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第207話 インキュバス討伐

蒼き盾を装備してしまったゴロタ。でも、特別の盾ではなく、防御システムだったようです。これって、異世界のもの?

(5月25日です。)

  帝国では、早い段階で北方の辺境地域で異変が発生している事に気がついていた。定期の駅馬車が途絶えているのだ。北方から帝都に向かっている筈が、いつまでも帝都に着かないので不審に思って帝都の衛士隊に相談に来る者が急増していた。しかし、その時、既に2市5村が、全滅しているなど誰も思いもしなかった。第3代皇帝スープラカエザー・ザウツブルコ・ヘンデル18世は、調査隊10名を北方に派遣した。毎日、伝書鳩を使って知らせを寄越すようにしていたが、3日前から連絡が途絶えていた。


  今日、驚くべき知らせがあった。帝都から北に2つ目の村から逃げて来た男が、帝都に辿り着いたのだ。魔物のために、村が全滅したそうだ。男は、たまたま夜遅く村に帰って来たので、被害を免れたが、3mもある亜人が女を食い散らかしていた。男達は、死体になって転がっていた。その魔物が、不気味な形をしている男性のシンボルで女を挿し抜き、胸から先っぽが飛び出しているのに、女は愉悦の表情のまま死んでいったそうだ。マーキン帝国魔導士長が、その魔物に心当たりがあった。


  「陛下、その魔物は、『インキュバス』であると思われます。」


  「その『インキュバス』とは、どのような魔物じゃ?」


  「淫魔『サキュバス』が、男を喰らい尽すと、変化するようですが、誰も見たことは無く、伝承として言われているだけです。『インキュバス』は、男は、絶望で発狂しさせ、女は死ぬまで犯し続けるそうですが、古のわが国に現れたときは、恐るべきことに国内でわずかな者のみが生き残っただけだったそうです。」


  「今のわが軍および魔導士協会の者達では、勝てぬかと。」


  「はい、帝国軍の総力を挙げても勝てぬかと。勝てるとしたら、あのゴロタ殿のみかも知れませぬ。」


  「パトロン幕僚長、そちの意見は、どうじゃ。」


  「わが軍は、人間相手の軍隊です。人外の魔物相手となると、無力と思われます。」


  「プーチキン宰相、ゴロタ殿に連絡は取れぬか。」


  「はい、情報機関からの情報によると、グレーテル王国の王都まで行くと、ゴロタ殿の領地まで一瞬で行ける門があるそうです。グレーテル王国まで、竜騎士に行ってもらい、救援を頼むのがよろしいかと。」


  「なに、一瞬で移動できるのか。マーキン魔導士長、そのような魔法があるのか。」


  「古の失われた魔法に、そのような魔法があると聞いておりますが、我々の魔力と魔法知識では不可能かと。」


  「うーむ、誠にチートな奴じゃ。パトロン幕僚長、直ちに勅使を出立させよ。帝国の危機じゃ。」


  帝国は、直ちに竜騎士をグレーテル王国へ向けて飛ばした。しかし、この時、危機がもう目前に迫っていることを、皇帝はじめ誰も知らなかったのである。







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(5月28日のお昼前です。)

  僕は、領主館で、シェルからタイタン市の財政について聞いていた。細かな数字を言われても良く分からなかったが、現在のところ、ギルドやホテルの収益よりも持ち出しが多いそうだ。年貢と税金の徴収が始まれば、劇的に好転するらしい。とりあえず、温泉街や別荘地の分譲代がかなりの額になっているので、5年間位は税収ゼロでもやって行けるそうだ。


  では、問題は無いんじゃないかと思ったが、お金のことになると異様に細かいシェルの話をちゃんと聞かないと、あとで正座させられるので、おとなしく聞いていた。その時、王都屋敷の執事長のセビリアさんが、執務室に入ってきて、火急の用事があって面会したい騎士の方が来ているという。


  会ってみると、帝国の竜騎士さんだった。皇帝陛下の勅書を持参していた。内容を呼んで驚いた。あの帝国が危ない。それほど帝国には世話になっていないが、皇帝陛下や宰相閣下らも顔なじみだ。あと、あの大年増のジョセフィーネ姫も危ないだろう。しかし、敵は淫魔の『インキュバス』だ。シェル達女性陣を連れて行くわけには行かない。


  僕は、シェルに事情を話してから完全装備に着替えて、ヘンデル帝国の帝都、しかも帝城の謁見の間に『空間転移』した。たずねて来た竜騎士さんも一緒に行くかと聞いたら、グレーテル市郊外にワイバーンを置いてきているので、一旦、グレーテル市に戻るといっていたので、僕一人だけで転移することにした。


  謁見の間には、誰もいなかった。僕は、帝城の中にあるプーチキン宰相の執務室に行ってみると、中にはプーチキン宰相の他にマーキン魔導士長もいた。ドアを開けて入っていった僕に、吃驚していたが、そういえば以前会った時はまだ10歳位の女の子のような僕だったはずだ。今は身長180センチ以上あるだろうし、細身の自称イケメンで、あの時とは比べようもない高級そうな鎧を身に纏っているので、直ぐに気が付かなくても無理がない。それよりも、僕が突然に現れたことに一番吃驚していたようだった。


  宰相は、僕に現在の状況を話してくれた。さらに帝都に『インキュバス』が侵入したらしいと言っていた。今、帝都中の女性が、淫乱女になってしまったように男を求め続けているとのことだった。求めに応じられず困ってしまった男どもが、女を縛り、部屋に閉じ込めているそうだ。今、防衛線を市内に張っているが、既に3次防衛線まで破られているとの事だった。


  皇帝陛下は、皇后陛下とジョセフィーネ姫をベッドに抑えつけるのに手一杯で、軍の指揮を取れないらしい。後宮の女官達も色狂いになってしまい、後宮の中に閉じ込めているとのことだった。


  僕は、皇帝陛下の居室にお邪魔した。そこには、髪を振り乱し卑猥な言葉を吐き続けている皇后陛下とジョセフィーネ姫がいた。皇帝陛下は、半狂乱の様になって、縛られている二人を抑えつけたり、説得したりしていた。僕は、部屋の中に、呪いのような気配を感じた。精神支配をしている強い意思だ。僕は部屋中に『聖なるシールド』を張り巡らした。室内に残留している邪悪な思念も、『聖なる光』で照らして消失させる。同時に皇后陛下とジョセフィーネ姫は、目がトロンとなり、そのまま眠ってしまった。きっと、今まで淫夢に苛まされていたのだろう。


  突然、眠ってしまった二人に驚いた皇帝陛下は、背後に僕がいるのに気が付いて、本当に吃驚した顔をしていた。僕は、まだ、一人では普通に話すことができないので、イフちゃんを出現させ、思っていることを皇帝陛下に伝えてもらった。とりあえず、現状把握と戦闘方針の検討だ。その前に、皇后陛下とジョセフィーネ姫の頭に手の平を当て、心の中の淫らな状態を消滅させておく。まあ『威嚇』の応用版だ。そういえば、ジョセフィーネ姫は、正常な時も淫らだったような気がするが、今は放っておこう。


  皇帝陛下と共に、宰相の執務室に『空間転移』した。突然現れた僕達に宰相は吃驚していたが、マーキン魔導士長は、涙を流し始めた。今まで、伝承では知っていたが、現実に見る大魔法に感激してしまったのだ。そんなことは放っておいて、早速作戦会議をした。既に、帝国の北方にある主だった都市や村は全滅したらしい。死者は、4万人以上だ。生き残っているのは、老人と幼児だけらしい。帝都も王城から北側の殆どが全滅している。抗戦しようと派遣した帝国軍と帝国魔導士協会の損害は、25000人程だ。


  戦っている最中に、精神支配を受けた女兵士達が男に襲いかかり、求めて来るのだ。これに応じないと大切なところをを食いちぎったり、もぎ取っているらしい。その内、『インキュバス』が現れると、今度は、男たちが狂ったように女を犯し始め、絶頂とともに死んでしまうとの事だった。最後に、女達はインキュバスに刺しぬかれて死んでしまうのだ。僕は、話を聞くだけで、吐き気がしてきた。これが、災厄の神の使徒の力なのか。非人道的で、絶対に許されない。僕は、王城の北側の塔の上にある、展望台に行った。後から、皇帝陛下達が付いて来る。遠見でインキュバスを見つけた。そいつは、今まさに女兵士を犯そうとしていた。先がとがり、ねじり曲がったヤギの角のようなそれを女めがけて刺しこもうとしていた。。女兵士は、それを自らの物に入れようとしていたが、根元まで入ったと思った時、尖った先端が胸から飛び出ていた。先端からは、白濁したものがドクンドクンと噴出していた。女兵士は恍惚の顔を浮かべて死んでいった。


  僕は、吐き気を覚えた。いままで、色々な殺され方を見てきたが、このような殺され方は初めて見た。あり得ない。人間の尊厳をないがしろにする殺し方だ。僕は、怒りを覚えた。力が迸って来た。大きな火球が、帝都の上空に現れた。イフちゃんが注意をする。


  「僕よ、帝都を消滅させるのか。」


  イフちゃんの声にハッと気が付いた僕は、上空の火球を見た。ギラギラと光輝いている。真下の建物が燃え上がっている。6000度の高熱に晒されているので、当然だろう。僕は、直ぐに火球のエネルギーを取り込んで、昇華した。後ろにいた皇帝陛下以下全員が、震えていた。インキュバスが、僕の存在に気が付いたようだ。先ほどの高熱で、頭の一部が焼けただれているが、直ぐに再生していた。僕は、『遠話』機能で、前線の兵士達に呼びかけた。


  『早く後退してください。そこにいては危険です。僕は、僕です。』


  帝国兵士は、僕の名前を知っていた。3年前、帝国軍4000名を一瞬で殲滅した恐ろしい者の名前だ。忘れる訳が無い。今の大火球もきっと僕の仕業だと納得したようだ。数十名の兵士が巻き込まれて焼死してしまっていた。しかし、インキュバスに殺されるより、よほど人間らしい死に方だ。兵士達は、直ちに後退を始めた。


  僕は、インキュバスの目の前に『空間転移』した。インキュバスは、突然現れたmhに恐怖を覚えた。


  『違う、こいつは危ない奴だ。逃げなくては。』


  『インキュバス』は、『サキュバス』に変身して、僕を色仕掛けで無力化しようとした。淫夢を見せようとしたが、『抑制』を働かせている僕には効果が無かった。思念を送り込もうとしたが、聖なるシールドいや違う、『蒼い盾』により跳ね返された。この時、サキュバスは、自分の相手が何者であるかを知ったようだった。

サキュバスに夢を見せられて死んでいくのって、男にとって至福なのかもしれませんが、やはり嫌です。

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