表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
226/753

第224話 エクレア市もタイタン領になりました。

新年を迎えると、エクレア市と周辺の市町村が全て、タイタン領になります。大変です。

(1月1日です。)

  王国歴2026年になった。今日は、エクレア伯爵から領地を移譲される日だ。しかし、僕は1月5日にエクレア市行政庁に出勤するので、それまでは、正月休みを取るように職員にはl伝えている。市民にも布告していた。


  例年は、コリン・ダーツ行政庁長官やダンヒル騎士団長、ダーツ衛士隊長そのほか、行政庁と騎士団、衛士隊それに4町村の長が領主館に挨拶に来るのだが、今年は、明日2日に、行政庁の領主室で謁見するので、今日は家族でゆっくりするように申し渡している。以前は、みな昨年の内に村を出て、何日も掛けて1月1日の領主挨拶に間に合わせていたのだが、今はゲートがあるから、一瞬だ。それでも、遅れてはならないと、前日にホテルに泊まろうとする者もいるようだ。


  今年は、2日にしたが、来年からは、仕事初めの4日に、行政庁で、挨拶をすることにしよう。しかし、今の行政庁では、エクレア市の職員も来ると入りきれなくなる。これは別に大会議室や講堂を備えたイベントホールを作らなければならないかも知れない。


  領主館と王都の屋敷では聖夜の次の日から、執事やメイドさん達に暇を取らせた。1月4日から仕事を始めて貰う。イチローさんやサクラさん達には申し訳ないが、領主館や王都の屋敷の警備は外せないので、4日以降に交代で休んでもらうことにした。エーデル、クレスタ、ノエル、シズちゃん、ジェリーちゃん、ジルちゃん、ブリちゃん、ジェーンさん、ドミノちゃんは、実家に帰って貰っている。フミさんとレミイさんは孤児院があるので帰っていられない。昨日と今日は、孤児院に詰めっきりだ。


  今、領主館に居るのは、シェル、ビラ、フランちゃんの3人だ。このメンバーだと、食事当番は当然僕だった。シェルの料理は殺人的だ。ビラも料理はできるが、田舎風のただ焼いたり煮たりするだけで、はっきり言ってうまくもなんともない。フランちゃんは、治癒院の救急対応で正月もないので、料理ができる暇がない。まあ、そうでなくてもできないが。そう言えば、お茶をいれてもらった記憶もなかった。大晦日の夜は、細いパスタを茹でて、出汁のきいたつゆにつけて食べた。うん、うまい。緑色の香辛料を北の谷川から採取してきて、摺り下ろしてつゆの中に入れて食べると、大人の味だった。


  元旦は、いわゆるお雑煮だ。和の国から仕入れて来た素材を中心に焼いた餅を入れて食べた。これは美味かった。何杯でも食べれるが、後でお腹が膨れすぎて、ひどい目に会うので注意している。2日目は、牛肉を鍋で煮て、醤油だしで食べるのだが、牛鍋というらしい。これもうまかった。3日目は、もう街のレストランがやっていたので、そこを予約しておいた。3日の朝から、実家に帰っている皆を迎えに行かなければならない。実家に行くと、必ずお酒を飲まされるので、帰って来た頃には、お酒が効かない僕でさえ、気持ちが悪くなっていた。執事やメイドさん達も帰って来ていた。






-------------------------------------------------------------

(1月4日です。)

  今日は、朝から行政庁に行き、職員の皆に、年頭の挨拶をする。それが、終わると、騎士団に行き、騎士の皆に新年の抱負を述べた。それから、衛士隊に行き、同じく抱負を述べた。すべて、それぞれの長が代読してくれたので、僕は『新年、あけましておめでとうございます。』だけを言うだけですんだ。皆さん、ありがとう。皆、僕の『コミュ障』を知っているので、誰も文句は言わなかった。午後1時から、行政庁3階のベランダに、シェル、エーデル、クレスタ、ビラと共に市民に挨拶をした。中央広場が市民であふれかえっている。前の方は、ほとんどが女性だった。領主の新年の挨拶と言うより、アイドルの『顔見せ』みたいだ。僕は、ニコニコしながら手を振っているだけだ。前の女性と目があうと、その女性が泡を吹いて気を失うことがあるので、特定の人は見ないようにしている。


  この広場での挨拶は、午後に3回しなければならない。皆、東側の道路から中央広場に入り、終わったら西側道路に出て行った。1月4日と言えば、当然に寒い。気温は氷点下だろう。ベランダの下の方をシールドで覆い、温めておく。中央広場の上空600mの位置に、ミニ太陽を作り出しておいたが、風が強く、温かさも半減している。しかし、無いよりはましなようだった。今度は、防風壁を作ろうかと考えている。


  次の日は、エクレア市の行政庁に行くことになっている。もう、エクレア伯は、家族とともに王都に行ってしまった。僕は、ダーツ大佐以下衛士隊50名を引き連れて、エクレア市行政庁に赴いた。行政庁の前の広場にゲートを開き、完全装備の衛士隊が続々出て来たのを見て、行政庁の前で僕の到着を待っていたエクレア市民は何事かと目を丸くしていた。ダーツ大佐が先頭で、エクレア市行政庁に入って行く。中には、職員が整列して、僕が入って来るのを待っていた。一番奥には、ベンデナイ長官が、太った腹を突き出して立っていた。


  ダーツ大佐が、長官の前に立ち、おもむろに書類を長官に見せた。逮捕状だ。僕の署名入りだ。


  「ショー・ベンデナイ、あなたを業務上横領、収賄、市民虐待、金融法違反、児童福祉法違反及び年貢及び税金徴収法違反の罪で逮捕します。あなたの証言は、これから証拠として採用されます。また、弁護人を選任する権利及び何時でも正当な資格を持った弁護人と接見できる権利があります。」


  ベンデナイは職員全員がいる前で逮捕された。ベンデナイは、顔を真っ赤にして、


  「何の罪だ。証拠はあるのか。俺様を誰だと思っている。おい、衛士隊を呼べ。何をしている。早く衛士隊長のドレオを呼べ。」


  ベンデナイは、大きな声で叫んでいた。職員の誰かが、行政庁の外に走って出て行った。僕は、タイタン市の衛士隊本部内にある留置場の中にゲートを結び、ベンデナイをそこに蹴り飛ばして押し込み、直ぐにゲートを閉じた。しばらくすると、エクレア市の衛士隊200名程が、行政庁の中に流れ込んできた。


  衛士隊長のドレオ大佐は、僕を見てギョッとした。『これはどうしたことか。』と言う顔だ。ダーツ大佐が、


  「ドレオ大佐、ゴロタ公爵閣下に歯向かうつもりですか。」


  と、やさしく聞いた。しかし、目が殺気で溢れぎらついていた。ドレオ大佐は、顔を真っ青にして首を横に振り続けた。僕の事は、よく知っているようだ。騎士団10000人を一瞬で殲滅したことも噂で知っている。自分のこんなヘナチョコ衛士隊で敵う訳がない。ドレオ大佐は、直ぐ、衛士隊をエクレア市隊本部に戻して、僕の下命を待った。


  僕は、ドレオ大佐にベンデナイ長官の家族を全員拘束し、留置場に拘留することとともにベンデナイ長官の執務室と自宅には、許可のない者は絶対に入れないように命令した。それから、ダーツ大佐が、手はず通り、建設会社の社長4人を逮捕しに行った。僕は、行政庁に残り、皆が見えるように高いところに上がって訓示をはじめた。


  と言っても、『あけましておめでとうございます。僕はゴロタです。』とだけ言って、後は一緒に同行してきたコリン・ダーツ長官が代読したのだが。訓示内容は次の通りだ。


  ・当分の間、コリン・ダーツ長官がここで執務をとるので、行政上の遺漏のないように通常勤務をすること。


  ・今後、調査結果次第だが、解雇・減給対象職員以外のの雇用及び給与は保障する。不正の程度により死罪、奴隷落ち、罰金等の刑罰が科せられる。自分から申し出た者は、罪を減免することがある。


  ・予算執行は、当分の間、凍結とする。特に市の財産を引き出したり、移動することは厳禁とする。


  ・その他の事は、以後示達する。


  その後、出納長と一緒に市の金庫の中を確認し、出納簿の最終行に僕がサインをした。これで差し替えが出来ないはずだ。僕は、職員には内緒で行政庁の中にイチローさん達を忍ばせておいた。夜、市の財産や書類を持ち出そうとする者がいたら、殺しても良いと言っておいた。一罰百戒だ。その時は、翌日、行政庁の中に6人も死体が転がることになるとは思いもしなかった僕であった。


  ベンデナイの家族は、妻と二人の息子だった。長男は、徴税官をやっており、次男は金融業を営んでいた。妻も行政庁の特別顧問をしており、顧問料も相当の金額を貰っているみたいだった。彼らの隠し財産の在り処も全てイチローさん達が調査済みで、タイタン市の徴税官20人が、差し押さえにやって来ていた。次男のやっている金融機関も、今日から免許を取り上げとなり、取引が停止された。金庫の中の現金と全ての帳簿が差し押さえられた。社員も一人一人、徴税官に調べられ、机の中の鍵や帳簿、私物ロッカーの中も全て調査されてしまった。実は、社員の中で、1人、次男の腹心がいて、彼の自宅に次男から頼まれた隠し財産があることも調査済みで、既に別の徴税官と衛士が向かっていた。


  建設会社4社の社長も、その日の内に逮捕され、タイタン市の衛士隊留置場に入れてしまった。シズちゃんが、留置場に待機していて、留置された社長達に闇魔法『デスペル』を掛けている。これで、口裏を合わせるどころか、話し合うことも出来なくなった。すべての会社の帳簿が押収され、建設会社の業務は強制停止させられた。社長が有罪となれば、建設業免許は取り上げられ、会社は解散となってしまうが、社員たちは、バンブー建設で、面接のうえ採用されることになっていた。ただし、会計係など不正に関わっていた者は、後日、逮捕される予定だ。


  僕の施政方針は単純だ。『不正は、許さない。』だ。


  翌日、上席徴税官から、押収した財産についての概算が報告された。行政庁の金庫の中には、大金貨480枚、長官執務室の金庫の中には大金貨360枚、この360枚は簿外だった。ベンデナイの私邸からは、大金貨890枚、宝飾品多数が押収された。長男の自宅からは、大金貨120枚、次男の自宅からは大金貨390枚、次男の金融会社からは大金貨580枚、建設会社4社からは大金貨2450枚、4人の社長の自宅からは大金貨1690枚、あと隠し財産として長官の愛人宅からは大金貨780枚、金融会社社長の愛人宅や別荘からは大金貨4870枚が押収された。そのほか、宝飾品や刀剣類は鑑定するのも面倒臭い位押収された。大金貨だけで、12130枚も押収されたのだ。これは、タイタン市の今年の収入予想の12年分だ。当然、全て、没収した。


  建設会社や金融会社の社員で、不正に関与していない者については、正当な退職金が支払われるが、タイタン市の徴税官は優秀だ。不正の有無が胡麻化せられると思ったら大間違いだ。証拠などいらない。怪しいと思って追及して自供しない者は、後日、僕が直接取り調べることになっている。当然、『威嚇』を使って、嘘が言えない状況にしてからの取り調べだ。


  エクレア市行政庁は、火の消えたような静けさだった。今朝、出勤して来たら、同僚や上司6人が死体となって入口に並べられていた。ここで初めて僕公爵閣下の恐ろしさが理解できた。死んだ6人は、逮捕されたベンデナイ行政長官のお気に入りだった者達だ。いい思いもしているようだったが、実態は誰も知らなかった。首席徴税官や出納長も殺されてしまった。他の職員たちは、これから、取り調べをする予定だ。しかし、間違いなく嘘は言わないだろう。予算を少し誤魔化したのがばれたって、今の職を失うだけだ。しかし、嘘を言ったり、市の財産を盗もうとしたら処刑されるかも知れないからだ。


  行政庁の職員達は、明日は我が身かと思って、茫然となってしまっていた。


悪事、千里を走る。悪行は長続きしません。しばらく勧善懲悪が続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ