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第215話 ジルちゃん、幸せになろうね。

ゴロタをなめていると、物凄く痛い目に会います。触らぬ神にたたりなしです。

(未だ、社長室です。)

  僕は、漸く怒りが収まってきた。地上の気配では、落下しての死者はいないようだ。シェルは、社長の前に手を差し出して、上下に降っている。気が付いた社長が、ウオッカさんの借金の証文を出してきた。それを受け取ったシェルは、未だ手を出している。社長は、意味がわからないようだ。シェルがイライラして言った。


  「慰謝料。」


  裏稼業の者から慰謝料を分捕るのだ。僕は、呆れてしまったが、シェルは、さも当然のように大金貨3枚を受け取っていた。外に出るのも面倒だったので、そのままジェンキン宰相の執務室の前に転移した。用件は2つ。セントラル商会の金融業許可を取り消す事と、ウオッカさんを来年の春から、タイタン市の司法部長として派遣して貰いたい事だった。ついでにウオッカさんを男爵に昇格させてくれる様にもお願いした。


  宰相は、何も聞かずに了解してくれた。お礼に『タイタンの月』を10箱あげる事にした。最近は、常に100箱程度は、イフクロークに保管している。ジェンキン宰相は、その場でウオッカさんの転勤辞令を書いてくれた。半年以上も先の辞令など聞いた事もないし書いたこともないそうだ。陞爵の件は、次の陞爵会議で国王陛下に奏上し、裁可を貰わなければならないが、今まで拒否された事は無いので大丈夫であろうと言ってくれた。特に僕の推薦となると、反対する勇気のある貴族はこの国にはいないそうだ。


  僕達は、ウオッカさんの家に戻り、全てがうまく行った事を伝えた。借金の証文と転勤辞令を渡したら、喜ぶやら驚くやら、遂には泣き始めてしまった。陞爵の事は黙っていた。


  3人でタイタン市に帰る前に、ティファサンに寄って、ジルちゃんにハートの形の髪飾りを買ってあげた。金色の髪に合うように、緑のエメラルドと青のサファイアが嵌められている。金貨4枚だった。これから、毎月、金貨1枚がお小遣いとしてシェルから渡される。洋服もオーダーが基本だ。部屋も与えて貰える。


  そして、諦めていた高等部にも進学できるのだ。シェルから『しっかり勉強しなさい。』と言われている。


  ジルちゃんは、泣きながら僕にキスしようとしたが、頬っぺたにチュッしかさせないシェルだった。婚約前だから当然だった。その後、エーデルと一緒に採掘したダイヤの原石を売り払った。6個で、大金貨735枚になった。流石のティファサンもそれだけの現金はなかったので、僕の口座に振り込む事になった。





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  次の日、僕はシェルと一緒にガチンコさんの店にいた。エーデルとの再新婚旅行の時に、『和の国』で買った大剣に、鞘と柄を新規に作るためだ。柄には、魔石を嵌めるスロットを付けてもらうつもりだ。僕が、イフクロークから例の大剣を出して見せると、ガチンコさんは呆れていた。この剣も500年以上所在が分からなかった宝剣だそうだ。名前を『魔封じの剣』と言うらしい。ミスリルの部分に魔方陣が彫られ、その上からアダマンタイトで、くるまれているらしい。その幅広い刀身で、盾のように魔法攻撃を跳ね返すらしいのだ。しかし、全く魔力が無ければ、いくら『魔封じ』の魔方陣でも発動しない。ブリちゃんの乏しい魔力では、1回発動するかどうか。


  そこで、予め魔力を込めた魔石を嵌めておけば、魔法攻撃を受けて自動的に発動するはずだ。その代わり魔方陣までの魔力の通り道を通さなければならない。それは、ガチンコさんでも出来ない。僕の『錬成』スキルで可能となるのだ。鞘と柄のデザインを詰めて素材を渡す。ワイバーンの皮と水竜の皮だ。それに、プラチナの装飾だ。鞘も幅が広いので、プラチナで、魔方陣を型どって張り付ける。効果は、電撃だ。鞘ごと相手を打つと、電撃が相手に流れるようにするのだ。ガチンコさんは、3週間はかかると言った。代金は金貨2枚だそうだ。素材を提供しているので安くできた。


  それから、エクレア伯の領主館を訪れた。領地移譲の話合いをするためだった。もう、国王陛下の栽可は降りていた。後は、具体的に領地運営の問題点とか現在進行中の領地改革や公共工事の進捗状況を確認するだけだった。領地の移譲は、来年1月1日とした。後のことは、それぞれの市の行政長官が、詳細を詰めることとした。


  僕の施政方針は決まっている。領民の安全で安心な暮らしの維持だ。税制は、タイタン領と同様にするつもりだ。現在、エクレア市では年貢が3割5分、税金が売上げの3割で必要経費を認めていない。あと通行税に武器取引税、贅沢税は価格の5割を払うそうだ。まあ、来年になったら、各市町村の代表者を集めての説明会だ。それに、いま、雇用している役人達も、1年間は身分保障をしてあげるつもりだ。それ以降は、働き具合で決める。騎士団と衛士隊も、知識と体力、スキルで身分を決める。このことは、予め言っておかなければならない。そうしないと、脱落者が続出だ。早速、エクレア領騎士団本部に行ってみた。かなり老朽化している本部庁舎だ。団長は、50年配の方だった。僕のことは聞いているらしく、部下の将来を心配していた。騎士達の実力を見たいと言ったら、修練場に皆を集めてくれた。非番の者を除いて、200名位だった。皆、完全装備だ。


  僕は、前列10人を前に出し、抜剣させた。僕は、丸腰の貴族服だ。皆で斬りかからせる。1人でも、僕を傷つけられたら、全員の雇用を保障すると言った。剣を持たない僕を前に、誰もかかってこない。僕は、一番後ろの騎士の背後に移動したが、誰も反応出来なかった。振り向いた途端、剣が奪われていた。その剣を、イフクロークにしまってから、また元の位置に戻った。漸く、僕が只者では無いと気付いた騎士達が一斉に切りかかってきた。僕は、すべての剣を奪い取ってしまったが、何人かは、僕の貴族服を切り裂く事に成功していた。これで全員採用だ。これから、毎年、資格試験をやるので、平素から鍛えて置くようにお願いして本部を出た。シェルがニヤニヤ笑っている。ワザと切られた事がバレている。切られたところを復元で元に戻しておく。








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(9月3日です。)

  今日は、僕の20歳の誕生日だ。今、クレスタが経営している『クレスタの想い出』で、銀貨1枚以上のものを買うと、握手券が付いてくる。勿論、僕との握手だ。僕の誕生日特別イベントだそうだ。先着2000名という事で、昨夜から並んでいる子もいた。


  絶対におかしいと思う。誕生日祝いで、何故、僕が労働を強いられるのかが分からない。勿論、何も言えない僕だったけど。


  それはともかく、皆、極端に短いスカートを履いている。僕が、そういうスカートが好きだと誰かが言ったらしい。確かに、妻達も皆ミニスカだが、別に僕が望んだ訳ではない。妻や婚約者達が勝手にそんなスカートをはいているのだ。


  夕方、ようやく握手会が終わった。握手位で疲れる事は無いが、誕生日プレゼントで頂いた大量のケーキやお菓子、ぬいぐるみの措置をどうするかだ。全て孤児院に持っていくことにした。タイタン市の孤児院には、親が病気で死んだ子などがいるが、毎月お誕生会でお菓子を食べている。ここは、やはりヘンデル帝国のセントラル市だろう。この前の戦闘で、7万人以上も死んでいる。残された子供の数も半端ない筈だ。


  孤児院に行ってみて驚いた。庭に粗末なテントが張られている。孤児達が、庁舎の中に入りきれないのだ。中も酷かった。廊下や階段に寝ている子がいる。皆、お風呂に入るどころか、洗濯石も使わせて貰えず、浮浪者のようだった。


  現在、この孤児院には、450名の孤児が収容されているとの事だった。定員の3倍以上だ。最近は、少なくなったが、以前は、毎日、馬車一杯の孤児が運ばれてきたそうだ。半分以上の子達が、栄養失調で死んでいった。食べる元気も無くなっていたのだ。僕は、ある程度大きい子、概ね8歳以上の子250名を預かることにした。兄弟や友達は、年が行かなくても連れて行く。


  まず、グレーテル王国の王都の孤児院に行って、50名程預けた。未だ未だ余裕があったが、お試しで預ける。最初にお風呂に入れるそうだ。検査をしないと、院内施設には入れられないそうだ。次に、エクレア市の孤児院に行って、80人程預けた。最後にタイタン市の孤児院だ。118人だった。殆どが女の子だった。他の孤児院には、優先して男の子を入所させたのだ。男の子は、幾らでも働き口があるが、女は中々見つからない。身元もしっかりしない女の子を雇うところは少ないのだ。職が見つからない女の子達は最後は、身体を売るようになることが非常に多いそうだ。そんな事情を知っている僕は、タイタン市の孤児院でそんな女の子達を引き取ったのだ。


  ここでも、まずお風呂だった。男の子は、僕が屋外に作った簡易お風呂に入れた。お風呂が終わってから、フランちゃん達が身体検査をしてくれた。入院しなければいけない子が26人いた。緊急入院だった。怪我や病気は治せても栄養失調は治せない。入院した子達は、腕が大人の親指位の太さしか無かった。なんとか生き延びて貰いたい。僕が、領主館に帰ったのは、夜の11時だった。お菓子は、明日配ることにした。僕は、冷えたスープにパンを付けたものを食べて済ませた。




  次の日、治癒院に行ってみると、8人の子供達が短い命を終えていた。残った子の中でも、3人は明日を迎えることができないだろうと言われた。僕は、亡くなった子達の遺体を郊外の墓地に運んで火葬にした。名前が無く、発見された場所の地名と番号の子が殆どだった。この子達の死を悼む者はこの世にいない。僕は、涙が出て止まらなかった。魔物を生み出した災厄の神は、絶対に許さないと心に誓った。

準男爵は、平民が勲功を上げたときに名誉的に叙爵されるもので、厳密にいえば貴族ではなく、準貴族です。国王陛下へ直答することは許されません。謁見も、謁見の間ではなく、廊下とか中庭です。

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