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第246話 ステノーさんにも困ってしまいます。

ステノーさんは、邪神ですが、神様の子供だったので、人間界のことは詳しくありません。

(9月28日です。)

  ステノーさんやエウリュアレさん、メデューサさんは太古の昔、ポルキュースと言う海の神とその妹ケトの間に生まれた。皆、非常に美しい娘だったが、メデューサさんが海神ポセイドーンと恋仲になり、適当な場所が無かったので大女神のアテーナーの神殿の1つでエッチをしていたため、アテーナーの怒りをかい、醜い怪物ゴルゴンにされてしまう。これに抗議したステノーさんや、エウリュアレさんも怪物に変えられてしまったそうだ。ステノーさんは、見た目は変わらなかったが、本質は邪神であった。まあ、邪神と言っても、人間がそう呼んでいるだけで、神様たちの間では聖も邪もなく、すべて等しく神であるそうだ。それで、ステノーさんの邪神の証拠は、下半身が蛇になっているらしいとのことだった。


  姉妹のなかで、最も強く、最も知的なのが、ステノーさんだ。エウリュアレさんは、美しいが貪欲で大食、メデューサさんは美しいが淫乱らしい。ステノーさんは、邪神ではあるが神の子、能力は未知数だ。魔物を生み出す力、変身させる力など、普通の魔物に出来ることではない。ステノーさんは、人間界で暮らすのは初めてらしく、色々困ったことがあった。


  まず、住まいだが、領主館では何かと不味いので王都の屋敷に住んで貰うことにした。ステノーさんには、僕の部屋を使って貰うことにした。女オーガ達には3階の部屋を割り振った。


  女オーガの服装は、護衛として女剣士の格好をさせている。キチンとパンティ、ブラジャーも着けて貰った。武器は、ミスリルのロングソードで、少しだけ重めにして貰った。身体能力的には、ブリちゃん以上だろう。と言うか、人間の能力を超越している。しかし、剣の『形』を覚えられない。基本的に、知能は魔物のままだ。


  女ゴブリン達は、黒のメイド服だ。パンティではなく、ブルマーを履いているし、ブラジャーはしていない。基本、戦闘能力はゼロだ。それに、一度に一つの事しか出来ないようだ。この世界では、女ゴブリンはまれだ。そのため、男ゴブリンは、人間の女性を襲い、子供を産ませようとしているのだ。


  ステノーさんが、起きた時の着替え役、洗面役、食事の時の給士役など皆で分担している。彼女達の動きは素早いが、雑だ。食器も直ぐに落としてしまう。だから、なるべく重ねないようにしている。元からいる僕の使用人達が、根気良く教えているが、苦労しているみたいだ。


  女オーガと女ゴブリン達は、ステノーさんとは別に食事を取っているが、皆、朝から肉を食べたがっているみたいで、屋敷のシェフが、安い肉を入手するのに苦労しているみたいだ。ステノーさんは、少食で、余り肉類は食べたがらない。野菜と果物それに乳製品が好みだ。テーブルマナーなど関係なく生きてきたようで、果物などは、ときどき手掴みで食べている。お肉の食べ方などは、執事さんに聞いているみたいだった。


  ステノーさんは、常に白か青系統のロングドレスを着ている。長い髪を後ろでゆったり結び、宝飾類は一切身に付けない。街に買い物に行くときは、女オーガと女ゴブリンが全員ついていくし、屋敷の執事も一人付けているので、総勢9名、馬車2台が必要だ。ステノーさんは、どこに行くのにも馬車を利用している。基本、歩かない。


  僕とは念話で話したが、一般の会話も出来るようで、無口ではあるが、執事さんや他の他のメイドさんとも意思疏通は出来ているみたいだ。ステノーさんは、人間の欲望を超越しているみたいで、食べるのも着るものも余り興味を示さない。街角のレストランのテラスに座って、町行く人々を見ているのが面白いらしい。オーガ騎士とゴブリンメイドは、そばでジッと立っている。同じテーブルに座っているのは、人間の執事さんかメイドさんだ。ステノーさんの質問に答えるためだ。


  夕方になると屋敷に帰るが、そのときだけ、歩いて帰っている。先頭はオーガ騎士、次にステノーさん、後ろから執事さんとゴブリンメイド達がゾロゾロと歩いているのだ。この姿が、王都で話題になり、見物する者も出てきた。


  何しろ、肖像画位でしか見たこともないような美女が、神々しさを発揮しながら、王都の中心街を練り歩くのだ。日差しが強いと、大きな日傘が差し出され、可愛らしいメイドさん達がチョコチョコと動き回る。先頭のオーガ騎士二人も、髪の毛の色は違うが美人の双子で、装備品も一級品だ。それまで、若い女性達の間ではミニスカ一辺倒だったが、最近ではロングスカートを履く女性も増えてきているそうだ。


  ある日、通りに、ものものしい警備兵が並んでいた。ステノーさん、そんなことは気にせずに、いつものように通りを練り歩いた。少し離れたところで、ステノーさん達一行を見ていたのは国王陛下だった。そばにはアルフレッド殿下もいる。ジェンキン宰相もいた。


  「陛下、言った通りだろ。ものすげえ美女が、毎日、ここを通るんだ。今じゃあ、この通りの名物だよ。」


  「ウーム、あのような美女が、僕の所にいるのか。あの顔立ち、まるで精霊アリエス神のようじゃ。ジェンキン、あの女性のことは、調べたのか。」


  「はい、ある日、突然現れまして。執事の話では、ゴロタ殿の賓客で、深窓の御令嬢のようで、詳細は一切不明です。」


  「ウーム、何でゴロタのところばかりに、あのような美女が集まるのじゃ。ジェンキン、晩餐会に彼女を招待せよ。日程は任せる。」


  そんなことは知らないステノーさんは、屋敷に戻るといつものように、コマちゃん達を呼んでお茶会をしていた。アオちゃん以外も人間の姿になっていた。ステノーさんの力によるものだ。皆、天上界に席を置く者。その中でも、ステノーさんは神の娘で、邪神とはいえ神なのだ。神獣や霊獣とは立場が違う。


  ゴブリンメイド達は、ゲンさん達の霊力に腰を抜かしてしまい動けないので、人間のメイドに給仕をさせている。オーガ騎士達は平気のようだ。部屋の隅に立っている。


  『それで、今の人間界はどうなのじゃ。玄武よ。』


  『はい、最後の災厄の神が去年、生まれたようですが、今のところ、全く気配が有りません。ステノー様、何かお聞きになられておりますか。』


  ゲンさんも、僕とは随分と態度と言葉使いが違う。


  『妾は、300年振りの人間界じゃ。あのダンジョンが、虚無世界と繋がっていたから、顕現出来たのじゃ。エウリュアレらは、魔界を通じて何度も来ていたようじゃが妾は、魔界は臭くて嫌いじゃ。』


  『今回が、最後の災厄の神じゃ。慎重になっておるのじゃろう。そういえば、あの黒龍はどうした。いつも災厄の神の先鋒じゃったぞ。』


  『今回は、魔王側に付いているようです。』


  トラちゃんが、緊張しながら答える。スーちゃんが、立ち上がって、『分をわきまえよ!』とたしなめる。どうやら、白虎や狛犬は、直答を許されていないようだ。トラちゃんが、元の姿になって、飛び下がって平伏していた。コマちゃんが、震えている。


  『良い。直答を許す。』


  ステノーさんが、手をあげた。トラちゃんがまた人間の姿になった。スーちゃんが、オズオズと元の席に座った。メイドさんが、新しいお茶に変えてくれた。少し手が震えている。トラちゃんが、急に白虎になったり、人間になったりを見てしまい、この人外の集まりに初めて気が付いたようだ。


  アオちゃんが、ゲンちゃんに話しかける。


  『どうやら、ゴロタはんがいなくなるのを待っているみたいやで。何処かの貴族の娘に転生したらしいのや。玄武はん、ステノー様に伝えてえや。』


  どうやら、蜥蜴風情も直答は出来ないようだ。


  『と言うことは、後300年以上は災厄が無いのか。』


  『御意。』


  ゲンちゃんとスーちゃんが一緒に答えた。300年以上、僕の寿命が判明した瞬間だったが、残念なことに僕はいなかったけど。


  『フム、玄武よ。黒龍に、妾が会いたがっていると伝えよ。所で、ゴロタ殿は、何処におるのじゃ。ここに来てから、一度も会っておらんが。』


  『はい、ゴロタ殿は、タイタン市という領都にあるお屋敷におります。ステノー様が行かれると、色々と面倒なようで。』


  『何が面倒なのじゃ?』


  『いえ、ゴロタ殿には、多くの妻女がおられまして、その者達の平穏を乱すのではないかと。』


  『そうか、まあ特に用もないし、まあ、良いか。』


  世事に興味のないステノーさんでした。それからは、人間界の話題になり、楽しいお茶会は無事に終わりました。300年前、人間界はひどい世界だった。隷従と専制、貧困と飢餓、この世に生を受けたことを恨みながら死んでいく者達、人間の奥底に眠る鬼畜の心を呼び覚まし、戦わせて淘汰するのが災厄の神々の役割だった。ステノーさんは、人間の歴史以上の年月を過ごした。邪神とはいえ、特に何かしなければいけないこともなく、ただ存在するだけで役目を果たしていた。それは、豊穣の神も美の神も同じだった。地上に降りるのは気まぐれだった。邪神とはいえ、存在するのに苦労はいらなかった。


  父親からは嫌われていたが、母のケトは優しく美しかった。魔物や邪神となってしまった自分達に哀れみを感じていたのかも知れない。母とは、500年位会っていなかった。この世界で落ち着いたら、会いに行ってみようかとも思う。父に見つからなければ、きっと大丈夫だろう。


  父は怖かった。荒ぶるときは、海は全てを飲み尽くす程に荒れ狂い、地上の命有るものは、悉く死に絶えてしまう。自分の力では、何もできなかった。生まれ落ちたときから、常に父から逃げ回っていたのだ。


  父に抗える者など、大地神や太陽神以外、居る訳がない。でも、母に会えるのならば、この世界から消滅したとしても構わない。もう十分に生き続けていたのだから、生に対しての未練はなかった。


  妹のエウリュアレやメデューサだって、母には会いたいだろうに。この前、ゴロタ殿に討伐されていたが、間もなく復活する筈だ。そう言えばゴロタ殿は、世界を統べる者だ。現世に於いて、最強の存在だ。天上界ではどうだろうか。タイタン族は、地上を統べていた太古の神々だ。天上界に於いての絶対者に勝てる者など居るわけがない。でも、少しでも気を逸らしてくれれば、その間に母に会えるかも知れない。今度、ゴロタ殿に相談してみよう。ステノーさんがそう考えていた時、僕が屋敷を訪れた。

天上界に帰ることを考えているステノーさんでした。

昨日、1日のPV数が初めて900を超えました。多くの方々に読んでいただいて、感謝しております。できれば、ブックマークもポチっとしていただけると、もっと感謝なのですが、よろしくお願いします。

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