第203話 川沿いの温泉街
南の温泉を有効活用することになりました。
(4月20日です。)
フライス村の冒険者ギルドが出来た。一応、ハッシュ町のギルドの出張所扱いだが、取り扱う依頼や通信手段等どれも引けを取らない。簡易旅館や、長期居住のための貸家も準備できている。村は、歓迎ムード一色だ。何人の冒険者が来るのか分からないが、王都からも大勢来ている。昨日は、村内の宿泊施設は満員で、村外に野営する冒険者もいるほどだった。王都からは、タイタン市までゲートで行き、タイタン市から、領内無料ゲートでフライス村まで来るのだ。今、ギルドでは、ダンジョン入場券を販売している。整理番号付きだ。その番号順にダンジョンに入ることが出来る。新ダンジョンは、魔物も沸きやすいし、レア物のドロップも多いので、誰でも先に入りたがる。それでトラブル防止のための整理番号だ。
ダンジョンの入り口までは、森を切り開き、道路が出来上がっている。ダンジョンの入り口は、封印されたままだ。クレスタとエーデルが、整理番号を確認している。僕が、土魔法で作った封印の岩を破砕して開通させた。細かくなった岩を念動で取り除いた。それだけでも、驚いている冒険者達だったが、1階層は、サービスでライティングを灯しているので、屋外のように明るくなっている事にも驚いていた。
このダンジョンは、1階層のゴブリンでさえ、上位個体だ。『D』ランクのパーティーでは、すぐ全滅するだろう。その点は、ギルドでチェックしていたのだが、ポーターまでは、制限できないので、かなり危ないパーティーもあるようだった。今日は、白薔薇会のメンバーもギルド支部の手伝いをしているので、大きなトラブルは無いはずだ。
ギルドの中に、治癒院の臨時出張所を作っている。ポーション程度では治らない重傷者の手当をするためだ。今日は、フランちゃんが担当している。入場がひと段落すると、ダンジョン入り口の監視所の係員に任せて、タイタン市に戻る事にした。僕は、シェルと一緒に王都のバンブーさんに会いに行った。領内南の川、サウス・タイタンリバーの河原に面して建てる観光温泉ホテルの詳細打ち合わせだ。現場測量と道路整備、それに建設職人の宿舎はできている。それに、基本的な設計は既に完成していた。道路は、クレスタと共に以前作ったものを延伸している。馬車2台がすれ違えるだけの幅にした。地面より少し高くし、石畳風にスリットを入れて固めていった。
ホテルは、地上3階建ての煉瓦作りで、客室は、全室、川に面している。バス、トイレ付きで、スイートルームを最上階に作るほか、屋上階に露天風呂を作りたいなど、盛り沢山の要望を伝えた。それから、渓流釣りの楽しめる場所と、向こう岸に渡る吊り橋を作ることにした。費用は、大金貨120枚かかるが、直ぐに元が取れる気がする。全部で61室、稼働率60%で36室、1室銀貨5枚の売り上げで、1日金貨1枚半の売り上げだ。経費を半分とすると、1年で大金貨33枚の利益が出る計算だ。その他に、お土産に渓流釣り、バーベキューと盛り沢山だ。3年で、元を取る予定だが、もっと早くなるかも知れない。それから、森の中に別荘地を分譲する予定だ。各区画は、すべて温泉付きで、バンブー建設の建築条件付きにした。
バンブー建設は、王都内のいくつかの建設会社を合併吸収して、さらに大きくなったみたいで、今度、帝国まで職人を募集しに行くそうだ。
その後、王城に行き、ジェンキン宰相と王室御用地の建設について打ち合わせをした。川沿いの、西側に上ったところを御用邸用地にするが、森に囲まれた場所に建設することが決まっている。本館の他に、騎士団の宿泊施設と管理棟を作らなければならない。それと、国王陛下が滞在するときだけ、ハッシュ町へのゲートを開いて貰いたいそうだ。国王陛下、ハッシュ町へ何の用があるんですか?
建設会社は、入札となるが、今のところ、札を入れているのはバンブー建設JVだけだそうだ。僕に対し、地代として、年に大金貨36枚が下賜されるそうだ。有り難く頂戴する事にした。
もう少しで、シェルの誕生日だ。欲しいものを聞いたら、髪飾りが欲しいと言った。ティファサンに行って、髪飾りを探したが、あまり気に入ったものが無いみたいだった。デザイナーが、シェルの好みを聞きながら、オリジナル・デザインの髪飾りを作ることにした。金貨8枚もしたが、最近は、あまり気にならなくなった。慣れって怖い。
次の日、シェルと一緒にサウス・タイタンリバーで、釣りをすることにした。斜面の上では、職人がホテルの基礎を作っている。土魔法使いが、図面通りに、地面を盛り上げ、石よりも固くしているのだが、直ぐに魔力切れを起こしてしまうようで、作業は遅い。しかし、僕達はそんなことには構わずに、釣りを楽しむ。川の流れは、雪解け水で増水し、激流となっているが、僕が釣り用に、点在させて沈めておいた大きな岩の陰を狙って仕掛けを落とす。直ぐにヒットした。竿が大きくしなっていたが、念動で釣り上げた。狡いようだが、竿を折るよりもましだ。釣れたのは、大きなヤマメだ。
次に、シェルの番だ。餌を付けてあげる。シェルは『誘導射撃』スキルで、狙ったポイントに正確に仕掛けを落とす。とても、狡いと思う。これも、直ぐにヒットした。キャアキャア騒ぐシェルを手伝って、獲物を引き上げる。最後は『念動』で手元に持ってくる。2時間位で、50匹ほど釣ったので、帰ることにした。シェルが、歩いて帰ると言う。何かと思ったら、造成した道路の両側に、花の種を撒いていく。花の名前は知らないが、赤や黄色の花らしい。森を抜けたら、田園地帯だ。今は、植え付けの真っ最中だ。フライス村まで、この道は続いている。ハナミズキの並木通りにするため、苗木を植えている。
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(4月23日です。)
今日は、シェルの誕生日だ。シェルと一緒に、ティファサンに髪飾りを取りに行く。早速付けてみると、ダイヤの輝きが紫色と重なって、とても綺麗だった。その後、ギルドに行って、シェルの能力を測定してみる。この前のヒュドラ戦で、かなり上がっているはずだ。
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【ユニーク情報】
名前:シェルナブール・アスコット・タイタン
種族:ハイ・エルフ
生年月日:王国歴2005年4月23日(20歳)
性別:女
父の種族:エルフ族
母の種族:ハイ・エルフ族
職業:王族 冒険者A
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【能力】
レベル 60( 7UP)
体力 700(150UP)
魔力 400( 80UP)
スキル 390( 40UP)
攻撃力 660(160UP)
防御力 420(120UP)
俊敏性 400( 40UP)
魔法適性 風
固有スキル
【治癒】【能力強化】【遠距離射撃】【誘導射撃】
習得魔術 ウインド・カッター
習得武技 【連射】【威射】
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全ての能力が、ほぼ上がっている。常人では、到達できないレベルだろう。一体、何故上がり続けるのだろう。僕には、分からない謎だった。
今日は、バンブーさんと会う事になっている。至急の話があると言う事だ。バンブー建設会社は、この辺りでも一番大きなビルだ。遠くからでも目立っている。社長室に行くと、ギルドマスターのフレデリック殿下がいた。2人でお茶を飲んでいた。バンブーさんが、僕に温泉街と別荘の事について話し始めた。驚いた事に、両方ともに、売り出し前に完売したそうだ。僕は、『え!』と思った。売り出してもいないのに、何故、完売するのか不思議だった。温泉街は、主に大商人が買っている。必ず儲かると踏んだのだろう。王都から、所用0分の立地、自然に囲まれたロケーション、豊富な湯量の温泉、売れない訳がない。あのドエスさんも買っている。少し怪しい気がするが、そう言う旅館も必要なんだろう。
それよりも、別荘地だ。今回、100戸を売り出したが、貴族と大商人の争奪戦になったようだ。国王陛下が、西側に御用邸を作る話は、極秘裏のはずが、すべて王宮内に筒抜けだった。誰もが、そのご用地のそばに屋敷を持ちたいと思ったが、僕の領地だけに無理も言えず、チャンスを狙っていたらしい。今回、バンブー建設で別荘分譲をするらしいと言う噂が立って、直ぐ予定数が先約済みになったらしい。そこで、予約に漏れたフレデリック殿下が、バンブーさんに、何とかしろとねじ込んできたらしい。未だ誰も現地を見ていないので、これから区割りをする予定だ。しょうがないので、御用邸を少し西にずらし、フレデリック殿下の別荘用地を、御用邸と温泉街の間に入れ込んだ。
フレデリック殿下は、大金貨20枚を机の上に載せて、これで買えるだけの敷地をくれと言ってきた。1平方m銀貨2枚で売り出す予定だったので、本来なら10000平方mだが、フレデリック殿下にはお世話になっているので、その倍の広さを分譲する事にした。御用邸は、測量も終わり設計段階に入っているが、再測量と設計変更となってしまった。まあ、フレデリック殿下の我儘には慣れているから平気だった。
それから、お貴族様達の区割りをしたが、フレデリック殿下の指示の通りにした。どうやらジェンキン宰相と打ち合わせ済みらしい。フレデリック殿下から、これから貴族どもの陳情が殺到するから覚悟しておけと、とても嫌な笑い顔をされて、顔が引きつる僕だった。
南の温泉街と別荘、そして御用邸どこかで見た景色です。




