出してあげた。それを着るようにお願いしたら、『人間の女臭いので嫌じゃ。おぬしだって、童をじっと見ていたろう。このスケベ。』と言って、自分の服を空間から取り出して着てくれた。あのう、直ぐに着ていてほしいんですけど。女神様達が良く着ているケープを肩から掛けたような服だ。僕は、最後の『スケベ』と言いう事が気になっている僕だった。
エキドナさんは、カレーの匂いがしたので、何かなと思って来たらしい。シールドが張ってあったが、時空を自由に渡れる神様達にとって、シールドは役に立たなかったようだ。僕は、エキドナさんにもカレーをご馳走してあげた。エキドナさんは、エウリュアレさんのようにがっついてなく、淑女風にチマチマと食べていた。少し辛かったのか、しきりに水を飲んでいた。結局、エウリュアレさんはカレーを3杯食べて、もうなくなったので、諦めてご馳走様をしていた。エキドナさんは、ステノーさんとケトさんについて話し合っている。どうやら、ケトさんは、今も、西の宮殿に住んでいるようだが、時たま、夫のポルキュースと一緒に住んでいるが、もう、ポルキュースの子供を産むのは沢山だと思っているようだ。
エキドナさんが、先に宮殿に行っているから、後でゆっくり来るようにと言って、西の方に走って行った。もう夜なのに、この天上界では昼夜の違いは、支配する神様が違うだけで、夜眠るなどという生活習慣はないようだ。しかし、僕はそうもいかないので、テントの中で眠ることにした。メデューサさんに襲われないようにステノーさんに頼むのを忘れなかった。
翌朝、起きてみると、ステノーさんとメデューサさんに挟まれて、真ん中で寝ていることに気が付いた。天上界でも、この状態かと諦めてしまった。この日は、途中で、ユニコーンが引く馬車を見つけて、乗ることにした。御者は、ミュルティロスさんという男の神様だった。急ぐなら、ユニコーンをペガサスに替えるが、どうするか聞かれたので、ステノーさんに決めて貰った。今日も野宿をしたいので、今のままで良いそうだ。ステノーさん、今日の夜、何をするつもりですか?
途中、小高い丘の上から二つの首を持つ野犬が襲ってきた。ユニコーンが棹立ちになって、悲鳴を上げている。この犬は『オルトロス』と言うらしい。見た目は犬だが、とんでもなく大きい。背中まで10m位ある。また、首から背中に掛けてタテガミが生えているが、そのタテガミは無数の蛇だった。
オルトロスは、ユニコーンを狙っているみたいだ。ミュルティロスさんは、戦闘力は余り高くないらしく、馬車の後ろの方に隠れてしまった。仕方がないので、僕が退治することにした。昨日貰ったオリハルコンのショートソードを使ってみる。僕が手に持つと、それだけで金色に光り始めた。そのまま、『瞬動』でオルトロスに近づき、右側の首を切り落とした。
「キャイーン!」
オルトロスは、まさに犬のような悲鳴を上げて逃げて行った。切り落とされた首は、宙に飛び上がり、逃げて行ったオルトロス本体を追いかけ始めた。僕は、別に殲滅するつもりは無かったので、逃げるのを追うような事はしない。僕の使った剣は、ショートソードなのに、首回り3m位はあるオルトロスの首を一刀で切断してしまった。どうやら、剣の切断範囲が伸びるらしい。それが、この剣の特殊能力なのだろう。
僕は、森に向かって、剣を横に払った。剣から、金色の光が伸びて、100m位先の樹々まで、上下に分断された。うん、凄い剣だ。ステノーさんが、この剣は『グラムの剣』ではないかと言っていた。物凄く切れ味が良くて、切れないものは無いとまで言われた剣だ。
その日の夜、また、ステノーさんとメデューサさんに責められてしまった。もう、本当に自由奔放な神様達だ。
翌日、ケトさんの神殿に到着した。
天上界には、広さの概念が薄いようです。とにかくすべてが大きいです。
エッチな部分を削除したら、かなり短くなってしまいました。




