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第208話 災厄の神の転生

最後の災厄の神が生誕します。お決まりの666です。

(6月6日です。)

  僕は、タイタン市で、新規に採用となった衛士隊の隊員に剣の指導をしていた。先月、ヘンデル帝国でサキュバス(インキュバス)を撃退してからは、平穏な日々が続いていた。


  ヘンデル皇帝陛下から救国の英雄として顕彰する話があったが、帝国の財政を考えると、そんな浮かれた行事などしていられない。そんな予算があるなら、少しでも帝都そして北の領土の復興を優先して貰いたいと申し出た。そればかりか、復興の経費として大金貨100枚を寄付して来たのだ。僕としては、帝国が乱れるとグレーテル王国やエルフ公国も危機に見舞われるので、速やかな復興をして貰いたいと考えたのだ。グレーテル王国からも、大金貨1000枚の見舞金が寄せられてきている。


  タイタン領徴税官から、今年第一四半期の徴税予測が報告された。各店舗及び各種申請に伴う課税が順調に推移し、大金貨340枚になるそうだ。これで、温泉街と別荘地が完成すれば、四半期毎の徴税が大金貨500枚にはなる予想だ。経費としては、一般予算と軍事予算で、四半期ごとに大金貨200枚はかかるので、学校や治癒院それに救護院等の福祉施設ももっと建設できるはずだ。


  9月には、エクレア領がタイタン領に編入されるだろうから、税収も相当の収入になるはずだ。エクレア領の農民の年貢は、今年は免除する予定だ。だが、未だ公表はしていない。細かな事務は、コリン・ダーツ行政長官に任せているが、行政長官からは、エクレア市にもゲートを作って貰いたいそうだ。現在は、アント町から馬車で3日かけてエクレア市に行っているとのことだった。








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(モンド王国での出来事です。)

  ここは、モンド王国デビタリア辺境伯領の領都デビタリア市だ。今日、慶事が一つあった。朝6時に辺境伯の愛人に1人の娘が生まれた。デビタリア辺境伯には、正妻との間には、ブリッジブックさんという令嬢がいるが、二人の間に設けた子供はたった1人で、他に子供が出来なかった。今度も男の子ではなかったが、辺境伯に二人目の子供がが生まれたという事は、ブリッジブックさんに何かあっても、家系が絶えることは無いとのでこんなめでたいことは無かった。その娘が、どのような経緯で生まれて来たかを知らない限りはの話であったが。


  これより、少し前、色欲の災厄アスモデウスは、自分の使徒が殲滅された事を知った。それも、大して戦いもせず瞬殺されたらしいことも知って、寝覚めのボンヤリした頭が一遍で覚めてしまった。あの、自分の分身と言ってもいい『サキュバス』が瞬殺されるなど信じられなかった。


  探知をしてみると、どうやら『全てを統べる者』が関わっているらしい。アスモデウスは、直ちに降臨しても良いが、実体を持たない思念体のまま戦闘になるのは避けたかった。過去3000年の間、先に降臨した災厄の神々が、実体を持たないがゆえに、圧倒的エネルギーで消滅させられていた事を知っていたのだ。


  アスモデウスは、チャンスをうかがっていた。6月6日に女児を出産予定の女の中に潜り込むのだ。その胎児は死産でなくてはならない。アスモデウスは、『依代』が欲しかったのだ。神々との取り決めで、依代の出産は6月6日午前6時と定められている。その日に出産する予定の候補者の中で、最も身分が高い家が、魔人族のデビタリア家だった。デビタリア家の15歳の元メイドが、今日、辺境伯邸内で出産するのだ。アスモデウスは、元メイドの胎内の娘の命を奪い、憑依して魔人族デビタリア辺境伯の次女として生まれ落ちた。生まれ落ちた時、アスモデウスは、毛むくじゃらの獣の子のようだったが、直ぐに毛が抜け落ち、色白の輝くような娘になってうぶ声を上げた。普通に赤ん坊の声で泣いたが、目だけは大きく見開き、その真っ黒な瞳は人外の輝きを秘めていた。


  生まれ落ちた姿を知る産婆は、直ぐに不慮の事故で死ぬ事になっている。介助していたメイドは、使徒の『サキュバス』に殺されて成り代わられる運命であった。母親のノラは、元メイドであったが、懐妊したと判明した段階で、領主館の中で、1室を与えられ、メイド2人が付けられた。メイド達からは、『ノラ様』と様付けで呼ばれるようになったが、実権は正室が握っており、単に、領主の次女の母親であるという立場以外には何も無い女だった。


  ノラは出産するときに、物凄い違和感があった。通常の陣痛とは違う。すごく痛く苦しいと聞いていたのに、全く痛くないのだ。初産だったのに、犬の子を産むみたいに軽い出産だった。


  朝、5時過ぎに陣痛が始まり、ちょうど6時にはうぶ声が聞こえた。可愛らしい女の子だった。ノラは、この娘のためなら命など惜しくないと思うのであった。通常の母親の愛情とは異なる感情であることを、ノラは知らなかった。






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(タイタン市に戻ります。)

  午後、僕にブラックさんの『念話』が届いた。『淫欲の神アスモデウス』が、人の子として生まれたという内容だった。それ以外は、何も分からないらしい。僕は、タイタン市で、今日、出産した子がいるかどうか調べたが、夕方、出産予定の者はいるが、既に出産した者はいないとの事だった。全世界を調べることは、不可能なので、相手の出方を待つことにした。その内、情報が寄せられるはずだ。ただ、手遅れにならないように、常に注意しなければならない。今日と言う日、『6月6日』は記憶にとどめておくことにしよう。グレーテル帝国での『サキュバス』でさえ、あの被害だったのだ。その根源となる『災厄の神』となると、どのような被害規模になるのか想像もつかない。しかし、現在のところ、打つ手がないので、直ちに何かすることは無かった。その内、全てが判明する筈だった。知るべき時には知り、戦うべき時には戦う。今までもそうであったように、これからもそうであろうと考えるしかなかった。


  僕は、シェルにブラックさんからの報せを教えた。シェルも、今のところ何もできないのだから、様子を見ることに賛成だった。今日、生まれたという事は、どんなに考えても、あと10年は何も無いだろうと考えたのである。まあ、10歳の子供が何かできるとも思わないが、僕の例もある。油断することは危険であろうと思うのであった。


  その日の夜、僕は夢を見た。久しぶりの啓示の夢だった。


  『全能の王にして世界を救う者よ。救いの声を聞け。遠き南を目指せ。』


  『全能の王にして世界を救う者よ。災厄は生まれた。遠き南を目指せ。』


  やはり、僕の進むべき道は示された。南の国、一番遠い国は、魔人の国、モンド王国だ。その国で災厄が生まれたのだろうか。もしかすると、もう少し手前のカーマン王国かも知れない。単に南と言っても、範囲が広すぎる。そういえば、ビラの20歳の誕生日がもうすぐだ。誕生日までは、旅に出ないようにしようと思っている。


  ビラは、現在、王立魔法学院大学で研究生をしている。今年の春に、大学は卒業となったが、そのまま在籍し召喚魔法の研究をしているのだ。ビラ程の召喚能力を持っている者がいないので、召喚魔法の主任教授扱いだ。学院の中等部から大学まで教鞭をとるとともに、タイタン大学での魔法学の講師もしている。


  ノエルは、聖魔法の主任研究員をしているが、来年、正式に主任教授就任が決まっている。通常は、助教授から教授そして主任教授とステップアップしていくのだが、ノエルとビラは、その能力ゆえにかなりの飛び級で昇進していく。王国魔導士協会としても、ノエルとビラ程の魔導士をみすみす他国に就職させるなどあってはならないので、破格の待遇で大学に留めているのだ。


  今日は、ちょっと早いが、王都までビラと誕生日プレゼントの買い物に出かけることにした。ビラは、特に欲しいものは無いが、お願いがあるという。聞いてみると、本当の夫婦になりたいと言うのだ。


  僕の能力が可能になったことを知っているらしい。今、僕が置かれている状況から、もしかすると死んでしまうかも知れないので、父親になることはできないと説明したが、子供ができなくてもいいと言ってくれた。このことは、エーデルもノエルも知っていて、皆で話し合って決めたらしい。


  皆さん、何を話し合っているのですか。僕は、暫く、時間をくれるようにお願いした。確かにクレスタだけと言うのも不公平な気がする。シェルと相談して決めよう。とりあえず、ビラと一緒にいつもの店に行き、ルビーを散りばめた蝶の形の髪飾りを買ってあげた。ビラの銀色の髪に赤いルビーがとても良く似合っていた。


  王都に来たついでに、ギルドでビラの能力を測定することにした。相変わらず、ギルドは混んでいた。ポーターも大勢だったし、昼間だと言うのに飲んだくれている冒険者も多かった。きっと景気が良いのだろう。ビラが能力測定機にカードをかざした。


**************************************

【ユニーク情報】

名前:ビラサンカ

種族:人間族

生年月日:王国歴2005年6月18日(19歳)

性別:女

父の種族:人間族

母の種族:人間族

職業:無職 冒険者:Aランク

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【能力情報】

レベル   53( 22UP)

体力   330(210UP)

魔力   500(260UP)

スキル  120( 50UP)

攻撃力  150( 60UP)

防御力  180(100UP)

俊敏性  300(240UP)

魔法適性 『聖』 『雷』

固有スキル

【魔獣使い】【魔獣召喚】

習得魔術 ヒール

     サンダー・ボルト

     テイム

習得武技 なし

************************************************


  いつもながら、皆のレベルアップは、半端ない。ビラも遂に『A』ランクだ。


  それよりも、固有スキルの『魔獣召喚』が凄い。今までは、召喚魔法を使っていたので、魔法陣と呪文詠唱が必要だったが、このスキルでは、イメージだけで魔獣を召喚できるのだろう。まあ、これ以上、魔獣が増えても困ってしまうが、スキルとして使えることはメリットが多いだろう。

ビラも20歳です。結婚適齢期を過ぎてしまいます。

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