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第202話 南の森のその先へ

この世界では、森は世界の果てです。魔物の巣くう森を通り抜ける人は、冒険者以外はいないようだ。

(2月1日です。)

  僕は最近、エーデルと一緒に南の森へよく出掛けている。シェル達は、自分の仕事が忙しいようだし、ノエル達は、学業があるので、ギルドマスターのエーデルが一番暇そうだからだ。ギルドの細かな事務は、ヘレナさんが全てやってくれるし、受付けと応対は、テルとマリちゃんがやってくれている。最初はモタモタしていたが、最近は落ち着いてテキパキ処理している。白薔薇会のメンバーも、半数はギルドの手伝いをしている。残りの半数は、ダンジョンに潜っているが、最近は南のダンジョンまで足を伸ばしているようだ。ギルドに持ち込むドロップ品が、レア物に変わって来ているので、他の冒険者達から注目されている。


  エーデルは、最近、充実した毎日を過ごしていると感じている。僕との狩りも楽しいが、お昼に2人っきりで食べるお弁当、それが終わってからの2人だけの時間、まるで、新婚旅行の時のようだそうだ。つい、例の営みを要求してくるのだが、もちろん、明るいうちは嫌なので断っている。森の中は、宝の山だった。貴重な薬草も豊富だが、最近は山菜が取れ始めた。2月だと言うのに、雪の中から新芽が顔を出している。魔物も、トロール程度なので、瞬殺で処理している。



  今日は、大きな鹿を仕留めた。この森では、剣は必要ない。指鉄砲と解体用のナイフだけで十分だ。エーデルも『百刺しのレイピア』を持ってきているが、抜いたことが無い。エーデルも最近では指鉄砲が使えるので、それだけしか使わないのだ。今日は、森の最南端に来ている。森が終わると、なだらかな下り斜面が、川まで続いている。南向きの斜面なので、雪はすでに溶けていて、山菜が、ビッシリと新芽を出している。野鳥も、新芽を啄みに来ているが、野鳥は小さすぎて食べるところが少ないので、放って置いた。


  川縁に来てみたら、結構広い川だった。流れが、それ程早く無いのは、マッキンロウ山脈の雪解け水がまだ流れ込んでいないからだろう。川の向こう岸は何も居ない。川原の側で、お昼にした。今日は、趣向を凝らして露天風呂風のお風呂を作ることにした。川の水を引き込み、即席の岩風呂に水を貯める。魔石に力を流して、入水場所に沈める。適温になるように入水量を調整して出来上がりだ。エーデルと一緒にお風呂に入って、マッキンロウ山脈の大雪渓を見ながらのんびりする。



  お風呂から上がって、簡易露天風呂を壊そうとしたら、エーデルがそのままにしてくれと頼んで来た。よっぽど、このお風呂が気にいったようだ。折角なので、探知で温泉を探したら、至る所で熱を感じた。さっき作った簡易風呂に一番近い場所に温泉を掘ってみた。結構熱い源泉だったので、流量を少しにして適温になるように調整した。この斜面を利用して、大規模な温泉ホテルを作っても良いかもしれない。森から採れる野趣溢れる食材と、素晴らしい絶景。フライス村から、徒歩2時間なら十分に日帰りコースだ。タイタン市には、余り娯楽が無いので、この計画は充分に実現性がある。斜面には、苺や草花を栽培して、四季を通じて楽しめるようにしよう。


  次の日、僕は王都のバンブー建設で、新しい温泉観光ホテルの建設をお願いしていた。






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(3月3日です。)

  今日は、フランちゃんの誕生日だ。フランちゃんも、もう17歳になる。今、タイタン市の治癒院は第2治癒院を増設中だ。また、エクレア市にも、分院を建設中で、4月1日に開院予定となっている。


  今まで、エクレア市には本格的な治癒院が無かった。教会で行なっている『神の言葉』による治癒と、素人の施薬だけだった。ヒールが使える聖魔道士は、収入の良い王都で働くので、こんな田舎では誰も働きたがらない。そのため、エクレア市民達は、治癒院の完成を首を長くして待ちわびていたようだ。フランちゃんは、聖ゼロス教会大司教国から大量に治癒師を連れてきている。ゼロス教の教義が、生と死を司るゼロス様の教えであることもあり、『聖』魔法使いが多いのだ。招聘の条件は、ゼロス教の教会がある事だったので、国教であるアリエス教会に引けを取らない立派な教会を作った。勿論、大司教国の出資だが、僕が個人的に同額を援助している。




  治癒師達には、王国内では破格の給料を保証している。病院の経営はフミさんに一任しているが、その給料でもやっていけるそうだ。でも、とても忙しいので、4月から王立普通女学院高校を卒業した事務員を6人採用することになっている。最初に病院の事務を手伝ってもらっていたハッシュ町の女の子達も、とっくに正規職員になっている。医療費は、定額部分が大銅貨3枚だ。あと、診療時間に応じて10分につき大銅貨1枚を貰っている。




  薬は、時価にしている。王都の薬価を基準にしているが、安めに設定することにしている。何故なら、希少な薬草の宝庫が隣接しているからだ。治癒院を経営するのにはうってつけだった。フランちゃんの紫色の髪も、腰まで伸びており、治癒院の院長という雰囲気を出そうとしている。フランちゃんの話では、最近、魔物の被害が増えているそうだが、傷跡が、単なる切り傷や噛まれ傷だけでなく、複合になっているそうだ。噛まれたと同時に火傷したり凍傷になったりと、魔物が属性攻撃をし始めている。通常、属性攻撃は上位ランクの魔物しか使えないはずなのに、オークやトロールまで使うらしい。何かが変化してきている気がした。




  この日のフランちゃんへの誕生日プレゼントは、今、王都で流行っているクレープというスイーツを焼くセットだ。丸い鉄板の下に、魔火石を入れ、小麦粉などを練ったネタを薄く丸く焼くのだ。生クリームやチョコクリームをかけたバナナや苺を挟み三角に包んで食べるのだが、まだタイタン市には無い。この前、フランちゃんと一緒に王都に買い物に行った時に食べたら、これを焼く機械が良いというので、業務用の大きいのを買ったのだ。焼くのは、クレスタとノエルだが、実に簡単そうに焼くので、フランちゃんも挑戦してみた。当然、お団子になってしまった。


  この機械は、明日から『クレスタの想い出』の店頭に置かれる。挟む具にもよるが、銅貨35枚から60枚で売る予定だそうだ。販売開始の張り紙を出してから、問い合わせがすごいそうだ。夏になったら、アイスクリームを売るそうだ。色々なアイスクリームを冷えた大理石の上で、歌いながら混ぜ合わせるそうだ。変なことを考えるクレスタだった。





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  リバちゃんは、今の仕事が面白くてしょうがないらしい。男と女のやる事なんて一つしかない。ましてや商売にしているのだから、お金を貰って、足を広げて『はいどうぞ。』で良いのに、掛け引きがあり騙し騙され、見ていて飽きないと言っていた。特に、商売女を相手に嫉妬したところで、何にもならないのに、自分だけは特別だと思って他の男に嫉妬する。娼婦だって、昨日まで通っていた男が、他の女と寝たと言っては、女同士で喧嘩をする。じつに面白いそうだ。女達は、リバちゃんが、災厄の罪を司る神だなんて知らないし、綺麗な女性が、店先に立っているだけで、男は鼻の下を伸ばし、股間を膨らませて集まってくる。そんな男共の心をちょっと撫でるだけで、すぐに店に入ってくれる。中には、どうしてもリバちゃんが良いと言う客がいる。リバちゃんは、本番や類似行為をしないけれど、それでも良いかと言うと、一緒に食事だけでも良いと言うのだ。リバちゃんは、特に何もせずに食事だけする客の気持ちが分からなかった。でも、折角ご馳走してくれるのだ。しっかり食べて飲むことにしている。


  リバちゃんは、本来、何も食べる必要はないし、飲まなくても平気だ。しかし、見ることと同じように味わうことが出来る。リバちゃんは、美味しいものが好きだった。店の客の中には、酔って無理を言う客もいる。女の子達が困っていると、リバちゃんの出番だ。人々に嫉妬の感情を芽生えさせる事に比べたら、恐怖など他愛もない。男の心の中から、恐怖の種を取り出して育てるだけだ。リバちゃんは、赤く光る目で見ると、大抵の男は、ズボンを濡らしながら逃げてゆく。中には、その場で気を失う者もいるが、衛士隊に渡して処理終了だ。


  この店が出来てから2か月、こんなに客が入るとは思わなかった。午後8時から11時までは、予約が無いと入れない。女の子は、6日に2回の泊まりと1回の日勤があり、泊まりは夕方から仕事なので、いつもブラブラしているように見える。


  最近出来たメリーさんの店『シャトー・ワイス2号店』で、アルバイトをする子もいるが、身体を壊さない限り自由にさせているようだ。この店は、濃厚サービスを基本としている。1杯で大銅貨3枚もするワインを飲んで、席についた女の子とイチャイチャするが、本番は禁止だ。薄暗い店内では、至る所でクチャクチャと変な音がしている。あと、時々変な匂いが漂うが、すぐに香水を撒いて誤魔化しているようだ。


  ハッシュ町は、一大風俗タウンへと変貌を遂げ始めていた。

付属の世界描写はこれで終わりです。これ以上書くと、別のお話です。

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