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紅き剣と蒼き盾の物語(コミュ障魔王と残念エルフの救世サーガ)  作者: 困ったちゃん
第24章 王国の西はタイタン領です。
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第241話 タイタン領内は平和です。

今日は、衛士隊の採用試験です。採用条件は、中学校卒業程度の学力が必要みたいです。

(7月5日です。)

  今日は、衛士隊中途採用の試験日だ。採用条件は、18才以上30歳未満で、男子は身長175センチ以上だ。


  300人採用予定に対し、約3600人が応募して来た。理由は、安定した仕事と言う以上に、高収入が人気の秘密だろう。領民の平均的な給与は、年に金貨4枚半だ。それだけあれば、贅沢は出来ないが、家族4人が十分に暮らしていける。だが、今回採用する中途採用者の給与は金貨6枚を支給予定だ。


  午前中は学科試験だ。読み書きと簡単な計算それと衛士希望の理由を書く作文だ。この段階で、読み書きと計算で基準点に達しないと、午後の試験を受ける事が出来ない。


  午後は、1200人が受ける事になった。2400人が学科で落ちてしまった。午後の試験は体力検査だ。最初は、持久走だ。5キロを走って貰う。25分以上かかった者は失格だ。25分用の砂時計で計測する。

  次は、60キロの麦俵を10回、頭上に持ち上げてもらう。女性は30キロの麦俵だ。ほとんどの者が、この段階で脱落してしまう。いくら元衛士だと言っても、基礎体力が無ければ採用するわけには行かない。


  明日は、実技と面接だ。夕方、翌日の受験者を発表する。結局700人になってしまった。実技は、剣術と魔法、どちらでも得意な方を選んでもらう。剣術は、シズちゃんとジェーンさんが試験官だ。別に勝てなくても構わない。剣術の才能を見るだけだ。審査員は、僕がやることになっている。魔法については、ノエルが試験官だ。魔力測定人形を使う。魔法で及第点に至らなくても、剣術で再試験を受けれるし、その逆でも良い。とにかく、どちらかで合格点を取ればよいのだ。




  翌日、いよいよ実技試験だ。剣術は、剣道場で行われた。ロングソードかショートソード、特異な方を選んでもらう。試験時間は、1分、1本でも試験官に打ち込むことが出来れば合格だ。受験生の殆どが男性だ。皆、ロングソードを選ぶ。シズちゃんとジェーンさんは、ショートソードだ。試験が始まった。しかし、誰も二人に打ち込むことが出来ない。シズちゃんは、素晴らしい速さで、相手を翻弄する。自分からは、決して撃ち込まない。相手が撃ち込んだ後、必ず相手の急所に剣先を当てている。ジェーンさんは、相手の剣を紙一重で躱している。相手は、もう少しで打ち込めるのにと思って、がむしゃらに打って来る。その度ごとに、躱したり受け流したりで、全く勝負にならない。それを見ていた僕は、合格判定を下す。700名受けて、午後の面接まで残ったのは300名だった。


  魔法での選別は、女性が多い。魔法力測定人形に魔法攻撃をして、5ポイント以上が合格だ。但し、呪文詠唱から10秒以内に魔法を撃ち込まなければならない。実技通過者は120名だった。剣技と合わせて420名が実技試験通過となった訳だ。


 午後は、シェルの面接だった。ダーツ大佐とダンヒル大佐も一緒だった。本人の書いた論文をテーマに質問を重ねていく。


  「生き甲斐を求めて、志願したと有りますが、あなたの生き甲斐ってなんですの?」


  「安定した仕事がやりたいと有りますが、それならば行政庁の職員だっていいじゃないの?」


  「剣の腕を生かしたいとあったけど、騎士団では駄目なの?」


  シェルの厳しい質問にしどろもどろになってしまう受験生たち。面接は、夜遅くまで行われた。結果が出るのは、明日の午後なので、全員、衛士隊の宿舎に泊まって貰う。


  翌日、最終チェックだ。能力測定器で、測定することになっている。年齢詐称で3人が失格だった。絶対にばれるのに、嘘をつくなど信じられない。夕方、最終合格者342名を発表する。合格者のうち、現役衛士が28人いた。彼等は、即採用だ。明日から、配属先に行ってもらう。残りの314人は、8月31日に、衛士養成所に集まって貰う事になった。入所式は9月1日だった。




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  モンド王国のリトちゃんは、最近歩けるようになった。まだヨチヨチだが、好きなところへ行けるのは楽しかった。使徒のサキュバスはあれ以来召喚していない。万一、正体がばれたら非常にまずいからだ。


  母親の女は、リトちゃんを溺愛している。特に乳をあげているときには、至福の幸せを感じているようだ。いや、本当に感じているのだ。リトちゃんは、最近、遊び相手を見つけた。屋敷で飼っている猫だ。最初、猫は警戒をしていたが、リトちゃんの『威嚇』でおとなしくなった。リトちゃんは、猫の耳の臭いを嗅ぐのと、肉球をプニプニするのが好きだった。結局、この猫が、リトちゃんの使い魔になってしまったようだ。リトちゃんは、今の生活が気に入っていた。何不自由ない生活。冬、暖かい部屋の中で母親に抱かれていると、『世界の淘汰』など、どうでも良くなっていた。あ、猫と遊んでいたら、漏らしていた。ここは、泣いて知らせるところだ。リトちゃんは、火の付いたように鳴き始めた。









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(8月1日です。)

  僕は、シーサイド村にいた。大きな客船を作りたかったのだ。シーサイド村は、タイタン領唯一の港がある。船の修理や漁船を作る船大工も多い。だが、大型船は作ったことがないらしい。僕は、港のそばに大きな大きな穴を開けた。長さ50m、幅30m、深さ20mの四角い穴だ。この穴の中に船を作り、出来上がったら、海に繋げて進水する予定だ。木造船だが、外板にミスリル鋼で被う構造にする、3本マストだが、水中に長い筒を2本、沈めている。筒の中に魔風石を並べ、水中で後方に向けてジェット気流を発生させる。その気流に前から吸い込まれた海水が、ジェット水流になって後方に噴出され推進力になる。筒の付け根は、船内に繋げられ、魔力の道を通しておけば、魔導士一人で制御できるはずだ。シーサイド村の船大工さん達は、こんなに大きな船を作ったことがないらしく、ヤル気満々だった。造船に必要な大きな材木やミスリル鋼は、全て僕が準備する。完成は、来年、3月の予定だ。


  航路は、カーマン王国の交易都市のナチュラル市と間に就航の予定だ。やっと、カーマン王国との交易ができるのだ。クレスタも喜んでくれるだろう。この船は、貨物を500トン、乗客300人の予定だ。建造費は、大金貨30枚以上と言われた。内装によって、値段が違ってくるそうだ。



  この日は、王都の馬車職人のところにも行った。馬なし馬車を作ってもらう。長さが10mで、幅が2mの箱だ。底は平らだが、屋根は丸い。先端からなだらかなカーブを描いた水滴型にしてもらう。先端部分は、アヒルの口のようにして貰うが、木を削り出して作るらしい。最後尾には、三角形のサメの背鰭のような物を3枚付けてもらう。水平に2枚、垂直に1枚だ。それからキャビン前面斜めに窓ガラスを嵌めた。キャビン内は、2人掛けのソファを左右に2個、4列にして貰った。


  底には、小さな車輪を4個、四隅に付けた。最後に、全面をミスリル銀で包み込んでもらう。馬車職人は、馬はどうやって繋ぐのかと聞いてきたが、笑って誤魔化した。僕は、何故か空飛ぶ馬車が、丸い形をしていたことを思い出した。いや、思い出したのではない。最初から知っていたのだ。空気を切り裂くような形が、早く移動できることを知っていたのだ。


  出来上がりは、11月末だとのことだった。これができたら、皆で世界一周旅行でも行こうと思っている。和の国の東の海の向こうはどうなっているのだろう。モンド王国の南には国があるのだろうか。知らないことばかりだった。




  エクレア市のガチンコさんの店にいって、出来上がっている『雷神の薙刀』を受け取る。クレイス製の杖の先に取り付けられていたが、違和感はない。裏で少し振ってみたが、意識せずに雷撃が迸る。刃先に雷魔法を流し込んだら、ガチンコさんに止められた。街が消滅してしまうそうだ。ガチンコさんに薙刀の型を教えて貰う。杖術に似ているが、脛の攻撃がある分、攻撃が多彩だ。相手の面打ちを柄で受けてからスネを切り払ったり、面から脛への連続攻撃など、動きを覚えるのは大変そうだ。ビラには、しばらくの間、王都の明鏡止水流本部で、薙刀の型を習わせることにした。ただ、ビラは剣よりも魔法が得意で、大学でも魔法を専攻している位だ。しかし、剣技だって使える魔導師は、最強になる可能性がある。実際、ビラの体力や攻撃力は人並み以上だ。


  翌朝、早朝稽古にビラが加わった。ビラは、左半身で薙刀を構える。僕は、呼吸法を教えた。お臍の内側に気が溜まるような感じで腹式呼吸をさせてみる。20分位続けただけで、額に汗が出てきている。次に、お腹に感じる気を薙刀の剣先に流すイメージを持たせる。決して魔力ではなく気を流さなければならない。上手くできないようだ。僕が、ビラの後ろに回って、お腹に手を当てる。気の流れを作ってみる。ビラの手が震えている。薙刀の刃が白く光った。


  僕の手を、ビラから離したら、ビラはその場にへたり込んでしまった。シズちゃんが、ニコニコ笑っている。自分もそうだったことを思い出しているのだろう。ジェーンさんも、優しい目でビラを見ていた。


  今日は、ビラと一緒に明鏡止水流の道場に行ってみることにした。午前中は、王立魔法学院での授業があるので、それが終わって、研究室で研究員との打ち合わせが終わってから、道場にいくそうだ。午後、道場で、薙刀の型を教わっている。僕は、その様子をジッと見ていた。薙刀は、長い柄のついた刀だ。その長さを生かした動きが大切だ。刃の部分と柄頭を上手く使わなければならない。ビラは、一生懸命、型を覚えようとしている。まだ、剣の理を理解するまで至っていないが、それは仕方がない。これからの課題だからだ。

  ゴロタが作っているのは、ジェット船と飛行船です。推進機関は付いてません。

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