第213話 エーデルの不満
エーデルは、とてもエッチです。おそらく、女性陣の中で一番だと思います。
(8月10日です。)
エーデルは、とても不満だった。ゴロタさんが、ビラとの新婚旅行から帰ってきてから、初めてゴロタさんが男性としての機能を持った事を知ったからだ。
試してみたら、今までのセレモニーなんか比べようもないわ。それなのに、7日に1度なんておかしい。ビラちゃんなんか、毎日だったそうじゃない。そうだ、今度、ゴロタさんと『和の国』に行こうっと。温泉に入って、美味しいものを食べて、そして、それから。ウフフフフ。
とても残念なエーデル奥様でした。
今、タイタン学院は夏休みだった。この休みを使って、中等部の大改修だ。まず校内に水道の配管をする。大きなタンクを屋根に設置して給水する。タンクへの給水は、用務員のおじさんが毎日、魔石を使って井戸から揚水する。トイレを使った後は、お尻を洗うのも、排泄物を流すのも水道だ。柔らかい紙を置いて、濡れたお尻を綺麗にする。地下に溜まった汚物は、やはり魔石で浄化する。トイレには、洗濯石と乾燥石も置いている。そちらを使いたい子は使っても良いのだ。
食事は、専門の職員が配膳の時に暖かくしている。掃除も用務員さんがする。基本的に、生徒が魔力を使わなくても大丈夫な施設にした。次に、ブリちゃんと一緒に王都に行き、大きな雨傘を特注した。カタツムリの模様の可愛いデザインにした。これで、みっともない格好で通学しなくても済む。まあ、雨が降っているときは、ゲートを使って行くので、もともとそんなに濡れないのだが。
ブリちゃんは、王都の明鏡止水流総本部道場に週2回通っている。人並み外れた体格と、俊敏さを持っているので、剣の筋は抜群らしい。そういえば、ブリちゃんの身長を正確に測ったら、178センチだった。初めて会った時は、もっと大きいと思っていたが、あの時はスケート靴を履いていたので、素足ではこんなものだろう。ゴロタは、今、184センチになった。最近、漸く背が伸びるのが止まって来たそうだ。それでも、この10か月で6センチ伸びている。
朝、早朝訓練をするメンバーが3人になった。僕とシズちゃんとブリちゃんだ。ブリちゃんも、明鏡止水流の型をやろうとしたが、ゆっくりとした正しい素振りをさせている。『気』を込める必要はない。正しい呼吸と姿勢、これを心がけるだけの練習だった。ブリちゃんは、『瞬動』スキルが使える。しかし、今まで誰にも習ったことがないので、やり方を知らない。というか、『瞬動』を使うチャンスが無かったのだろう。魔力量は少ないが30はあるのだから、スキルを使うこともできるだろう。
僕は、3m先の自分をイメージするところから始めさせた。身体を動かす必要はない。その場所に移動したいと思うだけだ。そのために、体内の気を感じなければならない。
体の奥底、お腹の下あたりにある気のエネルギーを感じるのだ。呼吸も大切だ。精神統一も大切だ。しかし、本当に大切なのは、そこに移動したいという気持ちだ。雑念があっては移動できない。
見ていると、魔力操作もそうだが、まだまだ『気』が足りない。まあ、その内できるはずだ。僕は、戦いの中で自然にできるようになっていた。『斬撃』もそうだ。だから、焦ることは無い。まだ、13歳なのだから。そういえば、ブリちゃんの両親には、婚約の話は保留にして貰った。いくら魔人族とは言え、13歳で婚約はできない。
でも、12歳になる前のブリちゃんにあんな事やこんな事をされたのは、僕にとっての黒歴史として秘密にするつもりだ。この秘密を知っているのは、エーデルだけなので、黙っていてくれるようにとお願いした。エーデルから、秘密にしておくための交換条件を出された。新婚旅行の再現らしい。シェルが承諾してくれたら応じる予定だ。
今日は、ブリちゃんの誕生日だ。漸く14歳になった。二人で、王都に行って、誕生日プレゼントを買ってあげた。指輪が欲しいと言ってきたが、婚約の時に買ってあげるからと言って、ブローチにしてあげた。はっきり言って、婚約はずっと後にしたい。
プラチナの白鳥の形にダイヤがはめ込んでいる。膨らみかけている胸によく似あう。金貨5枚もしたが、最近はどうも金銭感覚が麻痺してきていた。本当は、素敵な髪飾りもあったのだが、ブリちゃんは、出かけるときに角をかくすために大きな帽子を被るので、髪飾りは要らないそうだ。僕は、クルクルと丸くなっているブリちゃんの角は可愛いと思うのだが、この王国には魔人族は極端に少ないため、目立ってしまうのが嫌らしい。
その後、店長に、この前取って来た、ダイヤの原石と砂金60キロを売却した。ダイヤの原石は、大金貨120枚、砂金は大金貨36枚で買い取って貰った。最近、金相場が値上がりしているそうだ。
その日の夜、ブリちゃんの両親が、初めてタイタン市の領主館に来た。ブリちゃんの14歳の誕生日祝いのためだ。モンド市のお土産は、『白い愛人たち』と『デル・モンドの月』だった。やはり本物はちょっと味が違う。
クレスタが、一生懸命、食べ比べて味を覚えていた。シェルが、特上のワインを奮発していた。モンド王国の唯一の欠点が、糖度の高い良い葡萄が取れないことだった。そのため、ワインもアルコール度数が弱く水っぽかった。
酒に酔ったのか、デビタリア辺境伯が爆弾発言をした。ブリちゃんの魔力についてだ。ブリちゃんの魔力が少ないのは、小さい時から分かっていたらしい。特に魔法適性が全くないのが致命的だ。モンド王国でも、魔力を使わずに生きて行くのは難しい。本当なら、養子を迎えて、伯爵家を継いで貰いたいのだが、魔法適性なしの手間のかかる娘には、養子など来る訳がない。それで、2年半前、僕を見たときに、嫁に貰って貰おうと思ったのだが、直ぐにいなくなってしまったし、既に結婚していたので、諦めていたのだ。
しかし、ブリちゃんが、僕の事が忘れられないらしく、来るはずのない僕のお迎えを、ずっと待ち続けていたと言うのだ。今度生まれた腹違いの次女は、漸く目が開いたばかりだが、魔力が余りあるほど豊富で、伯爵家の跡取りとして適任と思われるとのことだった。
厄介払いではないが、『是非、ブリちゃんを貰ってくれ。』と、僕の手を取り、顔を涙と鼻水でグチュグチャにして頼まれてしまった。シェルがジト目で僕を見ている。ブリちゃんは、ジェリーちゃんと遊んでいる。ああ、僕は幼女趣味はありませんから。
ジルちゃんが、ブローチを付けたまま遊んでいるブリちゃんをジッと見ていた。それに気付いたシェルが、ブリちゃんに、買って貰ったブローチをしまっておくようにと言ってあげた。
次の日からは、エーデルとの1週間の再新婚旅行だ。それが終わったら、シェルと新婚旅行に行く事が条件だった。え、一度行ったでしょう。ああ、2週間の死のロードだ。
エーデルは『和の国』に行きたいと言っていたが、その前に、南の谷の温泉に行きたいという。まだ、温泉観光ホテルはできていないというと、そこではなく、スーちゃんと会った、あの谷だという。エーデルの考えが分かった。あの澄み切った青空の下、そして満天の星空の下、思いっきり声を上げたいのだろう。エーデルに、1日3回を限度にしようと提案したが、却下された。元気な間は続けていたいらしい。
その日の内に、最南端の谷に行った。野営セットを出してだして、セットし、それから露天風呂を作った。露天風呂に温泉を流し込み、温度調節をしたら出来上がりだ。脱衣所は無い。どこで脱いでも、誰からも見られない。それに、既にエーデルは服を脱いで風呂に入ろうとしていた。僕も、直ぐに服を脱いで、風呂に入ることにした。
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この谷には2泊した。その合間に、金剛石を探している。エーデルは服を着たらいいのに、この谷にいる間、服を着るつもりはないようだ。でも、金剛石の原石を6個も見つけている。中には、前回よりも大きいものがあった。大金貨200枚以上するだろう。服を着ていようがいまいが、その能力は変わらないようだ。
3日目は、『和の国』だ。最初にフミ山登山だ。御来光を見たが、エーデルはあまり喜ばなかった。山小屋では、ほかのお客さんがいて、なにも出来なかったからだ。あの、エーデルさん、あなたは何をしに、この国に来たのですか?
山頂から、『飛行』でトウミヤコ市まで行ってみた。前回、シェルと来た時には行かなかったので、今回が初めてだった。トウミヤコ市は、広い平野の中に忽然と現れて来た。川に東西を挟まれており、大きな港もあった。皇居は、市の真ん中にあり、僕達は、皇居の正門に近い高級ホテルに泊まった。部屋はスイート・ルームにした。7階建ての大きな石造りの建物で、スイート・ルームは最上階にあった。窓から、皇居内の宮殿の青い屋根が見えた。ホテルの夜は、今までの溜まっていたものを全て吐き出すと言うか吸い込むというか、とにかく明け方近くまでだった。途中、僕は眠ってしまったので、エーデルに怒られてしまった。
次の日は、市内観光だったが、武器屋で素晴らしい剣を見つけた。見た目はみすぼらしい大剣だ。しかし、刃体は、ミスリル銀とアダマンタイト鋼の『合わせ』で作られており、刃の部分が赤色の鋼で出来ている。
つまり、刃体の一番中にヒヒイロカネが刃になっており、その背部分をミスリル鋼で包み、その外をアダマンタイト鋼で覆っている。切れ味と柔軟性を併せ持った素晴らしい剣だ。しかもそれほど重くない。これなら、ブリちゃんでも振り回せるだろう。値段を聞くと、大金貨6枚だそうだ。この国では、大剣を使う者がいないので、買い手が付かないらしい。相場の半額以下だ。しかし、エーデルが、胸の谷間をのぞかせながら、値引き交渉をしてきた。結果、大金貨3枚になってしまった。この国の武器屋って本当に分からない。
とりあえず、武器屋の裏で試し切りだ。藁の巻いた竹を10本並べて貰う。今、買った大剣を構える。一歩踏み出すと同時に、大剣を横に払う。全ての藁竹を切り裂いてしまった。武器屋の店主は、口を大きく開けて驚いていた。
この後、ナゴヤマ市で1泊してから、もう一度、南の谷の温泉に行って、二人だけの時間を楽しんだ。
エーデルの天然さには参ってしまいます。本当の真価は戦いなのですが、宝の持ち腐れです。でも、本当は使えるのにわざと使わないゴロタは、宝の持ち腐れではありません。あ、あれってお宝ですか?




