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第201話 南のダンジョン開設

タイタン領内2か所目のダンジョンです。レベルが高そうです。

(1月10日です。)

  南の森のダンジョンの存在が明らかになった。これを、運営しないわけには行かない。今度のダンジョンは、北のシェル・ダンジョンのように村から遠くない。フライス村から歩いても1時間くらいの距離だ。タイタン領の中で、南のフライス村が、一番小さく、また他の市町村に比較しても発展が遅れている。人口は、僅か1200名ほどだ。今回のダンジョン発見は、フライス村の発展のためにも有効なはずだ。


  しかし、今回は、前回のシェル・ダンジョンのように急がない。ダンジョン開設のためのインフラが整ってから、ゆっくりと開設するつもりだ。僕は、フライス村に戻ると、ダンプ村長にダンジョン発見について伝えた。村には、旅館もないし、大量の冒険者が来られても、宿泊する施設がない。まず、そこから改善しなければならない。


  ハッシュ町を見ると、領主直営のホテルが1つと、私設の旅館が3つで、総宿泊可能人員は約200名だ。それで収容できない場合には、民宿が50名分の部屋を用意している。食堂も多く、冒険者の食住に不自由することはない。ところが、このフライス村には、食堂も満足にない。武器職人もいなければ、薬草などを売る店もない。これでは、満足にダンジョンを運営出来る訳が無いと言うことだった。僕は、もっともだと思った。それでは、今後のフライス村の都市計画を練ることにした。ダンジョン開設はそんなにゆっくりしていられない。何故なら、ダンジョンに魔物が溢れると、スタンピードが発生してしまうからだ。


  僕は、村内のギルド建設予定地とホテル建設予定地に縄張りをして置いた。


  基本的には、何らかの理由で領主から譲渡された私有地以外は、全て領主の所有地である。居住地や商店の建設地、それに耕作地も、領主からの借地扱いとなり、その賃領として、年貢や税金が払われると言うわけだ。だから、僕が縄張りをしたら、それが、建設予定地として確定となる訳だ。当然、僕は誰にも地代を払わない。


  タイタン市に戻ると、バンブー建設タイタン支店に行って、建設計画を立てた。ギルドと冒険者用の宿泊施設は、4か月も有ればできるそうだ。これから、人材を探さなくてはならない。今のうちに、王立学校の新卒者を採用しなければならないが、募集事務は、セバスさんに頼む事にした。セバスさん一人では大変なので、バンブーさんの伝手で若い事務員を1名雇うことにした。去年、王立商業高校を卒業したリタと言う女の子を雇うことにした。この子は、バンブーさんの姪だそうだ。それから、王立冒険者ギルドに行き、アルフレッド殿下にフライス・ダンジョンの発見と、ギルド開設のための申請を行った。ギルド長の派遣をお願いしたら、フレデリック殿下の秘書をしているモンデさんを雇ってくれないかと頼まれた。モンデさんなら良く知っているので、直ぐにでも来て貰いたいとお願いしたら、2月になったら、そちらに行くと言うことになった。後、新人の事務員も2名連れてくる事になった。




  実は、ギルドの職員は、限られたポストの中で昇進するので、ある程度のポストに就くと、それでお終いらしい。モンデさんも殿下の秘書を10年もやっているそうだ。今度は、最低でも出張所長、ギルドの規模が拡大すると支部になり、支部長になるわけだ。支部長になると、業績次第で年収が決まるので、年収大金貨10枚以上も夢ではない。現に、タイタン支部長のヘレナさんはそれ位貰っているそうだ。




  折角、王都に来たのだから、王立魔道士協会のマリンピア魔道士長に会って、この前のワンドについて聞くことにした。魔道士協会に行くと、今、魔道士学院に行っているそうだ。王立魔道士学院は、正月休みも終わり、卒業試験や進級試験の真最中らしい。演習場が屋外と奥内に1か所ずつしかないので、全員が一遍には出来ないのだ。


  今日は、中等部3年の卒業実技試験だそうだ。ノエルとビラも試験官だ。マリンピア魔道士長がいたので、ワンドの事について聞いてみたら、見せてくれと言う。校長室で、見せることにした。各学年の主任教授も、校長室に来たので、教授達で一杯だった。僕は、イフクロークからワンドを取り出した。それだけで、殆どの教授は、度肝を抜かした。しかし、僕が取り出したワンドを見て、皆、目を見張った。暫く静寂が流れた。マリンピア魔道士長が、口を開いた。


  「失われた秘宝、『天空の杖』じゃ。」


  詳しく聞くと、このワンドは、今から300年前、突然、所在が分からなくなった物だそうだ。天上界で作られたとの伝承で『天空の杖』と名付けられている。属性は『聖』だが、驚くべき性質を持っているそうだ。全ての魔法について、レベルが4アップつまり16倍するだけではなく、魔力消費が増加しないそうだ。今の魔法技術では、作成不可能な品らしい。国宝とするので、預からせて呉れないかと言われたが、丁寧にお断りした。だが、このワンドはノエルに与えるつもりなので、その後は彼女と相談してくれと言った。まあ、ノエルだって絶対に断ると思うけど。


  早速、皆で、中庭にある屋外演習場に行ってみる。ちょうど、中学3年生の卒業試験の最中で、ノエルが立ち会っていた。試験内容は、自分の得意な魔法で、魔力測定人形に魔法を放ち、レベル3以上で合格だ。校長先生が、一旦試験を中断させた。僕は、ノエルにワンドを渡した。ノエルは、直ぐ、この前のダンジョン攻略の時のドロップ品だと分かった。


  僕は、ノエルに、このワンドを使って、あの測定人形にサンダーボルトを撃ってくれるようにお願いした。サンダーボルトは、レベル3つまり通常のサンダーの4倍の威力だ。ノエルが無詠唱の場合、他の魔導士よりも2~3倍の威力がある。それがワンドを使うと、その16倍となるわけだ。危険ゾーンだ。僕は、生徒達をシェルターに避難させ、教授達には防御シールドを掛けておいた。


  ノエルは、全くの無詠唱で、ワンドを振った。


    「サンダーボルト。」


  まったく気合の入らない『起語』だ。しかも、僕がやっと聞こえる程度の小さな声だった。しかし、ワンドからは凄まじい光が放射された。


    ゴロゴロガラガラッゴゴゴゴ

    

    ズドキューーーーン!!!


  目も開けていられないような閃光と共に、大落雷が落ちた。測定人形どころか、演習場に大きな穴が空き、穴の底からはマグマのグツグツ煮えたぎる音が聞こえる。後で聞いたところ、王都中に大音響が響いたらしい。ノエルもビックリしたし、ビラも別の屋内試験場から飛び出して来た。僕は、あわててマグマの熱を吸いとり、氷で完全に冷やしてから、土魔法で元の演習場に戻しておいた。ノエルの場合、このワンドを使うときは、雷系魔法なら、最初級の『サンダー』が常用範囲となるようだ。


  ビラも、使ってみたがっていたが、ビラが雷系魔法を使うと、王都崩壊が起こりかねないので、止めさせた。マリンピア魔道士長は、直ちに国王陛下にこの事を報告せねばと思うのであった。






  僕は、タイタン領とカーマン王国の交易をしたいと考えていた。どこかに、マッキンロウ山脈の地下を貫く洞窟が無いか、冬が終わったら探そうと思っているのだ。また、北の大陸も、もっと交流をしなければならない。まあ、余り急いでも、しょうがないかなと思ってもいる。とりあえず、南の森を開発して、マッキンロウ山脈の麓までは、安全に行けるようにしようと思っている。



  次の日、フライス村に行き、個別調査を実施した。フライス村は、人口1200名、農業従事者が800名の典型的な農村だ。ほとんどの家が、木造平屋建てで、2階建ての建物は、僕が建てた小学校だけだ。村の郊外に半数の400名が居住している。これは、農耕用地が村から離れているため、仕方なく村から離れて居住している。毎日、魔物や野獣の陰におびえながら暮らしているのだ。これに耐えられない残りの400名は、村に居住し、遠く離れた自分の畑に毎日通っている。村の若い者は、娯楽のない村から出て行こうとするが、結局、都会では暮らしていけず、村に帰って来る者が殆どだ。あと、鍛冶屋とか駅馬車要員とか、専門職がわずかにいるだけだ。ダンプ村長は、そんな将来展望のない村の先行きを心配していたが、村の近くにダンジョン発見の知らせを受け、将来、ハッシュ町のように発展するかもしれないと期待し始めているのであった。




  僕は、ダンプさんに、村内の空き家、空き室状況を調査したところ、手を入れれば使用可能な空き家が60軒、民宿として使用可能な空き室は、80室あった。取り敢えず、ギルドマスターとなるモンデさんと、事務の女の子2名の下宿先を確保し、4か月の下宿代を前払いする。モンデさんは、村長の家に下宿することになった。モンデさんには、年に金貨8枚、事務員さんには、年に金貨3枚の報酬の約束だった。あと、モンデさんにはギルドの収益から臨時手当が歩合で支払われる。





  当面は、タイタン支部フライス村出張所長なので、利益の2%が歩合だ。後は、支部への上納となる。これが、支部長になれば歩合は3%に跳ね上がる。だから、皆一生懸命なのだ。モンデさんには、奥様と中学生のお子様がいるそうなので、4月からタイタン市に引っ越してくるそうだ。タイタン学院付属中等部に転入したければ、転入試験を受けなければならないが、公立中学で良いそうだ。それから、ダンプ村長に、ギルドとホテルで働く職員や料理や掃除の下働きを募集するので、応募者を募って頂くように依頼した。村民を優先して採用するつもりだった。


  建築工事が始まると、力仕事が必要になるので、農閑期の男性に臨時雇いの仕事があるとも説明した。村には、大工さんが2人いて、村民の住居などを建てたり、補修をしていたが、その人達に空き家の補修をお願いした。殆どの家には、お風呂がなかったので、追加してくれるようにも依頼した。この時は、このフライス村が、一大プレイスポットになるとは誰も予想していなかったのは、仕方がないことだった。


  後は、ダンジョン周囲の森の探索だ。

とんでもない杖です。レベルが2の3乗倍です。

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