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第20話 謁見室での拝謁

 王都編も佳境に入ってきました。エーデル姫の父君はどんな人なのか、気になります。

(10月7日です。)

  王城は、王都グレーテル市の中央に位置している。東西2キロ、南北1キロの広大な敷地で、周囲を幅100mのお堀で囲まれている。お堀の内側は高さ30m程の高さの城壁が聳え立っており、空からでもなければ攻め入るのは非常な困難を伴うことは想像に固くない。


  城内は、近衛連隊の駐屯地や練兵場、各省庁と官舎、王族の居宅と使用人の宿舎等が設けられているが、全ての建物は焼煉瓦の2階建て赤色ルーフィングに統一されており、伝統と格式を重んじての左右対称様式が採用されていた。建物の間は、良く手入れをされている樹木と植栽に囲まれており、野鳥や小動物の楽園のようだ。


  建物間の道は、白色石灰質の敷石で舗装されており、雑草が隙間から生えているのも、場内の雰囲気を壊すものではなかった。


  城門は、南北に2箇所ずつ、東西に1箇所ずつ配置されている。


  僕達が間借りしているダッシュさんの店から一番近い城門は、北第1城門だったことから、お姫様からは、そこから城内に入るように言われた。


  本日の、シェルさんの服装は、明るい紺色のベルベットのドレスに、白色レースの首の上まで飾りのあるブラウス、ドレスと同色のつば広帽子に黄色のレースのリボンを胸まで垂らして、薔薇の帽子飾りを左側に付け、白色レースの手袋と長靴下、黒色ブーツを履いて、どこから見てもお貴族様です。当然に、武器は携行せず、左手には薄水色の透けるような花柄の日傘を畳んで持っていた。


  僕は、お貴族様の子供ような服装である。昨日、急遽、王城に行くことが決まったので、慌てて準備したものであるが、黒色の絹の上着と半ズボン、黒革靴にレースのシャツとストッキングと言う姿は、何処かの王子様のようだった!今日は、右側にカバー付の『ベルの剣』のみを帯剣し、『黒の剣』は置いてきた。


  シェルさんは、不安なのか、家を出てから、ずっと右手で僕の左手を握っていたが、僕も同様に不安だったのでシェルさんの右手を握り返していた。


  王城の城門には、市中側から、橋を渡らなければ、城門の前まで行くことができないが、その橋は、馬車2台がすれ違えるほど広いものだった。


  橋は3箇所の橋脚に支えられており、各橋脚には、3灯式の街路灯と獅子の彫刻像が設置されている。3つ目の橋脚と城門の間は、馬車1台分の幅しかなく、城門から延びている太い鎖によって跳ね上げられるようになっていた。城門は樫の木と鉄の枠組みが組合わさった重厚なもので、ぴったりと閉められていたが、あまり開け閉めしないようだった。


  門番の衛士の人は、赤いダブルボタンの上着と黒色ズボン、黒のロングブーツを履き、頭には黒い毛で覆われた兜を被っている。 (絶対、何処かの国の宮殿の門番の真似をしています。)


  シェルさんは、衛士さんの近くまで行き、エーデル姫様から御招待を受けていることを告げると、門の脇の通用口から中に入れてくれた。中の衛士詰所に併設されている待合室で待つことになった。


  30分程待つと、白髪の執事さんがお迎えに来てくれた。


  「シェルブール様とゴロタ様ですね。私は、エーデル王女殿下の筆頭執事のゴーシュと申します。大変にお待たせしました。こちらにどうぞ。」


  シェルさんは簡単に会釈をしてから、表の馬車に乗り込んだ。馬車は2頭立てのキャリッジでゴーシュさんも一緒に乗り込んで来られた。王城本丸は、城内の真ん中だが北第1門から歩いても10分程だそうだ。歩いても良かったんだが、城内のしきたりと言うものがあるだろうから、黙って従うことにした。しかし、それは僕の勘違いだった。王城本丸の正面玄関は、南に面しており、僕達が乗った馬車は、西側側面をグルッと回って行かなければならなかったのである。


  正面玄関前の車止めに馬車を停め、僕から先に降りて、シェルさんをエスコートする。シェルさんの右手を取って、降りるまで握り続けるのだ。今日、シェルさんに習ったばかりだが上手くできたようだ。シェルさんは、ニコッと微笑んでくれたので、僕も嬉しくなった。


  お城は、煉瓦ではなく、白っぽい石作り5階建てで、シェルさんによると大理石と言う石で出来ているそうだ。玄関ドアは、高さが10m以上あり、僕達が近付くと、ギギーッと言う音とともに、左右両方のドアが開いた。ホテルのドアマンさんと似た格好の男の人2名でドアを開けてくれたのですが、シェルさんは軽く会釈するだけでチップは渡さなかった。


  ゴーシュさんは玄関大広間の奥の階段で3階まで上がり、エーデル姫の専用スペースへ入っていった。小さな広間の先に、白に金色の彫刻で飾られたドアをゴーシュさんが開けてくれると、メイドさん達が左右に沢山並んでいて右側先頭に、ジェーンさんが立っていた。


  客間に通されて、ソファに座り、二人で出されたお茶を飲んでいると、エーデル姫が部屋に入ってきた。僕達は、サッと立ち上がり、ソファの横で挨拶をしようとした。シェルさんが、スカートの両端を摘まもうとすると、お姫様は、両手を左右に降って、


  「挨拶は結構ですの。父上がお待ちですので、早速、お会いしていただくのです。」


  どうも、このお姫様はしゃべり方に癖があるみたいだ。お姫様とともに、2階に降りて、謁見の間の扉の所に来たところで、お姫様とは別れてしまった。脇のドアからどこかに行ってしまったのだ。扉が開かれたら、中に入るように言われ、少し待っていたら、静かに扉が開けられた。





  「シェルナブール・アスロック様、ゴーレシア・ロード・オブ・タイタン様、ご両名が参られました。」


  謁見の間の入ると、すぐに大きな声で名前を呼ばれた。しかも、つい最近知ったばかりの正式名称で。とても嫌な感じがした。僕達のことは、何から何まで知られているのではないかと思って。こういう場面では、どうして良いのか分からないので、シェルさんについていくことにしていた。


  シェルさんの右横に位置して、同じ速度で歩いてゆく。正面には、3m位高くなっているところに玉座があり、40歳位の男の人が、王冠を被り、赤いケープを纏って座っていた。その左横には、少し小さいが、同じ位に豪華な椅子があって、女の人がすわっている。銀色のドレスがキラキラとても光っていて、頭の上のティアラはまぶしくてジッと見ていられないほどだった。でも、僕は最初からやや下向きだったので、そんなに気にならないのですけど。


  また、国王陛下の座より1m位低いところには、似たような服を着ている人たちが沢山いて、その中に、フレデリックさんやエーデル姫も並んでいた。二人以外は、興味深そうに僕たちを見ている。


  その手前、僕たちの立っている床面より少し高い床が、両脇に設けられており、そこには随分と高齢の方から若い方達までいろいろな男女が立っていた。服装はいろいろだった。王国標準服の人や、軍服の人、中には真っ黒なケープを肩からかぶっている人もいた。こんなに大勢の人の前に立つなんて、僕は何をしたというのですか。


  謁見する際の、国王陛下にご挨拶する場所に来たら、シェルさんは、一旦立ち止まった。シェルさんは最敬礼のカーテシーをしていた。スカートの両脇を摘み、右足を左足の後ろに下げて、膝を少し曲げ、いつもだったら背はまっすぐと伸ばすのに、腰から30度位曲げてお辞儀をしながらのカーテシーだった。


  僕は、同じタイミングで、右手を握って、心臓の前に当て、左手は腰の後ろに回して、左足をそのまま下げ、膝を少し曲げて、腰を45度に曲げて、そのままの姿勢をとった。


  横に立っている人の中で右側の先頭に立っている人が


  「面を上げよ。」


  と言ってくれたので、手をそのままにして、顔を上げ、その場で立っていると、


  「即答を許す。前へ。」


  僕達は、手はそのままで、前方のカーペットが敷かれている場所まで進み、左膝を床に付け、15度の敬礼をしながら、国王陛下の言葉を待っていた。


  これは、昨日ジェーンさんから聞いて、何回も練習したので、できただけで、宮中の礼儀作法を僕が知っている訳ありません。


  「余がアルベルト・フォン・グレーテルである。面を上げよ。」


  僕達は、手はそのままに顔を上げた。


  「楽な姿勢で良いぞ。」


  ようやく、手を左右に降ろすことができた。でも左ひざは床に着いたままだ。


  「フレデリックから聞いておるぞ。ゴロタよ、お主は魔王と精霊の子であるらしいのう。」


  『魔王』という言葉を聞いて、その場にいた人たちに動揺が走った。


  「静まれ、この者は魔王でも何でもない。案ずることはない。いや、もしかすると世界を救ってくれる勇者なのかも知れぬぞ。」


  国王様、どこからそんな与太話を聞いてきたのです。私は、猟師の子供です。ヒッキーのコミュ障の、只今絶賛青春中の15歳の子供です。ただ、ベルが魔族だという事は本当です。


  「それとシェルいやシェルナブール姫、そなたは、遠く東のエルフの統べる王国の女王となるべきハイ・エルフと聞いたが、間違いないか。」


  「はい、国王陛下、それにつきましては少々訳がございます。」


  「よい、詳しい事情は、後でゆっくり聞くことにする。皆の者、この者達を良く覚えておくが良いぞ。必ずや我が王国の力になってくれる者達であるから。」


  これで、謁見は終わりです。見るとエーデル姫は、ワナワナと震えており、フレデリックさん、いや殿下はニヤニヤ笑っているのです。このおじさん、一度、説教をくらわしてやりたいです。できないけど。


  これから、国王陛下のごく近しい方々と、お茶会だそうです。あの、エーデルさん、今回は、僕が宮殿に住むことになるかどうかの話し合いだったのではないですか?


  それが、どうしてこんなことになってしまうのですか。私の隣の残念姫は、お茶会に出るお菓子が何かなどとジェーンさんに聞いてるし。

 国王陛下との謁見も無事終わったようです。西洋での礼儀作法って色々あってめんどいのですが、調べた限りの知識と、ゴロタ達がとるであろう態度を考慮して創作しております。本当は、違いますよというご意見があってもご容赦ください。

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