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第230話 ブリンク伯爵の悪事

ブリンク伯爵は、ゴロタが女装して旅行していた時に、誘拐されそうになった、あの幼女趣味の変態です。

(3月28日です。)

  今日は、叙爵会議の日だ。僕も、王宮内で待機だ。会議に参加はできない。推薦者がいると、自由な論議が出来ないからだ。結果は、国王陛下に奏上され、裁可を得て正式決定だ。その間、僕は国王陛下と雑談中だ。そばにはエーデルがいる。屋上の展望茶室だ。国王陛下の目配せで、女王陛下とエーデルは階下に降りて行った。


  「ゴロタよ。ブリンク伯爵をいつ討つのだ。領民が塗炭の苦しみをしておるぞ。」


  「いま、証拠を集めている最中です。」


  「討ち取ったら、誰も証拠の品など望まない。一番知っているのは領民だ。」


  そう言われても、討ち取った後で、変な言われ方をされたくないので、もう少し時間を貰うつもりだ。これから、田植えのシーズンだ。農民たちを苦しめたくないと言うのが本音だった。


  「ところで、ブリンク伯討伐には、どの位の兵力を準備しているのだ。」


  「騎士団500騎を準備しています。」


  「何と、たったの500騎だと。その10倍は必要じゃ。相手の勢力の3倍以上で攻めるのが戦の常道だ。」


  僕は、騎士団を見せかけで連れて行くだけで、戦闘は、僕一人でやるつもりだった。戦闘になればの話だが。あと、シェル、エーデル、クレスタ、ノエル、ビラ、シズちゃん、フランちゃんを前線に連れて行く予定だ。15歳以下の未成年者と非戦闘員は後方支援要員だ。これだけの戦力だと、おそらく5000名の敵も一瞬で殲滅するだろうと思うのだ。


  この戦には、視察団として、スターバ騎士団長、フレデリック殿下、マリンピア王国魔導士長が随行する。彼らが何をするのか知らないが、付いて来ると言うのだ。僕には、断る理由が思いつかなかった。侵攻の日取りが決まったら、知らせるということにして、その場を辞した。これ以上、国王陛下といると、今からブリンク伯爵を攻めることになりそうだった。叙爵会議が終わった。ケント市長代行が男爵になることが決まった。レミイと結婚することが条件だ。結婚できなかった場合は、直ぐに爵位剥奪になるそうだ。


  4月1日は、叙爵式だ。お祝いをしなければ。あ、それは向こうに任せておこう。レミイは、これから向こうで暮らすのだから。夜、イチローさんが領主館に戻って来た。山のような証拠の品を持って来ていた。ブリンク伯爵は、ほぼ変態だ。幼女趣味だけではない。サディストなのだ。それも単に彼だけの性癖だけの問題ではない。領民が犠牲になっている。


  まず、ブリンク伯領内の年貢は、4割が標準だそうだ。それも収量ではない。耕作面積で大豊作の時の収量を基準に、その4割だ。実質は、5割近い量になるだろう。それに、お礼麦だ。これは、1年間、田畑を守ってくれた領主に対するお礼という事で、先ほどの基準収量の1割を納める。そして、代官に1割を別に手数料として納めるので、農民が手にできるのは、3割程度だ。そのうち、1割は来年のための籾麦として残しておかなければならないので、実施に食べることが出来るのは、収穫の2割以下となってしまう。これでは生きていけない。農民は、森に行って食べ物を探さなければならないが、魔物に襲われることも多く、餓死者が続出しているそうだ。


  次に税金だ。商人は、年間の総売り上げの3割を税金として支払うことになっている。これはブリンク伯爵に納める分だ。それから、地方税として市や町の代官に1割支払う。そのほか、衛士隊や騎士団に警護御礼金として1割を支払う。これで、残り5割だ。従業員の給料や仕入れ代を引くと、利益が残るどころか借金が残るだけだ。次々に商店は店を閉めているが、町や村から逃げることは許されない。何も商売をしていなくても、人頭税と言って、一人当たり、年に大銀貨2枚を支払わなくてはならない。税金を払えなければ、奴隷として家族を売らなければならない。それでも、地獄から逃げることが出来ると喜ぶ領民が多いそうだ。


  年に4回、領主様の領地検閲がある。10歳以下の子供を持つ親は、子供達を家の前に立たせなければならない。男女関係なくだ。その時、ズボンやスカートを履いてはならない。上着だけを着ている。ブリンク伯爵が、子供の前に立って、上着の裾をめくると、その子は、当日の夜伽指定者となる。帰って来た時は、男の子は、身体がむち打ちの傷だらけ、女の子は股間から血を流しながら帰って来る。それでも帰って来るだけましな方だ。中には帰って来ない子供達も大勢いるそうだ。


  最悪なのは、お狩場演習だ。騎士達がお狩場で、獲物を狩る演習をするが、獲物は若い女性だ。生きて帰って来た娘たちは、狂人のようになって二度とまともな生活はできないそうだ。


  町では、若い女の子は外を歩いてはいないそうだ。騎士や衛士に目を付けられると、駐屯所に引き込まれ慰み者にされる。だから、どうしても外を歩くときは顔を汚して男の振りをするそうだ。若い女の子は、皆、髪を男の子の様に刈り上げており、パッと見ても男女の区別はつかないそうだ。


  ブリンク伯爵麾下の貴族達も劣悪だ。小ブリンク爵ともいうべき奴らで、まともな貴族は一人もいない。特に麾下貴族筆頭のボラギノ子爵は、男色のサドだ。借金の片に連れて行かれた男の子は誰も帰って来ないらしい。また、女嫌いなので、3m以内に近づいた女は問答無用で切り捨てるらしい。もう最悪だ。


  結論から言うと、戦争をしても殲滅以外の手段は無いという事だった。僕は、シェルと一緒に話を聞いていたが、シェルは途中でトイレに食べた物を戻しに行っていた。僕も気持ちが悪くなってきた。次の日、ダンヒル大佐と話をした。ブリンク伯爵領を責めることは、既に聞いていたが、一刻も早く攻めなければならない。ダンヒル大佐には、ブリンク伯爵の領民を救うための部隊として輜重いわゆる補給車の運搬をお願いしたい。当面は、荷馬車500台分の糧食を準備する。備蓄している糧食を全て拠出して貰いたいと申し入れた。輜重の準備に10日程貰いたいとの事だった。余裕を見て、出撃は、4月20日にした。シェルの誕生日が近いが、ブリンク領民の事を考えたら我慢してくれるだろう。


  侵攻開始が4月20日にすることをジェンキン宰相に伝えると、視察団は、19日にタイタン市に来ると言う。特に異論は無い。


  ダンヒル大佐やダーツ大佐それにシェル達と作戦会議をする。司法長官のブロックさんや行政長官のコリンダーツさんも同席している。勿論、この前男爵に叙爵されたばかりのケントさんもだ。


  4月13日、宣戦布告文をブリンク伯爵に送達する。送達する役目は、僕自らが行う。死者が血祭りに会う事はよくあることらしいのだ。幸いなことに、ブリンク伯爵が僕に会ったのは、少女として旅行していた時だけだ。まさか宣戦布告の使者が僕だとは絶対に思わないだろう。


  その日、僕はブリンク伯爵邸の玄関に立っていた。貴族服を着て、門番に立派な封書箱を見せたら、すぐに屋敷の中に入れられた。しかし、玄関の外で、若い執事が用件を聞いてきたので、ゴロタ公爵閣下からの手紙を差し出した。勿論、一言も口をきいていない。差出人の名前を見て、その執事は、すぐに屋敷の中に戻っていった。今度は、年配の執事さんが出てきて、僕を邸内の応接室に案内してくれた。手紙を受け取り、中を確認したいと言ったので、首を横に振って拒否した。宛名人を指さして、執事さんの顔を見た。全てを理解した執事は、お応接間から出て行った。30分後、ブリンク伯爵が応接間に入ってきた。若い屈強そうな男3人を引き連れている。一度見たことがあるが、相変わらずブクブクの小男だ。尊大に、僕の正面に深々と腰掛ける。


  「うん。」


  顎をしゃくる。手紙を出せというのだろう。自己紹介も何もない。失礼な奴だ。僕は、黙って手紙を渡す。読み始める前に、立ち上がって帰ることにした。後ろの男3人が動こうとするが、動けない。僕が『威嚇』をかけているのだ。そのまま、伯爵邸から自分一人で出て行った。ブリンク伯爵が、宣戦布告文を読んでどう思うかは関係がなかった。庭に出たら、すぐにタイタン公爵邸に戻ってしまった。侵攻は、領境の村から始める。抵抗してくる者は討つ。抵抗しなければ、当面の糧食を与えて、次の村に侵攻する。全て、僕が飛行で先行し、ゲートを繋げてから、輜重隊が渡って来る。


  シェルは、弓で魔導士を殲滅する。エーデルは前衛で、重騎士達を殲滅させる。クレスタは、輜重隊などの防護壁を作る。ビラは、上空で待機。バルトを使って情報収集。ノエルは、広域電撃魔法で攻撃。戦闘不能にするだけで良い。シズちゃんは、騎馬隊を斬撃で殲滅。馬を狙って落馬させるだけにする事。フランちゃんは、誰かが怪我をした場合の治癒を担当。絶対に先頭に立たない事。誰もけがをしなかったら、幕舎の中でケーキを食べていても良いことにした。


  イチローさんやサクラさん達は、敵の後方に回り込んでの陽動作戦及び敵の本陣に対するゲリラ攻撃をする。白薔薇会の皆さんは、残党掃討担当と、糧食の供給、飢餓者の保護をお願いしたい。フミさんとジェーンさん、ジェリーちゃん、ジルちゃん、ブリちゃんは、搬送された飢餓者の治療をお願いする。ドミノちゃんは、フミさんのお手伝いだ。


  作戦は以上だ。あ、大切な事を忘れていた。今回は、ヴァイオレットさんにも協力してもらう。ヴァイオレットさんには、全長100mの黒龍の姿で来て貰う。しかし、絶対に攻撃はしないで貰いたい。万人単位で殲滅してしまうので、威嚇配備だけにする。コマちゃん、トラちゃん、アオちゃん、ゲンちゃん、スーちゃんは元の神獣の姿で前線に配置して貰う。配置だけに専念して貰う。攻撃は絶対にしないで貰う。領地を焦土にしたくないので。


  それからのタイタン領内は大変だった。各市町村の備蓄食料の買い上げが始まったからだ。昨年の分ではなく、一昨年の分を昨年分と同じ価格で買い上げるのだ。売ろうとする農民が殺到して、喧嘩になる始末だった。あっという間に輜重500台分の糧食は集まった。この糧食を搬送する人夫も1日銀貨1枚で募集したら、農作業をほったらかして応募が殺到した。その他に、僕は南の大陸に行って、大量に麦、米、トウモロコシを購入している。タイタン領の1年分の収穫量である。勿論、1昨年の貯蔵品だ。南の大陸では、普通の買取価格つまり1昨年の農作物の価格で購入した。ちなみに、一昨年の作物の価格は、昨年のものの3分の2の価格が相場だ。すべて、イフクロークに収納した。


  いよいよ、侵攻開始前夜になった。今日、スターバ団長以下視察団が到着した。エクレア市の旧領主館に泊まって貰う。エクレア市は、この半年で見違えるほど活気のある街になった。スターバ団長たちに、1週間前、ブリンク伯爵に宣戦布告文いや降伏勧告書を送付したことを告げた。皆、吃驚していた。戦争は、奇襲が常套手段だ。事前に敵に知らせるなど聞いたことが無いそうだ。しかし、この戦争は僕の戦争だ。僕の思うとおりにやることにする。







  5月20日、いよいよ侵攻開始だ。部隊は、中央広場に整列している。500騎だ。皆、徒歩部隊だ。東の通りに輜重隊500台が整列している。1台に付き、小麦や米、トウモロコシなど200キロ位を積み、2名の人夫が付いて移動している。馬は使わない。速度は遅いが、ゲートまでの距離だ。大した距離ではない。僕は、以前、エーデル姫を警護するときに泊まったブリンク領最西端のウエストエンド村の手前にゲートを繋いだ。全ての部隊がゲートを通過するのに1時間かかった。もう少し早く通過できるはずだが、初めてゲートを通る人夫が怖がってなかなか入らなかったためだ。

親がダメなら、子もダメです。でも、広い領土は大変です。

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