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第228話 レミイさんの実家

え、レミイさんって、南の大陸出身でしょ?

(3月1日です。)

  今日、お昼前にレミイさんとエクレア市の冒険者ギルドに行ってみる。このギルドは、何度も来たことのあるギルドで、なじみ深いのだ。


  僕を覚えている職員もいるが、今は領主様なので、迂闊に口をきけないらしい。あのヘレナさんが、ハッシュ村に行ってしまったので、受付にはハルナさんという女性が立っていた。僕は、レミイさんを冒険者登録して貰うように、ハルナさんに頼んだ。必要事項を書類に書いていたが、年齢欄には生年月日は空欄で、年齢だけ25と記載していた。


  能力装置に手をかざす。針が刺さった時、少しだけ顔をしかめていた。


******************************************

【ユニーク情報】

名前:レミイ・マルタン

種族:人間

生年月日:王国歴2003年7月24日(22歳)

性別:女

父の種族:人間族

母の種族:人間族

職業:元シスター 治癒師補助 冒険者ランク F

******************************************

【能力】

レベル     3

体力     20

魔力     30

スキル    50

攻撃力    10

防御力    10

俊敏性    10

魔法適性  聖

固有スキル

なし

習得魔術 なし  

習得武技 なし

*****************************************


  うん、こんなものだろう。しかし、年齢が22歳って意外と若いのに吃驚した。でも、名前に姓が付いている。貴族出身なのだろうか?マルタン家、どこかで聞いたことがあるような気がするが。あ、思い出した。昨日、ケント市長代行から聞いた男爵家の名前だ。でも、貴族には親族が一杯いるから、きっと別人なんだろうと、スルーしてしまった僕だった。


  その日の夜、シェルにその話をしたら、それはこのままにはしておけない。きちんと調べなければならないと言われた。明日、もう一度、ケントさんに会うことになった。





  次の日、レミイさんとシェルを連れて、ボラード市役所に行った。レミイさんは、初めて行く街に目を輝かせていた。誰でも、初めて行く時と言うのは楽しいものらしい。ケント市長代行に話をしたら、驚いていたが、年齢からすると、いなくなった男爵の息子さんのお子さんの可能性が高い。何か手掛かりがないかと、皆で、男爵家の屋敷に行ってみることにした。


  男爵家の屋敷は、ガトリングが勝手に使っていたが、調度品などはそのまま残っているらしいのだ。屋敷の前に行ったら、レミイさんが目を大きくしていた。門に刻まれているマルタン家の紋章が気になるらしかった。屋敷に入ると、大広間で、天井が高かった。暖炉の上、3m位のところにマルタン家の紋章が金象嵌で盾に張られて飾られている。グリフォンに2本の剣が交差しているデザインだ。レミイさんが震えている。


  シェルがどうしたのと聞いたら、胸から金のペンダントを出してくれた。そのペンダントには、グリフォンに2本の剣が交差している紋章、マルタン男爵家の紋章が描かれていた。レミイさんは、カーマン王国の孤児院で育った。両親の顔は知らない。3歳の時、母親らしい人が死んだらしい。死ぬ前に、教会のシスターに自分の娘と父の遺品を託したらしい。この子の名前はレミイ、北の大陸から来た子だと言っていたが、当時もカーマン王国と北の大陸とは交易がなかったので、漂流者だったのかも知れない。孤児院は、ゼロス教の経営だった。シスターは、このペンダントを大切に保管してくれていた。レミイさんが12歳の時、ゼロス教の総本部から、レミイさんを迎えに来た。次期大司教フランシスカ様の世話係兼お友達になるように言われたのだ。レミイさんは、優秀な子だったらしい。12歳の時、既に中等部の勉強を終えていたそうだ。そこに目を付けられたようだ。


  それからは、僕も知っている。フランちゃんが大司教になったが、全くの天然で、そのお目付け役のフミさんと一緒に苦労していたのだ。フランちゃんが大司教を辞めたとき、本当はどこかの孤児院のシスターになろうと思っていたのだが、教会本部から、当分フランちゃんのメイドをやって貰いたいと言われて現在に至っているのだ。そのように、自分の身の上を話していたが、その間、ケント市長代行は、涙ぐみながら、レミイさんの事を見ていた。自分の父が仕えていた男爵の忘れ形見がレミイさんになる訳だ。思いもひとしおだろう。


  ケント市長代行が、レミイさんに是非合わせたい人がいると言ってきた。あのホテルのヒルトンさんだ。ヒルトンさんは、若いころ、執事見習いとしてマルタン家で働いていたことがあるらしい。ヒルトンさんなら、もっと詳しく知っているかも知れないと言うのだ。皆で、ヒルトンさんに会いに行った。ホテルは、以前とは違い、お客さんが泊まっていて、ドアマンやボーイ、メイドがきちんと働いていた。相変わらず奥様のユイさんは元気が無く、遠い目線のままだったが、それはしょうがない。娘さんが無くなったのが余程ショックだったのだろうから。ところが、そのユイさんが、レミイさんを見ると、急に立ち上がって、走ってレミイさんの所へ来た。泣きながら、レミイさんに抱きついて、


  「ミラ、ミラ。帰って来てくれたのね。もう、どこにも行かないでおくれ。」


  どうやら、レミイさんの事を、殺されたミラと言う娘さんと間違えているようだ。ヒルトンさんが、申し訳なさそうな顔をしている。なかなか子供が出来なかった二人に30を越してからやっとできた娘。大事に育てたのに、22歳の誕生日を迎える前に残忍な方法で殺されてしまうなんて。母親には耐えきれなかったのだろう。レミイさんは、全てを悟って、優しくユイさんの肩を抱いていた。そんなレミイさんを見て、ヒルトンさんが驚いた顔をしていた。


  「若奥様、若奥様ですか?」


  レミイさんが、男爵の息子さんが結婚した相手の女性と瓜二つだったらしい。レミイさんはキョトンとしている。事情を話すと、ヒルトンさんは、もう一度、男爵家の屋敷に行こうと言ってきた。見せたいものがあるらしい。皆で、もう一度、男爵家の屋敷に行ってみた。男爵家の屋敷は、3階建てで、その3階には物置に使っている部屋があるらしい。その部屋に行くと、四角い大きい物が白いシーツにくるまれている。


  そのシーツを外すと、1枚の絵だった。男爵の息子さんらしい男の人とレミイさんとそっくりな女性が並んで書かれている。この女性がレミイさんの母親なのだろう。綺麗な人だ。栗色の髪を、丸く結い上げ、輝くティアラを頭に付けている。隣の男性は、貴族服に勲章を付けている。きっと、若い時の初陣で武功を立てたのだろう。身長が、頭一つ大きく、とてもイケメンの男性だった。ヒルトンさんは、涙ぐみながら、旦那様は、ご子息の消息が分からなくなってから、ご子息を思いだす品々を全て処分されようとしたのです。でも、それではあまりにも可哀そうだったので、こうして、この部屋に集めておいたのです。この部屋は、使い勝手が悪いので、そのまま残されていたようだった。


  これで、レミイさんがこの男爵家の末裔であることが確定した。しかし、レミイさんは女性だ。このままでは、男爵家を継ぐことはできない。と言って、僕と結婚しても、それは同じだし。うん、困った。


  シェルは、レミイさんを見ていた。レミイさんは自分の両親の姿を初めて見て、涙を浮かべていた。会いたかった母親、どこの誰かも知れなかった父親、その二人がここにいる。ここで、暮らし、ここで笑い、ここで泣いたのだ。そう思うと動くことが出来なかった。レミイさんは、胸のペンダントをギュッと握りしめていた。


  その日は、一旦、タイタン市に戻ることにした。その前に、ボラード市の建設業者、まともな建設業者を紹介して貰った。ボラード建設業組合という会社だった。変な名前の会社だが、職人が集まって設立した会社なので、こんな名前になってしまったらしい。社長、この場合は組合長かも知れないが、社長はランギルさんと言う人だった。60年配の人で、人懐っこい目をしていた。僕は、男爵家の屋敷の手入れをお願いする。あの屋敷をかつてのように直して貰いたいのだ。ランギルさんの作業場には、あの屋敷の設計図が保管してあった。あの屋敷を建てたのは、先代の親方だったらしい。二つ返事で引き受けてくれた。明日、早速、見積もりに行ってみると言った。今後の細かな打ち合わせは、ケント市長代行とヒルトンさんにお願いした。


  ランギルさんが、驚くべきことを話してくれた。レミイさんの母親の実家は、今でもあるらしい。このボラード市から東に行ったタイム村で、酪農農家をしていると言うのだ。かなり大きな酪農農家で、名前はメイジ家と言うらしい。


  早速、シェルとレミイさんで行ってみることにしたら、ケント市長代行も行くと言う。断る理由もないので、承知したが、シェルの目が光っていた。僕には、何故、シェルが警戒心まる出しなのか心当たりは全くなかった。タイム村に行って、村長にメイジ家の所在を聞いた。領主から直接聞かれたのだ。村長は、恐縮しながら道案内をしてくれた。村はずれの大きな屋敷がメイジ家だった。この辺の牧場を広く経営しており、村一番の資産家らしい。


  今は、若旦那の代になって、ますます事業を広げているそうだ。バター工場でバターやチーズを作っているし、精肉工場も経営しているそうだ。いま、ちょうどその若旦那が家にいるはずだと言っていた。その間、村長はチラチラと、レミイさんの事を見ていた。しかし、領主様のお連れに対し、じっと見るのは失礼と思って我慢しているのだろう。

レミイさんの実家は裕福そうです。

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