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第222話 ジェーンさん、本当はいくつですか?

  エクレア領にも、色々問題がありそうです。

(12月18日です。)

  今日の早朝も、領主館の中庭で明鏡止水流の型の稽古だ。シズちゃんは、12の型をしている。『竜のアギト』を構えると、何か恐ろしさを感じてしまう。ブリちゃんには、あの木刀の大剣を貸してあげて、『明鏡止水流大剣7つの型』をやらせている。今日で、3週間目だが、完全にマスターしたようだ。瞬動も3m程度ならできるようになっている。もうそろそろ良いかと思い、あの『魔封じの大剣』をイフクロークから出して渡す。年齢的には、まだ早いかも知れないが、大剣になれるためには必要だ。剣帯ではなく、背中に背負えるようなベルトが付いている。鞘付きのままでも、直ぐに抜けるようになっているのだ。


  見た目がとてもきれいな大剣だ。黒みがかったワイバーンの皮にプラチナの文様が入っている。僕は、柄に嵌めた魔石に魔力を注入する。魔石が赤く光ってから、光らなくなった。魔力注入完了。1回の魔法防御に、どれくらい魔力を消費するか分からないが、通常の魔導士が1週間分位使える魔力を封じたので、当分大丈夫だろう。この大剣で『明鏡止水流大剣7つの型』をやらせてみる。型の流れや、止めに問題はない。しかし、この大剣の威力に押されているのか、いつもの型の伸びが感じられない。でも、あまり口を挟むのは良くない。自分で考え、型を完成させるのだ。この大剣は標準的なサイズだ。刃体の長さが1m60センチ。それに50センチの柄が付いている。全長2m10センチの長さになる。背中に斜めに背負わなければ、絶対に携行は無理だ。ブリちゃんは、キョトンとしている。この大剣を上げると言ったら、初めて、笑顔で喜んでくれた。ブリちゃんは、自分の剣を持つのは初めてだったらしい。


  もう、それからは『やめろ』と言うまで型をし続けていた。よほど嬉しかったのだろう。次に、背中に背負って抜く練習だ。すこし、身体を前かがみになって抜く。スムーズに抜けた。次に、背中の留めをはずして、鞘ごと抜かせてみる。此方の方がスムーズだ。鞘を付けたまま、面を打たせる。剣を止めたところで、電撃が前方に走って行く。魔石が少し光った。ブリちゃん、初めての魔法体験だ。吃驚した目で大剣を見ていた。


  僕は、この剣の本当の価値と鞘に描かれた魔法陣の意味、そして柄に嵌められた魔石の効果について説明した。雷撃は、飛ばすのではなく、剣に帯びさせる程度の意識で剣を振るように教えてあげた。ブリちゃんは、もっと練習したがっていたが、学校が始まるので、諦めて、剣を自分の部屋に戻しに行った。シズちゃんが、僕にそっと教えてくれた。あの子の剣の腕は、半端ではない。自分よりも強くなると思う。


  あれで魔力を持っていたら、私たちの中で最も強い剣士になっていたかも知れない。現在のところ、剣の腕前ランキングは、エーデル、クレスタ、シズちゃん、ブリちゃんの順だ。でも14歳のブリちゃん、これからどこまで強くなることやら。








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  今日は、ジェーンさんとドミノちゃんをハッシュ村の冒険者ギルドに連れてきた。僕の婚約者となるのなら、戦いを避けて通る事は出来ない。

  その筈だ。


  きっと。


  そのためにも、正確な能力測定が必要だし、冒険者登録が必要だ。最初は、魔人族のドミノちゃんだ。ドミノちゃんは、魔人族の小人族だから、身長が120センチ位しかない。胸も全く無い。着ている服も王都で買った小学生用のものだから、どう見ても小学生だ。確か、15歳と言っていたので、冒険者登録は問題無い筈だ。ヘレナさんの所に行って、冒険者登録をする。最初に申請書を書いて貰う。ドミノちゃんは、字を書くのが苦手なようで、辿々しい書き方だった。年齢欄の所を書き直していた。最初に何て書いたのか、真っ黒に修正していて分からなかった。能力測定器に手をかざした。針が刺されたとき、顔をしかめて涙目になっていた。ドミノちゃん、我慢しようね。


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【ユニーク情報】

名前:ドミノカレン・モンド

種族:魔人族

生年月日:王国歴2016年10月10日(9歳)

性別:女

父の種族:魔人族(巨人族)

母の種族:魔人族(小人族)

職業:王族

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【能力】

レベル     2

体力     10

魔力     70

スキル    10

攻撃力    10

防御力    10

俊敏性    10

魔法適性    聖 光 魔

固有スキル

【治癒】

習得魔術  ライティング

習得武技  なし

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  え、9歳?王族?


  僕は、自分の理解を越えていたので、頭が真っ白になってしまった。これは、僕には無理だ。シェルさんに処理して貰うことにした。ドミノちゃんの冒険者登録は諦めることにした。


  次は、ジェーンさんだ。なんと、ジェーンさんは、冒険者登録をしていた。測定器にカードをかざしてみる。


******************************************

【ユニーク情報】

名前:ジェーンフェラルド・グレーテル

種族:人間族

生年月日:王国歴2002年5月8日(23歳)

性別:女

父の種族:人間族

母の種族:人間族

職業:メイド 冒険者B

******************************************

【能力】

レベル    30

体力    140

魔力    120

スキル   100

攻撃力   110

防御力    90

俊敏性   170

魔法適性    雷

固有スキル 【魅了】

習得魔術  サンダー・テンペスト 

習得武技  【居合】

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  このレベルは、常人としては高い方だ。それよりも、グレーテル家って、国王陛下に縁のある家系ですか。ジェーンさんの話では、曾祖父が、当時の国王陛下の腹違いの弟で、その後、兄が即位した際に、王籍離脱をして酪農農家をしていたそうだ。父親は今も、王都の郊外で酪農をしているが、ジェーンさんは、農家が嫌で、15歳で冒険者になったそうだ。18歳で『B』ランクになったのを契機に、冒険者を止めて、王室に就職したとのことだった。


  スキル『魅了』で、見た目年齢をコントロールできるらしい。試しに、スキルを切って貰ったら、30歳近い雰囲気が、23歳のお姉さんに変わった。不思議だ。スキルだから、僕の魔力感知でも分からなかったのだろう。それに、どうして年を取った姿になる必要があるのだろうか。


  3人で領主館に帰ることにした。もう、ドミノちゃんはモンド王国に帰そうと思っている。領主館の大広間にシェルさんをはじめ、皆が集まっていた。最初に、ドミノちゃんの問題だ。ブリちゃんは、最初からドミノちゃんがメイドになるのを反対していた。見た目が可愛らしいし、王族の一員だし、でも、年齢の事は文句が言えなかった。ブリちゃんも同じ穴のムジナだったからだ。ドミノちゃんにモンド王国に帰って貰うのは賛成だった。ドミノちゃんは、メソメソ泣き出した。シェルが、嘘泣きしたって騙されないと、厳しく言っていた。だいたい、おかしいと思ったのだ。メイドの割には、何もしないし、当然のように食事を一緒に食べてるし。


  諦めたドミノちゃんが、驚きの事実を告白した。ドミノちゃんは、モンド王国のデル・モンド国王陛下の末の弟が小人族の侍女に生ませた子供だそうだ。王族は、歴代巨人族のみという不文律があり、小人族との間に生まれた子は、15歳の成人を迎えたときに、巨人族の形質が顕れなければ、王籍を剥奪されるらしい。僅かな独立支援金のみで社会に出されても、世間知らずの母娘が生きていくのは難しいらしい。


  母親が、僕の話を聞き、デビタリア辺境伯に伝を求めていたところ、メイドの話が出たので成人メイドに成り済ますことにしたのだ。国王陛下の許可は取っているそうだ。モンド王国としても、タイタン公爵つまり僕と姻戚関係になることは決して損ではない。まして、これから交易をしようとしているカーマン王国のガーリック伯爵と縁のある僕だ。愛人でも良いから、寵愛を得たら、母親共々、王籍を剥奪しない約束があったみたいだった。


  皆、黙り込んでしまった。ジルちゃんが泣いている。自分の境遇と重ね合わせているのだろう。シェルが、口を開いた。


  「ブリちゃんは、知っていたの?」


  「国王陛下の縁者と言う事は知っていたわ。でも、詳しい事は知らない。お父様に聞いて。」


  直ぐに、シェルと一緒にモンド王国のデビタリア辺境伯に会いに行く。デビタリア辺境伯は、大筋はドミノちゃんがいった通りだと認めた。もし、このまま帰ってきたら、デビタリア家で面倒を見るつもりだったとも言ってくれた。と言うことは、王籍は、間違いなく剥奪されるのであろう。それだけ判れば、もう方針はきまった。僕達は、すぐタイタン市に戻り、不安そうなドミノちゃんに、『もう、帰らなくても良い。』と教えてあげた。それまで、シクシク泣いていたドミノちゃんがパッと顔を輝かせた。僕に抱きついてキスしようとしたが、当然、皆に阻止されていた。


  翌日、直ぐにタイタン学院付属初等部3年生に転校手続きをした。もう、その日から授業だ。先生にお願いして、今までさぼっていた分の補修をお願いした。それから家具屋さんに行って、勉強机と本棚を買った。部屋は、ブリちゃんの向かいの部屋にした。ランドセルや筆箱にお絵描セット、縦笛にハーモニカ、室内履きに屋外履き、給食の時の割烹着、運動服に運動帽、兎に角、買う物が一杯だ。


  午後は、学校までお迎えだ。高学年になればお迎えは要らないが、低学年は毎日、誰かが迎えに行かなければならない。正当な理由がなく、迎えがなければ、シェルが考えた児童虐待防止法が適用され罰金刑となってしまう。それから、行政庁に行き、ドミノちゃんの住民登録をする。これも、子供の健全育成法により義務付けられているのだ。保護者の年収と世帯人数、居室の数等を届けなければならない。その後、子供の養育状況を確認され、保護が必要となれば、親の意思に関係なく保護される。現在は、行政庁の児童福祉課が扱っているが、来年、司法庁が出来れば、そちらに移管される予定だ。


  これで、法的にドミノちゃんの保護者は、僕とシェルになった訳だった。

 ジェーンさんって、以外に若かったのですね。

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