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第212話 ブリちゃんの新しい生活

魔力ゼロでは、この世界では生きづらいようです。ブリちゃん、伯爵家の令嬢だからここまでこれたみたいです。

(7月10日です。ブリちゃん視点です。)

  ブリちゃんは、初めての異国の生活に驚きっぱなしだった。まず、季節が、真冬から真夏だ。それに魔人族がいない。街並みが綺麗で、モンド王国のお菓子が売っている。名前が少し違うのは、無視しよう。女性は、殆どの人がそれほど大きくない。でも小人族ほどでは無い。色々な食べ物がある。


  王都でないのに、大学がある。そして、何処でも自由に行けるゲートがある。シェルさんに買って貰った洋服も可愛いし、角が目立たないように大きなツバ広帽子も素敵だと思う。こんな素敵な街にゴロタさんが住んでいる。待ってて良かった。ゴロタさんに、『必ず迎えにくるから待っててくれ。』と言われた事を思い出している。本当は、自分の想像の世界だったのだが、そんなことは気にしないブリちゃんだった。


  今日は、シェルさんと一緒にハッシュ町に行く。そこに、冒険者ギルドと言うところがあるそうだ。モンド王国には、冒険者ギルドは無い。それどころか、冒険者がいない。魔物を退治するのは騎士団だし、雑用は、専門業者がやってくれるから、冒険者の必要性が無かったのである。


  領内のハッシュ町は、タイタン市の南の方だが、ゲートを使って、一瞬で移動出来るので、距離感が分からない。行って見ると、変な店もあって、子供が来る場所では無いことが直ぐに分かった。


  冒険者ギルドに行って見る。シェルさんは、皆と知り合いらしく、怖い髭の男の人とも挨拶をしている。ギルドの一番偉い人は、ヘレナさんと言う女性の人で、綺麗な人だった。挨拶をした後、冒険者登録というものをする事になった。書類に色々な事を書いたが、年齢欄になって少し考えてしまった。『16歳』と書いておいたが、ヘレナさんの片眼鏡が光っていた。怖い。


  能力測定機に手を入れた。チクリと針が刺さったが、そんなに痛くなかった。私の能力が表示された。


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【ユニーク情報】

名前:ブリッジブロック・デビタリア

種族:魔人族

生年月日:王国歴2011年8月12日(13歳)

性別:女

父の種族:魔人族

母の種族:魔人族

職業:貴族 中学2年

******************************************

【能力情報】

レベル    3

体力   110

魔力    30

スキル  140

攻撃力   10 

防御力   30

俊敏性  160

魔法適性 無し

固有スキル

【瞬動】

習得魔術 なし

習得武技 なし

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  あ、歳がバレちゃった。ゴロタさんと会った時は、まだ12歳前だったけど、見栄を張って14歳って言ったの。魔人族の成人は12歳だから大丈夫。もう、身体も大人だったし。小学校の同級生なんか、みんな結婚していたし。


  その日、シェルに連れられて、タイタン学院大学付属中等学部に編入させられたブリちゃんだった。え、早い。翌日から、通学だ。また洋服屋さんに行って、学校の制服と子供らしい服を買ってくれた。でも、胸当てを選んでいたら、シェルさんが物凄い怖い顔で私をにらんでいたわ。







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(ビラの視点です。)

  ビラは、毎日、必死だった。タイタン市への帰りの旅は、『飛行』で帰る事になったのだ。勿論、あの杖を使ってだ。ゴロタさんが、もう2本ないかと探したが、一本しか見つからなかった。不思議な木の棒だった。色は、真っ白で、軽くそして丈夫。その辺のナイフでは傷一つ付かない。ゴロタさんでさえ、やっと魔法陣を彫れたみたい。もう一本は、ノエルちゃんの分にするそうだ。


  私にとって、飛行旅行は、魔力との戦いだった。最初、200キロ位飛行したら魔力切れを起こして墜落した。ゴロタさんが、『念動』で助けてくれたが、その日は、一歩も動けなかった。『聖なる力』スキルも発動するときには魔力を使う。呪文詠唱がないだけで、根本は魔力操作だそうだ。それと無駄に『風魔法』を使いすぎてしまったようだ。ゴロタさんが、手本を見せてくれる。杖が、ほんの少し光っただけで浮き上がっていく。自分の身体は、全く光っていない。無駄な魔力は使わない。一旦浮いたら、後はちょっとずつ『風魔法』を行きたい方向に注ぐだけだ。身体は、浮かせるのではなく、杖に乗せるイメージを掴む。後は、杖が運んでくれる。正確には、杖を媒体にして魔力が運んでくれる。そのイメージを持つように言われた。確かに、サンダーボルトの雷球は、浮かせているイメージなんか無い。浮かんでいるのが普通だからだ。杖だって、浮かせているのが普通だとイメージすれば、そんなに魔力は要らないのかも知れない。それに『風魔法』は、そよ風程度でも常に吹いていればどんどん加速してしまう。


  しかし、横風で煽られれば、やはり杖にしがみ付いてしまう。今日は、200キロだけだったが、明日は300キロ位は飛びたい。いや、その倍は飛びたいと考える自分だった。私は、気付かなかったが、毎日、魔力切れを起こすほど飛行していたおかげで、総魔力量が信じられないペースで増えていたのである。


  飛び始めて1週間、モンド王国とカーマン王国の境のヒラマヤ山脈の麓に到着した。この山脈を飛び越えるのは至難の技なので、洞窟の中を進む事にした。しかし、洞窟の中と言っても、飛行訓練は欠かさない。私は、杖に跨って浮いている。その杖にロープを結えて、ゴロタさんが引っ張るのだ。股が痛くならないように、枕を杖に縛り付けている。そこに跨るのだ。本来は、杖と一体になって私も浮き上がれば痛くないのだが、今回は、杖を浮かせる事だけに集中させた。


  ゴロタさんは、小走りで進んている。暗闇の中、わずかなライティングだけで走るのだ。ゴロタさんは、小走りだが、100m10秒ペースだ。ビュンビュン進む。クレスタさんとと反対側から来た時は、10日以上かかったと言っていたが、今度は5日くらいで踏破したいと言っていた。







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(またブリちゃん視点です。)

  私は、ジェリーちゃんと一緒のクラスだった。ジェリーちゃんは、優等生だ。勉強もできれば、人気もある。私は、このような状況では、浮いた存在のような気がする。身長だって、クラスの女子と比べると30センチ位高いし、男子だって私より小さい子ばかりだ。


  私は、学校の勉強は、嫌いでは無い。モンド王国では、家庭教師に教わっていたが、中学校卒業レベルはとっくに終わっていた。でも、最も得意なのは体育、一番嫌いなのは魔法学だ。特に、魔法実践は、いつも見学だ。魔人族でも巨人種の中には、たまに魔力ゼロの子が生まれる。私がそうだった。王国での普通の生活にも、数多くの魔力が使われているのに、私はランプひとつ点けることが出来ない。


  今までは、屋敷の者が全てやってくれたから不自由しなかったが、今はそうはいかない。朝、起きて顔を洗うにもシャワー石と石鹸石が使えない。雨が降ると、シールドが使えないので、ずぶ濡れになってしまう。油を引いた紙を被って学校に行っているのは、まだ魔力をきちんと使えない小さな子と私だけだ。給食だって、皆は魔火石で温めているのに、私はジェリーちゃんにお願いしなければならない。お手洗いだって魔石で綺麗に流しているが、私は次の人にお願いするか、誰もいなければ、用務員さんにお願いしなければならない。そのため、ずっと我慢することがあった。


  段々、学校に行きたくなくなった。朝、お腹が痛くなってしまう。シェルさんに『学校を休んでも良いわよ。』と言われると、とたんにお腹の痛いのが治ってしまう。でもシェルさんのジト目がとても怖いの。


  それに、ママに会いたい。ママの事を思い出すと胸が痛くなって来る。夕方、暗くなって来た部屋に1人でいると、シクシク泣いてしまう。ジェリーちゃんが心配して部屋の様子を見に来てくれるの。魔光石に魔力を流して部屋を明るくしてくれる。それから、優しく肩を抱いてくれる。ジェリーちゃんも、ママを思い出して泣き始めた。でも、ジェリーちゃんは、ゲートを使っていつでも王都の実家に帰れる。実家から中等部にだって通おうと思えば通える。でも、私は、ゴロタさんがいなければ帰れないのだ。私は、いつまでも泣いていた。それを見ていたシェルさんが、『あなたはホームシックと登校拒否と生活不適合症の3重苦なのね。』と優しく言ってくれた。シェルさんが、3階の1番南の部屋のベランダに出て強小さな声で呟いていた。


  『イフちゃん、ゴロタ君に早く帰るように伝えて。ブリちゃんが大変なの。』


  何をしているのだろう。ゴロタさんとは何千キロも離れている。それに『イフちゃん』ってだあれ? でも、どんなに離れていても、強く念じれば、感じるかも知れないって言っていた。


  その日の夜、ゴロタさんとビラさんが領主館に帰ってきた。


  次の日、私はゴロタさんと共に、デビタリア市の領主館に居た。私の着替えや生活用品と勉強道具それにお人形さんとか熊さんとかだ。あと小人族のメイドが来てくれることになった。歳は15歳、今年の春、中学を出たばかりだそうだ。目がクリッとしたリスのような顔の可愛い子だった。


  私は、この子のことを前から知っている。それに、この子は可愛すぎるから嫌だと言ったんだけど、他に適任者は居なかったみたい。その子の名前は『ドミノちゃん』と言うの。ドミノちゃんのお給料は、デビタリア家から実家に支払われるので、シェルさんは、お小遣い程度を渡せば良いということになった。


  私とゴロタさんの婚約式は、私が16歳になってからすることにして、夕方、タイタン市へ帰る事にした。


  私は、ジェリーちゃんのように、いつでも実家に帰れるようにしてとお願いしたんだけど、『災厄の神』の問題が片付くまで、そのつもりがないゴロタさんは、何も言わずに『コミュ障』モードになってしまった。


  タイタン市の領主館に戻ってから、ジェリーちゃんにお人形さんを見せて自慢していたんだけど。ジルちゃんが、物凄く冷たい目線で、私を見ていることに気が付いたのはシェルさんだけだったみたい。


  結局、私とドミノちゃんは、同じ部屋で暮らす事になった。当分の間、学校も付き添う事になっている。


  ゴロタさんは、建設会社の人と学校の改修について話し合っていたみたい。魔力ゼロでも、快適に学校生活を送れるようにして貰いたいと。


  学校の大改修工事が始まった。まず私の通う中等部からだった。

さすが、ゴロタ。反応が早い。ところで、シェルさん、『念話』、もうすぐ使えますね。


  デビタリア市は、地球で言えば、オーストラリア南部、タイタン市はスエーデン位、緯度が離れています。最近、設定の間違いに気がつき、訂正中です。

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