第250話 タイタン領内で悪事は許しません。
ベスは、12歳で娼婦になったようです。この当時、食料事情を考慮すると15歳くらいで初潮を迎えるのが普通だそうですが、行為そのものは可能なのでしょう。作者には分かりません。
(11月7日です。)
ベスと話し込んでいたら、いきなりドアをドンドン叩かれた。
「お客さん、時間ですぜ。延長なら銀貨1杯貰いやすよ。」
僕はドアを開けた。僕が、服をきちんと着ていたので、もう終わったと勘違いした男が、嫌らしい笑いを浮かべ、
「へへ、お楽しみでしたね。良かったでやんしょ。」
僕は、男の首を片手で握り持ち上げた。息ができない男は、少し暴れただけで、気を失った。脳に血が通わなくなったのだ。ポタポタ垂れる小水を避けて、男を横に放り投げる。首から『ゴキッ』と言う嫌な音がしたが、全く気にしなかった。身体は貧弱なテルのサイズだが、能力は僕のままだった。まあ、外見だけが変わるのだから当然だが。ベスを連れて、すべての部屋のドアを開けていく。真っ最中だろうが何だろうが関係ない。見た目で成人の娼婦と普通にしているなら、ドアを閉めてやる。縛って殴っている男は、念動で睾丸を引きちぎってやった。ベスが、すぐに縛られている娼婦のロープを解いてやる。
娼婦が若い場合は、ベスに年齢を確認する。ベスは、『あの子は14』と、年齢だけ教えてくれる。僕は、男を念動で女の子から引き離し、エアカッターで屹立している男根を切り落とす。吹き出ている血は無視する。死んでも構わない。どうせ奴隷落ちだ。
階下から、チンピラどもが駆け上がってくる。しかし、『威嚇』で、動けないようにした。近付くことが出来ない。今は殺さない。後で、生まれたことを後悔させてやる。全ての部屋を点検した。未成年は6人だった。僕に男根を切り取られた男6人以外は、全て逃げ出していた。女達を、別の部屋で待たせてから、固まっているチンピラどものところへ行く。階段の上から階下に纏めて蹴り下ろした。何人かの手足が変な方向に曲がっているが、気にしなかった。男達の山の中から、兄貴分らしい男の髪を掴んで引き摺り出す。
「おまえは、誰だ?」
いつも言われる質問だった。何も答えず、男に、事務所の中まで案内させる。男に金庫を開けさせた。契約書や借金の借用書、奴隷の買取証明書などを押収する。それに、経理帳簿と、大量の金貨だ。面倒だが、金庫の中を空にする。それから、男達に選択肢を与えた。両目、両手、両足の内のどれかだ。男根は全員諦めてもらう。これからは座って小便だ。
男達は、泣いて許しを乞うたが、いつまでも選択しないので、とりあえず、両眼を取り出す。それから、男根を陰嚢ごと切り取ってしまう。傷口は、ヒールで止血しておいた。
それからは、ほとんどの男達が眼を潰されることを選んだが、眼が見えない者のつらさを知らないようだ。町を出ると、魔物の餌食だし、町の中でも生きていくための手段を得ることがむずかしい。当然、自分の生活で精いっぱいの者たちに身体障碍者の面倒を見ようとする者はいない。この世界では、弱者は淘汰される宿命なのだ。
全員の措置が終わったら、男どもにスリープを掛けておく。女の子達を集めて、全員自由だ。帰りたければ帰るように指示した。未成年の少女達は、一旦フランちゃんに見てもらってから、処遇を考える事にした。このまま娼婦を続けたい者は、市内で営業しているドエスさんの店を紹介した。僕の直営店は、現在定員オーバーの状態なので、これ以上雇えないのだ。
この店の男達及び未成年者淫行罪の男達は、イチローさんに任せて、衛士隊に引き継いで貰う事にした。未成年の少女達は、僕と一緒にタイタン市に転移し、フランちゃんに検査をしてもらう。幸いな事に、妊娠したり性病にかかっている子はいなかっったが、肺病に罹っている子が2人いて、隔離病棟に入院する事になったらしい。
あと、僕の治療があった。身体中の傷痕や火傷跡を消すのだが、これは、ヒールのようにはいかない。患部に手を触れなくてはならないからだ。少女達は、凄く恥ずかしがった。商売上、平気なのではないかと思ったは、フミさんが言うには、女の子はそう言うものだと言う事だった。
少女のうち、ベスを含めて3人はフミさんの孤児院が預かる事になった。これからは、孤児院から、学校に通ってもらう。残りの3人のうち2人は入院していたので、最後の1人を実家の村まで送ってあげた。村は、ニュー・タイタン市の北の村だった。両親は、農家だが今年は豊作で、しかも年貢がないので、娘を迎えに行くつもりだったそうだ。傷一つない娘を見て、涙を流して喜んでもらえた。ジローさん達には、エクレア市にあるマルキド商会という店を見張らせている。社長が逃げ出したら、拘束して連れて来るように指示していた。
翌日、ダーツ大佐以下衛士隊200人による一斉検挙を行った。勿論、ウオッカ司法長官の令状を貰っている。逮捕の際、衛士隊の何人かにけが人が出たが、相手は6人死亡、残りの38人は、何らかの怪我をしたようで、圧勝だった。まあ、人数から言って、負けるようならもう一度鍛え直しだ。
その後、マルキド商会の支配下にある娼館や飲食店を一斉摘発した。娼館や店で働いていた女性達は、全て開放し、未成年者は保護してから、処遇を決めてあげた。驚いた事に、未成年の少女は、全部で28人もいた。大掛かりな人身売買組織がありそうだった。早速、マルキドを尋問する事にした。
もう僕は、いつもの姿に戻っていた。取調室で僕の姿を見たマルキドは、初めて自分が相手をしていたのが、誰であったのかを知り、完全に希望をなくしてしまったようだ。僕は、人身売買組織が何処にあって誰が首謀者か聞いた。マルキドは、それを言うと自分の命が危ないと言ったが、このまま生き続けることが出来ると思っているらしい。
僕は、『威嚇』を使って、抵抗する気力を奪い全てを話させた。人身売買の黒幕は、エクレア市の有力者で、犯罪予防協会会長のギラン氏だった。僕も何回か会ったことがあるが、物静かな紳士だったような気がする。ホテルやレストランなどを手広くやっており、違法な人身売買をしているとは思えなかった。しかし、僕の『威嚇』を受けて、なお嘘を言うことなど不可能なので、嘘は言っていないだろう。
僕は、イチローさんに調査を頼んでもいいが、時間が惜しいので、直接確認に行く事にした。ギランは、エクレア市の目抜き通りに面して大きな店を構えており、食事のできる宝飾店として有名な店だ。食事も王都の超一流店とタイアップしており、一人銀貨3枚はくだらない食事をしながら、金貨1枚以上の宝石を品定めするのだ。金持ちだけを相手にしている、僕にとっては反吐の出るような店だった。僕とシェルが連れ立って店に行くと、店頭に立っていた男が、すぐ僕に気が付き、慇懃撫礼に近づきながら、
「これは、これはタイタン公爵閣下、よくおいで頂きました。本日はどのようなご用件でしょうか?」
シェルが、社長に会いたい旨を申し伝えると、用件を聞かれた。
「この店では、用件がないと社長に会えないのですか?」
と、シェルが言ってその男を睨み付けた。男は、ハッとして、直ぐに社長室に案内してくれた。社長は大きな机に座っていたが、僕達を見ると、直ぐ立ち上がって、とても好感の持てる笑顔を向けてきた。年齢は40歳位か。思ったよりも若かった。
「これは、これはタイタン公爵閣下、ようこそおいでくださいました。シェル様もご一緒とは。ご連絡いただければ、お迎えに上がりましたものを。」
間違いなく、宝石でも買いに来たのだろうと誤解している。
「今日は買い物ではありません。聞きたいことがあって来ました。」
シェルが抑揚のない声で、物静かに言った。二人は、応接セットのソファに座ると、直ぐに用件に入った。
「最近、領内で人身売買の噂を耳にしたのですが。」
一瞬、目を大きく開いたが、すぐに平静さを取り戻し、初めて聞いた素振りで誤魔化そうとした。
「ところで、ギラン社長。ニュー・タイタン市のマルキドが捕まった事は知っておりますか?」
「い、いえ、その御仁はいかなる人物ですか?」
シラを切っているが、声が震えていた。
「無許可の売春宿営業と未成年女子強制売春及び人身売買、あと傷害に強姦だそうですわ。死罪は免れませんが、目玉をくり抜かれ、舌を抜かれ、それに両手両足を切って晒し者の刑になるのは間違いないわね。」
「男根も切り落とす、」
珍しく、僕が発言した。ギランは、完全に怯え切っていたが、まだ虚勢を張っていた。
「し、しかし、その者と私が何の関係があるのでしょうか?」
「いや、ギラン社長が、そのマルキドに女達を卸したと聞いたので、確認に来たのです。」
「滅相もありません。私が、そのような事などする訳がありません。」
「そうですよね。もし、本当なら最低でも奴隷落ち、未成年者の奴隷売買は死罪ですものね。」
ギランは、ガタガタ震え出していた。
「ところで、奴隷達はどこに隠しているのですか?」
僕は、『威嚇』を使って、嘘をつけない状態にしている、シェルの質問に、ギランは、涙を流しながら、郊外の倉庫に隠していると白状した。僕達は、ギランと一緒に会社を出た。表には、衛士隊50名が隊列を組んでいる。店舗や社長室の捜索に入るためだ。
僕達の後にギランが付いてくる。ギランの様子をよく見れば、普段と違うことがわかるが、ちょっと見ただけでは、3人で仲良く出かけるように見えるだろう。僕達は、衛士隊の駐屯所に行き、ギランを留置場にそのまま入れてしまった。その後、衛士隊100名に郊外の奴隷収容所を急襲させた。それと同時に徴税官達にギラン商会の税務調査に向かわせた。狙いは、所得隠しもそうだが、奴隷売買の取引先だ。後は、彼らに任せて大丈夫だろう。
翌日、ダーツ大佐から、昨日の奴隷収容所の状況を聞いた。奴隷は、男が13人、女が7人で、15歳以下の未成年者は男が2人、女が1人だったそうだ。未成年者は、全て辺境の村の孤児を誘拐して来ていた。後は、借金のカタに売られて来たらしい。全員、王国の奴隷売買許可証は所持していなかった。いわゆる闇奴隷だった。収容所にいたゴロツキどもは、12人だったが、7人死亡、4人が重傷で2人は留置場に収容しているとのことだった。衛士隊3人が怪我をしたが、命に別状はないそうだ。良かった。僕は、それぞれの衛士さん達に見舞金として大銀貨1枚を渡した。
マルキドの事務所から押収した書類から、領内の違法売春宿や農場、精錬工場など57箇所で違法奴隷を使用していることが判明、売春宿の店主は死罪、他の使用者は奴隷落ちとなった。奴隷を使用していた農場や工場は、公爵直轄として、そのまま運営を続けた。中には、低賃金で酷い労働環境の所もあったが、健全な経営者を代行として任命して働く人たちの暮らしを支える事にしたのだ。
スカッとしたでしょうか?最近、ブクマが少しですが増えています。感謝感謝です。




