表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅き剣と蒼き盾の物語(コミュ障魔王と残念エルフの救世サーガ)  作者: 困ったちゃん
第24章 王国の西はタイタン領です。
242/753

第240話 甘い誕生日プレゼント

ブリンク市に、ようやく平穏が戻ったようです。これからは、皆と仲良く暮らします。

(6月18日です。)

  今日は、ビラの21歳の誕生日だ。いつものように、ニース・タウンのホテルで誕生パーティをする。誕生日プレゼントは、何がいいか聞いたら、何も欲しいものはないので、ゴロタと二人で旅行に行きたいと言う。


  シェルも了解してくれたので、新領地のシーサイド村まで行ってみることにする。ゴロタの領地で唯一、海に面して港のある村だ。村民は、2500人、漁業と非定期の航路がある。非定期の航路は、ゴーダー共和国の国際交易都市モッツアレラ市との不定期交易船が一昨年から出ているらしい。


  不定期と言っても、月に4便程度は出ているので、たった2人しかいない領事館が開設されているらしいのだ。


  ゴロタは、村長のムライさんにあって、モッツアレラ市に行く船がいつ出航するのか聞くと、今日の夕方出るそうだ。ムライさんは、ゴロタは新領主だけでなく救国の恩人なので、ぜひ歓迎会をしたいので、今日は村に泊まって欲しいと言ってきた。


  ゴロタ達は、モッツアレラ市に行きたいので、『今度ユックリ来る。』と言う絶対に来ない約束をしておいた。


  桟橋近くのゴーダー共和国の領事館に行ってみる。ゴーダー共和国の入国許可を貰うためだ。


  領事館では、今日、申請すると1週間後に出来上がるので、そのころ、確認に来てくれと言ってきた。ゴロタが、この領地の領主であることを伝えると、急に態度を変えて、即日交付をしてくれた。相変わらず、官僚主義のいい加減な対応である。少し、頭に来たが、しょうがない。他国の事だ。どうでもいいと思うことにした。


  船は、かなり大きな船だったが、乗客は極端に少なかった。ゴロタ達は、デッキの上にある特別室を予約した。大銀貨3枚だったが、特に問題はない。ビラは、二人だけの船旅にうっとりしていた。


  シーサイド村からモッツアレラ市までは、約3000キロ、100時間以上の旅だ。4泊5日の旅になる。到着予定は6月23日の夕方だ。


  船の旅は快適だった。以前、皆と一緒にエルフ王国から海を渡った時の夜の満天の星空、水をかき分けて進む波音、全てがロマンティックだったらしい。部屋は、キングサイズのベッドのツインだった。部屋に入ると、船長が挨拶に来ていた。この船は、ゴーダー共和国所有の船で、船長を始め、船員もすべてゴーダー共和国の公務員らしい。


  夕食は、部屋に運んでくれる。ビラは白ワインを追加で注文していた。グラスを2つ貰う。メニューは海鮮料理がメインだった。


  食事を美味しく食べて、ワインも少しだけ飲んだ。酔いはしないが、ワインが美味しいと思わない。何故なのか理由は分からなかった。ビラは、ワインの残りを全部飲み干してしまった。料理も美味しかった。大きな髭付きエビの蒸し焼きを、追加で注文しておいた。


  食事が終わると、ワゴンに皿などを乗せて、廊下に出して、フックを掛けておく。ボーイが下げてくれるのだ。大銅貨1枚をワゴンの上に乗せておく。


  二人で、デッキに出た。雲一つない、満天の星空だった。デッキの椅子に座って、ビラの肩を抱く。ビラは、頭をゴロタに預けて来た。二人でじっとしていた。これだけで満足らしい。


  大きな鐘の音がした。何か、あったらしい。船の行く手が白く波立っている。ゴロタは、暗視が効くので、何があったか直ぐに分かった。大きなタコの脚が10本位、海面から立ち上がっている。船よりも大きい。クラーケンだ。


  船員たちが、大きな銛を持って、船首に集まっている。近づいて来るクラーケンの触手に銛を投げ込んでいるが、すべてはじき飛ばされている。ゴロタ達が船長の所に行く。船長は、顔が真っ青だ。クラーケンと遭遇するかどうかは運しだい。100回の航海で1回あるかどうかだ。


  ゴロタが、ゆっくり船長に助けて欲しいか聞いた。当然、頷く船長。シェルだったら、ここで金銭を要求するだろうが、ゴロタはそんな事はしない。単に、船首の船員たちをどかして貰った。


  船の舳先に立ったゴロタは、クラーケンの触手の先っちょを全て切り落としてしまった。念動で、落ちて行く触手を回収する。クラーケンの触手でここが一番うまい。


  次に、海中にあるクラーケンの頭の周りの海水を凍らせる。大きな氷山が浮かび上がってきた。中に、クラーケンの頭が入っている。もう、虫の息だ。クラーケンの頭の中をマイナス273度に凍らせた。


  ビラが、クラーケンの触手の先っぽを電撃で焼いている。美味しそうな匂いがしてきた。ゴロタが、大きな塊にして、イフクロークにしまっていく。全ての触手をしまおうと思ったが、1本だけ、細切れにして、船のシェフに渡した。明日の昼食にパスタの具材にしてくれるようにお願いした。先っぽだけでも、100人分くらいはあるだろう。


  船長が、深いお辞儀をして感謝してくれたが、別に大した事はしていないので、気にしないで貰いたい。


  部屋に戻ってから、シャワーを浴びた。これから長い夜が始まるのであった。


  次の日の昼食は、タコパスタだった。タコの食感と香りが絶品だった。午後は、二人で遊覧飛行をして遊んだ。上昇すると、この星が丸い事が分かる。360度、遠く水平線が見えている。船の上空50m位のところを、船と同じ速度で飛行する。いたずらに船に当たる風を強くしてみる。ドンドン船が前に進んでいく。船員たちの慌てた様子が面白い。


  今度、船を作ろうと思う。帆船だが、自力で進む力を持っている帆船だ。仕組みはこれから考えるが、ヒントは風魔法をうまく使おうと思っている。


  飛行も飽きたので、デッキに降り立った。船員たちは、昨日の出来事を目にしているので、何も言わなかった。


  それから、昼間は、風魔法と念動で船の速度を時速50キロ位に加速してあげた。2日後の夕食前にモッツアレラ港に到着したが、早すぎたので、沖合いで1泊していた。


  ゴロタは、船長に下船する旨を告げて、二人で飛び上がり、先に上陸してしまった。閉鎖前の入国管理事務所で、入国手続きをしてから、市内のホテルを予約した。最上級ホテルのスイートにしたが、突然の予約でスイートは、準備ができないので困ると言われてしまった。銀貨1枚をチップで渡すと、直ぐにルーム担当に連絡をして、準備をしてくれた。


  夕食は、鍋で溶かしたチーズに肉や魚介類、野菜をつけて食べる料理だった。チーズフォンデュと言うらしい。かなり熱いので、舌を火傷してしまうが、ヒールを掛けて、直ぐに直してしまう。


  ビラも、舌を火傷したみたいで、舌をだしていたのでヒールを掛けてあげた。ビラは、自分でもヒールを掛けられるのに甘えているのだ。ヒールを掛け合いながらチーズフォンデュを食べる二人を、周囲の客がジト目で見ていた。


  この日の夜も、眠れない夜だった。


  次の日、市内をゆっくり見て歩いた。ゴロタは、武器屋に行ってみる。ビラの武器は、今のところ、南の大陸で見つけた流木の杖だけだ。これは、飛行用に使いはするが、戦闘ではあまり役に立たない。魔力増幅系のワンドを探していた。


  鍛冶町に行って、武器屋を覗いてみる。高級そうな武器が並んでいるが、能力的には大したことはない。ずっと武器屋が並んでいたが、どれもミスリル製の武器や防具が最高の品らしい。これでは、買う気が起きない。ゴロタは、今までの経験で、一番汚らしい店に行ってみることにした。あった。店の名前は書いてなかったが、看板に、『どのような武器でも買い取ります。刃こぼれ品大歓迎』と書いてある。怪しい。この店には、絶対、何かお宝があるものと思われた。


  店内に入ってみる。薄暗い。これでは、武器の品定め等できる訳が無い。きっと、それが狙いなのだろう。しかし、暗視のきくゴロタにとっては無意味だ。陳列棚に並べられている武器を見て歩く。古いだけで大したものはない。ジャンク品の武器も見てみるが、刃こぼれのした剣や、曲がってしまった弓など、絶対に買ってはいけないものばかりだった。


  あきらめて帰ろうとした時、『ご自由にお持ち帰り下さい。』の札が貼ってある棚があった。そこには、柄皮が擦り切れた柄とか、塗の剥げた鞘とか、切り落とされた槍の柄とかが置かれていた。


  その中に、付け根がない槍の穂先があった。付け根がないわけではない。変わった格好の槍だった。根元が岩のような塊になっていて、刃が幅広なのだ。それで三日月を上下に分けたように曲がっている。


  根元の塊を手に持つにも刃が手に当たりそうだし。そもそも刃が汚い。なにかの結晶が付着しているのか、どす黒いのだ。しかし何か気になる。とりあえず、タダだから貰っておくことにした。


  店員が、馬鹿にした顔でこちらを見ている。タダだからどうでもいいのだが、一応、店員に断ることにした。店員は、こんなガラクタをどうするのかと言う顔をして、黙って頷いていた。


  店を出たゴロタは、そのままガチンコさんの店に転移して、今さっき入手したものを見せた。ガチンコさんは、色々調べていたが、刃に付着した結晶を磨き落としてから、じっと刃を見ていた。


  しばらくしてから、奥の事務所に行き、分厚い本を持ち出してきた。武器図鑑という本だ。いろいろ調べていると、もう一度、この刃を見ている。


  「ゴロタ殿、この刃、どこで手に入れた。」


  最近、ガチンコさんは、ゴロタの事を『殿』付きで呼んでいる。ゴロタが、モッツアレラ市の武器屋で、タダで入手したというと、呆れた顔をしていた。


  この刃は、400年以上前に所在が分からなくなった『薙刀』の刃らしい。薙刀とは何か分からなかったが、どうやら、和の国で、長い柄の先に付ける刀らしい。そして、この刃は、オリハルコンとヒヒイロカネの合金で、銘が付いていた。


    『雷神の薙刀』


  これが、この刃の名前らしい。効果は、雷系魔法の効果をレベル4分上げるらしい。また、振るだけで、レベル4のサンダーボルトが撃てるらしいのだ。刃の根元の塊は、固着している石だが、綺麗に剥がすことが出来るらしい。


  ゴロタは、ビラの杖に装着できないかと聞いたら、できるが、かなり難しいらしい。手間賃は金貨4枚は貰いたいとの事だった。この手間賃には鞘を作る手間賃も入っているらしい。当然、素材はゴロタが提供するのだ。


  ゴロタは、ミスリル銀とワイバーンの皮、それに水龍の皮を提供した。水龍の皮は、杖に巻いて貰う。出来上がりは、1か月後らしい。うん、これがビラへの誕生日プレゼントだ。


  領主館に戻ったら、シェル達女性陣が集まっていた。何かと思ったら、今後の誕生日プレゼントは、ゴロタとの2泊3日の旅行にすることにしたらしい。

もう宝石は要らないようですが、子宝を欲しがり始めているようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ